そう‐こく〔サウ‐〕【相克/相×剋】例文一覧 30件

  1. ・・・かくして、その相剋の間に真理は見出されるのを常とします。しかし、真の殉教者は、そのいずれに於ても、狂信的なるものである。即ち新社会を建設する上に於て、貴い犠牲者でもあります。 しかし、こゝに、政治運動が流行すれば、皆なその方に向って行き・・・<小川未明「文化線の低下」青空文庫>
  2. ・・・この二つの熱情の相剋するところに学窓の恋の愛すべき浪曼性があるのである。 かようにして私は真摯な熱情をもって、学びの道にある青年の、しかも理想主義の線にそっての恋愛について説きたいのである。すでに女を知ってしまった中年のリアリストの恋愛・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  3. ・・・社会関係の矛盾も、資本主義が発展した段階に於て遂行する戦争とプロレタリアートとの利害の相剋も、すべてが戦線に出された兵卒に反映し凝集する。それは加熱された水のようなものである。蒸気に転化する可能性を持っている。だから、兵卒に着目したことには・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  4. ・・・ 相剋の結合は、含羞の華をひらいた。アグリパイナは、みごもった。ブラゼンバートは、この事実を知って大笑した。他意は無かった。ただ、おかしかったのである。 アグリパイナは、ほとんど復讐を断念していた。この子だけは、と弱草一すじのたのみ・・・<太宰治「古典風」青空文庫>
  5. ・・・この両頭食い合いの相互関係、君は、たしかに学んだ筈だ。相剋やめよ。いまこそ、アウフヘエベンの朝である。信ぜよ、花ひらく時には、たしかに明朗の音を発する。これを仮りに名づけて、われら、「ロマン派の勝利。」という。誇れよ! わがリアリスト、これ・・・<太宰治「HUMAN LOST」青空文庫>
  6. ・・・しかしわれわれのような観賞者の立場からすれば配合調和相生というのも、対立衝突相剋というのも、作者の主観以外には現象としての本質的な差を認めなくても結果においてたいした差はないようである。要は結局エイゼンシュテインが視覚的陪音と呼び、あるいは・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  7. ・・・セットの各要素がかえって相殺し相剋して感じがまとまらない。これらの点についても、監督の任にある人は「俳諧」から学ぶべきはなはだ多くをもつであろう。それからまた県土木技師の設計監督によるモダーン県道を徳川時代の人々が闊歩したり、ナマコ板を張っ・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  8. ・・・現代人は相生、調和の美しさはもはや眠けを誘うだけであって、相剋争闘の爆音のほうが古典的和弦などよりもはるかに快く聞かれるのであろう。そういう爆音を街頭に放散しているものの随一はカフェやバーの正面の装飾美術であろう。ちょうどいろいろな商品のレ・・・<寺田寅彦「カメラをさげて」青空文庫>
  9. ・・・なんでも相生の代わりに相剋、協和の代わりに争闘で行かなければうそだというように教えられるのであるらしい。その理論がまだ自分にはよくわからない。 三つの音が協和して一つの和弦を構成するということは、三つの音がそれぞれ互いに著しく異なる特徴・・・<寺田寅彦「「手首」の問題」青空文庫>
  10. ・・・暗示するように、たとえば日本の生花の芸術やまた造庭の芸術でも、やはりいろいろのものを取り合わせ、付け合わせ、モンタージュを行なって、そうしてそこに新しい世界を創造するのであって、その芸術の技法には相生相剋の配合も、テーゼ、アンチテーゼの総合・・・<寺田寅彦「ラジオ・モンタージュ」青空文庫>
  11. ・・・ まともに相剋に立ち入っては一生を賭しても解決はむずかしいのだからと、今日の文化がもっている凹みの一つである女らしさの観念をこちらから把んで、そこで女らしさの取引きを行って処世的にのしてゆくという態度も今日の女の生きる打算のなかには目立・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  12. ・・・その相剋の強烈さで。その暗さの深さで。自分が感じている明るくなさや、ひとも自分も信じがたさを、刺戟し、身ぶるいさせる自虐的な快感でひきつけられているのだと思う。 ここで、再びわたしたちは、文学にふれてゆく機会が偶然であるという事実と・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  13. ・・・婚、家庭生活について日本の社会通念が枠づけている息ぐるしい家族制度のしがらみ、娘・妻としての女が、人間らしいひろやかさと発展をもって生きたい女性にとって、どんなに窒息的なものであるかを、夫婦の性格的な相剋の姿とともに描き出そうとしている。作・・・<宮本百合子「あとがき(『伸子』)」青空文庫>
  14. ・・・結婚にからむ親たちとの相剋も非条理に思えた。二十歳の女の人生をその習慣や偏見のために封鎖しがちな中流的環境から脱出するつもりで行った結婚から、伸子は再度の脱出をしなければならなかった。世間のしきたりから云えば十分にわがままに暮しているはずの・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」青空文庫>
  15. ・・・でも、女にとって職業か家庭かという苦しい疑問を常に抱かせて来たさまざまの相剋は、決して社会的な解決を得ていない。そのことのうちには、給料のこともふくまっていて、働いている婦人としての感情はお互に単純であり得ない。社会の凸凹が各個人の感情の凸・・・<宮本百合子「異性の間の友情」青空文庫>
