そそ‐くさ例文一覧 21件

  1. ・・・彼は、落ちつかない。そそくさしている。「△円△△銭になります。」「そうでござんすか。」 お里は金を出す。無断で借りて帰った分のことをどうしようかと心で迷う。今云い出すと却って内儀に邪推されやしないだろうか?…… 番頭は金を受・・・<黒島伝治「窃む女」青空文庫>
  2. ・・・と剽軽に返事して、老人はそそくさ着物を着込んで、消えるように居なくなってしまいました。佐吉さんは急に大声出して笑い、「江島のお父さんですよ。江島を可愛くって仕様が無いんですよ。へえ、と言いましたね。」 やがてビイルが届き、様々の料理・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  3. ・・・ 雨がやんで、夫は逃げるようにそそくさと出かけ、それから三日後に、あの諏訪湖心中の記事が新聞に小さく出ました。 それから、諏訪の宿から出した夫の手紙も私は、受取りました。「自分がこの女の人と死ぬのは、恋のためではない。自分は、ジ・・・<太宰治「おさん」青空文庫>
  4. ・・・私は、いかにも用事ありげに、そそくさと外出した。 けれども、行くところは無い。ふと思いついた。一つ牛込の瀬川さんを訪れて、私の愚痴を聞いてもらおうかと思った。 さいわい先生は御在宅であった。私は大隅君の上京を報告して、「どうも、・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  5. ・・・そのころ地平、縞の派手な春服を新調して、部屋の中で、一度、私に着せて見せて、すぐ、おのが失態に気づいて、そそくさと脱ぎ捨てて、つんとすまして見せたが、かれ、この服を死ぬるほど着て歩きたく、けれども、こうして部屋の中でだけ着て、うろうろしてい・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  6. ・・・袂から、そそくさと小さい名刺を出した。「裏に、ここの住所も書いて置きましたから、もし、適当のかたが見つかったら、ごめんどうでも、ハガキか何かで、ちょっと教えて下さいまし。ほんとうに、ごめいわくさまです。子供が幾人あっても、私のほうは、かまい・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  7. ・・・玄関に立ったままで六畳間のほうを頸かしげて覗くと、青扇は、どてら姿で寝床をそそくさと取りかたづけていた。ほのぐらい電燈の下の青扇の顔は、おやと思ったほど老けて見えた。「もうおやすみですか。」「え。いいえ。かまいません。一日いっぱい寝・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  8. ・・・ お昼少しすぎた頃、主人は、どうやら一つお仕事をまとめたようで、その原稿をお持ちになって、そそくさと外出してしまった。雑誌社に原稿を届けに行ったのだが、あの御様子では、またお帰りがおそくなるかも知れない。どうも、あんなに、そそくさと逃げ・・・<太宰治「十二月八日」青空文庫>
  9. ・・・ふたり、たいへん興ざめして、そそくさと立ちあがり、手拭い持って、階下の大浴場へ降りて行く。 過去も、明日も、語るまい。ただ、このひとときを、情にみちたひとときを、と沈黙のうちに固く誓約して、私も、Kも旅に出た。家庭の事情を語ってはならぬ・・・<太宰治「秋風記」青空文庫>
  10. ・・・神社の森の中は、暗いので、あわてて立ち上って、おお、こわこわ、と言い肩を小さく窄めて、そそくさ森を通り抜け、森のそとの明るさに、わざと驚いたようなふうをして、いろいろ新しく新しく、と心掛けて田舎の道を、凝って歩いているうちに、なんだか、たま・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  11. ・・・夜のまったく明けはなれたころ、二人は、帝国ホテルの前庭の蓮の池のほとりでお互いに顔をそむけながら力の抜けた握手を交してそそくさと別れ、その日のうちにシゲティは横浜からエムプレス・オブ・カナダ号に乗船してアメリカへむけて旅立ち、その翌る日、東・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  12. ・・・ここに暫くとじこもって一つの仕事が出来あがると私は、そそくさと三鷹を引き上げる。逃げ出すのである。旅に出る。けれども、旅に出たって、私の家はどこにも無い。あちこちうろついて、そうしていつも三鷹の事ばかり考えている。三鷹に帰ると、またすぐ旅の・・・<太宰治「誰」青空文庫>
  13. ・・・しかった衣類の、大半を、戦火で焼いてしまったので、こんど生れる子供の産衣やら蒲団やら、おしめやら、全くやりくりの方法がつかず、母は呆然として溜息ばかりついている様子であるが、父はそれに気附かぬ振りしてそそくさと外出する。 ついさっき私は・・・<太宰治「父」青空文庫>
  14. ・・・脱衣場で、そそくさ着物を着ていたら、湯槽のほうでは、なごやかな世間話がはじまった。やはり私が、気取って口を引きしめて、きょろきょろしていると異様のもので、老人たちにも、多少気づまりの思いを懐かせていたらしく、私がいなくなると、みんなその窮屈・・・<太宰治「美少女」青空文庫>
  15. ・・・(急にはにかみ、畳の上の出刃庖丁をそそくさと懐失礼しました。帰りましょう。清蔵さん、早くお嫁をもらいなさい。数枝には、もう、……。お母さん! そうですか。数枝さん、あなたもひどい女だ。凄い腕だ。おそれいりましたよ。私が毛虫なら、・・・<太宰治「冬の花火」青空文庫>
  16. ・・・上り下りの電車がホームに到着するごとに、たくさんの人が電車の戸口から吐き出され、どやどや改札口にやって来て、一様に怒っているような顔をして、パスを出したり、切符を手渡したり、それから、そそくさと脇目も振らず歩いて、私の坐っているベンチの前を・・・<太宰治「待つ」青空文庫>
  17. ・・・貞子は、あわてそそくさと降りて、三浦君のほうを振り返り振り返り、それでも姉の後に附いて行った。 三浦君のバスは動いた。いきなり妹は、くるりとこちらに向き直って一散に駈けた。バスも走る。妹は、泣くように顔をゆがめて二十メートルくらい追いか・・・<太宰治「律子と貞子」青空文庫>
  18. ・・・毎日、用事ありげに、麹町の自宅の裏門から、そそくさと出掛ける。実に素早い。この祖父は、壮年の頃は横浜で、かなりの貿易商を営んでいたのである。令息の故新之助氏が、美術学校へ入学した時にも、少しも反対せぬばかりか、かえって身辺の者に誇ってさえい・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  19. ・・・ 酒保の男は手をつけかねてしばし立って見ていたが、そのまま、蝋燭の蝋を垂らして、テーブルの上にそれを立てて、そそくさと扉の外へ出ていった。蝋燭の光で室は昼のように明るくなった。隅に置いた自分の背嚢と銃とがかれの眼に入った。 蝋燭の火・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  20. ・・・まアお待ちよと言ったが、なかなか言うことを聞きそうにもないので、洗濯の手を前垂れでそそくさと拭いて、前の縁側に腰をかけて、子供を抱いてやった。そこへ総領の女の児も来て立っている。 客間兼帯の書斎は六畳で、ガラスの嵌まった小さい西洋書箱が・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  21. ・・・ だまって顔を見合わせた二人はそそくさと出て行って庭の中で雨にぬれながら押し出された様な声で笑って居た。 又私の居る処へ来て玄関の土間へ声をかける、「どうにかして、もう一台だけ入れないかい?「どうして入れるもんかい、馬鹿・・・<宮本百合子「通り雨」青空文庫>