そん‐げん【尊厳】例文一覧 27件

  1. ・・・人間はどこまで口腹のために、自己の尊厳を犠牲にするか?――と云うことに関する実験である。保吉自身の考えによると、これは何もいまさらのように実験などすべき問題ではない。エサウは焼肉のために長子権を抛ち、保吉はパンのために教師になった。こう云う・・・<芥川竜之介「保吉の手帳から」青空文庫>
  2. ・・・芸術家の尊厳を失うほどきちんと片づけちゃだめだよ。美的にそこいらを散らかすのを忘れちゃいかんぜ。そこで俺はと……俺はドモ又をドモ又の弟に仕立て上げる役目にまわるから……おまえの画はたいてい隣の部屋にあるんだろう。これはおまえんだ。これもこれ・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  3. ・・・芸術の尊厳、自我への忠誠、そのような言葉の苛烈が、少しずつ、少しずつ思い出されて、これは一体、どうしたことか。一口で、言えるのではないか。笠井さんは、昨今、通俗にさえ行きづまっているのである。 汽車は、のろのろ歩いている。山の、のぼりに・・・<太宰治「八十八夜」青空文庫>
  4. ・・・の若旦那は、ふすまをあけたら、浴衣がかかっていて、どうも工合いがわるかった、など言って、みんな私よりからだが丈夫で、大河内昇とか、星武太郎などの重すぎる名を有し、帝大、立大を卒業して、しかも帝王の如く尊厳の風貌をしている。惜しいことには、諸・・・<太宰治「HUMAN LOST」青空文庫>
  5. ・・・ 一方科学者のほうではまた、その研究の結果によって得られた科学的の知識からなんらかの人間的な声を聞くことを故意に忌避することがあたかも科学者の純潔と尊厳を維持するゆえんであると考えるような理由のない慣習が行なわれて来た。なるほど物質界の・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  6. ・・・ 子供の笑いと子供にはわからないおとなの笑いとの間には連続的な段階がある。尊厳がそこなわれた時の笑い、人間の弱点があばかれた時の笑いなどは必ずしもこれを悪意な Schadenfreude とばかりは言われない。ここにもある緊張のゆる・・・<寺田寅彦「笑い」青空文庫>
  7. ・・・「創作上の諸問題と思想の尊厳」「組織の問題」「文化の擁護」の諸課題について討論されたのであった。 第二回の文化擁護国際作家大会は、一九三七年十月、内乱のスペインに開かれた。この大会は、フランコのファシズム政権に反対してたたかっているスペ・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」青空文庫>
  8. ・・・生命の否定・人格無視・人種間の偏見を根幹とした軍事権力の支配とその教育のもとで、どうして若い幾千・幾万のこころが、個々の人間の尊厳や自我と社会現実との関係をつかむことが出来よう。 そういう意味で、一九四五年以後日本の若い精神をとらえた自・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  9. ・・・火野にあってはただ一つその感銘を追求し、人間の生命というものの尊厳にたって事態を検討してみるだけでさえ、彼の人間および作家としての後半生は、今日のごときものとならなかったであろう。人間としての不正直さのためか、意識した悪よりも悪い弱さのため・・・<宮本百合子「歌声よ、おこれ」青空文庫>
  10. ・・・そういう存在として見られ育てられた学生たちは、家庭にあってやはり一種の若き世代としての尊厳と理想とを持していただろうと思う。新しい社会に、新しい家庭生活というものをつくり出してゆく者として自分たちは名誉ある義務と責任とを負わされている自覚を・・・<宮本百合子「家庭と学生」青空文庫>
  11. ・・・人の命を荒っぽく扱うにならされた日本のすべての人が、ひとの命、自分の命の尊厳を知ること。人間同士にそくいんの情をもつこと。その心がつちかわれないなら日本の民主化とか平和への希望というものは根をもたないことを強調していた。これは、吉村隊の惨虐・・・<宮本百合子「鬼畜の言葉」青空文庫>
  12. ・・・自分は編輯責任者として尊厳冒涜という条項に該当するのだそうである。時刻が時刻なのですっかり腹がすき、自分が激しい食慾で弁当をたべているむかい側で清水は何も食べず、煙草をふかしている。そして自分は女房には絶対服従を要求しているが、工合がわるい・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  13. ・・・に於て官製であったと同じように文化も官製の性質を持っており、明治中葉以後のインテリゲンツィアに依って作られた文学は、主として官製なるものに、或は過去の儒的なものに対して、自覚された人間性の自由と自我の尊厳とを主張したものであった。先に述べた・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  14. ・・・思想の尊厳六。社会に於る作家の役割七。文芸創作八。