そこ‐びえ【底冷え】例文一覧 6件

  1. ・・・京都は冬は底冷えし、夏は堪えられぬくらい暑くおまけに人間が薄情で、けちで、歯がゆいくらい引っ込み思案で、陰険で、頑固で結局景色と言葉の美しさだけと言った人があるくらい京都の、ことに女の言葉は音楽的でうっとりさせられてしまう。しかし、私は京都・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  2. ・・・妙に底冷えがして、おなかが痛くて困っていたら、私はまた外に出されて日の目を見る事が出来ました。こんどは私は、医学生の顕微鏡一つとかえられたのでした。私はその医学生に連れられて、ずいぶん遠くへ旅行しました。そうしてとうとう、瀬戸内海のある小さ・・・<太宰治「貨幣」青空文庫>
  3. ・・・町はば、せまく、家々の軒は黒く、根強く低く、家の中の電燈は薄暗く、ランプか行燈でも、ともしているよう。底冷えして、路には大きい石ころがごろごろして、馬の糞だらけ。ときどき、すすけた古い型のバスが、ふとった図体をゆすぶりゆすぶり走って通る。木・・・<太宰治「八十八夜」青空文庫>
  4. ・・・今頃は、どの耕野をも満して居るだろう冬枯れの風の音と、透明そのもののような空気の厳かさを想った。底冷えこそするが、此庭に、そのすがすがしさが十分の一でもあるだろうか。 ――間近に迫った人家の屋根や雨に打れ風に曝された羽目を見、自分の立っ・・・<宮本百合子「餌」青空文庫>
  5. ・・・ 滅入るように静かな天地には、もうそろそろ冬の寒さが争われない勢を見せて、すがれた叢、音もなく落葉して行く木立の梢を包んで底冷えのする空気がそこともなく流れている。 やがては霜になろうとする霧が、泥絵具の茶と緑を混ぜて刷いたような山・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  6. ・・・そうして才能を重大視するなといういろいろの人の言葉が、私の底冷えのしている心に温かい慰めを与えてくれます。天才は勉強だ、彼らの才能はさほど特殊なものではない、才能少なくして偉大な人間になった人はあらゆる方面にある、彼らはただごまかしをしない・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>