そう‐き〔サウ‐〕【想起】例文一覧 14件

  1. ・・・そんな点で多少のクラデルなんぞを想起させる所もありますが、勿論全体としては別段似てもいません。 こう云う特質に冷淡な人は、久米の作品を読んでも、一向面白くないでしょう。しかしこの特質は、決してそこいらにありふれているものではありません。・・・<芥川竜之介「久米正雄氏の事」青空文庫>
  2. ・・・こう云う自分たちの笑い声がどれほど善良な毛利先生につらかったか、――現に自分ですら今日その刻薄な響を想起すると、思わず耳を蔽いたくなる事は一再でない。 それでもなお毛利先生は、休憩時間の喇叭が鳴り渡るまで、勇敢に訳読を続けて行った。そう・・・<芥川竜之介「毛利先生」青空文庫>
  3. ・・・梅子が泣いて見あげた眼の訴うるが如く謝るが如かりしを想起す毎に細川はうっとりと夢見心地になり狂わしきまでに恋しさの情燃えたつのである。恋、惑、そして恥辱、夢にも現にもこの苦悩は彼より離れない。 或時は断然倉蔵に頼んで窃かに文を送り、我情・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  4. ・・・そんなに泡の出るほどふんばらずとも、と当時たいへん滑稽に感じていた、その柔道の選手を想起したとたんに私は、ひどくわが身に侮辱を覚え、怒りにわななき、やめ! 私は腕をのばして遮二無二枝につかまった。思わず、けだもののような咆哮が腹の底から噴出・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  5. ・・・葛西善蔵の生涯を想起したまえ。腹のできあがった君子は、講談本を読んでも、充分にたのしく救われている様子である。私にとって、縁なき衆生である。腹ができて立派なる人格を持ち、疑うところなき感想文を、たのしげに書き綴るようになっては、作家もへった・・・<太宰治「碧眼托鉢」青空文庫>
  6. ・・・たとえばだいじのむすこを毒殺された親父の憂鬱を表現する室内のシーンでもその画面の明暗の構図の美しさはさまにレンブラントを想起させるものがあるが、この場面のいろいろなヴァリエーションが少なくも多くの日本人には少し長すぎるであろうと思われる。し・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  7. ・・・ 誤った無理な似て非なる類推は断じて許されないとしても、このような想起者として科学は意外に重要な役目を人間の今日の生活のいろいろな場面に対して申し出しているように思われるのである。 これは決して偶然なことではないのである。いったい、・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  8. ・・・ある人はコロンバスの卵を想起するであろう。卵を直立させるには殻を破らなければならない。アインシュタインはそこで余儀なく絶対空間とエーテルの殻を砕いたまでである。 殻を砕いて新たに立てた根本仮定から出発して、それから推論される結果までの論・・・<寺田寅彦「相対性原理側面観」青空文庫>
  9. ・・・単にその技巧の上から見ても津田君の例えばある樹幹の描き方や水流の写法にはどことなくゴーホを想起させるような狂熱的な点がある。あるいは津田君の画にしばしば出現する不恰好な雀や粟の穂はセザンヌの林檎や壷のような一種の象徴的の気分を喚起するもので・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  10. ・・・現在の下女下男を宜しからずと思わば、既往数年の事を想起し、其数年の間に如何なる男女が果して最上にして自分の意に適したるや、其者は誰々と指を屈したらば、おの/\一得一失にして、十分の者は甚だ少なかる可し。既往斯の如くなれば現今も斯の如し。将来・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  11. ・・・彼プロレタリア作家は暗い納戸で寓話化されたソヴェト同盟を幻想に描くよりさきに、三次の事件を想起すべきであった。しかし彼は村の神社の集りへ出て、鉈をふった平次郎は念頭においたが、三次が集りに来ているかいないかさえ問題にしていない。 同時に・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  12. ・・・の面白さを懐しく想起させずにはおかない。シートンの熊の生活の報告、狐の話その他何と鮮明に語られていることだろう。ところが、シートンの相当な読者であった私は、大きい疑問をこの著者の報告の科学的な良心に対して抱く一つの物語をよまされた。それは、・・・<宮本百合子「科学の常識のため」青空文庫>
  13. ・・・それを眺める父と母たちの思い、彼等に何を想起させ、何を望ませているであろうか。ヨーロッパの天地は再び震撼しはじめているが、この前のように盲目の狂暴に陥るまいとする努力は到るところに見られており、男に代って社会活動の各部署についた婦人たちも、・・・<宮本百合子「これから結婚する人の心持」青空文庫>
  14. ・・・この一文をよむわれらの脳裏に愛郷塾が髣髴し、社会ファシストの産業奉還論が想起されずにいるとすれば、むしろそれはおどろくべきである。 林は獄中での精力的な読書にもかかわらず、「京都の一族が封建地主的存在としてどのような窮迫した経済状態にあ・・・<宮本百合子「文学に関する感想」青空文庫>