たい‐がい【大概】例文一覧 30件

  1. ・・・それを見た恵印の情けなさは、大概前からの行きがかりでも、御推察が参るでございましょう。が、ここに妙な事が起ったと申しますのは、どう云うものか、恵印の心にもほんとうに竜が昇りそうな――それも始はどちらかと申すと、昇らない事もなさそうな気がし出・・・<芥川竜之介「竜」青空文庫>
  2. ・・・ と調子を低めて、ずっと摺寄り、「こう言うとな、大概生意気な奴は、名を聞くんなら、自分から名告れと、手数を掛けるのがお極りだ。……俺はな、お前の名を聞いても、自分で名告るには及ばない身分のもんだ、可いか。その筋の刑事だ。分ったか。」・・・<泉鏡花「菎蒻本」青空文庫>
  3. ・・・ それが貴方、明前へ、突立ってるのじゃあございません、脊伸をしてからが大概人の蹲みます位なんで、高慢な、澄した今産れて来て、娑婆の風に吹かれたという顔色で、黙って、おくびをしちゃあ、クンクン、クンクン小さな法螺の貝ほどには鳴したのでござ・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  4. ・・・それは文芸の隆盛な時代は、大概太平な時代であったからである。そして、芸術が享楽階級の用立とされていたからでもある。徳川時代の戯作者は、その最もいゝ例である。 人情の機微を穿つとか、人間と人間の関係を忠実に細叙するとかいうのも、この世の中・・・<小川未明「芸術は革命的精神に醗酵す」青空文庫>
  5. ・・・       *          *            *          * 若い者のにわかに消えてなくなる、このごろはその幾人というを知らず大概は軍夫と定まりおれば、吉次もその一人ぞと怪しむ者なく三角餅の茶店のうわさ・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  6. ・・・この人々は大概、いわゆる居所不明、もしくは不定な連中であるから文公の今夜の行く先など気にしないのも無理はない。しかしあの容態では遠からずまいってしまうだろうとは文公の去ったあとでのうわさであった。「かわいそうに。養育院へでもはいればいい・・・<国木田独歩「窮死」青空文庫>
  7. ・・・この闘いは今日の場合では大概は容易ならぬ苦闘だからだ。しかしこれは協同する真心というので、必ずしも働く腕、才能をさすのではない。妻が必ず職業婦人になって、夫の収入に加えねばならぬというのではない。働く腕、金をとる才能のあることがかえって夫婦・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  8. ・・・けれどもそこは小児の思慮も足らなければ意地も弱いので、食物を用意しなかったため絶頂までの半分も行かぬ中に腹は減って来る気は萎えて来る、路はもとより人跡絶えているところを大概の「勘」で歩くのであるから、忍耐に忍耐しきれなくなって怖くもなって来・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  9. ・・・、宜しい訳でしたが、どうも世の中というものはむずかしいもので、その人が良いから出世するという風には決っていないもので、かえって外の者の嫉みや憎みをも受けまして、そうして役を取上げられまする、そうすると大概小普請というのに入る。出る杙が打たれ・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  10.  十四、五になる大概の家の娘がそうであるように、袖子もその年頃になってみたら、人形のことなぞは次第に忘れたようになった。 人形に着せる着物だ襦袢だと言って大騒ぎした頃の袖子は、いくつそのために小さな着物を造り、いくつ小さ・・・<島崎藤村「伸び支度」青空文庫>
  11. ・・・ことになっているとはいうものの、それは読者の自由な鑑賞を妨げないように、出しゃばった解説はできるだけ避け、おもに井伏さんの作品にまつわる私自身の追憶を記すにとどめるつもりなので、今回もこの巻の「青ヶ島大概記」などを中心にして、昔のことを物語・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  12. ・・・むしろ私は多くの場合にその責任が教師の無能にあるような気がする。大概の教師はいろんな下らない問題を生徒にしかけて時間を空費している。生徒が知らない事を無理に聞いている。本当の疑問のしかけ方は、相手が知っているか、あるいは知り得る事を聞き出す・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  13. ・・・ 普通の白地に黒インキで印刷した文字もあった。大概やっと一字、せいぜいで二字くらいしか読めない。それを拾って読んでみると例えば「一同」「円」などはいいが「盪」などという妙な文字も現われている。それが何かの意味の深い謎ででもあるような気が・・・<寺田寅彦「浅草紙」青空文庫>
  14. ・・・ しかし自分は子供の時から、毎年の七、八月をば大概何処へも旅行せずに東京で費してしまうのが例であった。第一の理由は東京に生れた自分の身には何処へも行くべき郷里がないからである。第二には、両親は逗子とか箱根とかへ家中のものを連れて行くけれ・・・<永井荷風「夏の町」青空文庫>
