そだ・てる【育てる】例文一覧 30件

  1. ・・・が、何しろ御維新以来、女気のない寺ですから、育てると云ったにした所が、容易な事じゃありません。守りをするのから牛乳の世話まで、和尚自身が看経の暇には、面倒を見ると云う始末なのです。何でも一度なぞは勇之助が、風か何か引いていた時、折悪く河岸の・・・<芥川竜之介「捨児」青空文庫>
  2. ・・・われらはいま多くのわが子を育てるのに苦労してるが……と考えた時、世の中があまりありがたくなく思われだした。いままで知らなかったさびしさを深く脳裏に彫りつけた。夫婦ふたりの手で七、八人の子どもをかかえ、僕が棹を取り妻が舵を取るという小さな舟で・・・<伊藤左千夫「去年」青空文庫>
  3. ・・・ 二人は、その赤ん坊を育てることにしました。その子は女の子であったのです。そして胴から下のほうは、人間の姿でなく、魚の形をしていましたので、おじいさんも、おばあさんも、話に聞いている人魚にちがいないと思いました。「これは、人間の子じ・・・<小川未明「赤いろうそくと人魚」青空文庫>
  4. ・・・ 二人は、その赤ん坊を育てることにしました。その子は女の児であったのであります。そして胴から下の方は、人間の姿でなく、魚の形をしていましたので、お爺さんも、お婆さんも、話に聞いている人魚にちがいないと思いました。「これは、人間の子じ・・・<小川未明「赤い蝋燭と人魚」青空文庫>
  5. ・・・「子供を育てると同じようなもので、草でも木でも丹誠ひとつだ。」 こう、おじいさんは、いったのでした。それから、おじいさんは、朝起きて、出かける前に、鉢を日あたりに出してやりました。また帰れば店さきにいれてやり、そしてときどきは雨にあ・・・<小川未明「おじいさんが捨てたら」青空文庫>
  6. ・・・お辰は柳吉の方を向いて、蝶子は痲疹厄の他には風邪一つひかしたことはない、また身体のどこ探してもかすり傷一つないはず、それまでに育てる苦労は……言い出して泪の一つも出る始末に、柳吉は耳の痛い気がした。 二三日、狭苦しい種吉の家でごろご・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  7. ・・・急進党なることこそその原因に候なれ、妻はご存じの田舎者にて当今の女学校に入学せしことなければ、育児学など申す学問いたせしにもあらず、言わば昔風の家に育ちしただの女が初めて子を持ちしまでゆえ、無論小児を育てる上に不行き届きのこと多きに引き換え・・・<国木田独歩「初孫」青空文庫>
  8. ・・・ 性交は夫婦でなくてもできるが、子どもを育てるということは人間のように愛が進化し、また子どもが一人前になるのに世話のやける境涯では、夫婦生活でなくては不都合だ。それが夫婦生活を固定させた大きな条件なのだから、したがって、夫婦愛は子どもを・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  9.       一 子供が一人ぐらいの時はまだいゝが、二人三人となると、育てるのがなかなか容易でない。子供のほしがるものは親として出来るだけ与えたい。お菓子、おもちゃ、帽子、三輪車――この頃は田舎でも三輪車が流行っている・・・<黒島伝治「窃む女」青空文庫>
  10. ・・・「二人育てるも、三人育てるも、世話する身には同じことだ。」 と、私も考え直した。長いこと親戚のほうに預けてあった娘が学齢に達するほど成人して、また親のふところに帰って来たということは、私に取っての新しいよろこびでもあった。そのころの・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  11. ・・・ 子供を育てるには、寒く、ひもじく、とある人がかつて私に言ってみせたが、あれは忘れられない言葉として私の記憶に残っている。あまり多くを与え過ぎないように、そうかと言ってなるべく子供らが手足を延ばせるように。私も艱難に艱難の続いたような自・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  12. ・・・すると母は、弟をなだめて、その犬の子は兄さんのごはんで育てるのだからな、と妙な事をまじめな顔で言います。兄さんのごはんとは、どんな事だか、私が自分でたべるごはんをたべないでその犬の子に与えて養うべきだという意味だったのでしょうか、それとも、・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  13. ・・・      四 紅雀 年を取った独身の兄と妹が孤児院の女の児を引取って育てる。その娘が大きくなって恋をする、といったような甘い通俗的な人情映画であるが、しかし映画的の取扱いがわりにさらさらとして見ていて気持のいい、何かしら美・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  14. ・・・ 子供を育てる親たちの参考になれば幸いである。     四 宇宙線 理化学が進めば世の中に不思議はなくなるであろうと言う人がある。しかし科学が進めばかえって今まで知られなかった新しい不思議なものも出て来るのである。現在物・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  15. ・・・人にすすめられた種だけをまいて、育たないはずのものを育てる努力にひと春を浪費しなくてもよさそうに思われる。それかといって一度育たなかった種は永久に育たぬときめることもない。前年に植えたもののいかんによって次の年に適当なものの種類はおのずから・・・<寺田寅彦「読書の今昔」青空文庫>
