そう‐しき〔サウ‐〕【葬式】例文一覧 30件

  1. ・・・僕は明けがたの夢の中に島木さんの葬式に参列し、大勢の人人と歌を作ったりした。「まなこつぶらに腰太き柿の村びと今はあらずも」――これだけは夢の覚めた後もはっきりと記憶に残っていた。上の五文字は忘れたのではない。恐らくは作らずにしまったのであろ・・・<芥川竜之介「島木赤彦氏」青空文庫>
  2. ・・・ 僕の母の葬式の出た日、僕の姉は位牌を持ち、僕はその後ろに香炉を持ち二人とも人力車に乗って行った。僕は時々居睡りをし、はっと思って目を醒ます拍子に危く香炉を落しそうにする。けれども谷中へは中々来ない。可也長い葬列はいつも秋晴れの東京の町・・・<芥川竜之介「点鬼簿」青空文庫>
  3. ・・・すると低い松の生えた向うに、――恐らくは古い街道に葬式が一列通るのをみつけた。白張りの提灯や竜燈はその中に加わってはいないらしかった。が、金銀の造花の蓮は静かに輿の前後に揺いで行った。…… やっと僕の家へ帰った後、僕は妻子や催眠薬の力に・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  4. ・・・幼児に死を知らせる事は無益であるばかりでなく有害だ。葬式の時は女中をお前たちにつけて楽しく一日を過ごさして貰いたい。そうお前たちの母上は書いている。「子を思う親の心は日の光世より世を照る大きさに似て」 とも詠じている。 母上が亡・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  5. ・・・ 何にいたしましても、来るものも娶るものも亡くなりましたのは、こりゃ葬式が出ましたから事実なんで。 さあ、どんづまりのその女郎が殺されましてからは、怪我にもゆき人がございません、これはまた無いはずでございましょう。 そうすると一・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  6. ・・・自分はしようことなしに、よろしく頼むといってはいるものの、ただ見る眠ってるように、花のごとく美しく寝ているこの子の前で、葬式の話をするのは情けなくてたまらなかった。投げ出してるわが子の足に自分の手を添えその足をわが顔へひしと押し当てて横顔に・・・<伊藤左千夫「奈々子」青空文庫>
  7. ・・・死後八カ月を過ぎて葬式が行われたんや。」「して、大石のからだはあったんか?」「あったとも、君――後で収容当時の様子を聴いて見ると、僕等が飛び出した川からピー堡塁に至る間に、『伏せ』の構えで死んどるもんもあったり、土中に埋って片手や片・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  8. ・・・ 人々は寄り集まって、牛女の葬式を出して、墓地にうずめてやりました。そして、後に残った子供を、みんながめんどうを見て育ててやることになりました。 子供は、ここの家から、かしこの家へというふうに移り変わって、だんだん月日とともに大きく・・・<小川未明「牛女」青空文庫>
  9. ・・・良吉は文雄のお葬式のときにも泣いてついてゆきました。それからというものは、彼は毎日のように暇さえあればお寺の墓地へいって、文雄の墓の前にすわって、ちょうど生きている友だちに向かって話すと同じように語りました。「君、さびしいだろうと思って・・・<小川未明「星の世界から」青空文庫>
  10. ・・・     *    *    * 越えて二日目、葬式は盛んに営まれて、喪主に立った若後家のお光の姿はいかに人々の哀れを引いたろう。会葬者の中には無論金之助もいたし、お仙親子も手伝いに来ていたのである。 で、葬式の済むまで・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  11. ・・・私は禁酒会へはいってから毎月十円ずつしてきた禁酒貯金がもうそのころ千円を越していたので、それで葬式をして、父の墓を建てました。そして八月の十日には父の残した老妻と二人で高野山へ父の骨を納めに行った。昭和十六年の八月の十日、中之島公園で秋山さ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  12. ・・・ そんなお君に中国の田舎から来た親戚の者は呆れかえって、葬式、骨揚げと二日の務めをすますと、さっさと帰って行き、家の中ががらんとしてしまった夜、異様な気配にふと眼をさまして、「誰?」 と暗闇に声を掛けたが、答えず、思わぬ大金をも・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  13. ・・・極端だと人は思うかも知れないが、細君が死んだその葬式の日、近所への挨拶廻りは、親戚の者にたのんで、原稿を書いていたという。随分細君には惚れていたのだが、その納骨を二年も放って置いて、いまだにそれを済ませないというズボラさである。 仕事は・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  14. ・・・「追而葬式の儀はいっさい簡略いたし――と葉書で通知もしてあるんだから、いっそ何もかも略式ということにしてふだんのままでやっちまおうじゃないか。せっかく大事なお経にでもかかろうというような場合に、集った人に滑稽な感じを与えても困るからね」・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  15. ・・・ところがその品物のなかで最も高い値が出たのはその男が首を縊った縄で、それが一寸二寸というふうにして買い手がついて、大家はその金でその男の簡単な葬式をしてやったばかりでなく自分のところの滞っていた家賃もみな取ってしまったという話であった。