そりゃ例文一覧 30件

  1. ・・・「占いですか? 占いは当分見ないことにしましたよ」 婆さんは嘲るように、じろりと相手の顔を見ました。「この頃は折角見て上げても、御礼さえ碌にしない人が、多くなって来ましたからね」「そりゃ勿論御礼をするよ」 亜米利加人は惜・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・電車がそりゃこむもんだから。」 お絹はやはり横坐りのまま、器用に泥だらけの白足袋を脱いだ。洋一はその足袋を見ると、丸髷に結った姉の身のまわりに、まだ往来の雨のしぶきが、感ぜられるような心もちがした。「やっぱりお肚が痛むんでねえ。――・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  3. ・・・ 矢部は父のあまりの素朴さにユウモアでも感じたような態度で、にこやかな顔を見せながら、「そりゃ……しかしそれじゃ全く開墾費の金利にも廻りませんからなあ」 と言ったが、父は一気にせきこんで、「しかし現在、そうした売買になってる・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  4. ・・・「何という人だ。名札はあるかい。」「いいえ、名札なんか用りません。誰も知らないもののない方でございます。ほほほ、」「そりゃ知らないもののない人かも知れんがね、よそから来た私にゃ、名を聞かなくっちゃ分らんじゃないか、どなただよ。」・・・<泉鏡花「縁結び」青空文庫>
  5. ・・・「先生さまなどにゃおかしゅうござりましょうが、いま先生が水が黒いとおっしゃりますから、わし子どものときから聞いてることを、お笑いぐさに申しあげます」 かれはなおにこにこ笑ってる。「そりゃ聞きたい、早く聞かしてくれ」「へい、そ・・・<伊藤左千夫「河口湖」青空文庫>
  6. ・・・「随分手柄のあった人どす、なア」と、細君は僕の方に頸を動かした。「そりゃア」と、僕が話しかける間もなく、友人は言葉をついだ。「思て見ると、僕は独立家屋のそばまで後送して呉れた跡で、また進んで行て例の『沈着にせい、沈着にせい』をつ・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・「調戯じゃない。君と僕とドッチが先きへ死ぬか、年からいったって解るじゃないか。」「そりゃア解ってるさ。君のようにむやみと薬を飲むカラダじゃないからね。年なんかアテにならん。僕がアトへ残るのは知れ切ってる。こりゃあマジメだよ、君が死ね・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  8. ・・・こうやってトドの究りは、どこかの果の土になるんだ。そりゃまあいいが、旅で死んだ日にゃ犬猫も同じで、死骸も分らなけりゃ骨も残らねえ――残しておいてもしようがねえからね。すると、まるで私というものは影も形もなしに、この永え間の娑婆からずッと消え・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  9. ・・・私もまた少しは同情を惹く意味でか、ずいぶんとそりゃ女に語ったものです。もっとも同情を惹くといっても、哀れっぽく持ちだすなど気性からいってもできなかった。どうせ不景気な話だから、いっそ景気よく語ってやりましょう、子供のころでおぼえもなし、空想・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  10. ・・・「私もそりゃ、最初から貴方を車夫馬丁同様の人物と考えたんだと、そりゃどんな強い手段も用いたのです。がまさかそうとは考えなかったもんだから、相当の人格を有して居られる方だろうと信じて、これだけ緩慢に貴方の云いなりになって延期もして来たよう・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  11. ・・・すると、病人は直ぐ「看護婦さん、そりゃ間違っているでしょう。お母さん脈」といって手を差出しました。私はその手を握りながら「ああ脈は百十だね、呼吸は三十二」と訂正しました。普段から、こんな風に私は病人の苦痛を軽くする為に、何時も本当のことは言・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  12. ・・・ というふうなことを言っていたが、「そりゃおまえがびっくりすると思うてさ」 そう言いながら母は自分がそれを言ったことは別に意に介してないらしいので吉田はすぐにも「それじゃあんたは?」と聞きかえしたくなるのだったが、今はそんなこと・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  13. ・・・「母上さん、そりゃア貴女軍人が一番お好きでしょうよ」とじろりその横顔を見てやる。母のことだから、「オヤ異なことを言うね、も一度言って御覧」と眼を釣上げて詰寄るだろう。「御気に触わったら御勘弁。一ツ差上げましょう」と杯を奉まつる。・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  14. ・・・「ふむ。そりゃ、まあえいが、中学校を上ったって、えらい者になれやせんぜ。」「うちの源さん、まだ上へやる云いよらあの。」「ふむ。」と、叔父は、暫らく頭を傾けていた。「庄屋の旦那が、貧乏人が子供を市の学校へやるんをどえらい嫌うと・・・<黒島伝治「電報」青空文庫>
