そう‐とう〔サウタウ〕【相当】例文一覧 31件

  1. ・・・ 半之丞は誰に聞いて見ても、極人の好い男だった上に腕も相当にあったと言うことです。けれども半之丞に関する話はどれも多少可笑しいところを見ると、あるいはあらゆる大男並に総身に智慧が廻り兼ねと言う趣があったのかも知れません。ちょっと本筋へは・・・<芥川竜之介「温泉だより」青空文庫>
  2. ・・・「まずこれなら相当の成績でございます。私もお頼まれがいがあったようなものかと思いますが、いかがな思召しでしょう」 矢部は肥っているだけに額に汗をにじませながら、高縁に腰を下ろすと疲れが急に出たような様子でこう言った。父にもその言葉に・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・御婦人、紳士方が、社会道徳の規律に因って、相当の御制裁を御満足にお加えを願う。それは甘んじて受けます。 いずれも命を致さねばなりますまい。 それは、しかし厭いません。 が、ただここに、あらゆる罪科、一切の制裁の中に、私が最も苦痛・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  4. ・・・ 何ほど恐怖絶望の念に懊悩しても、最後の覚悟は必ず相当の時機を待たねばならぬ。 豪雨は今日一日を降りとおして更に今夜も降りとおすものか、あるいはこの日暮頃にでも歇むものか、もしくは今にも歇むものか、一切判らないが、その降り止む時刻に・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  5. ・・・実業界に徳望高い某子爵は素七 小林城三 椿岳は晩年には世間離れした奇人で名を売ったが、若い時には相当に世間的野心があってただの町人では満足しなかった。油会所時代に水戸の支藩の廃家の株を買って小林城三と改名し、水戸家に金千両を・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6. ・・・そして又此れは独り能力のみに限らず時間的にも相当の際限は免れないのである。斯く思えば感覚の生活もやがて亡びて了うという事実も予想せずには居られない。 人間として生れて来た以上は、肉体に於ても、又精神に於ても各々其の経験を出来得る限り多く・・・<小川未明「絶望より生ずる文芸」青空文庫>
  7. ・・・それに、女の斜眼は面と向ってみると、相当ひどく、相手の眼を見ながら、物を言う癖のある私は、間誤つかざるを得なかった。 暫らく取りとめない雑談をした末、私は機を求めて、雨戸のことを申し出た。だしぬけの、奇妙な申し出だった故、二人は、いえ、・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  8. ・・・がまさかそうとは考えなかったもんだから、相当の人格を有して居られる方だろうと信じて、これだけ緩慢に貴方の云いなりになって延期もして来たような訳ですからな、この上は一歩も仮借する段ではありません。如何なる処分を受けても苦しくないと云う貴方の証・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  9.  えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。焦躁と言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔があるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。これはちょっといけなかった。結果した肺尖カタ・・・<梶井基次郎「檸檬」青空文庫>
  10. ・・・あその条規も格別に、これとむつかしいことはなく、ただその閣令を出す必要は、その法令を規定したすべての条件を具えたものには、早速払い下げを許可するが、そうでないものをば一斉に書面を却下することとし、また相当の条件を具えた書面が幾通もあるときは・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  11. ・・・ 三人とも愉快に談じ酒も相当に利いて十一時に及ぶと、朝田、神崎は自室に引上げた、大友は頭を冷す積りで外に出た。月は中天に昇っている。恰度前年お正と共に散歩した晩と同じである。然し前年の場所へ行くは却って思出の種と避けて渓の上へのぼりなが・・・<国木田独歩「恋を恋する人」青空文庫>
  12. ・・・古いが、もとは相当にものが良かったらしい外套の下から、白く洗い晒された彼女のスカートがちらちら見えていた。「お前は、人をよせつけないから、ザンパンが有ったってやらないよ。」「あら、そう。」 彼女は響きのいい、すき通るような声を出・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  13. ・・・この人も相当に釣に苦労していますね、切れる処を決めて置きたいからそういうことをするので、岡釣じゃなおのことです、何処でも構わないでぶっ込むのですから、ぶち込んだ処にかかりがあれば引かかってしまう。そこで竿をいたわって、しかも早く埒の明くよう・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  14. ・・・山崎のお母さんというのは相当教育のある人で、息子たちのしている事を、気持からばかりでなしに、ちアんとした筋道を通しても知っていた。「息子が正しい理窟から死んでも自分の仕事をやめないと分ったら、親がその仕事の邪魔をするのが間違で――どうしても・・・<小林多喜二「母たち」青空文庫>