・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  16. ・・・「そこで僕は思うんです、百人が百人、現在、人の葬式に列したり、親に死なれたり子に死れたりしても、矢張り自分の死んだ後、地獄の門でマサカ自分が死うとは思わなかったと叫んで鬼に笑われる仲間でしょう。ハッハッハッハッハッハッハッハッ」「人・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  17. ・・・北さんのお隣りの奥さんが死んだ、という電報であったが、北さんは、こりゃいけない、あの家は非常に気の毒な家で、私がいないとお葬式も出せない、すぐ行かなくちゃいけない、と言って、一度言い出したら、もう何といっても聞きいれない、頑固な大久保氏なの・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  18. ・・・ 考えてみると、僕たちだって、小さい時からお婆さんに連れられてお寺参りをしたり、またお葬式や法要の度毎に坊さんのお経を聞き、また国宝の仏像を見て歩いたりしているが、さて、仏教とはどんな宗教かと外国の人に改って聞かれたら、百人の中の九十九・・・<太宰治「世界的」青空文庫>
  19. ・・・好きでないおじいさんだったのですが、でも、私はお葬式の日には、ずいぶん泣きました。お葬式があんまり華麗すぎたので、それで、興奮して泣いちゃったのかも知れません。お葬式の翌る日、学校へ出たら、先生がたも、みんな私にお悔みを言って下さって、私は・・・<太宰治「誰も知らぬ」青空文庫>
  20. ・・・ 葬式の行列もやはりわれわれには多少テンポのゆるやかすぎる感じがある。これを「全線」に現われる雨ごいの行列と対照するとやはり後者のほうがより多く動的であるように見えるのである。しかしここでもわれわれが、あるいは私が、テンポのゆるやかすぎ・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  21. ・・・そこへ僧侶に連れられてたった三人のさびしい葬式の一行が来る。このところにあまり新しくはないがちょっとした俳句の趣がある。 アンナ・ステンのナナが酒場でうるさく付きまとう酔っぱらいの青年士官を泉水に突き落とす場面にもやはり一種の俳諧がある・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  22. ・・・また或日の夕方には、大声に泣きながら歩く女の列を先駆にした葬式の行列に出遇って、その奇異なる風俗に眼を見張った。張園の木の間に桂花を簪にした支那美人が幾輛となく馬車を走らせる光景。また、古びた徐園の廻廊に懸けられた聯句の書体。薄暗いその中庭・・・<永井荷風「十九の秋」青空文庫>
  23. ・・・知人の婚礼にも葬式にも行かないので、歯の浮くような祝辞や弔辞を傾聴する苦痛を知らない。雅叙園に行ったこともなければ洋楽入の長唄を耳にしたこともない。これは偏に鰥居の賜だといわなければならない。        ○ 森鴎外先生が・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  24. ・・・僕は通夜にも行き葬式の供にも立ったが――その夫人の御母さんが泣いてね――」「泣くだろう、誰だって泣かあ」「ちょうど葬式の当日は雪がちらちら降って寒い日だったが、御経が済んでいよいよ棺を埋める段になると、御母さんが穴の傍へしゃがんだぎ・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  25. ・・・ただ年が年中足を擂木にして、火事見舞に行くんでも、葬式の供に立つんでも同じ心得で、てくてくやっているのは、本人の勝手だと云えば云うようなものの、あまり器量のない話であります。デフォーははなはだ達筆で生涯に三百何部と云う書物をかきました。まあ・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  26. ・・・先ずおれの葬式として不足も言えまい。…………………アアようよう死に心地になった。さっき柩を舁き出されたまでは覚えて居たが、その後は道々棺で揺られたのと寺で鐘太鼓ではやされたので全く逆上してしまって、惜い哉木蓮屁茶居士などというのはかすかに聞・・・<正岡子規「墓」青空文庫>
  27. ・・・夜半青山の御大葬式場から退出しての帰途、その噂をきいて「予半信半疑す」と日記にかかれているそうである。つづいて、鴎外は乃木夫妻の納棺式に臨み、十八日の葬式にも列った。同日の日記に「興津彌五右衛門を艸して中央公論に寄す」とあって、乃木夫妻の死・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  28. ・・・わたしは五日間仮出獄して、葬式に列し、再び未決へもどった。二・二六があったのもこの年のことである。「乳房」は、ある労働者街の無産者托児所の生活を中心として、東交の職場が各車庫別のストライキに立っていたころの動揺、地区のオルグとして働いて・・・<宮本百合子「解説(『風知草』)」青空文庫>
  29. ・・・私は金を持っておりましたが、連れ合いの葬式が十八円もかかりましてもう一文もございません。どうぞ此のタワシをお買い下さいませ。宿料を一晩に三十八銭もとられますので、それだけ戴けないとどうすることも出来ません。どうぞ一つこれをお買いなすって下さ・・・<横光利一「街の底」青空文庫>
  30.  ある男が祖父の葬式に行ったときの話です。 田舎のことで葬場は墓地のそばの空地を使うことになっています。大きい松が二、三本、その下に石の棺台、――松の樹陰はようやく坊さんや遺族を覆うくらいで、会葬者は皆炎熱の太陽に照りつけられながら・・・<和辻哲郎「土下座」青空文庫>