文化擁護のための作家の行動。その統制。 文学は本質において民族的であると共に人類的であり、たとえどのような意図の上に行われても、ともかく日本文学が翻訳され海外紹介されなけ・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  15. ・・・ 女性の感情の至純さと、素質の平等、一言に云えば夫人の良人に対する知と云うものに尊敬の払えないような、所謂男らしい欠点を多大に持った人は、こちらの女性に対して、彼の持つ、哀れむべき尊厳を犯される不安から、虚勢を張ってけなしてしまいます。・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  16. ・・・フランスの人々が、人民戦線によってめいめいの近代的自我を主張し、個人の尊厳をまもった努力にくらべれば、日本でいわれた人民戦線、行動主義の文学能動精神などというものは、実に社会的誠意をもっていなかった。 プロレタリア文学運動に加えられた野・・・<宮本百合子「自我の足かせ」青空文庫>
  17. ・・・日本人が今日、当然もつべき一個人としての品位と威厳とを身につけていないことを外国に向って愧じるならば、それは、現代日本の多数の人々を、明治以来真に人格的尊厳というものが、どういうものであるかをさえ知らさないように導いて来た体制を、今なお明瞭・・・<宮本百合子「その源」青空文庫>
  18. ・・・ 王様は、絶対無二、尊厳であり偉大であり完全でありたかったのに、不仕合わせな耳が彼を苦しめる種となったので、悪口、批評の根絶やしをしたくて、皆の耳を自分と同じようにさせて、ホッと安心しました。ほんとにこれなら、先ず大丈夫と思っていたので・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  19. ・・・ 児童教育の理想を話される時など、人性の尊厳、微妙さの感歎、セコンド・ジェネレーションに対する健全な期待の心などが、流露した。先生の話を伺っているうちに、若いものは、生活を愛し、価値を高め、積極道に活きずに居られないような、光明、希望、・・・<宮本百合子「弟子の心」青空文庫>
  20. ・・・シェクスピアのオセロの心理には、黒人という生れあわせに対するオセロの白い皮膚のひとと等しい人間的尊厳の主張や自尊心やが作用している。美しいしとやかなデスデモーナが、父の許を訪ねて来て、その雄々しい物語をするオセロに心をひかれ、結婚する気分も・・・<宮本百合子「デスデモーナのハンカチーフ」青空文庫>
  21. ・・・国威というものの普通解釈されている内容によって、それを或る尊厳、確信ある出処進退という風に理解すると、今回のオリンピックに関しては勿論、四年後のためにされている準備そのものの中に、主としてそういう抽象名詞を愛好する人の立場から見ても何か本質・・・<宮本百合子「日本の秋色」青空文庫>
  22. ・・・三十数年昔の十一月のある日の彼が語ったよりも、更に深い日本への愛と情熱とをもって、日本のヒューマニティーの尊厳と日本の理性の確立のために語ったであろうと信じる。なぜなら、ここにこまごまとのべるまでもなく、こんにち日本の特権階級は、日本の民族・・・<宮本百合子「日本の青春」青空文庫>
  23. ・・・そして権力のために犠牲にされることのない市民の個々の家庭の尊厳を主張しはじめた。同時に両性の清らかな愛による互いの選択と、その神の嘉し給う結合の形としての結婚を主張した。 ところでこの「神聖なる結婚」「純潔なる家庭」といいながら、資本主・・・<宮本百合子「人間の結婚」青空文庫>
  24. ・・・ここには、本を読んだからと云って殴られる台処働きの小僧の中に燃えている人間的尊厳の抗議、給料を祖父にとられる貧しい小僧だから、淫売をする洗濯女といちゃついて、酔倒れた兵卒のポケットから財布を掠めもするだろうと思われ、全然事実とは違うその卑俗・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  25. ・・・『働く婦人』の問題は、「尊厳冒涜」という意味のところで一応納まりました。「敏子」さんの投書と、「愛子」さんの投書の中に、共産党という三字があって、これを幸とつかまえられたのです。 四十日ばかり経つと、いつの間にか、調べの中心点がかわって・・・<宮本百合子「ますます確りやりましょう」青空文庫>
  26. ・・・それだのに彼の読む本は何と人間の尊厳、発展の可能、真理の強さについて語っていることだろう。ゴーリキイは遂にカザン市に行って、カザン大学へ入る決心をした。 ところが、行って見るとカザン市で彼を迎えたのは歴史に名高いカザン大学ではなく、着い・・・<宮本百合子「逝けるマクシム・ゴーリキイ」青空文庫>
  27. ・・・このことは、しかし、本当に婦人にとって「個人の尊厳」を守れる社会的経済的土台があることを意味しているだろうか。 婦人に離婚の自由が認められた、ということは、特にこれまで隠忍をつづけている、日本の女性にとっては、何か復讐的な快感であるかも・・・<宮本百合子「離婚について」青空文庫>