そく‐ばく【束縛】例文一覧 30件

  1. ・・・恐らくは僕の子供たちも、――しかし僕はそこへ帰ると、おのずから僕を束縛してしまう或力を恐れずにはいられなかった。運河は波立った水の上に達磨船を一艘横づけにしていた。その又達磨船は船の底から薄い光を洩らしていた。そこにも何人かの男女の家族は生・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  2. ・・・居処って奴は案外人間を束縛するもんだ。何処かへ出ていても、飯時になれあ直ぐ家のことを考える。あれだけでも僕みたいな者にゃ一種の重荷だよ。それよりは何処でも構わず腹の空いた時に飛び込んで、自分の好きな物を食った方が可じゃないか。何でも好きなも・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  3. ・・・自由に対する慾望とは、啻に政治上または経済上の束縛から個人の意志を解放せむとするばかりでなく、自己みずからの世界を自己みずからの力によって創造し、開拓し、司配せんとする慾望である。我みずから我が王たらんとし、我がいっさいの能力を我みずから使・・・<石川啄木「初めて見たる小樽」青空文庫>
  4. ・・・だれも束縛するようなもののいない、そして、暗い夜というようなものもない、まったく自由で、一日明るい昼ばかりのよい国がありますよ。」「それは、いったいどこだ。」「それですか、西の紅い夕焼けのする国です。毎日、あなたはその方を見るでしょ・・・<小川未明「馬を殺したからす」青空文庫>
  5. ・・・何者の権力を以てしても、この自由を束縛することができない。 私は、童話の世界を考えた時に、汚濁の世界を忘れます。童話の創作熱に魂の燃えた時に、はじめて、私の眼は、無窮に、澄んで青い空の色を瞳に映して、恍惚たることを得るのであります。・・・<小川未明「『小さな草と太陽』序」青空文庫>
  6. ・・・ 由来人間にはその時代に束縛せられず、又階級に拘束されずして、昔も今も人として立って行くべき上に、美くしい事、正しい事の感激がある。たゞその感激の表われが時代によっては違う。とにかくすべての人間は自然の上に対してある感激を有する。この美・・・<小川未明「人間性の深奥に立って」青空文庫>
  7. ・・・私はことの意外に驚いて、この学校は自由をモットーとしているのに、生徒の頭の型まで束縛して、一定の型にはめてしまおうとするのであるかと、早口で言った。すると自治委員の言うのには、寮では寮生のすべては丸刈りたるべしという規則がある。郷に入れば郷・・・<織田作之助「髪」青空文庫>
  8. ・・・ 家人を相手に言ったのは、何気なく出た冗談だったが、ふと思えば、前代未聞の言論の束縛を受けたあと未曾有の言論の自由が許された今日、永い間の念願も果せるわけだった。 しかし、公判記録を読んでからもう三年になる。三年の歳月は私の記憶を薄・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  9. ・・・あまり小さく、窮屈に男性を束縛するのは、男性の世界を理解しないものだ。小さい几帳面な男子が必ずしも妻を愛し、婦人を尊敬するものではない。大事なところで、献身的につくしてくれるものでもない。要は男性としての本質を見よ。夫としてのたのみがいを見・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  10. ・・・こゝでは、戦争に対する嫌悪、恐怖、軍隊生活が個人を束縛し、ひどく残酷なものである、というようなことが、強調されている。家庭での、平和な生活はのぞましいものである。戦場は、「一兵卒」の場合では、大なる牢獄である。人間は、一度そこへ這入ると、い・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  11. ・・・カントの鳩は、自分の翼を束縛する此の空気が無かったならば、もっとよく飛べるだろうと思うのですが、これは、自分が飛ぶためには、翼の重さを托し得る此の空気の抵抗が必要だということを識らぬのです。同様にして、芸術が上昇せんが為には、矢張り或る抵抗・・・<太宰治「鬱屈禍」青空文庫>
  12. ・・・圧制や束縛が取りのぞかれたところにはじめて芽生える思想ではなくて、圧制や束縛のリアクションとしてそれらと同時に発生し闘争すべき性質の思想です。よく挙げられる例ですけれども、鳩が或る日、神様にお願いした、『私が飛ぶ時、どうも空気というものが邪・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  13. ・・・私は無頼派です。束縛に反抗します。時を得顔のものを嘲笑します。だから、いつまで経っても、出世できない様子です。 私はいまは保守党に加盟しようと思っています。こんな事を思いつくのは私の宿命です。私はいささかでも便乗みたいな事は、てれくさく・・・<太宰治「返事」青空文庫>
  14. ・・・この社会では結婚前は勿論、結婚してからも、さ程厳重に束縛せられないと云うことを、令嬢は好く知っているのである。 勿論ポルジイの品行は随分ひどい。しかし女達に追い廻されている男だと云う所を酌量して遣らなくてはならない。馬は目醒ましい上手で・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  15. ・・・ 軍隊生活の束縛ほど残酷なものはないと突然思った。と、今日は不思議にも平生の様に反抗とか犠牲とかいう念は起こらずに、恐怖の念が盛んに燃えた。出発の時、この身は国に捧げ君に捧げて遺憾がないと誓った。再びは帰ってくる気はないと、村の学校で雄・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  16. ・・・心の罪の重荷が足にからまって自由を束縛されている人間は却って現実の罪の境界線が越えにくいということもあるかもしれないのである。 