だいいっ‐せい【第一声】例文一覧 5件

  1. ・・・すでに自然主義運動の先蹤として一部の間に認められているごとく、樗牛の個人主義がすなわちその第一声であった。 樗牛の個人主義の破滅の原因は、かの思想それ自身の中にあったことはいうまでもない。すなわち彼には、人間の偉大に関する伝習的迷信がき・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  2. ・・・これ実に新興文芸の第一声であって、天下の青年は翕然として文学の冒険に志ざした。 当時の記憶は綿々として憶浮べるままを尽くいおうとすれば限りがない。その頃一と度は政治家たらんと欲し、転じて建築に志ざし、再転して今度は実業界に入ろうとした一・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  3. ・・・それで第一声の前半の反響がほぼその第一声の後半と重なり合って鳥の耳に到着する勘定である。従って鳥の地上高度によって第一声前半の反響とその後半とがいろいろの位相で重なり合って来る。それで、もしも鳥が反響に対して充分鋭敏な聴覚をもっているとした・・・<寺田寅彦「疑問と空想」青空文庫>
  4. ・・・ 先ず見えない処で、彼女の甲高い返事の第一声が響く。すぐ、小走りに襖の際まで姿を現し、ひょいひょいと腰をかがめ、正直な赫ら顔を振って黒い一対の眼で対手の顔を下から覗き込み乍ら「はい、はい」と間違なく、あとの二つを繰返す。――・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  5. ・・・それにもかかわらず、作者は「彼はちょっと悲壮な気持で第一声をはなった。『では質問に入りますから、判らぬところがあったら……』」云々といってすぎている。この一句で真摯なるべき現実が不快にくずされている。悲壮という複雑な人間的感情の集約的表現は・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>