だい‐ざい【題材】例文一覧 30件

  1. ・・・従って、古来これを題材にした、芸術上の作品も、沢山ある。グスタヴ・ドオレの画は勿論、ユウジァン・スウもドクタア・クロリイも、これを小説にした。モンク・ルイズのあの名高い小説の中にも、ルシファや「血をしたたらす尼」と共に「さまよえる猶太人」が・・・<芥川竜之介「さまよえる猶太人」青空文庫>
  2. ・・・ モウパッサンが普仏戦争を題材にした一篇の読みだしは、「巴里は包囲されて飢えつつ悶えている。屋根の上に雀も少くなり、下水の埃も少くなった。」と言うのではなかったか。 雪の時は――見馴れぬ花の、それとは違って、天地を包む雪であるから、・・・<泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」青空文庫>
  3. ・・・空想し易く、ものを見るのに比較的無差別であり、何ものにも同情し易いからにもよるが、それにしても、いろいろな意味で、境遇に従って話の題材を選ぶことは自然であると考えられるからです。また、題材の如何が、子供達に与える興味に関係することも勿論であ・・・<小川未明「童話を書く時の心」青空文庫>
  4. ・・・文芸ばかりでなく、絵画に於てもそうであるが、たゞその形とか色とか、乃至は題材とか技巧とか、そういった外面的のものにはそれ自身に本当の感激を与える力はないものだ。我々が本当の感激をうけるのは、それらのものゝ背後に潜んでいる、作者自身の精神によ・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  5. ・・・ 彼が風変りな題材と粘り強い達者な話術を持って若くして文壇へ出た時、私は彼の逞しい才能にひそかに期待して、もし彼が自重してその才能を大事に使うならば、これまでこの国の文壇に見られなかったような特異な作家として大成するだろうと、その成長を・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  6. ・・・ 農民の生活を題材として取扱う場合、プロレタリア文学は、どういう態度と立場を以て望むか、そして、どういう効果を所期しなければならないか、ということは、大体原則的には、理解されていた。それは、「土の芸術」とか「農村の文化」とか、農村を都市・・・<黒島伝治「農民文学の問題」青空文庫>
  7. ・・・だが、それは題材の関係であって、若し、それらの作家も戦争を書けば、恐らくその大部分が、当時支配的だった軍事的イデオロギーを反映したゞろうと思われる。第二章 戦時に動員されて簇出した小説 まず、さきに、戦争に動員されて簇出した・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  8. ・・・それは、あなたが一口に高踏派と言われているのと同じくらいの便宜上の分類に過ぎませぬが、私の小説の題材は、いつも私の身辺の茶飯事から採られているので、そんな名前をもらっているのです。私は、「たしかな事」だけを書きたかったのです。自分の掌で、明・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  9. ・・・さて今回本紙に左の題材にて貴下の御寄稿をお願い致したく御多忙中恐縮ながら左記条項お含みの上何卒御承引のほどお願い申上げます。一、締切は十二月十五日。一、分量は、四百字詰原稿十枚。一、題材は、春の幽霊について、コント。寸志、一枚八円にて何卒。・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  10. ・・・という魯迅の日本留学時代の事を題材にした長篇と、「お伽草子」という短篇集を作り上げた。その時に死んでも、私は日本の作家としてかなり仕事を残したと言われてもいいと思った。他の人たちは、だらしなかった。 その間に私は二度も罹災していた。「お・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  11. ・・・いわゆる案内記の無味乾燥なのに反してすぐれた文学者の自由な紀行文やあるいは鋭い科学者のまとまらない観察記は、それがいかに狭い範囲の題材に限られていても、その中に躍動している生きた体験から流露するあるものは、直接に読者の胸にしみ込む、そしてた・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  12. ・・・は比較にならぬほど複雑で深刻な事件とその心理とを題材として取扱っているから、もし成効すれば芸術的に高級なものになり得るはずであるが、同時にこれを娯楽のための映画として観ると、観たあとの気持はあまり健全な愉快なものではないはずである。「泉・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  13. ・・・刑務所や工場を題材にしているにかかわらず、全体に明るい朗らかな諧調が一貫している。このおもしろさはもちろん物語の筋から来るのでもなく、哲学やイデオロギーからくるのでもなんでもなくて、全編の律動的な構成からくる広義の音楽的効果によるものと思わ・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  14. ・・・などは題材がロシアふうであるのに映画は全然ヤンキーふうであるが、「アラン」にはそうしたアメリカふうがどこにも見えないように思われる。     十 ナナ ゾラの「ナナ」から「暗示を受けて」作った映画だと断わってあるから、そ・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  15. ・・・すなわち、一方には、およそ有りふれた陳套な題材と取り扱い方をした小説の「創作」と、他方では、最独創的な自然観人生観を盛った随筆の「中間物」とを対比させて見れば、後者のほうが前者よりもより多く創作的であり、前者のほうがひと山百文の模造物への中・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  16. ・・・もしも彼がかりにわが日本政府の官吏であったと仮定したら、はたしてどうであったかを考えてみることを、賢明なる本誌読者の銷閑パズルの題材としてここに提出したいと思う次第である。 これに関連したことで自分が近年で実に胸のすくほど愉快に思ったこ・・・<寺田寅彦「災難雑考」青空文庫>