  16. ・・・男の子なれば之を寵愛して恣に育てるも苦しからずや。養家に行きて気随気儘に身を持崩し妻に疏まれ、又は由なき事に舅を恨み譏りて家内に風波を起し、終に離縁されても其身の恥辱とするに足らざるか。ソンナ不理窟はなかる可し。女子の身に恥ず可きことは男子・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  17. ・・・そしてある目的の作物を育てるのでありますがこの際一番自然なことは畑一杯草が生えて作物が負けてしまうことです。これは一番自然です。前論士がもし農場を経営なすった際には参観さして戴きたい。又人間には盗むというような考があります。これは極めて自然・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  18. ・・・ 人間を育てる根本の精神では、男の子も女の子も、同じであってよいと思います。 女の子は、愛嬌がないときらわれる、意志がつよいと敬遠される、と、受け身にばかり育てられた日本の若い女性が、今日、どのような姿で、この古い日本の躾の欠陥を社・・・<宮本百合子「新しい躾」青空文庫>
  19. ・・・過去の日本における結婚が女の生涯を縛りつけた重みの中には、生まされた子を育てるという悲しむべき受動性も勘定に入れられなければならないだろう。 葉子の鋭い感情の中でこの生々しい部分は何か安易にまとめられて描かれている。葉子自身が母の心とい・・・<宮本百合子「「或る女」についてのノート」青空文庫>
  20. ・・・ そういう孤児をソヴェト同盟では立派な働きてとして育てるために多くの費用をかけて国家で「子供の家」を組織したのがそもそも「子供の家」のはじまりです。 今では、モスクワみたいに大きい都会だと各区に一つ以上の「子供の家」をもっている。だ・・・<宮本百合子「従妹への手紙」青空文庫>
  21. ・・・人間は、より高大な、啓発された生活へ自分の霊を育てる為の助力者、試金石、として、先ず最も自分に近く、最も自分の負うべき自明の責任の権化である配偶を持たずには居られない本能を有するのではないか。 少くとも、自分は自分の結婚に対して、以上の・・・<宮本百合子「黄銅時代の為」青空文庫>
  22. ・・・の心配は、子供をどうして育てるかにかかっているであろう。 文部省の教育方針が本当にかわれば、中学へ息子をやるにさえ、家庭の資産状態が調べられなければならない。数年前デパートの女店員は家庭を助けたが、今は家庭が中流で両親そろい月給で生計を・・・<宮本百合子「「大人の文学」論の現実性」青空文庫>
  23. ・・・の主人公が私生児を育てる為に此の世の波と戦い抜いた姿こそ母性の尊い姿である、暁子にはそれが無いと云う事を論ぜられたようでした。法律的な立場から見て嬰児を死に到らしめた処置が制裁される事は誰しもとやかく云うべきでない事は知っています。然し女で・・・<宮本百合子「「女の一生」と志賀暁子の場合」青空文庫>
  24. ・・・ どんなに身勝手なひとに思いやりのない母親でも、この頃の母親なら自分の子供を育てるのに一応科学的な知識が必要だということは心得ている。自分の子のためになら随分と面倒くさいヴィタミン補給の方法もとるであろうと思う。こういう母親は、自分の子・・・<宮本百合子「科学の精神を」青空文庫>
  25. ・・・        苦しみ 母親は息子を育てる。苦しみ、案じ、労わり、可愛がって。 息子は漸く大学を卒業する。そこで母親は嫁貰いに骨折る。 息子は結婚すると、自分たちの若い世界へ出てゆく。母を離れて。 その息子の後姿・・・<宮本百合子「感情の動き」青空文庫>
  26. ・・・ 種だけ生産の場所からとって行って、それを育てるのは作家の書斎の中で温室的にやるのではなく、職場にあふれているプロレタリア芸術の種を、職場で、職場の労働者自身の手で育てあげよう。作家はそのために技術的助力をすべきであるという要求が、一般勤労・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  27. ・・・ この三郎の父親は新田義貞の馬の口取りで藤島の合戦の時主君とともに戦死をしてしまい、跡にはその時二歳になる孤子の三郎が残っていたので民部もそれを見て不愍に思い、引き取って育てる内に二年の後忍藻が生まれた。ところが三郎は成長するに従って武・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  28. ・・・私はただ与えられた物を愛し育てるために生きているのであった。私はただ自分の愛の力の弱らないように、また与えられた物の発育の止まらないように心配していればよい。私の苦しみと愛とで恐らく私の生活の価値は徐々に築かれて行くだろう。 運命を愛せ・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  29. ・・・すなわち村落の社会、特に彼を育てる家や彼の交わる仲間たちであった。さまざまの茸の中から特に初茸や黄茸や白茸やしめじ茸などを選び出して彼に示し、彼に味わわせ、またそれらを探し求める情熱と喜びとを彼に伝えたのは、彼の親や仲間たちであった。言いか・・・<和辻哲郎「茸狩り」青空文庫>
  30. ・・・杉苔を育てるのはむずかしいと承知しているから、二度とは試みなかった。ところが五、六年前、非常に雨の多かった年に、中庭の一部に一面に杉苔が芽を出した。秋ごろには、京都の杉苔の庭と同じように、一坪くらいの地面にふくふくと生えそろった。これはしめ・・・<和辻哲郎「京の四季」青空文庫>