そう‐ねん〔サウ‐〕【想念】例文一覧 16件

  1. ・・・佐伯=作者の想念が「私」のために邪魔されたといっておられますが、計画的に邪魔をして行っているわけです。 次に、表現を色彩へ持って行くことが誇張だとは、どういうことでしょうか。「眼の前が真っ白になる」と。「青ざめた顔」はむしろ月並みです。・・・<織田作之助「吉岡芳兼様へ」青空文庫>
  2. ・・・――暗のなかに仄白く浮かんだ家の額は、そうした彼の視野のなかで、消えてゆき現われて来、喬は心の裡に定かならぬ想念のまた過ぎてゆくのを感じた。蟋蟀が鳴いていた。そのあたりから――と思われた――微かな植物の朽ちてゆく匂いが漂って来た。「君の・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  3. ・・・ バサバサと凍った雪を踏んで、月光のなかを、彼は美しい想念に涵りながら歩いた。その晩行一は細君にロシアの短篇作家の書いた話をしてやった。――「乗せてあげよう」 少年が少女を橇に誘う。二人は汗を出して長い傾斜を牽いてあがった。そこ・・・<梶井基次郎「雪後」青空文庫>
  4. ・・・そこで歳こそ往かないが源三もなんとなく心淋しいような感じがするので、川の側の岩の上にしばし休んで、どうとうと流れる水のありさまを見ながら、名づけようを知らぬ一種の想念に心を満たしていた。そうするといずくからともなく人声が聞えるようなので、も・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  5. ・・・自分のものでも無い或る卑しい想念を、自分の生れつきの本性の如く誤って思い込み、悶々している気弱い人が、ずいぶん多い様子であります。卑しい願望が、ちらと胸に浮ぶことは、誰にだってあります。時々刻々、美醜さまざまの想念が、胸に浮んでは消え、浮ん・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  6. ・・・私は小説というものを間違って考えているのであろうか、と思案にくれて、いや、そうで無いと打ち消してみても、さて、自分に自信をつける特筆大書の想念が浮ばぬ。確乎たる言葉が無いのだ。のどまで出かかっているような気がしながら、なんだか、わからぬ。私・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  7. ・・・という想念に就いてであった。故郷の新聞社から、郷土出身の芸術家として、招待を受けるということは、これは、衣錦還郷の一種なのではあるまいか。ずいぶん、名誉なことなのでは無いか。名士、というわけのことになるのかも知れぬ、と思えば卒然、狼狽せずに・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  8. ・・・以上の私の言葉にからまる、或る一すじの想念に心うごかされたる者、かならず、「終日。」を読むべし。私、かれの本の出版を待つこと、切。     フィリップの骨格に就いて 淀野隆三、かれの訳したる、フィリップ短篇集、「小さき町にて・・・<太宰治「碧眼托鉢」青空文庫>
  9. ・・・ 虚栄の子のそのような想念をうつらうつらまとめてみているうちに、私は素晴らしい仲間を見つけた。アントン・ファン・ダイク。彼が二十三歳の折に描いた自画像である。アサヒグラフ所載のものであって、児島喜久雄というひとの解説がついている。「背景・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  10. ・・・一個の想念じゃないか。今の文学者連中に聞き度いのは、よく人生に触れなきゃ不可と云う、其人生だ。作物を読んで、こりゃ何となく身に浸みるとか、こりゃ何となく急所に当らぬとかの区別はある。併しそれが直ちに人生に触れる触れぬの標準となるんなら、大変・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  11. ・・・「今日においては『私』を決定する想念は個人主義的要素をいささかも含んでいないということが一つの特質として認められねばならぬ。」「作者の生活態度、人生観が作中の『私』に変貌しているかどうかということなぞということは結局どうでもいいことなのであ・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  12. ・・・この愛についても例外的な境地に生きる女詩人が、今既にある峯に立っているその境地のなかで、そのような想念と情緒とをどのように展開し、すこやかに渾然と成熟させてゆくか。愛という字をつかわずに、人々の心に愛の火を点じてゆく芸術の奥義が、どんなにし・・・<宮本百合子「『静かなる愛』と『諸国の天女』」青空文庫>
  13. ・・・あくまで個人の性格や事情と公的なものと観念化されていた一つの想念とを対立させて、そこで敗れた人間性や良心の課題の範囲で扱われたことも、日本の知識人の歴史の性格を雄弁に語っていることであった。しかも、当時一般の心理は、このような歴史的文学の題・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  14. ・・・極度の静謐、すっかり境界がぼやけ、あらゆる固執を失った心と対象との間に、自ら湧き起る感興、想念と云うもので先ずその第一歩を踏み出すのが創作の最も自然な心の態度らしく感ぜられ始めたのである。何たる沈黙、沈黙を聞取ろうと耳傾ける沈黙――人が、己・・・<宮本百合子「透き徹る秋」青空文庫>
  15. ・・・ 何かの婦人雑誌に彼が最近かいたものの中で、文学を日夜想念する作家として誰彼のことを云っていたが、文学の想念ということは、窮局には、たゆまず自分を破いて行こうとする情熱、それを表現し文学化してゆく文学上の諸要件での一致点の発見のことでは・・・<宮本百合子「地の塩文学の塩」青空文庫>
  16. ・・・これらの選択や利用が、すべて画家のある想念に――主としていわゆる詩的な美しい場面を根拠とするある幻想に――支配せられていることは、何人も否み得ないであろう。日本画のこのような特質に注意を集めて、それを「浪漫的」と呼んでも、必ずしも不都合はな・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>