  15. ・・・「そりゃそういえば確にそうだが、忍術だって入用のものだから世に伊賀流も甲賀流もある。世間には忍術使いの美術家もなかなか多いよ。ハハハ。」「御前製作ということでさえ無ければ、少しも屈托は有りませんがナア。同じ火の芸術の人で陶工の愚斎は・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  16. ・・・「次郎ちゃん、ここの植木はどうなるんだい。」 この弟の言葉を聞くと、それまで妹と一緒に黒板の前に立って何かいたずら書きをしていた次郎が、白墨をそこに置いて三郎のいるほうへ行った。「そりゃ、引っこ抜いて持って行ったって、かまうもん・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・「まあ、でも、あんなところさ。そりゃもう、僕にくらべたら、どんな男でも、あほらしく見えるんだからね。我慢しな。」「そりゃ、そうね。」 娘さんは、その青年とあっさり結婚する気でいるようであった。 先夜、私は大酒を飲んだ。いや、・・・<太宰治「朝」青空文庫>
  18. ・・・葉書が来ない。そりゃ高慢になった。来た。そりゃ見せびらかす。チルナウエルの身になっては、どうして好いか分からない。 竜騎兵中尉も消え失せたようにいなくなった。いつも盛んな事ばかりして、人に評判せられたものが、今はどこにいるか、誰も知らな・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  19. ・・・自分は dy をやりながら聞くともなしに二人の対話を聞いていたら、雪ちゃんの声で「……角の店のを食ったの。そりゃホントニおいしいのよ。オソラク」と云った。このオソラクが甲走った声であったので、自分はふと耳を立てると、男の声で「オソラクってそ・・・<寺田寅彦「雪ちゃん」青空文庫>
  20. ・・・深水はからだをのりだすようにして、「そりゃええ、パトロンが出来たなら、鬼に金棒さ、うん――」 ゆあがりの胸をひろげて、うちわを大げさにうごかしている。頭髪にチックをつけている深水は、新婚の女房も意識にいれてるふうで、「――わしも・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  21. ・・・「そりゃ畑へ落して来たぞ」 他の一人がいった。「どこらだんべ」 落したと思った一人は熱心に聞いた。「西から三番目の畝だ、おめえが大きいのを抱えた時ちゃらんと音がしたっけが其時は気がつかなかったがあれに相違ねえぞ、こっそり・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  22. ・・・一年ぐらい暇を貰って遊んで来てはどうですと促がして見たら、そりゃ無論やって貰える、けれどもそれは好まない。私がもし日本を離れる事があるとすれば、永久に離れる。けっして二度とは帰って来ないと云われた。 先生はこういう風にそれほど故郷を慕う・・・<夏目漱石「ケーベル先生」青空文庫>
  23. ・・・「一体何だってんだ、お前たちは。第一何が何だかさっぱり話が分らねえじゃねえか、人に話をもちかける時にゃ、相手が返事の出来るような物の言い方をするもんだ。喧嘩なら喧嘩、泥坊なら泥坊とな」「そりゃ分らねえ、分らねえ筈だ、未だ事が持ち上ら・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  24. ・・・ 吉里はわざとつんとして、「あんまり馬鹿におしなさんなよ。そりゃ昔のことですのさ」「そう諦めててくれりゃア、私も大助かりだ。あいたたた。太股ふッつりのお身替りなざア、ちとありがた過ぎる方だぜ。この上臂突きにされて、ぐりぐりでも極めら・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  25. ・・・子供が戦争ごッこをやッたり、飯事をやる、丁度そう云った心持だ。そりゃ私の技倆が不足な故もあろうが、併しどんなに技倆が優れていたからって、真実の事は書ける筈がないよ。よし自分の頭には解っていても、それを口にし文にする時にはどうしても間違って来・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  26. ・・・「そうか、そりゃ善かった。大変心配していたんだヨ。もうとてもいけないだろうッて、誰れか言った位であったから。」「しかし君は何処へ行くんだ。」「そうか、それじゃ僕も一緒に行こう。」「もう午じゃが君飯食わないか。」「それじゃ一緒に食おう。」・・・<正岡子規「初夢」青空文庫>
  27. ・・・「わあ、うまい、そりゃ、やっぱり又三郎だな。」嘉助はまるで手をたたいて机の中で踊るようにしましたので、大きなほうの子どもらはどっと笑いましたが、下の子どもらは何かこわいというふうにしいんとして三郎のほうを見ていたのです。 先生はまた・・・<宮沢賢治「風の又三郎」青空文庫>
  28. ・・・「ふーむ。そりゃ結構だ。――わかりましたか、ホレそこを真直行って……」ともう一遍教えてくれた。 入ってゆくと廊下で、左側には「賃銀支払金庫」「保険貯金」などと札の下った窓口が並んでいる。右側に戸がなるほど二つある。奥の方には「工・・・<宮本百合子「明るい工場」青空文庫>
  29. ・・・のちにせっかく当番をゆるされた思召しにそむいたと心づいてお暇を願ったが、光尚は「そりゃ臆病ではない、以後はも少し気をつけるがよいぞ」と言って、そのまま勤めさせた。この近習は光尚の亡くなったとき殉死した。 阿部一族の死骸は井出の口に引き出・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・「お前今日な、馬が狸橋の上から落ちよってさ、そりゃ豪いこっちゃぞな。」とお留は云った。「秋公はな! 今俺とこへ来よったんやが。」「知らんぞな。わしゃ今帰ったばっかりやが。お前、馬が横倒しにどぶんと水の中へはまりよったら見い、馬っ・・・<横光利一「南北」青空文庫>