そ‐こく【祖国】例文一覧 30件

  1. ・・・「無産階級に祖国なし」げに、資本主義の波に蕩揺されつゝ工場から工場へ、時に、海を越えて、何処と住居を定めぬ人々にとっては、一坪の菜園すら持たないのである。けれど、彼等は、それを、真に不幸とは思わないだろうか? 人間は、到底、理知のみ・・・<小川未明「彼等流浪す」青空文庫>
  2. ・・・殺すは悪、恵むは善というような意欲の実質的価値判断を混うるならば、祖国のための戦いに加わるは悪か、怠け者の虚言者に恵むは善かというような問いを限りなく生ずるであろう。東洋の禅や、一般に大乗的な宗教の行為の決定に形式の善をとって、実質の善をと・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  3. ・・・ イギリスの貴族の青年は祖国の難のあるとき、ぐずぐずしていると、令嬢たちに卑怯を軽蔑されるので、勇んで戦線におもむくといわれている。おどらぬ男には嫁に行かぬと「酋長の娘」にいわれては土人の若者はおどらずにはおられまい。 ところで今日・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  4. ・・・彼において、法への愛と祖国への愛とがひとつになって燃え上った。彼は仏子であって同時に国士であった。法の建てなおしと、国の建てなおしとが彼の使命の二大眼目であり、それは彼において切り離せないものであった。彼及び彼の弟子たちは皆その法名に冠する・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  5. ・・・ 彼らに祖国への愛を植えつけるためには、非合理的なるものへの直観を要し、さらに彼らに神への帰依を目ひらかしむるためには、啓示への受容を説かなければならないからである。 人間教育者としてのわれわれの任務を思うとき、われわれは彼ら純真の・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  6. ・・・ 最後に母性の愛は公のために犠牲を要求されねばならぬ。 祖国の安危のために、世界の平和のために、人道と文明のために、たちがたき恩愛をたって、自分の子を供えものにせねばならぬ。マリアはキリストを、乃木夫人は二人の息子を、この要求のため・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  7. ・・・そして、それはまた、労働者農民の祖国サヴェート同盟に対する戦争の準備ともなっているのだ。 こういう時にあたって、全国から十二万の働いている青年たちが、初年兵として兵営の中へ吸いこまれて行く。ブルジョアジーは労働者や、労働者や農民の出身で・・・<黒島伝治「入営する青年たちは何をなすべきか」青空文庫>
  8. ・・・それは、「幾世紀も幾千年にも亘る祖国の存在によって固められた最も深い感情の一つである。」だが、それだけに階級の対立する社会では、最も多く支配階級に利用され得る感情である。そしてしば/\、真実の隠蔽のためにその文句が繰りかえされる。これが文学・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  9. ・・・ 祖国を愛する情熱、それを持っていない人があろうか。けれども、私には言えないのだ。それを、大きい声で、おくめんも無く語るという業が、できぬのだ。出征の兵隊さんを、人ごみの陰から、こっそり覗いて、ただ、めそめそ泣いていたこともある。私は丙・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  10. ・・・世は滔々として民主革命の行われつつあり、同胞ひとしく祖国再建のため、新しいスタートラインに並んで立って勇んでいるのに、僕ひとりは、なんという事だ。相も変らず酔いどれて、女房に焼きもちを焼いて、破廉恥の口争いをしたりして、まるで地獄だ。しかし・・・<太宰治「春の枯葉」青空文庫>
  11. ・・・かれの胸にはこれまで幾度も祖国を思うの念が燃えた。海上の甲板で、軍歌を歌った時には悲壮の念が全身に充ち渡った。敵の軍艦が突然出てきて、一砲弾のために沈められて、海底の藻屑となっても遺憾がないと思った。金州の戦場では、機関銃の死の叫びのただ中・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  12. ・・・      三 別れの曲 ショパンがパリのサロンに集まった名流の前で初演奏をしようとする直前に、祖国革命戦突発の飛報を受取る。そうして激昂する心を抑えてピアノの前に坐り所定曲目モザルトの一曲を弾いているうちにいつか頭が変にな・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  13. ・・・ しかし、また一方、この同じ心理がたとえば戦時における祖国愛と敵愾心とによって善導されればそれによって国難を救い戦勝の栄冠を獲得せしめることにもなるであろう。 しかしまた、同じような考え方からすれば、結局ナポレオンも、レーニンも、ム・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  14. ・・・外国へ出てみなければ祖国の事がわからないように、あらゆる非科学ことに形而上学のようなものと対照し、また認識論というような鏡に照らして批評的に見た上でなければ科学はほんとうには「理解」されるはずがない。しかしそういう一般的な問題は別として、こ・・・<寺田寅彦「相対性原理側面観」青空文庫>