  15. ・・・先方の口から言出させて、大概の見当をつけ、百円と出れば五拾円と叩き伏せてから、先方の様子を見計らって、五円十円と少しずつせり上げ、結局七八拾円のところで折合うのが、まずむかしから世間一般に襲用された手段である。僕もこのつもりで金高を質問した・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  16. ・・・壁に画やら写真やらがある。大概はカーライル夫婦の肖像のようだ。後ろの部屋にカーライルの意匠に成ったという書棚がある。それに書物が沢山詰まっている。むずかしい本がある。下らぬ本がある。古びた本がある。読めそうもない本がある。そのほかにカーライ・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  17. ・・・「まあ大概そのくらいさ、家へ帰って飯を食うとそれなり寝てしまう。勉強どころか湯にも碌々這入らないくらいだ」と余は茶碗を畳の上へ置いて、卒業が恨めしいと云う顔をして見せる。 津田君はこの一言に少々同情の念を起したと見えて「なるほど少し・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  18. ・・・「そうは行くまい。大概なことじゃ、なかなか楽になるというわけには行かなかろう。それで、急にまた出京るという目的もないから、お前さんにも無理な相談をしたようなわけなんだ。先日来のようにお前さんが泣いてばかりいちゃア、談話は出来ないし、実に・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  19. ・・・左れば今の女子を教うるに純然たる昔の御殿風を以てす可らざるは言うまでもなきことなれども、幼少の時より国字の手習、文章手紙の稽古は勿論、其外一切の教育法を文明日進の方針に仕向けて、物理、地理、歴史等の大概を学び、又家の事情の許す限りは外国の語・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  20. ・・・の境界にも陥るべきところへ、いやしくも肉体以上の心を養い、不覊独立の景影だにも論ずべき場所として学校の設あれば、その状、恰も暗黒の夜に一点の星を見るがごとく、たとい明を取るに足らざるも、やや以て方向の大概を知るべし。故に今の旧藩地の私立学校・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  21. ・・・第二義から第一義に行って霊も肉も無い……文学が高尚でも何でも無くなる境涯に入れば偖てどうなるかと云うに、それは私だけにゃ大概の見当は付いているようにも思われるが、ま、ま、殆ど想像が出来んと云って可いな。――ただ何だか遠方の地平線に薄ぼんやり・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  22. ・・・菓物は凡て熟するものであるから、それをくさるといったのである。大概の菓物はくだものに違いないが、栗、椎の実、胡桃、団栗などいうものは、くだものとはいえないだろう。さらばこれらのものを総称して何というかといえば、木の実というのである。木の実と・・・<正岡子規「くだもの」青空文庫>
  23.  紀行文をどう書いたら善いかという事は紀行の目的によって違う。しかし大概な紀行は純粋の美文的に書くものでなくてもやはり出来るだけ面白く書こうとする即美文的に書こうとする、故に先ず面白く書くという事はその紀行全部の目的でなくても少くも目的・・・<正岡子規「徒歩旅行を読む」青空文庫>
  24. ・・・ 現実は豊饒、強靭であって、作家がそれに皮肉さをもって対しても、一応の揶揄をもって対しても、大概は痛烈な現実への肉迫とならず、たかだか一作家のポーズと成り終る場合が非常に多い。作家は、現実に向って飽くまで探求的であり、生のままの感受性を・・・<宮本百合子「今日の文学と文学賞」青空文庫>
  25. ・・・ 最近二三、顔を出しましたけれど、私は余り会合などに出る方ではありません。大概どこの会でも男の方と、女の方とがすっかり別々にかたまり合ってお話していて、そのどちらかへ一人でも男の方か、女の方かが入ってくると、妙に取澄ましてしまうという風・・・<宮本百合子「十年の思い出」青空文庫>
  26. ・・・と云って、木村の顔を見て、「君は大概知っているだろう」と言い足した。 木村は少しうるさいと思ったらしく顔を蹙めたが、直ぐ思い直した様子でこう云った。「そう。僕だって別に研究したのではありませんが、近代思想の支流ですから、あらまし知ってい・・・<森鴎外「食堂」青空文庫>
  27. ・・・費用も大概出来たので、近いうちに北川という若い医学士に跡を譲って、出発すると云っている。富田院長も四十は越しているが、まだ五分刈頭に白い筋も交らない。酒好だということが一寸見ても知れる、太った赭顔の男である。 極澹泊な独身生活をしている・・・<森鴎外「独身」青空文庫>
  28.      上 この武蔵野は時代物語ゆえ、まだ例はないが、その中の人物の言葉をば一種の体で書いた。この風の言葉は慶長ごろの俗語に足利ごろの俗語とを交ぜたものゆえ大概その時代には相応しているだろう。 ああ・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  29. ・・・いらっしゃれば大概二週間位は遊興をお尽しなさって、その間は、常に寂そりしてる市中が大そう賑になるんです。お帰りのあとはいつも火の消たようですが、この時の事は、村のものの一年中の話の種になって、あの時はドウであった、コウであったのと雑談が、始・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>
  30. ・・・今の青年教育は大概この弊に陥っています。ただ、性格のしっかりした青年は、反抗心によってこの教育の害悪から救われているのです。 私は右の二つの態度のいずれをも肯定し、いずれをも否定しました。ではどうしろというのか。私はこのことについて一つ・・・<和辻哲郎「すべての芽を培え」青空文庫>