そ‐しゃく【××嚼】例文一覧 8件

  1. ・・・何でも鵜呑みにしては消化されない、歯の咀嚼能力は退化し、食ったものは栄養にならない。しかるに如何なる案内者といえども絶対的に誤謬のないという事は保証し難い。仮りに如何に博学多識の学者を案内として名所見物をするとしても、その人の所説にはそれぞ・・・<寺田寅彦「科学上における権威の価値と弊害」青空文庫>
  2. ・・・柔らかい牛肉も魚のさし身もろくにかめなくなり、おしまいには米の飯さえ満足に咀嚼することが困難になったので、とうとう思い切って根本的に大清算を決行して上下の入れ歯をこしらえたのが四十余歳のころであった。上あごの硬口蓋前半をぴったりふたをしてし・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  3. ・・・御膳を出してやって、その上に箸で口へ持ち込んでやって丸呑みにさせるという風な育て方よりも、生徒自身に箸をとってよく選り分け、よく味わい、よく咀嚼させる方がよい。すぐ消化され吸収されるものばかりでなく、折々は不消化物も与えないと胃の機能が衰え・・・<寺田寅彦「物理学実験の教授について」青空文庫>
  4. ・・・一は能く他国の文化を咀嚼玩味して自己薬籠中の物となしたるに反して、一は徒に新奇を迎うるにのみ急しく全く己れを省る遑なきことである。これそも何が故に然るや。今人の智能古人に比して劣れるが故か。将また時勢の累するところか。わたくしは知らない。わ・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  5. ・・・ 読書でも、音楽をきくことでも、演劇、映画を見ることでも、只見聞くという消費的な接触を進めて、自分の心持ちをそのものに向って展いてうけ入れて考えてゆき、自分の生活の実際との結びつきで、いつも咀嚼してゆくということが、大事な心の営養のヴィ・・・<宮本百合子「女性の生活態度」青空文庫>
  6. ・・・ということは、食うという動作に妙な自覚を与えられる――つまり、その感じを少しつきつめて行くと、度はずれな人気なさと錯雑した色彩の跳梁とで何処やらアラン・ポウ的幻想が潜んでいそうな室内で、顎骨を上下させ咀嚼作用を営んでいる孤独な自分等が、変に・・・<宮本百合子「長崎の印象」青空文庫>
  7. ・・・その一つは古典が文学として発生した歴史性を立体的に咀嚼して、そこからの滋養分を摂取してゆこうとする発展的、批判的摂取の態度であり、他の一つは、それとは反対にどちらかと云うと外部的に、様式、文脈の応用を狙ったような古典のひもときかたをしてゆく・・・<宮本百合子「文学上の復古的提唱に対して」青空文庫>
  8. ・・・欧州文化の咀嚼においても、また自国文化の自覚においても。浜田耕作氏によると、大阪城大手門入り口の大石の一は横三十五尺七寸高さ十七尺五寸に達し、その他これに伯仲するものが少なくない。かりにこの石の厚さを八尺とし、一立方尺の石の重さ・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>