  15. ・・・滅びた祖国、流浪の生活、熱帯の夏の夜の恋、そんなものを思わせるような、うら悲しくなまめかしい音楽が黄色く濁った波の上を流れて行った。波の上にはみかんの皮やビールのあきびんなどが浮いたり沈んだりして音楽に調子を合わせていた。……淡い郷愁とでも・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  16. ・・・現代の日本人は祖国に生ずる草木の凡てに対して、過去の日本人の持っていたほどの興味を持たないようになった。わたくしは政治もしくは商工業に従事する人の趣味については暫く擱いて言わぬであろう。画家文士の如き芸術に従事する人たちが明治の末頃から、祖・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  17. ・・・そして一刻一刻、時間の進むごとに、われらの祖国をしてアングロサキソン人種の殖民地であるような外観を呈せしめる。古くして美しきものは見る見る滅びて行き新しくして好きものはいまだその芽を吹くに至らない。丁度焼跡の荒地に建つ仮小屋の間を彷徨うよう・・・<永井荷風「霊廟」青空文庫>
  18. ・・・ドイツの知識人たちは、ナチスの運動がその背後にどんな大きいドイツの軍国主義者と資本家の大群をひかえているかということを洞察せず、馬鹿にしていたために、祖国とその文化とをナチスに蹂躙されつくした。 一九二〇年代のドイツは、左翼が活躍し、ド・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  19. ・・・その東に、太平洋に弓なりにかかって、わたしたちの祖国日本があります。 けれども、今日アジアの地図の中に見る日本は、わたしたちの心を苦痛でみたします。ソヴェト同盟の国境、朝鮮、満州をふくむ中華人民共和国、ビルマ、シャム、マライ、印度支那、・・・<宮本百合子「新しいアジアのために」青空文庫>
  20. ・・・だが、民衆は、祖国の防衛として肉体をもってそれを感じ、そこに身を挺している。彼等灰色の人々に光栄あれ。 フランスの知識人は「政治」と「政変」とに飽きて、「政治」について妙に観念化された。 それがそこから離別することが人間的誠実とは思・・・<宮本百合子「折たく柴」青空文庫>
  21. ・・・そこには、一九二七―三〇年のモスクワでないモスクワが描かれているし、反ナチの祖国戦争で、ソヴェトの人々が人類の平和のためにどれだけかけひきぬきの犠牲をいとわなかったか、その巨大な破壊とそこからの回復のためにいかに奮闘しているかということを、・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  22. ・・・日本は日本の人民の祖国であり、皆がそこで真面目に働いて、愛する土地での生活を美しく、人間らしくしたいと願っているのです。 講和の出た去年の十一月下旬、新聞が集めたアンケートでは面白い事に、警視総監のような政府の役人と株屋と徳川夢声等が単・・・<宮本百合子「今年こそは」青空文庫>
  23. ・・・一九一七年以後に成長して、社会主義建設の中で青年となった新しい気質のソヴェト作家が、あらゆる人々とともにナチスに侵略された自分たちの建設祖国を、どんなに愛し、護り、そのために献身したか、まざまざと伝えられる情熱をもって「降伏なき民」はかかれ・・・<宮本百合子「ゴルバートフ「降伏なき民」」青空文庫>
  24. ・・・という一九三六年の声明に絶えずうなされながら猶且つ一般の国民の祖国を愛する真情に対しては第五列の意味をもっているケリリスの活動やドーデの活躍に余地を与えなければならなかった原因は、フランス経済・政治のどんな紛乱からであったかという事実までを・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  25. ・・・世界的諸関係の中に日本をおき、公の観点から洞察し、心から祖国を愛する者ならば、日本の民主化が如何に重大であるか、千万の言葉にまさる重さを理解しなければならない。 政党が、公のものであるならば、自党の得票という私的目的のために、日本人民の・・・<宮本百合子「逆立ちの公・私」青空文庫>
  26. ・・・愛すべき人民の祖国とその親愛、独特な文化への情熱をめざまされた。その愛と憧れによって彼等は勇気を与えられ、果敢であることができたのだった。一つの国が民主憲法をもち、民主的行政機構をもち、民主的労働組合と文化をもち、すべては民主的な表現で話さ・・・<宮本百合子「三年たった今日」青空文庫>
  27. ・・・ 軍備の完備した国家は、自国を防禦する筈のその軍力を以て祖国を失ってしまいます。 物質の豊かな国民は、その豊かな物質に首を絞められます。 斯様にして、権利を所有するが為に却って、魂を汚す彼女等は、同時に又その豊かな――そして其を・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  28. ・・・そしてソヴェト同盟の人々が献身して愛する彼等の祖国、自分たちの手で、自分たちの生命で、一九一七年から築きあげて来た人民の祖国を侵略から防衛している姿を思いやったことだろう。 私の目の前には、ヴォルガ河が見えた。ヴォルガからスターリングラ・・・<宮本百合子「新世界の富」青空文庫>
  29. ・・・の歌の文句のとおり、活気をもったソヴェト作家のほとんどすべてが「東に西に、南に北に」祖国防衛のために協力した。戦争が終ったとき、これらの作家たちが、疲労を休めながら、戦争中の文学的収穫の整頓・出版に忙しかったことは想像される。そのために、ソ・・・<宮本百合子「政治と作家の現実」青空文庫>
  30. ・・・それは夢のような幻影としても、負け苦しむ幻影より喜び勝ちたい幻影の方が強力に梶を支配していた。祖国ギリシャの敗戦のとき、シラクサの城壁に迫るローマの大艦隊を、錨で釣り上げ投げつける起重機や、敵船体を焼きつける鏡の発明に夢中になったアルキメデ・・・<横光利一「微笑」青空文庫>