そう‐りょう〔‐リヤウ〕【総領/×惣領】例文一覧 25件

  1. ・・・「御側役平田喜太夫殿の総領、多門と申すものでございました。」「その試合に数馬は負けたのじゃな?」「さようでございまする。多門は小手を一本に面を二本とりました。数馬は一本もとらずにしまいました。つまり三本勝負の上には見苦しい負けか・・・<芥川竜之介「三右衛門の罪」青空文庫>
  2. ・・・ようだけれども、これは女房が大勢の娘の中に一番末子である所為で、それ、黒のけんちゅうの羽織を着て、小さな髷に鼈甲の耳こじりをちょこんと極めて、手首に輪数珠を掛けた五十格好の婆が背後向に坐ったのが、その総領の娘である。 不沙汰見舞に来てい・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  3. ・・・三人の兄弟で、仁右衛門と申しますあの鼻は、一番の惣領、二番目があとを取ります筈の処、これは厭じゃと家出をして坊さんになりました。 そこで三蔵と申しまする、末が家へ坐りましたが、街道一の家繁昌、どういたして早やただの三蔵じゃあございません・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  4. ・・・ お町が家は、松尾の東はずれでな、往来から岡の方へ余程経上って、小高い所にあるから一寸見ても涼しそうな家さ、おれがいくとお町は二つの小牛を庭の柿の木の蔭へ繋いで、十になる惣領を相手に、腰巻一つになって小牛を洗ってる、刈立ての青草を籠に一・・・<伊藤左千夫「姪子」青空文庫>
  5. ・・・その分家のやはり内田という農家に三人の男の子が生れた。総領は児供の時から胆略があって、草深い田舎で田の草を取って老朽ちる器でなかったから、これも早くから一癖あった季の弟の米三郎と二人して江戸へ乗出し、小石川は伝通院前の伊勢長といえばその頃の・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6. ・・・相模屋は江戸時代から四代も続いた古い暖簾で五六人の職人を使っていたが、末娘の安子が生れた頃は、そろそろひっそくしかけていた。総領の新太郎は放蕩者で、家の職は手伝わず、十五の歳から遊び廻ったが、二十一の時兵隊にとられて二年後に帰って来ると、す・・・<織田作之助「妖婦」青空文庫>
  7. ・・・妻の祖母と総領の嫁さんとは私たちの窓の外へ来て悔みを言った。次ぎのK駅では五里ばかし支線を乗ってくる伯母をプラットホームに捜したが、見えなかった。次ぎが弘前であった。 弟の細君の実家――といっても私の家の分家に当るのだが――お母さん、妹・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  8. ・・・この弟夫婦の処に、昨年の秋から、彼の総領の七つになるのが引取られているのであった。 惣治はこれまでとてもさんざん兄のためには傷められてきているのだが、さすがに三十面をしたみすぼらしい兄の姿を見ては、卒気ない態度も取れなかった。彼は兄に、・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  9. ・・・ さすがに永いヤケな生活の間にも、愛着の種となっていた彼の惣領も、久しぶりで会ってみては、かねがね想像していたようにのんびりと、都会風に色も白く、艶々した風ではなかった。いかにも永い冬と戦ってきたというような萎縮けた、粗硬な表情をしてい・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  10. ・・・お爺さんは一代のうちに蔵をいくつも建てたような手堅い商人であったが、総領の子息にはいちばん重きを置いたと見えて、長いことかかって自分で経営した網問屋から、店の品物から、取引先の得意までつけてそっくり子息にくれた。ところが子息は、お爺さんから・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  11. ・・・記者というものは柄が悪い、と世間から言われているようですけれども、大谷さんにくらべると、どうしてどうして、正直であっさりして、大谷さんが男爵の御次男なら、記者たちのほうが、公爵の御総領くらいの値打があります。大谷さんは、終戦後は一段と酒量も・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  12. ・・・五年も前の事ですから、記憶もはっきり致しませんが、なんでも、大きい家の総領で、人物も、しっかりしているとやら聞きました。父のお気に入りらしく、父も母も、それは熱心に、支持していました。お写真は、拝見しなかった、と思います。こんな事はどうでも・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  13. ・・・兄さんのごはんとは、どんな事だか、私が自分でたべるごはんをたべないでその犬の子に与えて養うべきだという意味だったのでしょうか、それとも、私の家でたべているごはんは、全部総領の私のものなのだから、弟などには犬の子を養う資格が無いという意味だっ・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  14. ・・・げんざい、奥田家のご総領に向って、そんなおそろしい事を言うなんて、まるで、鬼です。 鬼は、ひどい。(急鬼ですとも。鬼以上かも知れない。あなたには、あの人の真のおそろしさが、まだわかっていらっしゃらないのです。お酒を飲むと、もう、まる・・・<太宰治「春の枯葉」青空文庫>
