たい‐ぐん【大群】例文一覧 23件

  1. ・・・どれも、おなじくらいな空を通るんだがね、計り知られないその大群は、層を厚く、密度を濃かにしたのじゃなくって、薄く透通る。その一つ一つの薄い羽のようにさ。 何の事はない、見た処、東京の低い空を、淡紅一面の紗を張って、銀の霞に包んだようだ。・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  2. ・・・お礼を言わぬどころか、あの人は、私のこんな隠れた日々の苦労をも知らぬ振りして、いつでも大変な贅沢を言い、五つのパンと魚が二つ在るきりの時でさえ、目前の大群集みなに食物を与えよ、などと無理難題を言いつけなさって、私は陰で実に苦しいやり繰りをし・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  3. ・・・と寝そべり、あるいは疾駆し、あるいは牙を光らせて吠えたて、ちょっとした空地でもあるとかならずそこは野犬の巣のごとく、組んずほぐれつ格闘の稽古にふけり、夜など無人の街路を風のごとく、野盗のごとくぞろぞろ大群をなして縦横に駈け廻っている。甲府の・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  4. ・・・と極度の疲労のため精神朦朧となり、君子の道を学んだ者にも似合わず、しきりに世を呪い、わが身の不幸を嘆いて、薄目をあいて空飛ぶ烏の大群を見上げ、「からすには、貧富が無くて、仕合せだなあ。」と小声で言って、眼を閉じた。 この湖畔の呉王廟は、・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  5. ・・・去年のような大群はもう来ないらしい。ことしはあひるのコロニーが優勢になって鶺鴒の領域を侵略してしまったのではないかと思われる。同じような現象がたとえば軽井沢のような土地に週期的にやって来る渡り鳥のような避暑客の人間の種類についても見られるか・・・<寺田寅彦「あひると猿」青空文庫>
  6. ・・・それからの後の場面で荒涼たる大雪原を渡ってくるトナカイの大群の実写は、あれは実に驚くべき傑作である。理屈なし説明なしに端的にすべての人の心を奪う種類のフィルムであり、活動映画というものの独自な領域を鮮明に主張したものである。絵ではもちろんの・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  7. ・・・それから後、象の大群が見られるというので「チャング」を見、アフリカの大自然があるというので「ザンバ」を見た。そのうちにトーキーが始まるというので後学のために出かける。そうしているうちにいつのまにか一通りの新米ファンになりおおせたようである。・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  8. ・・・これらの樹の実を尋ねて飛んで来る木椋鳥の大群も愉快な見物であった。「千羽に一羽の毒がある」と云ってこの鳥の捕獲を誡めた野中兼山の機智の話を想い出す。 公園の御桜山に大きな槙の樹があってその実を拾いに行ったこともあった。緑色の楕円形をした・・・<寺田寅彦「郷土的味覚」青空文庫>
  9. ・・・愚かなるわれら杞人の後裔から見れば、ひそかに垣根の外に忍び寄る虎や獅子の大群を忘れて油虫やねずみを追い駆け回し、はたきやすりこ木を振り回して空騒ぎをやっているような気がするかもしれない。これが杞人の憂いである。・・・<寺田寅彦「時事雑感」青空文庫>
  10. ・・・そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっていると、どうかした拍子に檻を破った猛獣の大群のように、自然があばれ出して高楼を倒壊せしめ堤防を崩壊させて人命を危うくし財産を滅ぼす。その災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細・・・<寺田寅彦「天災と国防」青空文庫>
