だいいっ‐ぽ【第一歩】例文一覧 30件

  1. ・・・理窟は凡に立到り、そしてその反抗を起した場合に、その反抗が自分の反省の第一歩であるという事を忘れている事が、往々にして有るものである。言い古した言い方に従えば、建設の為の破壊であるという事を忘れて、破壊の為に破壊している事があるものである。・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  2. ・・・おなじ廓へ、第一歩、三人のつまさきが六つ入交った時である。 落葉のそよぐほどの、跫音もなしに、曲尺の角を、この工場から住居へ続くらしい、細長い、暗い土間から、白髪がすくすくと生えた、八十を越えよう、目口も褐漆に干からびた、脊の低い、小さ・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  3. ・・・通帳を贈れば、秋山君は救ったものが救われるとはこのことだと感激の涙にむせびながら、その通帳を更生記念として発奮を誓ったが、かくて“人生紙芝居”の大詰がめでたく幕を閉じたこの機会にふたたび“人生双六”の第一歩を踏みだしてはどうかと進言したのが・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  4. ・・・という根本的な方針が、既に、一年前に確立され、質的飛躍の第一歩がふみだされているとき、工場労働者とはちがった特殊な生活条件、地理環境、習慣、保守性等を持った農民、そして、それらのいろいろな条件に支配される農民の欲求や感情や、感覚などを、プロ・・・<黒島伝治「農民文学の問題」青空文庫>
  5. ・・・かつて、排除と反抗は作家修行の第一歩であった。きびしい潔癖を有難いものに思った。完成と秩序をこそあこがれた。そうして、芸術は枯れてしまった。サンボリスムは、枯死の一瞬前の美しい花であった。ばかどもは、この神棚の下で殉死した。私もまた、おくれ・・・<太宰治「一日の労苦」青空文庫>
  6. ・・・十年ほど前に、北海道へ渡った事があったけれど、上陸第一歩から興奮した。土の踏み心地が、まるっきり違うのである。土の根が、ばかに大きい感じがした。内地の、土と、その地下構造に於いて全然別種のものだと思った。必ずや大陸の続きであろうと断定した。・・・<太宰治「佐渡」青空文庫>
  7. ・・・任地に着きました。 大いなる文学のために、 死んで下さい。 自分も死にます、 この戦争のために。 ふたたび、ここに三田君のお便りを書き写してみる。任地に第一歩を印した時から、すでに死ぬる覚悟をしておられたらしい。自己のた・・・<太宰治「散華」青空文庫>
  8. ・・・きのうあたり、あの娘の手許にとどいている筈ですが、僕はその手紙に、そもそものはじめから、つまり、僕たちのれいの悪計の事から、全部あらいざらい書いて送ってやったのです。第一歩から、この恋愛は、ふまじめなものだった。うらむなら、先生を恨め、と。・・・<太宰治「未帰還の友に」青空文庫>
  9. ・・・ こういう事を完全に仕遂げる事はなかなか容易な事ではないが、そういう方向への第一歩として、私は試みに次のような事を考えてみた。 先ず従来の例にならって母音をイエアオウの順に並べる。そしてイからウに至る間に唇は順に前方に突き出て行くも・・・<寺田寅彦「歌の口調」青空文庫>
  10. ・・・その中から何を発見してつまみ上げるかが第一歩の問題であり、第二は表現法の選み方である。映画芸術家の場合でも全く同様であって、一つの映画の価値を決定するものは全く、フィルミッシな素材とそれのフィルミッシな表現法の選択であると言ってよい。「貧し・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  11. ・・・しかし、なにかしら、ほんとうにおもしろいものへの第一歩でありおぼつかない試みであるとはたしかに思われるものである。これはロベール・デスノという人の原詩を脚色したものだそうであるから、原詩をよく味わった人にはあるいはいくらかおもしろいかもしれ・・・<寺田寅彦「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  12. ・・・の方向への第一歩の試みとして評価するとすれば相当に見どころのある映画だと思われる。観音の境内や第六区の路地や松屋の屋上や隅田河畔のプロムナードや一銭蒸汽の甲板やそうした背景の前に数人の浅草娘を点出して淡くはかない夢のような情調をただよわせよ・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  13. ・・・ 舞踊というものをその幾何学的運動学的要素に一度解きほごして、それから再び踊りというものを構成するとすればその第一歩はおそらくこの映画のようなものになりそうである。そういう意味でわが国の舞踊家ならびに舞踊研究家にとってもこの映画は必ず一・・・<寺田寅彦「踊る線条」青空文庫>
  14. ・・・しかしそういうものへの道程の第一歩に似たようなものは考えられなくはない。 物理的科学が今日の状態に達する以前、すなわち方則が発見され、そうして最初に数式化される前には、われわれはただ個々の具体的の場合の解式だけを知っていた。そうして、過・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  15. ・・・実際はやはり普通の講義や演習から非常なお蔭を蒙っていることは勿論であって、もしか当時そういう正規の教程を怠けてしまっていたらおそらく卒業後の学究生活の第一歩を踏出す力さえなかったに相違ない。講義も演習もいわば全く米の飯のようなもので、これな・・・<寺田寅彦「科学に志す人へ」青空文庫>
