そん‐がい【損害】例文一覧 30件

  1. ・・・僕も勿論僕自身に何の損害も受けない限り、決して土匪は嫌いではなかった。が、いずれも大差のない武勇談ばかり聞かせられるのには多少の退屈を感じ出した。「そこであの女はどうしたんだね?」 譚はやっとにやにやしながら、内心僕の予想したのと余・・・<芥川竜之介「湖南の扇」青空文庫>
  2. ・・・道徳の与える損害は完全なる良心の麻痺である。    * 妄に道徳に反するものは経済の念に乏しいものである。妄に道徳に屈するものは臆病ものか怠けものである。    * 我我を支配する道徳は資本主義に毒された封建時代の道徳である・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・勿論それは、私の名誉にとって、かなり大きな損害に相違ございません。しかし事情はこれを書かなければ、もう一刻の存在も苦痛なほど、切迫して参りました。ここで私は、ついに断乎たる処置を執る事に、致したのでございます。 そう云う必要に迫られて、・・・<芥川竜之介「二つの手紙」青空文庫>
  4. ・・・乳量が恢復せないで、妊孕の期を失えば、乳牛も乳牛の価格を保てないのである。損害の程度がやや考量されて来ると、天災に反抗し奮闘したのも極めて意義の少ない行動であったと嘆ぜざるを得なくなる。 生活の革命……八人の児女を両肩に負うてる自分の生・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  5. ・・・自分に特に面会を求めたのも新聞記者であって、或人は損害の程度を訊いた。或人は保険の額を訊いた。或人は営業開始の時期を訊いた。或人は焼けた書籍の中の特記すべきものを訊いた。或人は丸善の火災が文明に及ぼす影響などゝ云う大問題を提起した。中には又・・・<内田魯庵「灰燼十万巻」青空文庫>
  6. ・・・いかにして国運を恢復せんか、いかにして敗戦の大損害を償わんか、これこの時にあたりデンマークの愛国者がその脳漿を絞って考えし問題でありました。国は小さく、民は尠く、しかして残りし土地に荒漠多しという状態でありました。国民の精力はかかるときに試・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  7. ・・・ と、言って出て行き、それきりおれのところへ顔出しもしなかったが、それから大分経って、損害賠償だといって、五十円請求して来た。 その手紙を見るなり、おれは、こともあろうに損害賠償とはなんだ、折角これまで尽して来てやったのに……と、直・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  8. ・・・青年学生がそれに耐え得るほど強く、人生の猛者であり、損害と不幸とを顧みずして運命を愛する真の生活者でありたいならば、私はこの保身と幸福にはまるで不便な、「恋愛運命論」によって、その恋愛を指導することを勧めたい。 われわれはちょうどわれわ・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  9. ・・・ ところが嘉靖年間に倭寇に荒されて、大富豪だけに孫氏は種の点で損害を蒙って、次第に家運が傾いた。で、蓄えていたところの珍貴な品を段と手放すようになった。鼎は遂に京口のきしょうほうの手に渡った。それから毘陵の唐太常凝菴が非常に懇望して、と・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  10. ・・・は、たちまち一面に火災がおこり、相模、伊豆の海岸が地震とともにつなみをかぶりなぞして、全部で、くずれたおれた家が五万六千、焼けたり流れたりしたのが三十七万八千、死者十一万四千、負傷者十一万五千を出し、損害総額百一億円と計上されています。・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  11. ・・・もすこし売りたく、二号には古屋信子の原稿もらって、私、末代までの恥辱、逢う人、逢う人に笑われるなどの挿話まで残して、三号出し、損害かれこれ五百円、それでも三号雑誌と言われたくなくて、ただそれだけの理由でもって、むりやり四号印刷して、そのとき・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  12. ・・・ 悪魔だ! 色魔だ! 処女をかえせ! 貞操蹂躙! 損害賠償! などと実に興覚めな事を口走り、その頃は私も一生懸命に勉強していい詩を書きたいと念じていた矢先で、謂わば青雲の志をほのかながら胸に抱いていたのでございますから、たとい半狂乱の譫言に・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  13. ・・・都会から疎開して来た人はたいてい焼け出されの組で、それはもう焼かれてみなければわからないもので、ずいぶんの損害を受けているのです。それがまあ多少のゆかりをたよって田舎へ逃げて来て、何も悪い事をして逃げて来たわけでもないのに肩身を狭くして、何・・・<太宰治「やんぬる哉」青空文庫>
  14. ・・・ 学位授与恐怖病の流行によって最も損害を受けるものは、本当に独創的な研究によって学位を請求する人達であろう。独創的なものには玉もあるが疵も多い。疵を怖がる眼には疵ばかり見えて玉は見えにくい。審査者に十分の見識がないと、そういうものの価値・・・<寺田寅彦「学位について」青空文庫>
