そっ‐ちょく【率直】例文一覧 30件

  1. ・・・ 僕の今を率直にいえば、妻子が生命の大部分だ。野心も功名もむしろ心外いっさいの欲望も生命がどうかこうかあってのうえという固定的感念に支配されているのだ。僕の生命からしばらくなりとも妻や子を剥ぎ取っておくならば、僕はもう物の役に立たないも・・・<伊藤左千夫「去年」青空文庫>
  2. ・・・、その意味は、私のペン・ネエムは知っていても本名は知らなかったので失礼した、アトで偶っと気がついて取敢えずお詫びに上ったがお留守で残念をした、ドウカ悪く思わないで復た遊びに来てくれという、慇懃な、但し率直な親みのある手紙だった。 折返し・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  3. ・・・が、その日の書生は風采態度が一と癖あり気な上に、キビキビした歯切れのイイ江戸弁で率直に言放すのがタダ者ならず見えたので、イツモは十日も二十日も捨置くのを、何となく気に掛ってその晩、ドウセ物にはなるまいと内心馬鹿にしながらも二、三枚めくると、・・・<内田魯庵「露伴の出世咄」青空文庫>
  4. ・・・ けれども天の与えた性質からいうと、彼は率直で、単純で、そしてどこかに圧ゆべからざる勇猛心を持っていた。勇猛心というよりか、敢為の気象といったほうがよかろう。すなわち一転すれば冒険心となり、再転すれば山気となるのである。現に彼の父は山気・・・<国木田独歩「非凡なる凡人」青空文庫>
  5. ・・・やはり自然に率直に朗らかに「求めよさらば与えられん」という態度で立ち向かうことをすすめたい。 けれども有限なる人生において、事実は叢雲が待ちかまえているのは避けられないことを知る以上、対人関係はつつましく運命を畏む心で行なわれねばならな・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  6. ・・・むずかしすぎる。」率直に白状してしまった。「僕にやらせて下さい。僕に、」ろくろく考えもせず、すぐに大声あげて名乗り出たのは末弟である。がぶがぶ大コップの果汁を飲んで、やおら御意見開陳。「僕は、僕は、こう思いますねえ。」いやに、老成ぶった・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  7. ・・・私が、いま考えている事を、そのまま率直に述べたら、人は、たちまち私を狂人あつかいにするだろう。狂人あつかいは、いやだ。やはり私は、沈黙していなければならぬ。もう少しの我慢である。 ああ早く、一枚三円以上の小説ばかりを書きたい。こんな・・・<太宰治「自作を語る」青空文庫>
  8. ・・・きたない打算は、やめるがよい。率直な行動には、悔いが無い。あとは天意におまかせするばかりなのだ。 つい先日も私は、叔母から長い手紙をもらって、それに対して、次のような返事を出した。その文面は、そのまんま或る新聞の文芸欄に発表せられた。・・・<太宰治「新郎」青空文庫>
  9. ・・・私のような謂わば一介の貧書生に、河内さんのお家の事情を全部、率直に打ち明けて下され、このような状態であるから、とても君の希望に副うことのできないのが明白であるのに、尚ぐずぐずしているのも本意ないゆえ、この際きっぱりお断りいたします、とおっし・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  10. ・・・ 思うに、太宰はあれは小心者だから、ウイスキイでも飲ませて少し元気をつけさせなければ、浮浪者とろくに対談も出来ないに違いないという本社編輯部の好意ある取計らいであったのかも知れませんが、率直に言いますと、そのウイスキイは甚だ奇怪なしろも・・・<太宰治「美男子と煙草」青空文庫>
  11. ・・・その生物とは何であるか、そのことあまりに深刻にして諸氏の胸を傷つけるであろうがこれ真理であるから避け得ない、率直に述べようと思う。総ての生物はみな無量の劫の昔から流転に流転を重ねて来た。流転の階段は大きく分けて九つある。われらはまのあたりそ・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  12. ・・・ それから二三日たって、そのフランドンの豚は、どさりと上から落ちて来た一かたまりのたべ物から、(大学生諸君、意志を鞏固にもち給たべ物の中から、一寸細長い白いもので、さきにみじかい毛を植えた、ごく率直に云うならば、ラクダ印の歯磨楊子、それ・・・<宮沢賢治「フランドン農学校の豚」青空文庫>
  13. ・・・の夏子の愛くるしさは躍如としているし、その愛らしい妹への野々村の情愛、夏子を愛する村岡の率直な情熱、思い設けない夏子の病死と死の悲しみにたえて行こうとする村岡の心持など、いかにもこの作者らしい一貫性で語られている。 こういう文章のたちと・・・<宮本百合子「「愛と死」」青空文庫>
  14. ・・・なぜといえば、トルーマン再選を奇蹟的だの意外だのと書きながら、一方でその新聞は、トルーマンは彼の困難な選挙活動のはじまりから、非民主的だった第八十議会の実状を率直に訴えれば、アメリカ市民は彼に協力するにちがいないという十分の確信にたっていた・・・<宮本百合子「新しい潮」青空文庫>
  15. ・・・ 同じ辛苦をしながらも、親たちが、いつも明るい愛と勇気と、率直公平な物わかりよさをもって困難をしのいでゆくならば、子供たちは、困苦の中にも伸び伸びとして育つものです。これまでにしろ、誰が金持の子なら必ず立派だと考えていたでしょう。却って・・・<宮本百合子「新しい躾」青空文庫>
  16. ・・・ きょうの若い女性に出あって、一つ、きわめて率直な質問をいたします。あなたは、あなたのお母さんが生きていらしたとおりの女の一生を御自分でくりかえして見たいとお思いですか、と。――そうきかれたとき、幾人のかたがイエスとお答えなさるでしょう・・・<宮本百合子「新しい卒業生の皆さんへ」青空文庫>
