そく‐ざ【即座】例文一覧 30件

  1. ・・・赤木は即座に妙な句ばかりつづけさまに諳誦した。しかし僕は赤木のように、うまいとも何とも思わなかった。正直に又「つまらんね」とも云った。すると何ごとにもムキになる赤木は「君には俳句はわからん」と忽ち僕を撲滅した。 丁度やはりその前後にちょ・・・<芥川竜之介「飯田蛇笏」青空文庫>
  2. ・・・それがまた幸いと、即座に話がまとまって、表向きの仲人を拵えるが早いか、その秋の中に婚礼も滞りなくすんでしまったのです。ですから夫婦仲の好かった事は、元より云うまでもないでしょうが、殊に私が可笑しいと同時に妬ましいような気がしたのは、あれほど・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  3. ・・・先生は書の幅を見ると、独り語のように「旭窓だね」と云った。落款はなるほど旭窓外史だった。自分は先生にこう云った。「旭窓は淡窓の孫でしょう。淡窓の子は何と云いましたかしら?」先生は即座に「夢窓だろう」と答えた。 ――すると急に目がさめた。・・・<芥川竜之介「子供の病気」青空文庫>
  4. ・・・清八はこの御意をも恐れず、御鷹の獲物はかかり次第、圜を揚げねばなりませぬと、なおも重玄を刺さんとせし所へ、上様にはたちまち震怒し給い、筒を持てと御意あるや否や、日頃御鍛錬の御手銃にて、即座に清八を射殺し給う。」 第二に治修は三右衛門へ、・・・<芥川竜之介「三右衛門の罪」青空文庫>
  5. ・・・三郎治も後難を恐れたと見えて、即座に彼を浦上村の代官所へ引渡した。 彼は捕手の役人に囲まれて、長崎の牢屋へ送られた時も、さらに悪びれる気色を示さなかった。いや、伝説によれば、愚物の吉助の顔が、その時はまるで天上の光に遍照されたかと思うほ・・・<芥川竜之介「じゅりあの・吉助」青空文庫>
  6. ・・・はい、麻畑と謂ってやりゃ、即座に捕まえられて、吾も、はあ、夜の目も合わさねえで、お前様を見張るにも及ばずかい、御褒美も貰えるだ。けンどもが、何も旦那様あ、訴人をしろという、いいつけはしなさらねえだから、吾知らねえで、押通しやさ。そンかわりに・・・<泉鏡花「琵琶伝」青空文庫>
  7. ・・・民さんを思うために神の怒りに触れて即座に打殺さるる様なことがあるとても僕には民さんを思わずに居られない。年をとっての後の考えから言えば、あアもしたらこうもしたらと思わぬこともなかったけれど、当時の若い同志の思慮には何らの工夫も無かったのであ・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  8. ・・・僕の追窮するのは即座に効験ある注射液だ。酒のごとく、アブサントのごとく、そのにおいの強い間が最もききめがある。そして、それが自然に圧迫して来るのが僕らの恋だ、あこがれだと。 こういうことを考えていると、いつの間にかあがり口をおりていた。・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  9. ・・・元治年中、水戸の天狗党がいよいよ旗上げしようとした時、八兵衛を後楽園に呼んで小判五万両の賦金を命ずると、小判五万両の才覚は難かしいが二分金なら三万両を御用立て申しましょうと答えて、即座に二分金の耳を揃えて三万両を出したそうだ。御一新の御東幸・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  10. ・・・新聞社にいたころから時々自転車の上で弱い咳をしていたが、あれからもう半年、右肺尖カタル、左肺浸潤と医者が即座にきめてしまったほど、体をこわしていたのだった。ガレーヂの二階で低い天井を睨んで寝ていたが、肺と知って雇主も困り、「家があるんや・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  11. ・・・それをそんな風に金貸したろかと言いふらし、また、頼まれると、めったにいやとはいわず、即座によっしゃと安請合いするのは、たぶん底抜けのお人善しだったせいもあるだろうが、一つには、至極のんきなたちで、たやすく金策できるように思い込んでしまうから・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  12. ・・・えらい商売を始めたものやと思っているうちに、酒屋への支払いなども滞り勝ちになり、結局、やめるに若かずと、その旨柳吉に言うと、柳吉は即座に同意した。「この店譲ります」と貼出ししたまま、陰気臭くずっと店を閉めたきりだった。柳吉は浄瑠璃の・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  13. ・・・ 坂田は即座に応じ切れなかった。夕方から立って、十時を過ぎたいままで、客はたった三人である。見料一人三十銭、三人分で……と細かく計算するのも浅ましいが、合計九十銭の現金では大晦日は越せない、と思えば、何が降ってもそこを動かない覚悟だった・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  14. ・・・こういう場合、嫌疑が、すぐ自分にかゝって来ることを彼は即座に、ピリッと感じた。「おかしなことになったぞ。」彼は云った。「この札は、栗島という一等看護卒が出したやつなんだ。俺れゃちゃんと覚えとる。五円札を出したんは、あいつだけなんだから、・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  15. ・・・ 労働組合に居ったというので二等兵からちっとも昇級しない江原は即座にそれを否定した。「でも、大砲や、弾薬を供給してるんじゃないんか?」「それゃ、全然作りことだ。」「そうかしら?」 大興駅附近の丘陵や、塹壕には砲弾に見舞わ・・・<黒島伝治「チチハルまで」青空文庫>
