そく‐めん【側面】例文一覧 29件

  1. ・・・オルガンは内部の見えるように側面の板だけはずしてあり、そのまた内部には青竹の筒が何本も竪に並んでいた。僕はこれを見た時にも、「なるほど、竹筒でも好いはずだ」と思った。それから――いつか僕の家の門の前に佇んでいた。 古いくぐり門や黒塀は少・・・<芥川竜之介「死後」青空文庫>
  2. ・・・ 路は山陰に沿うていたから、隊形も今日は特別に、四列側面の行進だった。その草もない薄闇の路に、銃身を並べた一隊の兵が、白襷ばかり仄かせながら、静かに靴を鳴らして行くのは、悲壮な光景に違いなかった。現に指揮官のM大尉なぞは、この隊の先頭に・・・<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  3. ・・・それより訴えると云うその事実の、滑稽な側面ばかり見た自分たちは、こう先生が述べ立てている中に、誰からともなくくすくす笑い出した。ただ、それがいつもの哄然たる笑声に変らなかったのは、先生の見すぼらしい服装と金切声をあげて饒舌っている顔つきとが・・・<芥川竜之介「毛利先生」青空文庫>
  4. ・・・く人もないニコライの寺の鐘が、真夜中に突然鳴り出したり、同じ番号の電車が二台、前後して日の暮の日本橋を通りすぎたり、人っこ一人いない国技館の中で、毎晩のように大勢の喝采が聞えたり、――所謂「自然の夜の側面」は、ちょうど美しい蛾の飛び交うよう・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  5. ・・・ 加うるに椿岳の生涯は江戸の末李より明治の初期に渡って新旧文化の渦動に触れている故、その一代記は最もアイロニカルな時代の文化史的及び社会的側面を語っておる。それ故に椿岳の生涯は普通の画人伝や畸人伝よりはヨリ以上の興味に富んで、過渡期の畸・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6. ・・・これらの諸説はみな恋愛の種々相のある一側面を捕え得たものには相異ない。この後とても世代の移るにつけいろいろな説がつみたされていくであろう。 が恋愛とは何であるかということを概念的にきめてかかることはさまで大事なことではない。むしろ自分自・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  7. ・・・ 愛するというのも早ければ別れるのも軽く、少し待たせれば帰ってしまい、逢びきの間にも胸算用をし、たといだます分でもだまされはせぬ――こういった現代の娘気質のある側面は深く省みられねばならぬ。新しさ、聡明さとはそんなものではないはずだ。新・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  8. ・・・ どうすれば、こういう側面からのサヴエート攻撃の根を断つことができるか! 呉清輝は、警戒兵も居眠りを始める夜明け前の一と時を見計って郭進才と橇を引きだした。橇は、踏みつけられた雪に滑桁を軋らして、出かけて行った。 風も眠っていた・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  9. ・・・暗い竹藪のかげの細道について、左手に小高い石垣の下へ出ると、新しい二階建ての家のがっしりとした側面が私の目に映った。新しい壁も光って見えた。思わず私は太郎を顧みて、「太郎さん、お前の家かい。」「これが僕の家サ。」 やがて私はその・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  10. ・・・高く築き上げられた、大きな黒ずんだ石の側面はそれに附着した古苔と共に二人の右にも左にもあった。 旧足軽の一人が水を担いで二人の側を会釈して通った。 矢場は正木大尉や桜井先生などが発起で、天主台の下に小屋を造って、楓、欅などの緑に隠れ・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  11. ・・・この棒に幾筋も横線を刻んで棒の側面を区分しておいてそれからその一区分ごとに色々な簡単な通信文を書く。例えば第一区には「敵騎兵国境に進入」第二区には「重甲兵来る」と云った風な、最も普通に起り得べき色々な場合を予想してそれに関する通信文を記入し・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  12. ・・・河馬と言うものの特徴を見せるために、その前後並びに側面から見た形、眼、耳、鼻、口、尻尾、脚等の形態、水中にもぐって鼻づらだけ出した様子、鼻息で水を吹きとばす有様、水中で動くときに起る水の渦動、こういったようなものを十分に詳しく見せようと思っ・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  13. ・・・その側面を広告塔にすれば気球広告よりも有効で、その料金で建設費はまもなく消却されるであろう。高い所に上がりたがるのは人間というものに本能的な欲望である。この欲望は赤ん坊の時からすでに現われる。自分が四歳の時に名古屋にいたころのかすかな思い出・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  14. ・・・次には、この土塊の円筒の頂上へ握りこぶしをぐうっと押し込むと、筒の頭が開いて内にはがらんとした空洞ができ、そうしてそれが次第に内部へ広がると同時に、胴体の側面が静かにふくれ出してどうやら壺らしいものの形が展開されて行くのである。それから壺の・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  15. ・・・甚だ杜撰なディレッタントの囈語のようなものであるが、一科学者の立場から見た元禄の文豪の一つの側面観として、多少の参考ないしはお笑い草ともならば大幸である。<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  16. ・・・湯浅氏の回顧陳列もある意味で日本洋画界の歴史の側面を示すものである。これを見ると白馬会時代からの洋画界のおさらえができるような気がする。ただこの人の昔の絵と今の絵との間にある大きな谷にどういう橋がかかっているかが私にはわからない。 新し・・・<寺田寅彦「昭和二年の二科会と美術院」青空文庫>
