そく‐ど【速度】例文一覧 30件

  1. ・・・攻撃の速度を急ぐ相懸り将棋の理論を一応完成していた東京棋師の代表である木村を向うにまわして、二手損を以て戦うのは、何としても無理であった。果してこの端の歩突きがたたって、坂田は惨敗した。が、続く対花田戦でも、坂田はやはり第一手に端の歩を突い・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  2. ・・・そんな工合で互に励み合うので、ナマケル奴は勝手にナマケて居るのでいつまでも上達せぬ代り、勉強するものはズンズン上達して、公平に評すれば畸形的に発達すると云っても宜いが、兎に角に発達して行く速度は中々に早いものであったのです。 併し自修ば・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  3. ・・・ウイスキイの酔もあり、また、汽車の速度にうながされて、嘉七は能弁になっていた。「女房にあいそをつかされて、それだからとて、どうにもならず、こうしてうろうろ女房について廻っているのは、どんなに見っともないものか、私は知っている。おろかだ。・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  4. ・・・生活と同じ速度で、呼吸と同じ調子で、絶えず歩いていなければならぬ。どこまで行ったら一休み出来るとか、これを一つ書いたら、当分、威張って怠けていてもいいとか、そんな事は、学校の試験勉強みたいで、ふざけた話だ。なめている。肩書や資格を取るために・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  5. ・・・そうして私はいま、なんだか、おそろしい速度の列車に乗せられているようだ。この列車は、どこに行くのか、私は知らない。まだ、教えられていないのだ。汽車は走る。轟々の音をたてて走る。イマハ山中、イマハ浜、イマハ鉄橋、ワタルゾト思ウ間モナクトンネル・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  6. ・・・少しわかりかけたら、あとはドライアイスが液体を素通りして、いきなり濛々と蒸発するみたいに見事な速度で理解しはじめた。もとより私は、津軽の人である。川部という駅で五能線に乗り換えて十時頃、五所川原駅に着いた時には、なんの事はない、わからない津・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  7. ・・・そしてこの物が特別な条件の下に驚くべき快速度で運動する事も分って来た。こういう物の運動に関係した問題に触れ初めると同時に、今までそっとしておいた力学の急所がそろそろ痛みを感ずるようになって来た。ロレンツのごとき優れた老大家は疾くからこの問題・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  8. ・・・その先端の綿の繊維を少しばかり引き出してそれを糸車の紡錘の針の先端に巻きつけておいて、右手で車の取っ手を適当な速度で回すと、つむの針が急速度で回転して綿の繊維の束に撚りをかける。撚りをかけながら左の手を引き退けて行くと、見る見る指頭につまん・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  9. ・・・また撮影速度の加減によって速いものをおそくも、おそいものを速くもすることができるし、必要ならば時を逆行させて宇宙のエントロピーを減少させることさえできるのである。 これらの「映画の世界像」の分析については、かつて「思想」誌上で詳説したか・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  10. ・・・ 絶えずあとしざりをしているものを追いかけて突くのでは、相対速度の減少のために衝撃が弱められる、これに反して向かって来るのを突くのではそれだけの得がある、という事は力学者を待たずとも見やすい道理であるが、ベーアは明らかにこれを利用して敵・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  11. ・・・ 二マイルも離れた川から水路を掘り通して旱魃地に灌漑するという大奮闘の光景がこの映画のクライマックスになっているが、このへんの加速度的な編集ぶりはさすがにうまいと思われる。 ただわれわれ科学の畑のものが見ると、二マイルもの遠方から水・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  12. ・・・第三にはフィルムの毎秒のコマ数によっておのずから規定された速度の制約を無視して、快速な運動を近距離から写した場面が多い。そういうところはただ目まぐるしいだけで印象が空疎になるばかりでなくむしろ不快の刺激しか与えない。これはフィルムの上におけ・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  13. ・・・またもし蓄音機の盤を正常な速度の二倍あるいは半分の速度で回転させれば単に曲のテンポが変わるのみならず、音程は一オクテーヴだけ高くあるいは低くなってしまうのである。東京市民を驚かせるような強震が二日に一度三日に一度ずつ襲って来るとしたらどうで・・・<寺田寅彦「映画の世界像」青空文庫>
  14. ・・・蛇が虎のからだにじりじりと巻きつく速度が意外にのろい、それだけに無気味さが深刻である。蛇が蛇自身の目では見渡せないあの長いからだを、うまく舵を取って順序よく巻きついて行く手ぎわは見ものである。虎のほうでも徐々に胴のまわりに巻きつくのを、どう・・・<寺田寅彦「映画「マルガ」に現われた動物の闘争」青空文庫>
  15. ・・・交通速度の標準が変ると距離の尺度と時間の尺度とがまるきり喰いちがってしまうのである。 その頃にもよく浜で溺死者があった。当時の政客で○○○議長もしたことのあるK氏の夫人とその同伴者が波打際に坐り込んで砂浜を這上がる波頭に浴しているうちに・・・<寺田寅彦「海水浴」青空文庫>