  16. ・・・ そして、即座にピシアスの罪を許してやりました。こんな立派な人を殺すことは、いくらこの暴君にだって出来るはずはありません。ディオニシアスは、それから改めて二人を自分のそばへよびました。 彼は、これまでかつて人を信ずることの出来なかっ・・・<鈴木三重吉「デイモンとピシアス」青空文庫>
  17. ・・・だからもし大きなむすこが腹をたてて帰って来て、庭先でどなりでもするような事があると、おばあさんは以前のような、小さい、言う事をきく子どもにしようと思っただけで、即座にちっぽけに見る事もできましたし、孫たちがよちよち歩きで庭に出て来るのを見る・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎「真夏の夢」青空文庫>
  18. ・・・ 井伏さんは、浮かぬ顔をしてそう答え、即座に何やらくしゃくしゃと書き、私の方によこす。「島山鳴動して猛火は炎々と右の火穴より噴き出だし火石を天空に吹きあげ、息をだにつく隙間もなく火石は島中へ降りそそぎ申し候。大石の雨も降りしきる・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  19. ・・・なんだか心細くなって、それでも勇気を鼓舞して、股引ありますか、と尋ねたら、あります、と即座に答えて持って来たものは、紺の木綿の股引には、ちがい無いけれども、股引の両外側に太く消防のしるしの赤線が縦にずんと引かれていました。流石にそれをはいて・・・<太宰治「おしゃれ童子」青空文庫>
  20. ・・・こんどは、打てば響くの快調を以て、即座に応答することができた。「悔恨の無い文学は、屁のかっぱです。悔恨、告白、反省、そんなものから、近代文学が、いや、近代精神が生れた筈なんですね。だから、――」また、どもってしまった。「なるほど、」と相・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  21. ・・・ Pirate という言葉は、著作物の剽窃者を指していうときにも使用されるようだが、それでもかまわないか、と私が言ったら、馬場は即座に、いよいよ面白いと答えた。Le Pirate, ――雑誌の名はまずきまった。マラルメやヴェルレ・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  22. ・・・そうしてまた彼の目に案内されて観客が見たいと思う方面が誤たず即座にスクリーンに出現するのである。 これと全く同一技法は終巻に近い酒場の場面でも使用されている。すなわち、一方にはある決心をしたアルベールと不安をかくしているポーラが踊ってい・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  23. ・・・これを即座に捕え仕留めるのはやはり一種の早わざである。人間の頭の働き方はやはり天然現象に似た非再起的なトランシェントな経過をとる場合が多い。数学のような論理的な連鎖を追究する場合ですらも、漠然とした予想の霧の中から正しい真を抽出するには、や・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  24. ・・・に、ある高貴な姫君と身分の低い男との恋愛事件が暴露して男は即座に成敗され、姫には自害を勧めると、姫は断然その勧告をはねつけて一流の「不義論」を陳述したという話がある。その姫の言葉は「我命をおしむにはあらねども、身の上に不義はなし。人間と生を・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  25. ・・・自分などは、往来でけたたましい自動車の警笛を聞いても存外それが右だか左だかということさえわからないことがあるのに、あの小さな蚊は即座に音源の所在を精確に探知し、そうして即座に方向舵をあやつってねらいたがわずまっしぐらにそのほうへ飛来するので・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  26. ・・・と声をかけると、唖々子は即座に口をきく事のできなかったほどうろたえた。横町か路地でもあったら背負った物を置き捨てに逃げ出したかも知れない。「君、引越しでもするのか。」 この声の誰であるかを聞きわけて、唖々子は初めて安心したらしく、砂・・・<永井荷風「梅雨晴」青空文庫>
  27. ・・・余は時を移さずその内の或物を読んだ。即座に手に入らなかったものは、機会を求めて得る度にこれを読んだ。どうしても眼に触れなかったものは、倫敦へ行ったとき買って読んだ。先生の書いてくれた紙片が、余の袂に落ちてから、約十年の後に余は始めて先生の挙・・・<夏目漱石「博士問題とマードック先生と余」青空文庫>
  28. ・・・けれども、即座に返事はしかねた。又、そこに困ることが起りはしないだろうか。 自分は、彼女が、私との関係を、美談的なものにしたく思う心持を、有難く又辛く感じた。「出来る丈のことはするわ、ね」 これが私の、嘘らない心からの返事であっ・・・<宮本百合子「二つの家を繋ぐ回想」青空文庫>
  29. ・・・恩をもって怨みに報いる寛大の心持ちに乏しい。即座に権兵衛をおし籠めさせた。それを聞いた弥五兵衛以下一族のものは門を閉じて上の御沙汰を待つことにして、夜陰に一同寄り合っては、ひそかに一族の前途のために評議を凝らした。 阿部一族は評議の末、・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・父が患者に対して愛嬌をふりまくとか、患者を心服せしめるためにホラを吹くとか、そういう類の外交術をやっている場面はかつて見たことがないが、病気と聞いて即座に飛び出して行かない場合もかつてなかったと思う。田舎のことであるから、こういう生活はかな・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>