  17. ・・・しかしユウゴオやラマルチンはまだ一度も巴里郊外の自然をそが抒情詩の直接の題材にして歌った事はない。それはかの通俗小説の作家として今では最う忘れられようとしている Paul de Kock を以て嚆矢と見做さなければならぬ。ポオル・ド・コック・・・<永井荷風「夏の町」青空文庫>
  18. ・・・しかも講談筆記の題材たるや既に老人の熟知するところ。其の陳腐にして興味なきことも亦よく予想せられるところであるが、これ却って未知の新しきものよりも老人の身には心易く心丈夫に思われ、覚えず知らず行を逐って読過せしめる所以ともなるのであろう。こ・・・<永井荷風「百花園」青空文庫>
  19. ・・・印象派の画家が好んで描いた題材を採って之を文章となす事を畢生の事業と信じた。後に僕は其主張のあまりに偏狭なることを悟ったのであるが、然し少壮の時に蒙った感化は今に至っても容易に一掃することができない。銀座通のカッフェー内外の光景が僕をしては・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  20.  私は筆を執っても一向気乗りが為ぬ。どうもくだらなくて仕方がない。「平凡」なんて、あれは試験をやって見たのだね。ところが題材の取り方が不充分だったから、試験もとうとう達しなくって了った。充分に達しなかったというのは、サタイア・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  21. ・・・ 溝口というひとはこれからも、この作品のような持味をその特色の一つとしてゆく製作者であろうが、彼のロマンチシズムは、現在ではまだ題材的な要素がつよい。技法上の強いリアリスティックな構成力、企画性がこの製作者の発展の契機となっているのであ・・・<宮本百合子「「愛怨峡」における映画的表現の問題」青空文庫>
  22. ・・・ロシアの作曲家チャイコフスキーを題材とした「悲愴交響曲」という作品がある。二男は歴史家であるゴロ・マン。次女モニカはハンガリーの美術史家の妻。三男ミハエルはヴァイオリニスト。末娘のエリザベート・マンがピアニストで、イタリーの反ファシスト評論・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  23. ・・・この作品は、われわれの人生に災難という形であらわれる偶然の力につよく印象づけられたことがあって、それが題材にされた。それから数年後に書かれた「顔」も、またちがった意味で偶然が人生に与える影響ということについて深く動かされたためであった。南ド・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」青空文庫>
  24. ・・・国際的な題材のルポルタージュがふえているのであるが、そのどれもが、国際間の現実を正しく反映しようとしているのでないことは、誰しも気づいている。現在、最も歪められて扱われているのはソヴェト同盟に関するルポルタージュである。それは日本の内にひそ・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」青空文庫>
  25. ・・・それらがほんとに思わずも溢れる川のように溢れてかかれた作品であり、ほんとに書かずにいられない題材と主題とによっているというまじりけなさの点で、これら二つの作品のかげには、人生の初秋において妻として甦った一人の女の豊かな秋のみのりへの生と文学・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第七巻)」青空文庫>
  26. ・・・方の一例にまで書くのであるが、『春琴抄』という谷崎氏の作品を読むときでも、私も人々のいうごとく立派な作品だと一応は感心したものの、やはりどうしても成功に対して誤魔化しがあるように思えてならぬのである。題材の持ち得る一番困難なところが一つも書・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  27. ・・・……………    笑われた子 これは夢を題材にした私の創作の中の一つである。ある子供の両親がその子を何に仕立てていってよいものかと毎夜相談をしている。そう云うある夜、子は夢を見た。野の中で大きな顔に笑われる夢である。翌朝眼が・・・<横光利一「夢もろもろ」青空文庫>
  28. ・・・歴史的題材を取り扱う画において、特にこの傾向は著しい。人物を描けば、我々の目前に生きている人ではなくて、豊太閤である。あるいは狗子仏性を問答する禅僧である。あるいは釈迦の誕生を見まもる女の群れである。風景を描けば、そこには千の与四郎がたたず・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  29. ・・・その中には寺社の縁起物語の類が多く、題材は日本の神話伝説、仏典の説話、民間説話など多方面で、その構想力も実に奔放自在である。それらは、そういう寺社を教養の中心としていた民衆の心情を、最も直接に反映したものとして取り扱ってよいであろう。民俗学・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  30. ・・・がしかしその作品の本来の美しさを感じないでも、なおそこに或る魅力を感ずる場合、例えば題材に対して興味を覚える場合には、公衆はその作品から或る影響をうける。マダム・ボヴァリーを読んで姦通を煽動されるとか、ロダンの「接吻」を見て肉欲を刺戟される・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>