  15. ・・・千駄谷の田畝の西の隅で、樫の木で取り囲んだ奥の大きな家、その総領娘であることをよく知っている。眉の美しい、色の白い頬の豊かな、笑う時言うに言われぬ表情をその眉と眼との間にあらわす娘だ。 「もうどうしても二十二、三、学校に通っているのでは・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  16. ・・・ 成長して他人の家へ行くものは必ずしも女子に限らず、男子も女子と同様、総領以下の次三男は養子として他家に行くの例なり。人間世界に男女同数とあれば、其成長して他人の家に行く者の数も正しく同数と見て可なり。或は男子は分家して一戸の主・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  17. ・・・ 主婦は、気軽に、お君の身のきまったよろこびだの、総領の達も、とうとう今年は学校が仕舞いになって後だてが出来て良いなどと栄蔵を満足させる事ばかりを話した。 大層この頃は時候が悪い様だ、お節はどうして居ると云われた時に、漸く栄蔵はお君・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  18. ・・・父は総領娘のために子供用のヴァイオリンと大人用のヴァイオリンを買って来た。ハンドレッド・ベスト・ホームソングスというような厚い四角い譜ももって来た。ニッケルの大きい朝顔のラッパがついた蓄音器も木箱から出て来た。柿の白い花が雨の中に浮いていた・・・<宮本百合子「きのうときょう」青空文庫>
  19. ・・・ そういう熱っぽい空気の裡で、早熟な総領娘のうける刺戟は実に複雑であった。性格のひどく異った父と母との間には、夫婦としての愛着が純一であればあるほど、むきな衝突が頻々とあって、今思えばその原因はいろいろ伝統的な親族間の紛糾だの、姑とのい・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  20. ・・・ 一番総領が十三になる孝ちゃんと云う男の子で次が六つか七つの女の子、あとに同じ様な男だか女だか分らない小さいのが二人居るので、随分と朝晩はそうぞうしい。 上の子が、恐ろしい調子っぱずれな声を張りあげて唱歌らしいものを歌って居ると、わ・・・<宮本百合子「二十三番地」青空文庫>
  21. ・・・しかし葭江と呼ばれた総領娘である母の娘盛りの頃は、その父が官吏として相当な地位にいたために、おやつには焼きいもをたべながら、華族女学校へは向島から俥で通わせられるという風な生活であった。嫁いで来た中條も貧乏な米沢の士族で、ここは大姑、舅姑、・・・<宮本百合子「母」青空文庫>
  22. ・・・ いかにも南フランスの農民出らしい頑丈な、陽気な、そして幾らかホラ吹きな父ベルナールと、生粋のパリッ子で実際的な活動家で情がふかいと同時に小言も多い若い母との間に、三人の子があったが、その総領として「よく太った、下膨れの顔の、冬になると・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  23.  母かたの祖母も父かたの祖母も長命な人たちであった。いずれも九十歳近くまで存生であったから、総領の孫娘である私は二人のおばあさんから、よく様々の昔話をきいた。母方の祖父も父方の祖父も、私が三つぐらいのとき既に没して、いずれも・・・<宮本百合子「明治のランプ」青空文庫>
  24. ・・・とくに、総領の息子、あるいは家督をとる一人の娘というような場合、これらの誕生の不幸な偶然にめぐり合った人々は、今もって家のために、親を養い、その満足のために、結婚がとりきめられ、そこでは家の格式だの村々での習慣だの親類の絆だのというものが、・・・<宮本百合子「若き世代への恋愛論」青空文庫>
  25. ・・・ 若い頃の母は小さい子供らを腰のまわりにつけて沢山の洗濯物もしたし、台所でも働いたし、庭掃除もしたし、私の小さい頃の日々の思い出の中には、いつも総領娘である五ツ六ツの私をおだてては、自分の助手にして働いていた生々とした美しい母の面影があ・・・<宮本百合子「わが母をおもう」青空文庫>