たい‐ざ【対座/対×坐】例文一覧 17件

  1. ・・・シカモその二、三度も、待たされるのがイツモ三十分以上で、漸く対座して十分かソコラで用談を済ますと直ぐ定って、「ドウゾ復たお閑の時御ユックリとお遊びにいらしって下さい」と後日の再訪を求めて打切られるから、勢い即時に暇乞いせざるを得なくなった。・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  2. ・・・しかしかれと対座してその眼を見、その言葉をきくと、この例でもなお言い足りないで、さらに悲しい痛ましい命運の秘密が、その形骸のうちに潜んでいるように思われた。 不平と猜忌と高慢とがその眼に怪しい光を与えて、我慢と失意とが、その口辺に漂う冷・・・<国木田独歩「まぼろし」青空文庫>
  3. ・・・これに対座している主人は痩形小づくりというほどでも無いが対手が対手だけに、まだ幅が足らぬように見える。しかしよしや大智深智でないまでも、相応に鋭い智慧才覚が、恐ろしい負けぬ気を後盾にしてまめに働き、どこかにコッツリとした、人には決して圧潰さ・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  4. ・・・八十歳の婆とか、五歳の娘とか、それは問題になりませんが、女盛りの年頃で、しかもなかなかの美人でありながら、ちっとも私に窮屈な思いをさせず、私もからりとした非常に楽な気持で対坐している事が出来る、そんな女のひとも、たまにはあるのです。あれはい・・・<太宰治「嘘」青空文庫>
  5. ・・・僕は青扇と対座して、どういう工合いに話を切りだしてよいか、それだけを考えていた。僕がマダムのいれてくれたお茶を一口すすったとき、青扇はそっと立ちあがって、そうして隣りの部屋から将棋盤を持って来たのである。君も知っているように僕は将棋の上手で・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  6. ・・・が腹の中で深田久弥の間抜野郎と呟いて笑っているようなひどくいけない錯覚がひらひらちらついて困惑するほど、それほどたまらなく善良の人がらなのだよ、と私に教えて呉れたことがあったけれど、いま私も、こうして対坐して、ゆくりなく久保君の身のうえと、・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  7. ・・・ 部屋に帰って、卓をへだてて再び対坐し、「おどろいてはいけませんよ。いいですか? 実は、あなたと私とは、兄弟なのです。同じ母から生れた子です。そう言われてみると、あなたも、何か思い当るところがあるでしょう。もちろん私は、あなたより年・・・<太宰治「女神」青空文庫>
  8. ・・・時には先生と二人対座で十分十句などを試みたこともある。そういうとき、いかにも先生らしい凡想を飛び抜けた奇抜な句を連発して、そうして自分でもおかしがってくすくす笑われたこともあった。 先生のお宅へ書生に置いてもらえないかという相談を持ち出・・・<寺田寅彦「夏目漱石先生の追憶」青空文庫>
  9. ・・・の壁画の下に、五ツ紋の紳士や替り地のフロックコオトを着た紳士が幾組となく対座して、囲碁仙集をやっている。高い金箔の天井にパチリパチリと響き渡る碁石の音は、廊下を隔てた向うの室から聞えて来る玉突のキュウの音に交わる。初めてこの光景に接した時自・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  10. ・・・婆さんは例の朗読調をもって「千八百四十四年十月十二日有名なる詩人テニソンが初めてカーライルを訪問した時彼ら両人はこの竈の前に対坐して互に煙草を燻らすのみにて二時間の間一言も交えなかったのであります」という。天上に在って音響を厭いたる彼は地下・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  11. ・・・黙然として、対坐していた圭さんと碌さんは顔を見合わして、にやりと笑った。 かあんかあんと鉄を打つ音が静かな村へ響き渡る。癇走った上に何だか心細い。「まだ馬の沓を打ってる。何だか寒いね、君」と圭さんは白い浴衣の下で堅くなる。碌さんも同・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  12. ・・・こうした長尻の客との対坐は、僕にとってまさしく拷問の呵責である。 しかし僕の孤独癖は、最近になってよほど明るく変化して来た。第一に身体が昔より丈夫になり、神経が少し図太く鈍って来た。青年時代に、僕をひどく苦しめた病的感覚や強迫観念が、年・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  13. ・・・ 或日こう云う対坐の時、花房が云った。「お父うさん。わたくしも大分理窟だけは覚えました。少しお手伝をしましょうか」「そうじゃろう。理窟はわしよりはえらいに違いない。むずかしい病人があったら、見て貰おう」 この話をしてから、花・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  14. ・・・私は炭団の活けてある小火鉢を挟んで、君と対座した。 この時すぐに目を射たのは、机の向側に夷麦酒の空箱が竪に据えて本箱にしてあることであった。しかもその箱の半以上を、茶褐色の背革の大きい本三冊が占めていて、跡は小さい本と雑記帳とで填まって・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>
  15. ・・・暇さえあると古い彫刻と対坐していつまでもいつまでもじっとしている。 一八七九年、ようやく二十を越したばかりのデュウゼは旅役者の仲間に加わってナポリへ行き、初めてテレエゼの役をつとめたが、二三日たつと彼女の名はすでに全イタリーに広まってい・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>
  16. ・・・ 初めて漱石と対坐しても、私はそう窮屈には感じなかったように思う。応対は非常に柔らかで、気おきなく話せるように仕向けられた。秋の日は暮れが早いので、やがて辞し去ろうとすると、「まあ飯を食ってゆっくりしていたまえ、その内いつもの連中がやっ・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>
  17. ・・・碁盤を挟んで対坐しているのは、この寺の住持と、麓の村の地主とであって、いずれもまだ還暦にはならない。時は真夏の午後、三、四時ごろである。二人は何も言わない。ただ時々、パチッパチッと石を置く音がする。 わたくしにはこの寺がどこであるか解ら・・・<和辻哲郎「松風の音」青空文庫>