  15. ・・・まず、最初の段階は、微積分学の発見時代に相当する。それからがギリシャ伝来の数学に対する広い意味の近代的数学であります。こうして新しい領分が開けたわけですから、その開けた直後は高まるというよりも寧ろ広まる時代、拡張の時代です。それが十八世紀の・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  16. ・・・なんだか面倒になりそうだから、おれは十五に相当する金をやった。部屋に這入って見ると、机の上に鹿の角や花束が載っていて、その傍に脱して置いて出た古襟があった。窓を開けて、襟を外へ投げた。それから着物を脱いで横になった。しかし今一つ例の七ルウブ・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  17. ・・・彼自身の言葉によるとこの職務にも相当な興味をもって働いていたようである。 一九〇五年になって彼は永い間の研究の結果を発表し始めた。頭の中にいっぱいにたまっていたものが大河の堤を決したような勢いで溢れ出した。『物理年鑑』に出した論文だけで・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  18. ・・・もちろん年齢にも相当の距離があったとおりに、感情も兄というよりか父といった方が適切なほど、私はこの兄にとって我儘な一箇の驕慢児であることを許されていた。そして母の生家を継ぐのが適当と認められていた私は、どうかすると、兄の後を継ぐべき運命をも・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  19. ・・・ 再びいう日本の十年間は西洋の一世紀にも相当する。三十間堀の河岸通には昔の船宿が二、三軒残っている。自分はそれらの家の広い店先の障子を見ると、母がまだ娘であった時分この辺から猿若町の芝居見物に行くには、猪牙船に重詰の食事まで用意して・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  20. ・・・瞽女でも相当の年頃になれば人に誉められたいのが山々で見えぬ目に口紅もさせば白粉も塗る。お石は其時世を越えて散々な目に逢って来たのである。幾度か相逢ううちにお石も太十の情に絆された。そうでなくとも稀に逢えば誰でも慇懃な語を交換する。お石に逢う・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  21. ・・・夫人がこの家を撰んだのは大に気に入ったものかほかに相当なのがなくてやむをえなんだのか、いずれにもせよこの煙突のごとく四角な家は年に三百五十円の家賃をもってこの新世帯の夫婦を迎えたのである。カーライルはこのクロムウェルのごときフレデリック大王・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  22. ・・・でさへも、相当に成育した一般の文化常識と、特に敏感な詩人的感覚とを所有しない読者にとつては、決して理解し易い書物ではない。 ニイチェの理解に於ける困難さは、彼の初期に於ける少数の著書論文を除いて、その後の者が多くアフォリズムの形式で書か・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  23. ・・・構いませんわ、あの人は気象の確かりした人ですから、きっとそれ相当な働きをしますわ。 あの人は優しい、いい人でしたわ。そして確かりした男らしい人でしたわ。未だ若うございました。二十六になった許りでした。あの人はどんなに私を可愛がって呉れた・・・<葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」青空文庫>
  24. ・・・ば、その教員の輩はもとより無官の人民なれども、いずれも皆少小の時より学に志して、自身を研き他を教育するの技倆ある人物にして、日本国中、学問の社会においては、長者先進と称すべき者なるがゆえに、その人物に相当すべき位階勲章を賜わるは事の当然にし・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  25. ・・・この相違を来すにゃ何か相当の原因が無くばなるまい。 私は二十世紀の文明は皆な無意義になるんじゃないかと思う。何と云っても今はまだレフレクションの影響を免がれていない。十九世紀で暴威を逞くした思索の奴隷になっていたんで、それを弥々脱却する・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  26. ・・・著作の価値に対する相当の報酬なきは蕪村のために悲しむべきに似たりといえども、無学無識の徒に知られざりしはむしろ蕪村の喜びしところなるべきか。その放縦不羈世俗の外に卓立せしところを見るに、蕪村また性行において尊尚すべきものあり。しかして世はこ・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  27. ・・・氷相当官私はも一度こころの中でつぶやきました。 全く私のてのひらは水の中で青じろく燐光を出していました。 あたりが俄にきいんとなり、(風だよ、草の穂こんな語が私の頭の中で鳴りました。まっくらでした。まっくらで少しうす赤かったので・・・<宮沢賢治「インドラの網」青空文庫>
  28. ・・・信州の宿屋の一こま、産婆のいかがわしい生活の一こま、各部は相当のところまで深くつかまれているけれども、場面から場面への移りを、内部からずーと押し動かしてゆく流れの力と幅とが足りないため、移ったときの或るぎこちなさが印象されるのである。 ・・・<宮本百合子「「愛怨峡」における映画的表現の問題」青空文庫>
  29. ・・・某が相果て候今日は、万治元戊戌年十二月二日に候えば、さる正保二乙酉十二月二日に御逝去遊ばされ候松向寺殿の十三回忌に相当致しおり候事に候。 某が相果候仔細は、子孫にも承知致させたく候えば、概略左に書残し候。 最早三十余年の昔に相成り候・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」青空文庫>
  30. ・・・「科学上のことはよく僕には分らなくて、残念だが、今は秘密の奪い合いだから、君も相当に危いですね、気をつけなくちゃ。」「そうです。先日も優秀な技師がピストルでやられました。それは優秀な人でしたがね。一度横須賀に来てみて下さい。僕らの工・・・<横光利一「微笑」青空文庫>