  17. ・・・作業場の設置者、技術指導者は、きわめて公平といえばいえる率直さで娘たちが立派に男の熟練工なみどころか、外国の技術者の五倍もの能力をもっていることを承認している。ところが、それに対する賃銀となると村の標準、しかも村の女の労銀との比較で問題にな・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  18. ・・・ 万葉集を読んだ人は、誰でもあの詩歌の世界で、実にすなおに率直に男女の心持が流露されているのを知っているが、あのなかには沢山の可愛い女、美しい女、あでやかな女を恋い讚えた表現があるけれども、一つも女らしい女という規準で讚美されている女の・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  19. ・・・ 今日新しい社会的な環境の中で、両性の協力ということを友情や、恋愛の感情の基本にあるものとして、一般がとり上げ初めたこと、そして私もその角度から率直に、話せるようになって来た事。このことを考えただけでも、日本の社会が絶大な犠牲を払って歩・・・<宮本百合子「あとがき(『幸福について』)」青空文庫>
  20. ・・・ ソヴェト紹介の文章そのものの率直さ、何のためらいもなく真直じかに主題にふれ共産党の存在にふれている明るさが、この事実を直截に示している。それからあとプロレタリア文化文学運動の圧殺されたのち、『冬を越す蕾』『明日への精神』が、辛うじて出・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」青空文庫>
  21. ・・・ど苦しみながら、その苦しみの原因を、自分の内にあるものと、対手のひとのもっているものの考えかたの社会的な性質のちがいにおいて発見する力をもっていなかったように、自分をどうしていいか分らなかった作者が、率直に、「古き小画」のルスタムをも彼の憤・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」青空文庫>
  22. ・・・ 諷刺は攻撃的だ。率直だ。動的で、生活的だ。 活溌な闘争にしたがう世界のプロレタリアートは、だから一方にはブルジョア社会への攻撃の武器として、他方には自己批判の武器として、諷刺をアレゴリーとはくらべものにならない効果で利用しているわ・・・<宮本百合子「新たなプロレタリア文学」青空文庫>
  23. ・・・何故なら、率直に言ってこれは菊判六百頁に近い程長く書かせる種類の題材でなく感じられたし、長篇小説として見ればどちらかと言えば成功し難い作品であるから。しかも、作者は一種の熱中をもって主人公葉子の感情のあらゆる波を追究しようとしていて、時には・・・<宮本百合子「「或る女」についてのノート」青空文庫>
  24. ・・・「それは、もう当然、問題にするべきなんです。しかし……今の理事は――」「どなたから提案なさるということも不可能なんでしょうか」「率直にいって麻痺していますからね、どの点からも――。想像もしていないでしょう」「しかたがないとい・・・<宮本百合子「ある回想から」青空文庫>
  25. ・・・常識的な大人を恐怖させるほど率直な真実探求の欲望にもえる十五六歳より以後の年代を、これらの有能な精神は、そのままの真率さで戦争のための生命否定、自我の放棄へ導きこまれた。専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のもの・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  26. ・・・ 十五六歳のういういしい情感の上にそのさまざまな姿が描かれるばかりでなく、二十歳をかなり進んだひとたちも三十歳の人妻もあるいは四十歳を越して娘が少女期を脱しかけている年頃の女性たちも、率直な心底をうちわってその心持を披瀝すれば、案外にも・・・<宮本百合子「異性の友情」青空文庫>
  27. ・・・自分ではひどく不満足に思っているが、率直な、一切の修飾を却けた秀麿の記述は、これまでの卒業論文には余り類がないと云うことであった。 丁度この卒業論文問題の起った頃からである。秀麿は別に病気はないのに、元気がなくなって、顔色が蒼く、目が異・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  28. ・・・しかしこの方面の批評をした人の中には、「世間がファウストを本質以上に買い被っていた迷を、私の平俗な文と演出者の率直な技とで打破したのだ、私と演出者とは偶像破壊者だ」と云った人もある。これは一種の諷刺のようにも聞き取られるが、ある友達の云うに・・・<森鴎外「訳本ファウストについて」青空文庫>
  29. ・・・であって、その点、伝統的な思想と少しも変わらないのであるが、しかしその正直を説く態度のなかに、前代に見られないような率直さ、おのれを赤裸々に投げ出し得る強さが見られると思う。「上たるをば敬ひ、下たるをばあはれみ、あるをばあるとし、なきをばな・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  30. ・・・実に人間的に率直に悲しんでいられる。亡きわが児が可愛いのは何の理由もない、ただわけもなく可愛い。甘いものは甘い、辛いものは辛いというと同じように可愛い。ここまで育てて置いて亡くしたのは惜しかろうと言って同情してくれる人もあるが、そんな意味で・・・<和辻哲郎「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」青空文庫>