  15. ・・・山火事の場合は居合わす人数の少ないだけに、損害は大概莫大ではあるが、金だけですむ。 デパートアルプスの頂上から見おろした銀座界隅の光景は、飛行機から見たニューヨーク、マンハッタンへんのようにはなはだしい凹凸がある。ただ違うのはこっちのい・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  16. ・・・来年にもあるいはあすにも、宝永四年または安政元年のような大規模な広区域地震が突発すれば、箱根のつり橋の墜落とは少しばかり桁数のちがった損害を国民国家全体が背負わされなければならないわけである。 つり橋の場合と地震の場合とはもちろん話がち・・・<寺田寅彦「災難雑考」青空文庫>
  17. ・・・三島駅でおりて見たが瓦が少し落ちた家があるくらいでたいした損害はないように見えた。平和な小春日がのどかに野を照らしていた。三島町へはいってもいっこう強震のあったらしい様子がないので不審に思っていると突然に倒壊家屋の一群にぶつかってなるほどと・・・<寺田寅彦「時事雑感」青空文庫>
  18. ・・・それで自然損害の一番ひどい局部だけを捜し歩いて、その写真を大きく紙面一杯に並べ立てるから、読者の受ける印象ではあたかも静岡全市並びに附近一帯が全部丸潰れになったような風に漠然と感ぜられるのである。このように、読者を欺すという悪意は少しもなく・・・<寺田寅彦「静岡地震被害見学記」青空文庫>
  19. ・・・そうだとすると電車の会社はこの家の持ち主に明白な損害を直接に与えたものだという事が科学的に立証されるわけである。これによく似た場合は物質的のみならず精神的の各方面にも至るところにあるが損害をかけた人も受けた人も全然その場合の因果関係に心づか・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  20. ・・・先生は最初感情の動くがままに小説を書いて出版するや否や、忽ち内務省からは風俗壊乱、発売禁止、本屋からは損害賠償の手詰の談判、さて文壇からは引続き歓楽に哀傷に、放蕩に追憶と、身に引受けた看板の瑕に等しき悪名が、今はもっけの幸に、高等遊民不良少・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  21. ・・・私のようなつまらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、あなた方から見てその道がいかに下らないにせよ、それはあなたがたの批評と観察で、私には寸毫の損害がないのです。私自身はそれで満足するつもりであります。しかし私自・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  22. ・・・その第一例なる衣裳を汚したる方は、何ほどか母に面倒を掛けあるいは損害を蒙らしむることあれば、憤怒の情に堪えかねて前後の考えもなく覚えず知らず叱り附くることならん。また第二の方は、さまで面倒もなく損害もなき故、何となく子供の痛みを憐れみ、かつ・・・<福沢諭吉「家庭習慣の教えを論ず」青空文庫>
  23. ・・・気候さえあたり前だったら今年は僕はきっといままでの旱魃の損害を恢復してみせる。そして来年からはもううちの経済も楽にするし長根ぜんたいまできっと生々した愉快なものにしてみせる。一千九百二十六年六月十四日 今日はやっと正午から七・・・<宮沢賢治「或る農学生の日誌」青空文庫>
  24. ・・・「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の眼ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。 はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして・・・<宮沢賢治「注文の多い料理店」青空文庫>
  25. ・・・ 小さい金入れの紛失から、彼等の蒙った金銭上の損害は僅少であった。中には、失望したろうと思われる位の小銭しか入って居なかった。ただ、机や用箪笥の鍵が共に無くなったのは不便であった。其とても、世間に同型のものが無いわけではない。――愛・・・<宮本百合子「斯ういう気持」青空文庫>
  26. ・・・自身の上に濃く投げかけられている封建的なもの、それによって受けているものは損害の外にないことを知りながら、野暮にそれと正面衝突は気質的に出来ず、あらゆる反撥を知的な優越と芸術への献身に打込もうとしていた彼の文学的発足が、「鼻」「芋粥」「羅生・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  27. ・・・国鉄当局は九日―十一日の国電ストの損害賠償として組合あいてに二千万円の支払いを提訴した。これは、ルイスなどに対して使われたが、これまでの日本にはなかった新しい権力行使の方法である。 七月五日になって、夕方のラジオは意外なニュースをつたえ・・・<宮本百合子「「推理小説」」青空文庫>
  28. ・・・その子供たちであった。その損害から恢復するための援助ということに添って、またふたたび、より悲惨な戦争が導き出されるような条件を存在させてはならない。戦争の惨禍にさらされた地球のすべての国の人民は、人民こそ、戦争の犠牲であることを、まざまざと・・・<宮本百合子「戦争はわたしたちからすべてを奪う」青空文庫>
  29. ・・・ 第一次大戦のとき、連合国の一つとして最も少い損害をうけたのはアメリカであった。第二次大戦で、最も僅かの人命を犠牲としたのはアメリカであったし、本土に襲撃を蒙らなかった唯一の国もアメリカであった。そのように比較的少い損傷でヨーロッパと東・・・<宮本百合子「便乗の図絵」青空文庫>
  30. ・・・ 府下西多摩郡の小河内村が東京市の貯水池となることに決定してから、今日工事に着手されるまで六ヵ年の間に、小河内村の村民の蒙った経済的・精神的な損害の甚だしさは、こういう場合にあり勝で、謂わば既に手おくれになってから一般人の注意をひく・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>