そら‐いろ【空色】例文一覧 19件

  1. ・・・褪紅色の洋服に空色の帽子を阿弥陀にかぶった、妙に生意気らしい少女である。少女は自働車のまん中にある真鍮の柱につかまったまま、両側の席を見まわした。が、生憎どちら側にも空いている席は一つもない。「お嬢さん。ここへおかけなさい。」 宣教・・・<芥川竜之介「少年」青空文庫>
  2. ・・・ この看板の前にのみ、洋服が一人、羽織袴が一人、真中に、白襟、空色紋着の、廂髪で痩せこけた女が一人交って、都合三人の木戸番が、自若として控えて、一言も言わず。 ただ、時々……「さあさあ看板に無い処は木曾もあるよ、木曾街道もあるよ・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  3. ・・・卓子を並べて、謡本少々と、扇子が並べてあったから、ほんの松の葉の寸志と見え、一樹が宝生雲の空色なのを譲りうけて、その一本を私に渡し、「いかが。」「これも望む処です。」 つい私は莞爾した。扇子店の真上の鴨居に、当夜の番組が大字で出・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  4. ・・・お幾は段を踏辷らすようにしてずるりと下りて店さきへ駆け出すと、欄干の下を駆け抜けて壁について今、婆さんの前へ衝と来たお米、素足のままで、細帯ばかり、空色の袷に襟のかかった寝衣の形で、寝床を脱出した窶れた姿、追かけられて逃げる風で、あわただし・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  5. ・・・黒繻子の襟のかかった縞の小袖に、ちっとすき切れのあるばかり、空色の絹のおなじ襟のかかった筒袖を、帯も見えないくらい引合せて、細りと着ていました。 その姿で手をつきました。ああ、うつくしい白い指、結立ての品のいい円髷の、情らしい柔順な髱の・・・<泉鏡花「雪霊記事」青空文庫>
  6. ・・・ そのとき、あちらの岩の上に空色の着物を着た、自分と同じい年ごろの十二、三歳の子供が、立っていて、こっちを見て手招ぎをしていました。正雄さんは、さっそくそのそばへ駆け寄って、「だれだい君は、やはり江の島へきているのかい。僕といっしょ・・・<小川未明「海の少年」青空文庫>
  7. ・・・三人はびっくりして後ろの方を振り向くと、空色の着物をきた子供が、どこからかついてきました。みなはその子供をまったく知らなかったのです。「このじいさんは、人さらいかもしれない。」と、その子供は同じことをいいました。これを聞くと三人は頭から・・・<小川未明「空色の着物をきた子供」青空文庫>
  8. ・・・浜辺にはいろいろな青や、白や、紫や、空色の花などがたくさんに咲いていました。けれどあの赤いとこなつと同じい花は見つかりませんでした。少女は姉さんの面影を思い出しては、恋しさのあまり泣きました。そして、その明くる日も、また彼女は浜辺に出ては、・・・<小川未明「夕焼け物語」青空文庫>
  9. ・・・新聞にも上野の彼岸桜がふくらみかけたといって、写真も出ていたが、なるほど、久しぶりで仰ぐ空色は、花曇りといった感じだった。まだ宵のうちだったが、この狭い下宿街の一廓にも義太夫の流しの音が聞えていた。「明日は叔父さんが来るだ……」おせいは・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  10. ・・・この遠く幽かなる空色は夏のすでに近きを示すがごとく思われぬ。されど空気は重く湿り、茂り合う葉桜の陰を忍びにかよう風の音は秋に異ならず、木立ちの夕闇は頭うなだれて影のごとく歩む人の類を心まつさまなり。ああこのごろ、年若き男の嘆息つきてこの木立・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  11. ・・・プルシャンブリューでは無論なしコバルトでも濃い過ぎるし、こんな空色は書きにくいと小山はつぶやきながら行った。 野に出て見ると、秋はやはり秋だ。楢林は薄く黄ばみ、農家の周囲に立つ高い欅は半ば落葉してその細い網のような枝を空にすかしている。・・・<国木田独歩「小春」青空文庫>
  12. ・・・路に迷いて御堂にしばし憩わんと入れば、銀に鏤ばむ祭壇の前に、空色の衣を肩より流して、黄金の髪に雲を起せるは誰ぞ」 女はふるえる声にて「ああ」とのみいう。床しからぬにもあらぬ昔の、今は忘るるをのみ心易しと念じたる矢先に、忽然と容赦もなく描・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  13. ・・・青き頭巾を眉深に被り空色の絹の下に鎖り帷子をつけた立派な男はワイアットであろう。これは会釈もなく舷から飛び上る。はなやかな鳥の毛を帽に挿して黄金作りの太刀の柄に左の手を懸け、銀の留め金にて飾れる靴の爪先を、軽げに石段の上に移すのはローリーか・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  14. ・・・日本女は空色エナメルの丸いヤカンをもっている。 廊下を曲ったところにいつも扉をあけっ放した一室がある。そこはホテルに働くものの為の休息室、食堂、職業組合のメストコム、党細胞で、一隅には赤布で飾った小図書部「赤い隅」がある。文盲者率の最も・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  15. ・・・ 毎日の生活に関係の深いいろいろな社会の出来ごとについて、正しい知識を得るとともに、本当に私たちの婦人雑誌として可愛く思う『働く婦人』が、創刊されたのは、今より十四年前一月のことでした。空色の地に明るい表情の婦人車掌の姿が描かれた表紙で・・・<宮本百合子「再刊の言葉」青空文庫>
  16. ・・・私は目玉をクルクルと三つまわしたばっかりでだまって家ににげ込んだ……     見たまま空色に 水色にかがやいて居る紫陽花に悪魔の使か黒蝶が謎のとぶよにとんで居る、ヒーラ、ヒーラ、ヒーラわきにく・・・<宮本百合子「つぼみ」青空文庫>
  17. ・・・ 賑やかに飾った祭壇、やや下って迫持の右側に、空色地に金の星をつけたゴシック風天蓋に覆われた聖母像、他の聖徒の像、赤いカーテンの下った懺悔台、其等のものが、ステインド・グラスを透す光線の下に鎮って居る。小さいが、奥みと落付きある御堂であ・・・<宮本百合子「長崎の一瞥」青空文庫>
  18. ・・・正面に祭壇、右手の迫持の下に、聖母まりあの像があるのだが、ゴシック風な迫持の曲線をそのまま利用した天蓋の内側は、ほんのり黄がかった優しい空色に彩られている。そこに、金の星が鏤めてある。星は、嬰児が始めて眼を瞠って認めた星のように大きい。つつ・・・<宮本百合子「長崎の印象」青空文庫>
  19. ・・・一寸離れて、空色裾模様の褄をとった芸者、二三人ずつかたまって伴をする。――芝居の園遊会じみた場面を作って通り過た。 写真をとるという時、前列に踞んだ芸者が、裾を泥にしまいと気にして、度々居ずまいをなおした。頭のてっぺんが平べったいような・・・<宮本百合子「百花園」青空文庫>