  11. ・・・ドイツの知識人たちは、ナチスの運動がその背後にどんな大きいドイツの軍国主義者と資本家の大群をひかえているかということを洞察せず、馬鹿にしていたために、祖国とその文化とをナチスに蹂躙されつくした。 一九二〇年代のドイツは、左翼が活躍し、ド・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  12. ・・・若い女性たちは自分もその一人としてきょうの人生を歩いている女性の大群の道幅というものを見きわめはじめてきた。あの道へはどういう過程で入ってゆくか、またこの道はどういう方向へ進むものか、そこを見きわめようとするまじめな眼ざしが見えてきている。・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  13. ・・・ 前日大群衆に揉みぬかれた都会モスクワと人とは、くたびれながらも、気は軽い。そう云う風だ。 店はしまっている。 物売も出ていない。 午後になると往来はだんだん混みはじめ、芸術座前の狭い通りは歩道一杯の人だ。みると芸術座の入口・・・<宮本百合子「インターナショナルとともに」青空文庫>
  14. ・・・な官吏、軍人、実業家達及び彼等と膝を交えて大人並に腹のある遊興も出来る一群の作家に指導される文化水準の低い、何故浪花節が悪趣味なのかも分らない、偉い官吏、軍人、実業家ではない人間の大群として考えられているのである。 作家は大衆の心を語る・・・<宮本百合子「「大人の文学」論の現実性」青空文庫>
  15. ・・・その勾配を、小旗握った宿屋の番頭に引率された善男善女の大群が、連綿として登り、下りしていて、左右の土産物屋は浅草の仲見世のようである。葡萄を売っている。林檎を売っている。赤や黄色で刷った絵草紙、タオル、木の盆、乾蕎麦や数珠を売っている。門を・・・<宮本百合子「上林からの手紙」青空文庫>
  16. ・・・うしろからは、飢餓という獣の大群が、刻々迫って来ます。生きるために、どうしてもこの河一つは越さなければならない。 こういう危急の時に、爪先も濡らさず岸に立って、諸君、まず、橋を作る材木を出し給え。マァ、何の彼のいわず、材木だけは、ともか・・・<宮本百合子「幸福のために」青空文庫>
  17. ・・・丁度山々では紅葉が赤らむのでね、善光寺詣りの団体くずれが、大群をなして温泉めぐりをやり、渋からこの上林へとくり上って来る。それらの連中はこの家から少し上の上林ホテルというのにつめこまれるが、この家では二晩おきに、二晩つづいて、奇声を発する変・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  18. ・・・ 今日は既にプロレタリア文学の領域においても、ブルジョア・インテリゲンツィア作家たちの間にあっても、その一時的後退からの立ち直りの徴が顕著に認められて来ているが、オノレ・ド・バルザックの作品の大群は抑々以上のような雰囲気の裡に甦らされて・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  19. ・・・そして、一握りの人間が、決して自分の靴の底皮をぬらすことなくともかく生きていなければならない人々の大群を不幸に追いこんでいる現代の戦争というものの本質について深く知っていた。 ハーシーの「アダノの鐘」にもこの感情が主調をなしている。ジョ・・・<宮本百合子「「ヒロシマ」と「アダノの鐘」について」青空文庫>
  20. ・・・の広場に飾られてるような大骨板張の大労働者像、一九三〇年のメーデーに赤い広場に飾られた大群像、または示威運動の張りものみたいな非写実的な、応用美術の方が手に入ってる。日本で労働運動はそのような祝祭の張りものを求める状態にはまだなっていない。・・・<宮本百合子「プロレタリア美術展を観る」青空文庫>
  21. ・・・ところ嫌わず南京虫の大群が横行している。フロレンスがみたどこの貧民窟よりも不潔である。日常品の欠乏ははなはだしく、ビールの空壜にローソクがたっていた。たらい、タオル、シャボン、箒、盆、皿、ナイフ、フォーク、スプーンなどという必需品さえなかっ・・・<宮本百合子「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」青空文庫>
  22. ・・・その一方では、民主的な日本の新しくすがすがしい生活建設をめざして美しく雄々しく、恋愛し、結婚して行きたいと願う若い女性の大群が、実際生活のなかに本当の男女同権が確立するように働く人民としての女性の独立が可能である条件を作ろうとして奮闘してい・・・<宮本百合子「私の書きたい女性」青空文庫>
  23. ・・・武装を調えた第三十五連隊の歩兵、大きな電線の束と道具袋を肩にかけた工夫の大群。乗客がいつもの数十倍立てこんだ上、皆な気が立った者ばかりだから、その混雑した有様は言葉につくせない。誰も自分の足許をしっかり見ているものなどはなく、又、押し押され・・・<宮本百合子「私の覚え書」青空文庫>