  16. ・・・能弁なる彼は我輩に一言の質問をも挟さましめざるほどの速度をもって弁じかけつつある。我輩は仕方がないから話しは分らぬものと諦めてペンの顔の造作の吟味にとりかかった。温厚なる二重瞼と先が少々逆戻りをして根に近づいている鼻とあくまで紅いに健全なる・・・<夏目漱石「倫敦消息」青空文庫>
  17. ・・・あんな小僧っ子の事で、何だ、グズグズ気をとられてるなんて、他事 汽車が、速度をゆるめた。彼は、眠った風をして、プラットフォームに眼を配った。プラットフォームは、彼を再び絶望に近い恐愕に投げ込んだ。 白い制服、又は私服の警官が四五十人・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  18. ・・・ 船の速度丈けの風があった。そこでは空気がさらさらしていた。 殊に、そこは視野が広くて、稀には船なども見ることが出来たし、島なども見えた。 フックラと莟のように、海に浮いた島々が、南洋ではどんなに奇麗なことだろう。それは、ひどい・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  19. ・・・海洋は摩擦少きも却って速度は大ならず。最も愚鈍なるもの最も賢きものなり、という白い杭が立っている。これより赤道に至る八千六百ベスターというような標もあちこちにある。だから僕たちはその辺でまあ五六日はやすむねえ、そしてまったくあの辺は面白いん・・・<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>
  20. ・・・ 中年から以後、ミケルアンジェロの作品がつねに未完成にのこされた、それについてロマン・ロランでさえ個人的に性格の分裂という風に見たりしているのを正してこの著者が「悲壮にも挫折した歴史急転の速度を追って追い抜こうとして、そこにいたるところ・・・<宮本百合子「現代の心をこめて」青空文庫>
  21. ・・・――生産の予想外の拡大は予想外な速度で労働力を生産の各部へ吸い込んでしまった。失業者はソヴェト同盟から消えた。これまでは、未就業労働者に職場割当てを任務としていたソヴェト同盟内の職業紹介所の仕事は性質がかわって来た。労働者の合理的配給所とな・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」青空文庫>
  22. ・・・でも仕事の速度というか、進み工合というか、そういうものが結局二十四時間を計っているのだから。 コスモスの花瓶にホンのすこしアスピリンをいれました。ぐったりしたから。利くかしら? もとスウィートピーにアスピリンをやったら、すっかり花が上を・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  23. ・・・従ってその瞬間における統一性は直覚的な速度に感受されなければならない。即ち表現の上に叙述的な冗長は斥けられ、単純化はその必然的な方法となる。文学的行動主義が、造型芸術における野獣派、ピュリズム、プリミチヴィズム、シムルタニズム、表現主義或い・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  24. ・・・家の近所のダラダラ坂に人通りの少いのを見はからって、颯っと乗り出したはよいが、進むにつれて速度が加って、どうにも始末がつかなくなり、あわやという間に交通巡査に抱きついてしまった。六尺ゆたかなロンドンの巡査はニヤニヤしながら、悠々とした顔つき・・・<宮本百合子「写真に添えて」青空文庫>
  25. ・・・ インフレーションの速度にくらべれば、あの頃労働者が闘い取った賃金は幾らのものでもなくて、今日生活窮乏は一般的です。それだのに何故物取り主義などという索寞とした自己批判が起ったのでしょう。経済闘争だけで終ったとき、人々の心に湧いた人間と・・・<宮本百合子「討論に即しての感想」青空文庫>
  26. ・・・るにつれ、社会事情が変遷するにつれ、その文壇というものが、文学的分野で全く特殊な場所となって来た有様についてくどい説明は今日必要ないが、作家が大衆の日常生活とはなれ所謂文壇内の存在化して来る程度とその速度とは、畢竟するに、日本の現代文化の深・・・<宮本百合子「文学の大衆化論について」青空文庫>
  27. ・・・素人の文学が、その生のままの生活感で日本の現代文学をより豊富なものにしてゆく速度よりも寧ろ、素人の文学としてうけいれられてゆくことの底をなしている今日の文化感覚の急速な下降を却って促進し肯定する形になっている方が、影響として顕著であるような・・・<宮本百合子「文学のひろがり」青空文庫>
  28. ・・・これからの船は速度が迅くなりますよ。」 どうでも良いことばかり雲集している世の中で、これだけはと思う一点を、射し動かして進行している鋭い頭脳の前で、大人たちの営営とした間抜けた無駄骨折りが、山のように梶には見えた。「いっぺん工場を見・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  29. ・・・楓などでも成長の速度が恐ろしく違う。そういう相違はあらゆる樹木の種類について数え上げて行くことができるのである。京都の東山などは、少し掘って行けば下は岩石である。そういう、あまり厚くない土壌の上に、相当に大きい樹木が生い茂っている。ああいう・・・<和辻哲郎「京の四季」青空文庫>
  30.  大地震以後東京に高層建築の殖えて行った速度は、かなり早かったと言ってよい。毎日その進行を傍で見ていた人たちはそれほどにも感じなかったであろうが、地方からまれに上京する者にはそれが顕著に感ぜられた。六、七年前銀座裏で食事をして外へ出たと・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>