  16. ・・・ 友情といわれるごくひろい気持の上で経験されているこのような相剋は、女性がますます社会的な活動にひき出されて来ている今日、若い世代の生活感情にとってあるいは時代的な不幸としての性格をもつものではないかと思う。実生活の困難がますます加わっ・・・<宮本百合子「異性の友情」青空文庫>
  17. ・・・ 武家時代の社会で君臣という動かしがたい社会の枠の中に、このようになまなまと恐ろしい人間性格の相剋が現実すること、そして、その相剋する力がその枠をとりのぞく作用としては在り得ないで、その枠内で揉み合って、枠内のしきたりによって悲劇の終末・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  18. ・・・然し、既に今日の現実の中では、わが個性の確立、発展の欲求を自覚すると同時に、実際問題としてそれを制約している事情との日常的な相剋があり、社会的事情の改善なしに個性の発揚は不可能であるという客観的事実を示している思想は、空な一流派の流行とかそ・・・<宮本百合子「落ちたままのネジ」青空文庫>
  19. ・・・イギリスの炭礦夫の息子であったローレンスの悲劇は、戦争をふくめて、あらゆる現代社会の矛盾、相剋への抗議を、性の自然的な権利の回復という一点に集中して表現したところにあった。 D・H・ローレンスは、彼を知っているすべての人が語っているとお・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  20. ・・・この人間性の覚醒と行動の抑制との相剋があらゆる方面にあらわれていたルネッサンス時代に、インドにおける植民地の拡大と、その結果、より速い資本主義社会への足なみをもったイギリスで、シェクスピアの豊富な才能が、思いをこめてじっと動かず微笑するレオ・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  21. ・・・ 現代の悲劇というより、むしろ正劇は、個々の性格間の格闘というよりも拡大されて、人間理性の発展にあらわれてきた歴史と歴史のギャップ、相剋という普遍性をもつたたかいの記録に進んで来ている。日本の現代文学は、世界の現実としてのこれら日本の現・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  22. ・・・その席では、二十世紀のこの時期に動いている世界社会の苦悩、相剋、発展へのつよい意欲とその実験にかかわる文学の、原理的な諸問題について究明される態度は全く消された。印象批評と放談のうちに、ジャーナリズムと読者とに対するある種のデモンストレーシ・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  23. ・・・ 私は私であっていいのだという確信を貫いて生きるためには、現実の中で何と苦しい相剋や矛盾を耐えてゆかなければならないだろう。 パール・バックの優れた作品の一つに「母の肖像」というのがある。この母の時代の姿であらわされているアメリカの・・・<宮本百合子「『この心の誇り』」青空文庫>
  24. ・・・非常に天分ある大作家でも、矛盾相剋するブルジョア階級の世界観の環内に止っているところにあっては、文学的練磨がつみ重ねられ、才能が流暢に物語り出すにつれ益々その作家に現れる矛盾は、その作家自身にとって克服し難い妥協なく顕著なものとなって来る。・・・<宮本百合子「作家研究ノート」青空文庫>
  25. ・・・男対女の相剋を、漱石は「兄」などの中にあれほど執拗に追究していながら、問題は常に女という一般の性に向っての疑いとして出されていて、結婚の習慣のありよう、家庭という観念の内容については、不思議なほどふれられていない。男女の相剋を自我の相剋とし・・・<宮本百合子「作家と教養の諸相」青空文庫>
  26. ・・・民法が改正されただけで生活感情の伝統の相剋はなくなると思うものはない。日本の財閥が外見上解体されたとして、どうして徒弟制が絶滅したといえよう。バイブルに、男女は差別ある賃銀を、と書いてはなかろうが、カソリック教徒である日本の文相は、それらを・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  27. ・・・と云っているのであるが、作家としての彼が一度、この内なる自己と外部との葛藤、相剋をとりあげるとなると、それは全く社会的背景から抽象された心理分析、フロイド風の或はドストイェフスキイ風の意識下のものの探求となり、作品に現れる人物が本質の窮極に・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  28. ・・・そして、真の新世代はこんにち、社会的矛盾の相剋の最悪の事情において闘いながら、その争いにともなって自身の文学を創ってゆかなければならない。そこには、先ず勤労人として生活しながら、文学を愛好する面では消費的で、従来の文学青年的であるというよう・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  29. ・・・したがって人間性の解放とその自由の要求には、過程として当然さまざまの社会的相剋、封建性とのさまざまのたたかいをさけがたいものとしていたし、そのたたかいを終極の勝利に導くためには、一見、人間性の解放とは逆のように見える集団の規則、献身、克己を・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  30. ・・・は、近代における自我の問題として人間交渉の姿に敏感・執拗・潔癖であったこの作家の苦悩に真正面からとり組んだ作品であるばかりでなく、両性の相剋の苦しみの面をも絶頂的に扱われた小説と思える。この作品が、漱石の作家としての生涯の特に孤立感の痛切で・・・<宮本百合子「漱石の「行人」について」青空文庫>