そう‐しょく〔サウ‐〕【装飾】例文一覧 30件

  1. ・・・僕はなんの装飾もない僧房を想像していただけにちょっと意外に感じました。すると長老は僕の容子にこういう気もちを感じたとみえ、僕らに椅子を薦める前に半ば気の毒そうに説明しました。「どうか我々の宗教の生活教であることを忘れずにください。我々の・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・その上主人が風流なのか、支那の書棚だの蘭の鉢だの、煎茶家めいた装飾があるのも、居心の好い空気をつくっていた。 玄象道人は頭を剃った、恰幅の好い老人だった。が、金歯を嵌めていたり、巻煙草をすぱすぱやる所は、一向道人らしくもない、下品な風采・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  3. ・・・しかしこの議論には、詩そのものを高価なる装飾品のごとく、詩人を普通人以上、もしくは以外のごとく考え、または取扱おうとする根本の誤謬が潜んでいる。同時に、「現代の日本人の感情は、詩とするにはあまりに蕪雑である、混乱している、洗練されていない」・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  4. ・・・予の屡繰返す如く、欧人の晩食の風習や日本の茶の湯は美食が唯一の目的ではないは誰れも承知して居よう、人間動作の趣味や案内の装飾器物の配列や、応対話談の興味や、薫香の趣味声音の趣味相俟って、品格ある娯楽の間自然的に偉大な感化を得るのであろう・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  5. ・・・薄暗いランプの蔭に隠れて判然解らなかったが、ランプを置いた小汚ない本箱の外には装飾らしい装飾は一つもなく、粗末な卓子に附属する椅子さえなくして、本箱らしい黒塗の剥げた頃合の高さの箱が腰掛ともなりランプ台ともなるらしかった。美妙斎や紅葉の書斎・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  6. ・・・一つは、太平時代の産物であり、装飾であり、娯楽であり、後者は、闘争的精神から生れた叫びである。純然行路を異にするのは、それがためであります。 階級闘争は必然であり、すべての人間的運動は、資本主義的文明の破壊からはじまる。もはや、それに疑・・・<小川未明「芸術は革命的精神に醗酵す」青空文庫>
  7. ・・・ それに、考えてみれば、無理は無理でも、装飾品のほかに百円の薬がただで貰えるというのだ。けっして割のわるい話ではない――と、結局、彼等は乾いた雑巾を絞るようにして、二百円の金を工面せざるを得なかった。 その結果集まった金が六千円、う・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  8. ・・・は名前からしてハイカラだが、店そのものもエキゾチックな建築で、装飾もへんにモダーンだから、まるで彼に相応わしくない。赤暖簾のかかった五銭喫茶店へはいればしっくりと似合う彼が、そんな店へ行くのにはむろん理由がなくてはかなわぬ。女だ。「カスタニ・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  9. ・・・その酒を飲んでいる間だけが痛苦が忘れられたが、暁方目がさめると、ひとりでに呻き声が出ていた。装飾品といって何一つない部屋の、昼もつけ放しの電灯のみが、侘しく眺められた。 永い間自分は用心して、子を造るまいと思ってきたのに――自然には・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  10. ・・・秋晴の好天気で、街にはもう御大典の装飾ができかかっていた。最後の希望は直入と蕃山の二本にかかった。 そこの大きな骨董屋へはいってまず直入を出したが、奥から出てきた若主人らしい男はちょっと展げて見たばかしで巻いてしまった。たいしたえらいも・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  11. ・・・部屋の装飾はすべて広瀬さんの好みらしく、せいぜい五組か六組ほどの客しか迎えられない狭い食堂ではあるが、食卓の置き方からして気持好く出来ていた。「どうです、この食堂は」と新七は母に言った。「外からの見つきは、あまり好くもありませんが、内部・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  12. ・・・兄の所蔵の「感情装飾」という川端康成氏の短篇集の扉には、夢川利一様、著者、と毛筆で書かれて在って、それは兄が、伊豆かどこかの温泉宿で川端さんと知り合いになり、そのとき川端さんから戴いた本だ、ということになっていたのですが、いま思えば、これも・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  13. ・・・という、あやふやな装飾の観念を捨てたらよい。生きる事は、芸術でありません。自然も、芸術でありません。さらに極言すれば、小説も芸術でありません。小説を芸術として考えようとしたところに、小説の堕落が胚胎していたという説を耳にした事がありますが、・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  14. ・・・物を遣れば喜ぶ。装飾品が大好きである。それはこの女には似合わしい事である。さてそんならその贈ものばかりで、人の自由になるかと云うと、そうではない。好きな人にでなくては靡かない。そしてきのう貰った高価の装飾品をでも、その贈主がきょう金に困ると・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  15. ・・・そこは細長い部屋で、やはり食堂兼応接間のようなものであったが、B君のうちのが侘しいほど無装飾であったのと反対に、ここは何かしらゴタゴタとうるさいほど飾り立ててあった。 壁を見ると日本の錦絵が沢山貼りつけてある。いずれも明治年代に出来た俗・・・<寺田寅彦「異郷」青空文庫>
