ぞう‐ちょう〔‐チヤウ〕【増長】例文一覧 18件

  1. ・・・ 勿論この得意な心もちは、煙管なり、それによって代表される百万石なりを、人に見せびらかすほど、増長慢な性質のものではなかったかも知れない。が、彼自身が見せびらかさないまでも、殿中の注意は、明かに、その煙管に集注されている観があった。そう・・・<芥川竜之介「煙管」青空文庫>
  2. ・・・おれ一人衆苦の大海に、没在していると考えるのは、仏弟子にも似合わぬ増長慢じゃ。『増長驕慢、尚非世俗白衣所宜。』艱難の多いのに誇る心も、やはり邪業には違いあるまい。その心さえ除いてしまえば、この粟散辺土の中にも、おれほどの苦を受けているものは・・・<芥川竜之介「俊寛」青空文庫>
  3. ・・・ 人間は増長します。――積雪のために汽車が留って難儀をすると言えば――旅籠は取らないで、すぐにお米さんの許へ、そうだ、行って行けなそうな事はない、が、しかし……と、そんな事を思って、早や壁も天井も雪の空のようになった停車場に、しばらく考・・・<泉鏡花「雪霊続記」青空文庫>
  4. ・・・小町や静じゃあるめえし、増長しやがるからだ。」 手の裏かえす無情さは、足も手もぐたりとした、烈日に裂けかかる氷のような練絹の、紫玉のふくよかな胸を、酒焼の胸に引掴み、毛脛に挟んで、「立たねえかい。」       十三・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  5. ・・・して校長に差し、「それも彼奴等の癖だからまア可えわ、辛棒出来んのは高山や長谷川の奴らの様子だ、オイ細川、彼等全然でだめだぞ、大津と同じことだぞ、生意気で猪小才で高慢な顔をして、小官吏になればああも増長されるものかと乃公も愛憎が尽きて了う・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  6. ・・・腕力は拙い極度、成るが早いは金力と申す条まず積ってもごろうじろわれ金をもって自由を買えば彼また金をもって自由を買いたいは理の当然されば男傾城と申すもござるなり見渡すところ知力の世界畢竟ごまかしはそれの増長したるなれば上手にも下手にも出所はあ・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  7. ・・・「賤民の増長傲慢、これで充分との節度を知らぬ、いやしき性よ、ああ、あの貌、ふためと見られぬ雨蛙。」一瞬、はっし! なかば喪心の童子の鼻柱めがけて、石、投ぜられて、そのとき、そもそも、かれの不幸のはじめ、おのれの花の高さ誇らむプライドのみにて・・・<太宰治「二十世紀旗手」青空文庫>
  8. ・・・ しかし一つの恐怖心が次第に増長する。それは不意に我身の上に授けられた、夢物語めいた幸福が、遠からず消え失せてしまって、跡には銀行のいてもいなくても好い小役人が残ると云うことである。少くも半年間は、いてもいなくても好いと云うことを、立派・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  9. ・・・これに反して偶然変異がそのままに保存され蓄積し増長する多くの場合には不規則な花形、「ひとで」形等になる。このほうが普通だとも考えられる。そうして、ある週期のものだけが特に助長されるような条件が加われば規則正しい放射像となるというふうに考えら・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  10. ・・・に対する自分の好奇心を急激な加速度で増長せしめるに至った経路はあるいは一部の読者に興味があるかもしれないし、また自分が本分を忘れて、他人の門戸をうかがうような不倫をあえてするに至った事の申し訳にもいくぶんはなるかもしれないから一つの懺悔話と・・・<寺田寅彦「比較言語学における統計的研究法の可能性について」青空文庫>
  11. ・・・これに反して電車や電話の設備があるにしても是非今日は向うまで歩いて行きたいという道楽心の増長する日も年に二度や三度は起らないとも限りません。好んで身体を使って疲労を求める。吾々が毎日やる散歩という贅沢も要するにこの活力消耗の部類に属する積極・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  12. ・・・自分の心に恐いと思うから自然幽霊だって増長して出たくならあね」と刃についた毛を人さし指と拇指で拭いながらまた源さんに話しかける。「全く神経だ」と源さんが山桜の煙を口から吹き出しながら賛成する。「神経って者は源さんどこにあるんだろう」・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  13. ・・・瞬きもせず余が黄色な面を打守りていかなる変化が余の眉目の間に現るるかを検査する役目を務める、御役目御苦労の至りだ、この二婆さんの呵責に逢てより以来、余が猜疑心はますます深くなり、余が継子根性は日に日に増長し、ついには明け放しの門戸を閉鎖して・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  14. ・・・しばらくして、「そんな気違を増長させるくらいなら、世の中に生れて来ない方がいい」と独り言のようにつけた。 村鍛冶の音は、会話が切れるたびに静かな里の端から端までかあんかあんと響く。「しきりにかんかんやるな。どうも、あの音は寒磬寺・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  15. ・・・より家庭の教訓に教えられ又世間一般の習慣に圧制せられて次第に萎縮し、男子の不品行を咎むるは嫉妬なり、嫉妬は婦人の慎しむべき悪徳なり、之を口に発し色に現わすも恥辱なりと信じて、却て他の狂乱を許して次第に増長せしむるが故なり。畢竟するに婦人が婚・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  16. ・・・妙に骨ばった、くされかたまったような足の十ならんだ指を見て居ると、この指と指とのはなれたすきから、昼はねて夜になって人間の弱身につけ込んで、その弱身をますます増長させて其の主人の体をはちの巣のようにさせる簾のような遊女の赤いメリンスの着物が・・・<宮本百合子「ピッチの様に」青空文庫>
  17. ・・・を買い求め参れとの事なるに、このたび渡来候品の中にて、第一の珍物はかの伽羅に有之、その木に本末あれば、本木の方が尤物中の尤物たること勿論なり、それを手に入れてこそ主命を果すに当るべけれ、伊達家の伊達を増長致させ、本木を譲り候ては、細川家の流・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書」青空文庫>
  18. ・・・を買求め参れとの事なるに、このたび渡来候品の中にて、第一の珍物はかの伽羅に有之、その木に本末あれば、本木の方が、尤物中の尤物たること勿論なり、それを手に入れてこそ主命を果すに当るべけれ、伊達家の伊達を増長致させ、本木を譲り候ては、細川家の流・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」青空文庫>