今に戦争になるかもしれないというかなりに大きな確率を眼前に認めて、国々が一生懸命に負けない用意をして、そうし・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  17.  私は自分の住み家の庭としてはむしろ何もない広い芝生を愛する。われわれ階級の生活に許される程度のわずかな面積を泉水や植え込みや石燈籠などでわざわざ狭くしてしまって、逍遙の自由を束縛したり、たださえ不足がちな空の光の供給を制限・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  18. ・・・昔には民衆的であったかと思われる短歌が中葉から次第に宮廷人の知的遊戯の具となりあるいは僧侶の遁世哲学を諷詠するに格好な詩形を提供していたりしたのが、後に連歌という形式から一転して次第にそうした階級的の束縛を脱しいわゆる俳諧から発句に進化した・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  19. ・・・たとえば議論の焦点がきまると、それを小野の方から飛躍させられて“そりゃァ、労働者の自由を束縛するというもんだ”という風に、手のつけようのないところへもってゆく。学生たちがそれをまた神棚から引きおろそうとして躍起になると、そのうち小野がだしぬ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  20. ・・・それで昔は上の方には束縛がなくて、上の下に対する束縛がある、これは能くない、親が子に対する理想はあるが子が親に対する理想はなかった。妻が夫に臣が君に対する理想はなかったのです。即ち忠臣貞女とかいうが如きものを完全なものとして孝子は親の事、忠・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  21. ・・・それについては少し学究めきますが、日本とか現代とかいう特別な形容詞に束縛されない一般の開化から出立してその性質を調べる必要があると考えます。御互いに開化と云う言葉を使っておって、日に何遍も繰返しているけれども、はたして開化とはどんなものだと・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  22. ・・・一方では束縛を解いて自由にして貰わなければたまらないと云っていながら、一方では秩序とか組織を立てなければ事業が発展しないと騒いでいる。が、この二つの要求を較べると明かに矛盾である。――ここまでは宜しいのです。しかしオイケンはこの矛盾はどっち・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  23. ・・・かかる人物を政府の区域中に入れて、その不慣なる衣冠をもって束縛するよりも、等しく銭をあたうるならば、これを俗務外に安置して、その生計を豊にし、その精神を安からしむるに若かず。元老院中二、三の学者あるも、その議事これがために色を添うるに非ず。・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  24. ・・・一、私塾中は起居自由にして一物の身を束縛するなく、官途の心雲を脱却して随意に書を読み、一刻も読書に費さざるの時なく、一語も文学にわたらざるの談なし。身心流暢して苦学もまた楽しく、したがって教えしたがって学び、学業の上達すること、世人の望・・・<福沢諭吉「学校の説」青空文庫>
  25. ・・・外を以て内を制し、公を以て私を束縛するものというべし。 この悪風の弊害は、決して一家の内に止まるものにあらず。その波及する所、最も広くしてかつ大なり。ここにその一を述べん。かの政談家の常に患える所は、結局民権退縮・専制流行の一箇条にあり・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  26. ・・・視覚の束縛のみではない。心がつき当る。東を向いても、西を向いても。豊かに律を感じて拡がろうとする魂が、彼方此方で遮られて、哀れな戸惑いをする。ああ、野原、野原。私の慾しいものは、宝石よりも館よりも、唯一ふき、そよそよと新鮮に、瑞々しく、曠野・・・<宮本百合子「餌」青空文庫>
  27. ・・・私生児を育て抜いた所に重点があるよりは、むしろ社会的の束縛から愛する者との間の子を、私生児としての形でしか持てなかった事、更にその子を育てる上に日夜世間の古い型の考えと戦わねばならなかった事、ここに作者は人間性への広い訴えをこめていたのでは・・・<宮本百合子「「女の一生」と志賀暁子の場合」青空文庫>
  28. ・・・其上に、長い伝習と、不具な教育とは、女性自らの体力と智力とをも束縛して居ります。従って、現代の日本の女性の裡には無数の夭折する――心理的の意味に於て――力が埋められて居ります。何物をも産出する事の不可能なよき魂がございます。よく成ろうとする・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  29. ・・・この暗示的な、多くを切り離して重要な一部分を示すという演り方、古い形式と束縛とを脱して美しい新形式を征服した、内より外に向かうという演り方、これがアアサア・シモンズを喜ばせた重大な点である。これが彼の象徴主義と合致した点なのである。古い演劇・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>
  30. ・・・彼を束縛するものはただこの満足のための功利的節度のほかに何ものもない。 しかし人はこの物質的な世界に何の不足もなく安住することができるか。愛の歓喜にある時彼はその幸福の永遠性を望まないか。官能の悦楽のあとで彼はそのはかなさに苦しまないで・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>