そう‐めい【×聡明】例文一覧 29件

  1.  宇野浩二は聡明の人である。同時に又多感の人である。尤も本来の喜劇的精神は人を欺くことがあるかも知れない。が、己を欺くことは極めて稀にしかない人である。 のみならず、又宇野浩二は喜劇的精神を発揮しないにもしろ、あらゆる多・・・<芥川竜之介「格さんと食慾」青空文庫>
  2. ・・・そうかと云って、世間一般の平凡な眼とも違う。聡明な、それでいてやさしみのある、始終何かに微笑を送っているような、朗然とした眼である。本間さんは黙って相手と向い合いながら、この眼と向うの言動との間にある、不思議な矛盾を感ぜずにはいられなかった・・・<芥川竜之介「西郷隆盛」青空文庫>
  3. ・・・第一に治修は聡明の主である。聡明の主だけに何ごとによらず、家来任せということをしない。みずからある判断を下し、みずからその実行を命じないうちは心を安んじないと云う風である。治修はある時二人の鷹匠にそれぞれみずから賞罰を与えた。これは治修の事・・・<芥川竜之介「三右衛門の罪」青空文庫>
  4. ・・・そう云う愛好者は十中八九、聡明なる貴族か富豪かである。   好悪 わたしは古い酒を愛するように、古い快楽説を愛するものである。我我の行為を決するものは善でもなければ悪でもない。唯我我の好悪である。或は我我の快不快である。そう・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  5. ・・・人生に対して最も聡明な誠実な態度をとったからである。雲のごとき智者と賢者と聖者と神人とを産み出した歴史のまっただ中に、従容として動くことなきハムレットを仰ぐ時、人生の崇高と悲壮とは、深く胸にしみ渡るではないか。昔キリストは姦淫を犯せる少女を・・・<有島武郎「二つの道」青空文庫>
  6. ・・・根柢ある学問はなかったが、不断の新傾向の聡明なる理解者であった。が、この学問という点が緑雨の弱点であって、新知識を振廻すものがあると痛く癪に触るらしく、独逸語や拉丁語を知っていたって端唄の文句は解るまいと空嘯いて、「君、和田平の鰻を食った事・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  7. ・・・真に少数なる読書階級の一角が政治論に触るゝ外は一般社会は総ての思想と全く没交渉であって、学術文芸の如きは遊戯としての外は所謂聡明なる識者にすら顧みられなかった。 二十五年前には文学士春の屋朧の名が重きをなしていても、世間は驚異の目をって・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・二葉亭は近代思想の聡明な理解者であったが、心の底から近代人になれない旧人であったのだ。三 二葉亭は長生きしても終生煩悶の人 それなら二葉亭は旧人として小説を書くに方っても天下国家を揮廻しそうなもんだが、芸術となるとそうでない・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  9. ・・・ されば、聡明な母親は、子供のために、自からの向上を怠ってはならぬ。言うこと、なすことについて、深く反省する必要があります。たとえば、その一例として挙げれば、子供が友達と遊んでいたとする、その子供の様子が汚いからといって、また、その子供・・・<小川未明「お母さんは僕達の太陽」青空文庫>
  10. ・・・それ故に、僅かに、神の与えた聡明と歯牙に頼るより他は、何等の武器をも有しない、すべての動物に対して、人間の横暴は極るのであります。 斯の如きことを恥じざるに至らしめた、利益を中心とする文化から解放させなければならぬ。昔の人間は、常に天を・・・<小川未明「天を怖れよ」青空文庫>
  11. ・・・新しさ、聡明さとはそんなものではないはずだ。新しさとは今の日本の時代ではむしろ国ぶりに復帰することだ。恋から恋にうつるハリウッドのスターは賢くはない。むしろ愚かだ。何故なら恋の色彩は多様でもいのちと粋とは逸してしまうからだ。真に恋愛を味わう・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  12. ・・・ところが書画骨董に心を寄せたり手を出したりする者の大多数はこの連中で、仕方がないからこの連中の内で聡明でもあり善良でもある輩は、高級骨董の素晴らしい物に手を掛けたくない事はないが、それは雲に梯の及ばぬ恋路みたようなものだから、やはり自分らの・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  13. ・・・全幅を目にして見ると、先刻からこの少年に対して自分の抱いていた感想は全く誤っていて、この少年もまた他の同じ位の年齢の児童と同様に真率で温和で少年らしい愛らしい無邪気な感情の所有者であり、そしてその上に聡明さのあることが感受された。その眼は清・・・<幸田露伴「蘆声」青空文庫>
  14. ・・・もしみずから僣して聡明ということを許されるなら、聡明なからである。仮に現在普通の道徳を私が何らかの点で踏み破るとする。私にはその後のことが気づかわれてならない。それが有形無形の自分の存在に非常の危険を持ち来たす。あるいは百年千年の後には、そ・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  15. ・・・日常坐臥は十分、聡明に用心深く為すべきである。 君の聞き上手に乗せられて、うっかり大事をもらしてしまった。これは、いけない。多少、不愉快である。 君に聞くが、サンボルでなければものを語れない人間の、愛情の細かさを、君、わかるかね。・・・<太宰治「一日の労苦」青空文庫>