  17. ・・・は、やはり側面の裂罅からうかがわれる内部の灼熱状態を示唆的にそう言ったものと考えられなくはない。「八つの門」のそれぞれに「酒船を置きて」とあるのは、現在でも各地方の沢の下端によくあるような貯水池を連想させる。熔岩流がそれを目がけて沢に沿うて・・・<寺田寅彦「神話と地球物理学」青空文庫>
  18. ・・・ 以上のごとき単純な側面観によって科学と芸術との任務や領域を遺憾なく説明しようというのではない。こういう考えから出発して、文芸の中に潜在する科学的要素を捜してみたいと思うのである。 いかなる文芸といえどもその取扱う資料が常識を具えた・・・<寺田寅彦「文学の中の科学的要素」青空文庫>
  19. ・・・この効果の最も著しく感ぜられる場合は、たとえば茂みの中を鉄砲を持って前進する猟者を側面から映写しながら追跡する場合である。スクリーンと自分の目とが静止しているとは思われなくて、スクリーンが猟者といっしょに進行するのを、絶えず目を横に動かして・・・<寺田寅彦「耳と目」青空文庫>
  20. ・・・その穴に爆薬を仕掛けて一度に倒壊させるのであったが、倒れる方向を定めるために、その倒そうとする方向の側面に穴の数を多くしていた。準備が整って予定の時刻が迫ると、見物人らは一定の距離に画した非常線の外まで退去を命ぜられたので、自分らも花屋敷の・・・<寺田寅彦「LIBER STUDIORUM」青空文庫>
  21. ・・・ 最後に私はこの一編の未熟な解説が、ルクレチウスの面影の一側面をも充分正確に鮮明に描出することを得なかったであろうことを恐れる。そうしてこの点について読者の寛容をこいねがうものである。 ルクレチウスを読み、そうしてその解説を筆にして・・・<寺田寅彦「ルクレチウスと科学」青空文庫>
  22. ・・・わたくしは古木と古碑との様子の何やらいわれがあるらしく、尋常の一里塚ではないような気がしたので、立寄って見ると、正面に「葛羅之井。」側面に「文化九年壬申三月建、本郷村中世話人惣四郎」と勒されていた。そしてその文字は楷書であるが何となく大田南・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  23. ・・・ この道は、堤を下ると左側には曲輪の側面、また非常門の見えたりする横町が幾筋もあって、車夫や廓者などの住んでいた長屋のつづいていた光景は、『たけくらべ』に描かれた大音寺前の通りと変りがない。やがて小流れに石の橋がかかっていて、片側に交番・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  24. ・・・この黄味の強い赤い夕陽の光に照りつけられて、見渡す人家、堀割、石垣、凡ての物の側面は、その角度を鋭く鮮明にしてはいたが、しかし日本の空気の是非なさは遠近を区別すべき些少の濃淡をもつけないので、堀割の眺望はさながら旧式の芝居の平い書割としか思・・・<永井荷風「深川の唄」青空文庫>
  25. ・・・堅い木を一と刻みに削って、厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと思ったら、小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がって来た。その刀の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を挾んでおらんように見えた。「よくああ無造作に鑿を使っ・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  26. ・・・晩年の母は、懐古的になるとともに祖父西村茂樹の現代にあっては保守というべき側面ばかりを影響された。 母の一生は女ながらいかにも活々と、多彩に、明治八年頃から今日に至る略六十年の間に日本の中流の経験した経済的な条件、精神的な推移の歴史・・・<宮本百合子「母」青空文庫>
  27. ・・・の「無理想主義の十八世紀を最下等の側面より代表するものである」として、とりあげている。ロビンソン・クルーソーの「詩的に下等」なる所以は、これが「ただ労働の小説である」そして「どの頁をあけて見ても汗の匂いがする。しかも紋切型には道徳的である」・・・<宮本百合子「風俗の感受性」青空文庫>
  28. ・・・ 河岸通りに向いた方は板囲いになっていて、横町に向いた寂しい側面に、左右から横に登るようにできている階段がある。階段はさきを切った三角形になっていて、そのさきを切ったところに戸口が二つある。渡辺はどれからはいるのかと迷いながら、階段を登・・・<森鴎外「普請中」青空文庫>
  29. ・・・江戸時代の文化の偉大な側面に対して色盲となりつつ、ただその矮小を嘆くということは、この文化に対する正しい態度とは言えない。お城はただその一例であるが、他になおいくらでも例をあげることができよう。たとえば街路樹である。日本の古い都会には街路樹・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>