  16. ・・・     抽象映画 スウェーデンの一画家がはじめた抽象映画は、幾何学的形象の運動の連鎖であって「動く装飾」と言われている。これは聴覚に関する音楽から類推して視覚的音楽を作ろうという意図から起こったものであろうが、これはおそら・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  17. ・・・星巌が不忍池十詠の中霽雪を賦して「天公調二玉粉一。装飾小西湖。」と言っているが如きは其一例である。維新の後星巌の門人横山湖山が既に其姓を小野と改め近江の郷里より上京し、不忍池畔に一楼を構えて新に詩社を開いた。是明治五年壬申の夏である。湖山は・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  18. ・・・由来この種の雅致は或一派の愛国主義者をして断言せしむれば、日本人独特固有の趣味とまで解釈されている位で、室内装飾の一例を以てしても、床柱には必ず皮のついたままの天然木を用いたり花を活けるに切り放した青竹の筒を以てするなどは、なるほど Roc・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  19. ・・・洋書というものは唐本や和書よりも装飾的な背皮に学問と芸術の派出やかさを偲ばせるのが常であるのに、この部屋は余の眼を射る何物をも蔵していなかった。ただ大きな机があった。色の褪めた椅子が四脚あった。マッチと埃及煙草と灰皿があった。余は埃及煙草を・・・<夏目漱石「ケーベル先生」青空文庫>
  20. ・・・これは装飾のためとも見られるし、または袖口を括る用意とも受取れた。ただし先生には全く両様の意義を失った紐に過ぎなかった。先生が教場で興に乗じて自分の面白いと思う問題を講じ出すと、殆んどガウンも鼠の襯衣も忘れてしまう。果はわがいる所が教場であ・・・<夏目漱石「博士問題とマードック先生と余」青空文庫>
  21. ・・・家屋庭園の装飾はただちに我が形体の寒熱痛痒に感ずるに非ざれども、精神の風致を慰るの具にして、戸外の社会に交りてその社会の美を観るもまた、我が精神の情を慰めて愉快を覚えしむるの術なり。 現に今日の人間交際を見るに、いかなる人にても、交を求・・・<福沢諭吉「教育の目的」青空文庫>
  22. ・・・ただに方言のみならず、衣服、飲食の品類より、家屋・庭園・装飾・玩弄の物にいたるまでも、一時一世の流行にほかなるを得ず。流行のものを衣服し、流行のものを飲食し、流行の家屋におり、流行の物を弄ぶ。 この点より見れば、人はあたかも社会の奴隷に・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  23. ・・・Bibelots と云う名の附いている小さい装飾品に、硝子鐘が被せてある。物を書く卓の上には、貴重な文房具が置いてある。主人ピエエルが現代に始めて出来た精神的貴族社会の一員であると云うことは、この周囲を見て察せられる。あるいは精神的富豪社会・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  24. ・・・この櫃には木彫の装飾をなしあり。櫃の上に古風なる楽器数個あり。伊太利亜名家の画ける絵のほとんど真黒になりたるを掛けあり。壁の貼紙は明色、ほとんど白色にして隠起せる模様及金箔の装飾を施せり。主人クラウヂオ。(独窓の傍に座しおる。夕陽夕・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  25. ・・・其処には燈火が半ば明るく半ば暗く照して居って、周囲の装飾は美しそうに見える。王は棺の中に在って、顔は勿論、腹から足迄白い着物が着せてあるところがよく見える。王の目は静かにふさいでいる。王は今天国に上っている夢を見ているらしい。此画を見た時に・・・<正岡子規「死後」青空文庫>
  26. ・・・旗や電燈が、ひのきの枝ややどり木などと、上手に取り合せられて装飾され、まだ七八人の人が、せっせと明後日の仕度をして居りました。 私たちは教会の玄関に立って、ベルを押しました。 すぐ赭ら顔の白髪の元気のよさそうなおじいさんが、かなづち・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  27. ・・・ブルジョア恋愛論の空想性、偽瞞性で装飾しながら、ロマンティックなような形容詞で、かいていることといえば、肉体主義の文学の生理的註解のようなものです。これまでに科学的な性の知識がちっとも与えられていないのに、今日は十六歳の少女でも読む雑誌に、・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  28. ・・・ 宗達は能登の人、こまかい伝記はつまびらかでないが寛永年間に加賀侯に仕え、光琳によって大成された装飾的な画風を創めた画家である。と辞典に短かく書かれてある。 なるほど、小さい絵はがきに見るこの源氏物語図屏風にしろ、魅力をもって先ず私・・・<宮本百合子「あられ笹」青空文庫>
  29. ・・・棚の前には薄い緑色の幕を引かせたので、一種の装飾にはなったが、壁がこれまでの倍以上の厚さになったと同じわけだから、室内が余程暗くなって、それと同時に、一間が外より物音の聞えない、しんとした所になってしまった。小春の空が快く晴れて、誰も彼も出・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  30. ・・・あるいは全然装飾化された菜園である。そこに現われたのは写実によって美を生かそうとする意図ではなく、美しい色と線との諧和のために、自然の内からある色と線とを抽出しようとする注意深い選択の努力である。現実の風景を描いた画すらも、画家の直接の印象・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>