  16. ・・・それで私の現在の仕事は、そういう方面への第一歩として、一つの作業仮説のようなものを持ち出したに過ぎないのである。 以上の調べの結果で、たとえば Aso, Usu, Esan, Uson, Asur, Osore, Ossar 等が意味の・・・<寺田寅彦「火山の名について」青空文庫>
  17. ・・・に対する数量的レコードへのおぼつかない試みの第一歩として、それぞれに固有ななんらかの文化的な意味をもつものだと思われるのである。 三原山の投身自殺でも火口の深さが千何百尺と数字が決まれば、やはり火口投身者の中での墜落高度のレコードを作る・・・<寺田寅彦「記録狂時代」青空文庫>
  18. ・・・これらの便・不便を考うれば、小学の初学第一歩には、平仮名の必要なること、疑をいるべからざるなり。 また、片仮名にもせよ、平仮名にもせよ、いろは四十七文字を知れば、これを組合せて日用の便を達するのみならず、いろはの順序は一二三の順序の代り・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  19. ・・・ 一九三〇年に入ってから、ヒトラーのナチスは総選挙で多数党となり、ドイツの全人民が知識階級をもこめて、その野蛮な軛の下に苦しむ第一歩がふみ出された。どうして、第一次ヨーロッパ大戦後のドイツに、ヒトラーの運命が、そんな人気を博したのであっ・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  20. ・・・封建的な人間抑圧への反抗ということも、理由とされているが、それは、その第一歩、第一作の書かれた動機のかげにあった一つのぼんやりしたバネであったにすぎない。二作、三作、ましてそれで儲かって書きつづけてゆく作品のモティーヴになってはいない。・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  21. ・・・的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたものとし、世界観の隅々までをプロレタリアに組織するためには、先ず、文化啓蒙活動をとおしてあらゆる機会に勤労大衆と接触しその一員となることこそ、正しい第一歩であることは明らかであるからである・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  22. ・・・読者が、新聞小説に求めている面白さの本質の問題から云わば制約の第一歩がはじまっていることも、時代風俗的なディテールへの作者の適応性が要求されていることも変りはないであろう。 しかし、今日の文学のありよう、作家のありようとの関係では、新聞・・・<宮本百合子「おのずから低きに」青空文庫>
  23. ・・・エセーニンは、集団農場化の第一歩である農業の機械化にさえ先ず命がけで反対した詩人である。 ソヴェトのプロレタリア文学、農民文学にとって農民の批評が参考になるのは、彼等の批評そのものの中に現れて来ている正当な判断が作家を益するばかりではな・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  24. ・・・そして、これは優等生の一人をつくる第一歩であり、優良社員をつくる一つの道であり、けちな面白みのない人間が一人ふやされゆく道どりでもある。 童心のきよらかさとはどういうものだろう。子供はわるいことをする。ひどいこと、すごいこと、そのど・・・<宮本百合子「子供の世界」青空文庫>
  25. ・・・は、子供が大人の生活に混ってくる道どりやそこでの日常的な労作への結合の必要を暗示している作者の目がある。この作者としてこの「村の月夜」は第一歩の仕事であり、作品の内容も従来のお伽噺とは全く異った現実日常生活からの面白いお話への試みが示されて・・・<宮本百合子「子供のために書く母たち」青空文庫>
  26. ・・・その困難を切りひらくための具体的な第一歩として、古典の再評価、作家の教養ということが続いて云われはじめた。トルストイ、ドストイェフスキー、特にこれまで日本に十分紹介されていなかったバルザック、スタンダール等の作品は流行となって翻訳、出版され・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  27. ・・・ 第一歩で、とりちがえて提出された、日本における公私の逆立ちは、戦争が進むにつれ次第に深刻な具体性をもって来た。 例えば、遠い大洋をへだてたあちこちの島々に、守備としてのこされた一団の兵士たちは、どういう経験をしただろう。食糧事情で・・・<宮本百合子「逆立ちの公・私」青空文庫>
  28. ・・・長座した後の第一歩はいつもながら格別に難渋なので、今朝よりも一きわ悪しざまに前にかがみ、『わしはここにいるよ、わしはここにいるよ。』と繰り返して言って、立ち去った。 そしてかれは伍長に従って行った。 市長は安楽椅子にもたれて・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  29. ・・・あれがあなたの失錯の第一歩でございましたわ。男。なぜですか。貴夫人。お分かりになりませんの。あなたが馬車を雇いに駆け出しておいでになったあとに、わたくしは二分間ひとりでいました。あなたはわたくしに考える余裕をお与えなさいましたのです・・・<著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外「辻馬車」青空文庫>
  30. ・・・あたり前の現象として人々が不思議がらない事柄のうちに不思議を見出すのが、法則発見の第一歩なのである。寺田さんは最も日常的な事柄のうちに無限に多くの不思議を見出した。我々は寺田さんの随筆を読むことにより寺田さんの目をもって身辺を見廻すことがで・・・<和辻哲郎「寺田寅彦」青空文庫>