そ‐む・く【背く/×叛く】例文一覧 20件

  1. ・・・すぐにこの女の子を送り返すか、それともおれの言いつけに背くか――」 婆さんはちょいとためらったようです。が、忽ち勇気をとり直すと、片手にナイフを握りながら、片手に妙子の襟髪を掴んで、ずるずる手もとへ引き寄せました。「この阿魔め。まだ・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・宗門の内証に背くものとして、呵責を加うる事数日なり。されどわれ、わが眼にて見、わが耳にて聞きたるこの悪魔「るしへる」を如何にかして疑う可き。悪魔また性善なり。断じて一切諸悪の根本にあらず。 ああ、汝、提宇子、すでに悪魔の何たるを知らず、・・・<芥川竜之介「るしへる」青空文庫>
  3. ・・・そして、有妻の男子が他の女と通ずる事を罪悪とし、背倫の行為とし、唾棄すべき事として秋毫寛すなき従来の道徳を、無理であり、苛酷であり、自然に背くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して、従来の道徳に何処までも・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  4. ・・・ 突俯して、(ただ仰向であった―― で、背くぐみに両膝を抱いて、動悸を圧え、潰された蜘蛛のごとくビルジングの壁際に踞んだ処は、やすものの、探偵小説の挿画に似て、われながら、浅ましく、情ない。「南無、身延様――三百六十三段。南・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  5. ・・・と、格子の方へくるりと背く。 紙屋は黙って、ふいと離れて、すぐ軒ならびの隣家の柱へ、腕で目をおさえるように、帽子ぐるみ附着いた。 何の真似やら、おなじような、あたまから羽織を引かぶった若い衆が、溝を伝うて、二人、三人、胡乱々々する。・・・<泉鏡花「みさごの鮨」青空文庫>
  6. ・・・と勤めたるを、老夫は残酷にも引き放ちて、「あれ!」と背くる耳に口、「どうだ、解ったか。なんでも、少しでもおまえが失望の苦痛をよけいに思い知るようにする。そのうち巡査のことをちっとでも忘れると、それ今夜のように人の婚礼を見せびらかした・・・<泉鏡花「夜行巡査」青空文庫>
  7. ・・・「だれの目にも仕合せだと思うに、それをいわれもなく、両親の意に背くような、そんな我儘はさせられないよ」「させられないたって、おッ母さんしようがないよ」「佐介、ばかいいをするな、おまえなどまでもそんな事いうようだから、こんな事にも・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  8. ・・・ 一、世々の道に背くことなし。 二、万ず依怙の心なし。 三、身に楽をたくまず。 四、一生の間欲心なし。 五、我事に於て後悔せず。 六、善悪につき他を妬まず。 七、何の道にも別を悲まず。 八、自他ともに恨みかこ・・・<太宰治「花吹雪」青空文庫>
  9. ・・・えらい見方をして人事に対するのが写生文家だと云う意義に解釈されては余の本旨に背く。えらい、えらくないは問題外である。ただ彼らの態度がこうだと云うまでに過ぎぬ。 この故に写生文家は自己の心的行動を叙する際にもやはり同一の筆法を用いる。彼ら・・・<夏目漱石「写生文」青空文庫>
  10. ・・・心騒しく眼恐しく云々、如何にも上流の人間にあるまじき事にして、必ずしも女の道に違うのみならず、男の道にも背くものなり。心気粗暴、眼光恐ろしく、動もすれば人に向て怒を発し、言語粗野にして能く罵り、人の上に立たんとして人を恨み又嫉み、自から誇り・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  11. ・・・  明治一六年二月編者識と記すべき法なるを、ある時、林大学頭より出したる受取書に、楷書をもって尋常に米と記しければ、勘定所の俗吏輩、いかでこれを許すべきや、成規に背くとて却下したるに、林家においてもこれに服せず、同家の用人と勘定所の・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  12. ・・・れを製しこれを易え、これを集め、これを散じ、人の知識礼義を進めて需用の物を饒にする所以を説き、これを大にすれば一国政府の出納、これを小にすれば一家日常の生計、自然の定則にしたがう者は富をいたし、これに背く者は貧をいたすの理を明らかにするの学・・・<福沢諭吉「学校の説」青空文庫>
  13. ・・・ けだしこの一味、つまりは聖人の本意にも非ず、また後世の儒者にても、その本意に背くを知りてこれを弁ずる者ありといえども、いかんせん、世人の精神に感ずるところは、道徳の一品をもって身を立るの資本となし、無芸にても無能にても、これに頓着せざ・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  14. ・・・大なる心得違にして、自然の理に背く者と言う可し。一 婦人の妊娠出産は勿論、出産後小児に乳を授け衣服を着せ寒暑昼夜の注意心配、他人の知らぬ所に苦労多く、身体も為めに瘠せ衰うる程の次第なれば、父たる者は其苦労を分ち、仮令い戸外の業務あるも事・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  15. ・・・時勢の変遷、これを前知する能わざるは、誰れ人も一様なるその中に、余が志し、また企てたる事は、あたかもその変遷の勢に背くこと少なかりしがゆえに、今日なお未だ貧乏もせざることならん。然りといえども、他の僥倖は決して学ぶべき事柄にあらず。一身にし・・・<福沢諭吉「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」青空文庫>
  16. ・・・とは、ほとんど下等社会にまで通用の教にして、特別の理由あるに非ざればこの教に背くを許さず。日支両国の気風、すなわち両国に行わるる公議輿論の、相異なるものにして、天淵ただならざるを見るべし。 然るにその国人のもっとも尊崇する徳教は何ものな・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  17. ・・・結局その子をして無智無徳の不幸に陥らしめ、天理人道に背く罪人なり。人の父母としてその子の病身なるを患ざるものなし。心の人にしかざるは、身体の不具なるよりも劣るものなるに、ひとりその身体の病を患て心の病を患えざるは何ぞや。婦人の仁というべきか・・・<福沢諭吉「中津留別の書」青空文庫>
  18. ・・・ら勝算なきを悟りて謹慎するがごとき、表面には官軍に向て云々の口実ありといえども、その内実は徳川政府がその幕下たる二、三の強藩に敵するの勇気なく、勝敗をも試みずして降参したるものなれば、三河武士の精神に背くのみならず、我日本国民に固有する瘠我・・・<福沢諭吉「瘠我慢の説」青空文庫>
  19. ・・・まず博士の神学を挙げて二度これを満場に承認せしめこれを以て大前提とし次にビジテリアンがこれに背くことを述べて小前提とし最後にビジテリアンが故に神に背くことを断定し菜食なる小善の故に神に背くの大罪を犯すことを暗示致されました。実に簡潔明瞭なる・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  20. ・・・は美術展覧会の裸体画を撤回させ「モリエールの作品が孝行の本義に背くと云って、その全訳を発禁に処した。そして更に時の首相陶庵公が序文を附したゾラの一訳書が、西園寺内閣の内務大臣によって発禁されたこともあった」 当時「文芸委員会」の委員であ・・・<宮本百合子「矛盾の一形態としての諸文化組織」青空文庫>