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そこ‐ぢから【底力】例文一覧 22件

  1. ・・・ 陳の唇を洩れる言葉は、妙に底力のある日本語であった。「誰?――婆や?――奥さんにちょいと出て貰ってくれ。――房子かい?――私は今夜東京へ行くからね、――ああ、向うへ泊って来る。――帰れないか?――とても汽車に間に合うまい。――じゃ・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  2. ・・・ 底力のある声にもう一度どやし付けられて、仁右衛門は思わず顔を挙げた。場主は真黒な大きな巻煙草のようなものを口に銜えて青い煙をほがらかに吹いていた。そこからは気息づまるような不快な匂が彼れの鼻の奥をつんつん刺戟した。「小作料の一文も・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・沢本  そうすると、俺たちはうんと飯を食って底力を養うことができるぞ。青島  そうだ。沢本  ああ早く我らの共同の敵なるフィリスティンどもが来るといいなあ。おい若様、少し働こう。二人であらかた画室を片づける。花田と戸部と・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  4. ・・・「力は入るね、尾を取って頭を下げ下げ、段々に糶るのは、底力は入るが、見ていて陰気だね。」 と黒い外套を着た男が、同伴の、意気で優容の円髷に、低声で云った。「そう。でも大鯛をせるのには、どこでもああするのじゃアありません?……」・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  5. ・・・日本の文人は好い加減な処で忽ち人生の見巧者となり通人となって了って、底力の無い声で咏嘆したり冷罵したり苦笑したりする。 小生は文学論をするツモリで無いから文学其物に就ては余り多くを云うを好まぬが、二十五年前には道楽であった文学が今日では・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  6. ・・・口の先きで喋べる我々はその底力のある音声を聞くと、自分の饒舌が如何にも薄ッぺらで目方がないのを恥かしく思った。 何を咄したか忘れてしまったが、今でも頭脳に固く印しているのは、その時卓子の上に読半しの書籍が開いたまま置かれてあったのを何で・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  7. ・・・ その声は低いけれども底力があって、なんだか私を命令するようでした。『ここで見てやるから持って来い』と私は外から言いました。『お入りなされと言うに!』と今度はなお強く言いましたので私も仕方がないから、のっそり内庭に入りました。私・・・<国木田独歩「女難」青空文庫>
  8. ・・・それにランプの焔はどこかしっかりした底力をもっているのに反して、蝋燭の焔は云わば根のない浮草のように果敢ない弱い感じがある。その上にだんだんに燃え縮まって行くという自覚は何となく私を落着かせない。私は蝋燭の光の下で落着いて仕事に没頭する気に・・・<寺田寅彦「石油ランプ」青空文庫>
  9. ・・・けれどもいかにも無邪気な子供らしい声が、呼んだり答えたり、勝手にひとり叫んだり、わあと笑ったり、その間には太い底力のある大人の声もまじって聞えて来たのです。いかにも何か面白そうなのです。たまらなくなって、私はそっちへ走りました。さるとりいば・・・<宮沢賢治「茨海小学校」青空文庫>
  10. ・・・ 自分とAとのことも、或底力を得た。とにかく、行く処迄、真心を以て行かせよう。彼が死ぬことになるか、自分がどうかなるか、どちらでもよい。信仰を持ち、人生のおろそかでないことを知ってやる丈やって見ようと云う心持がはっきり来たのだ。 此・・・<宮本百合子「有島武郎の死によせて」青空文庫>
  11. ・・・千代の優婉らしい挙止の裡にはさほ子が圧迫を感じる底力があった。千代の方は一向平然としている丈、さほ子は神経質になった。 千代を傍観者として後片づけをしていると、良人は、さほ子に訊いた。「どうだね?」 気づかれのした彼女は、ぐった・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  12. ・・・活に身を投じて、辛い辛い思いで自分を支えて行かなければならない――ここで、人として独立の自信を持ち得ない、持つ丈の実力を欠いている彼女は、何処かに遺っている過去の、殆ど習性にさえ成った日蔭の依頼主義の底力に押されて、非常に微細に、非常に滑っ・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  13. ・・・ 舞台上の人物として柄の大きいこと、地が男である為、扮装にも挙止にも殊に女性の特徴を強調しつつ、何処かに底力のある強さ、実際にあてはめて見ると、純粋の女でもなし、男でもないと云う一種幻想的な特殊の美が醸される点などは、場合によって、多く・・・<宮本百合子「気むずかしやの見物」青空文庫>
  14. ・・・イの生きかたやゴーリキイと何かの形で不断の接触を保ちつつゴーリキイを発展せしめると同時に、そのことによって大衆のうちに蔵されている巨大な階級的芸術の可能性の見本をひき出して行った、ロシアの階級的組織の底力というものに深く感銘したことがあった・・・<宮本百合子「作家研究ノート」青空文庫>
  15. ・・・作者の日常生活の中では目に入れられなかった大都会のはしはしの、不潔な、日夜雑沓し、工場の黒煙濛々たる労働者街の自然、激しい汗を流させる労働の対象としての自然が、その息苦しい、だがバルザックを恐怖させた底力をもって、歴史を自身の肩で押しすすめ・・・<宮本百合子「自然描写における社会性について」青空文庫>
  16. ・・・ けれども、その悲哀は自分の心から勇気を抜き去ったり、疲れを覚えさせたりするような悲しみではなく、かえって、心に底力を与え、雄々しさを添えるものであることを彼女は感じた。 そして、無限に起って来るべき不調和と、衝突とに向って、それが・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  17. ・・・たしかに中国人は底の知れない深さと底力をもっている」ことに圧迫をうける。しかし、その中国人、正しくは中国のプロレタリアート・農民に対して、筆者をこめての武力的侵害者の一団が、どういう関係にあるかということは、一言もふれられていない。そこまで・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  18. ・・・ 勇ましい、底力のある声である。 暫くすると木精が答えた。大きい大きい声である。山々に響き谷々に響く。 空に聳えている山々の巓は、この時あざやかな紅に染まる。そしてあちこちにある樅の木立は次第に濃くなる鼠色に漬されて行く。 ・・・<森鴎外「木精」青空文庫>
  19. ・・・そして底力のある勇気の徐々によみがえって来ることを意識する。二 ただ「知る」だけでは何にもならない、真に知ることが、体得することが、重大なのだ。――これは古い言葉である。しかし私は時々今さららしくその心持ちを経験する。 ・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  20. ・・・私は底力のある興奮を心の奥底に感じ始めた。 私の眼はすぐに老樹の根に向かった。地下の烈しい営みはすでに地上一尺のところに明らかに現われている。土の層の深くないらしいこの山に育ってあの亭々たる巨幹をささえるために、太い強靱な根は力限り四方・・・<和辻哲郎「樹の根」青空文庫>
  21. ・・・巨大な欧米風建築に取り囲まれた宮城前の広場に立ってしみじみと感ぜさせられることは、江戸時代の遺構が実に強い底力を持っているということである。それは周囲に対立者のない時にはさほど目立たなかった。それほど何げのない、なだらかな、当たり前の形をし・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>
  22. ・・・また執拗な利己主義を窒息させなければやまない正義の重圧の気味悪い底力も、前者ほど突っ込んではないが、力を入れて描いてある。次の『道草』においても利己主義は自己の問題として愛との対決を迫られている。この作で特に目につくのは、主人公の我がいかに・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>