  16.  この新聞の編輯者は、私の小説が、いつも失敗作ばかりで伸び切っていないのを聡明にも見てとったのに違いない。そうして、この、いじけた、流行しない悪作家に同情を寄せ、「文学の敵、と言ったら大袈裟だが、最近の文学に就いて、それを毒・・・<太宰治「鬱屈禍」青空文庫>
  17. ・・・私は、自分がひどく貧乏な大工の家に生れ、気の弱い、小鳥の好きな父と、痩せて色の黒い、聡明な継母との間で、くるしんで育ち、とうとう父母にそむいて故郷から離れ、この東京に出て来て、それから二十年間お話にも何もならぬ程の困苦に喘ぎ続けて来たという・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  18. ・・・私ひとりが過去に於いて、ぶていさいな事を行い、いまもなお十分に聡明ではなく、悪評高く、その日暮しの貧乏な文士であるという事実のために、すべてがこのように気まずくなるのだ。「景色のいいところですね。」妻は窓外の津軽平野を眺めながら言った。・・・<太宰治「故郷」青空文庫>
  19. ・・・―フランソワ・ヴィヨン       第一回 一つの作品を、ひどく恥ずかしく思いながらも、この世の中に生きてゆく義務として、雑誌社に送ってしまった後の、作家の苦悶に就いては、聡明な諸君にも、あまり、おわかりになって・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  20. ・・・何事も、聡明に越したことはない。けれども私は、よほど頭がわるく、それにまた身のほど知らぬ自惚れもあり、人の制止も聞かばこそ、なに大丈夫、大丈夫だと匹夫の勇、泳げもせぬのに深潭に飛び込み、たちまち、あっぷあっぷ、眼もあてられぬ有様であった。そ・・・<太宰治「困惑の弁」青空文庫>
  21. ・・・下手におていさいをつくろって、やせ我慢して愚図々々がんばって居るよりは、どうせ失態を見られたのだ、一刻も早く脱走するのが、かえって聡明でもあり、素直だとも思われた。 かなわない気持であった。もう、これで自分も、申しぶんの無い醜態の男にな・・・<太宰治「八十八夜」青空文庫>
  22. ・・・歴史的は、流石に聡明な笑顔であった。「この部屋へ来る足音じゃないよ。まあ、いいからそんな見っともない真似はよしなさい。ゆっくり話そうじゃないか。」自分でも、きちんと坐り直してそう言った。痩せて小柄な男であったが、鉄縁の眼鏡の底の大きい眼や、・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  23. ・・・ただ記述があまりに簡略に過ぎてわかりにくい点が多いことと思われるが、そういう点についてはどうか聡明なる読者の推読をわずらわしたい。<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  24. ・・・おそらく聡明な彼の目には、なお飽き足らない点、補充を要する点がいくらもありはしないかという事は浅学な後輩のわれわれにも想像されない事はない。 自己批評の鋭いこの人自身に不満足と感ぜらるる点があると仮定する。そしてそれらの点までもなんらの・・・<寺田寅彦「相対性原理側面観」青空文庫>
  25. ・・・皇后陛下は実に聡明恐れ入った御方である。「浅しとてせけばあふるゝ川水の心や民の心なるらむ」。陛下の御歌は実に為政者の金誡である。「浅しとてせけばあふるゝ」せけばあふるる、実にその通りである。もし当局者が無暗に堰かなかったならば、数年前の日比・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  26. ・・・しかし聡明な、敏捷な思索家でいらっしゃるあなたには、わたくしの思っている事は、造做もなくお分りになりましょう。 あなたがまだ高等学校をお出になったばかりの青年で、わたくしの所へおいでになったころ、わたくしはその日の午後を楽しみにいたして・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  27. ・・・憎いと思いながら、聡明な忠利はなぜ弥一右衛門がそうなったかと回想してみて、それは自分がしむけたのだということに気がついた。そして自分の反対する癖を改めようと思っていながら、月がかさなり年がかさなるにしたがって、それが次第に改めにくくなった。・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  28. ・・・蔀君は下町の若旦那の中で、最も聡明な一人であったと云って好かろう。 この蔀君が僕の内へ来たのは、川開きの前日の午過ぎであった。あすの川開きに、両国を跡に見て、川上へ上って、寺島で百物語の催しをしようと云うのだが、行って見ぬかと云う。主人・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  29. ・・・私よりも聡明な人は私よりももっとよくこの事実を呑み込んでいると思います。自分の小ささを知らない青年はとても大きく成長する事はできますまい。 しかしこの事実の認識はただ「愚痴」という形にのみ現わるべきものでないと思います。愚痴をこぼすのは・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>