たい‐して【大して】例文一覧 30件

  1. ・・・但しどちらも大してはわからざる如し。 十四、どこか若々しき所ある事。 十五、皮肉や揚足取りを云わぬ事。 十六、手紙原稿すべて字のわかり好き事。 十七、陸海軍の術語に明き事。少年時代軍人になる志望ありし由。 十八、正直なる・・・<芥川竜之介「彼の長所十八」青空文庫>
  2. ・・・大慈大悲の仏たちである。大して御立腹もあるまいけれども、作がいいだけに、瞬もしたまいそうで、さぞお鬱陶しかろうと思う。 俥は寂然とした夏草塚の傍に、小さく見えて待っていた。まだ葉ばかりの菖蒲杜若が隈々に自然と伸びて、荒れたこの広い境内は・・・<泉鏡花「七宝の柱」青空文庫>
  3. ・・・それが予備軍のくり出される時にも居残りになったんで、自分は上官に信用がないもんやさかいこうなんのやて、急にやけになり、常は大して飲まん酒を無茶苦茶に飲んだやろ、赤うなって僕のうちへやって来たことがある。僕などは、『召集されないかて心配もなく・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  4. ・・・下駄の台を拵えるのが仕事だと聴いてはいるが、それも大して骨折るのではあるまい。初対面の挨拶も出来かねたようなありさまで、ただ窮屈そうに坐って、申しわけの膝ッこを並べ、尻は少しも落ちついていない様子だ。「お父さんの風ッたら、ありゃアしない・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  5. ・・・「その代り、大して悪くもならねえんだろう」「ええ」と頷く。「そういうのはどうしても直りが遅いわけさね。新さんもじれッたかろうが、お光さんも大抵じゃあるめえ」「そりゃ随分ね何も病人の言うことを一々気にかけるじゃないけど、こっち・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  6. ・・・京都弁はまるで美術工芸品のように美しいが、私にとっては大して魅力がない所以だ。 京都弁は誰が書いても同じ紋切型だと言ったが、しかし、大阪弁も下手な作家や、大阪弁を余り知らない作家が書くと、やはり同じ紋切型になってしまって、うんざりさ・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  7. ・・・それでも根が陽気好きだけに大して苦にもならず身をいれて勤めていると、客が、芸者よりましや。やはり悲しかった。本当の年を聞けば吃驚するほどの大年増の朋輩が、おひらきの前に急に祝儀を当てこんで若い女めいた身振りをするのも、同じヤトナであってみれ・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  8. ・・・ 酒の上の管ではないが、夫婦というものは大して難有いものでは無い。別してお政なんぞ、あれは升屋の老人がくれたので、くれたから貰ったので、貰ったから子が出来たのだ。 母もそうだ、自分を生んだから自分の母だ、母だから自分を育てたのだ。そ・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  9. ・・・ぼくはいま、ある女の子の家に毎晩のように遊びに行っては、無駄話をして一時頃帰ってきます。大して惚れていないのに、せんだって、真面目に求婚して、承諾されました。その帰り可笑しく、噴き出している最中、――いや、どんな気持だったかわかりません。ぼ・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  10. ・・・従って私はもしも歌人が自分の顔を気にしてそれを色々に変えようとするような事があるとすれば、それは大して努力するだけの意義のある事ではないように思う。 それで私はすべての歌人に望むように宇都野さんの場合にも、どうかあまりに頭のいい自己批評・・・<寺田寅彦「宇都野さんの歌」青空文庫>
  11. ・・・ちょうどいろいろな商品のレッテルを郭大して家の正面へはり付けたという感じである。考えようではなかなか美しいと思われるのもあるがしかしいずれにしても実に瞬間的な存在を表象するようなものばかりである。このような珍しい現象の記録をそれが消えない今・・・<寺田寅彦「カメラをさげて」青空文庫>
  12.  帝劇でドイツ映画「ブロンドの夢」というのを見た。途中から見ただけではあるし、別に大して面白い映画とも思われなかったが、その中の一場面としてこの映画の主役となる老若男女四人が彼等の共同の住家として鉄道客車の古物をどこかから買・・・<寺田寅彦「鴉と唱歌」青空文庫>
  13. ・・・んでもないが、またわざわざ手数をして見に行きたいと思う程の特別な衝動に接する機会もなかったために、――云わば、あまり興味のない親類に無沙汰をすると同様な経過で、ついつい今まで折々は出逢いもした機会を、大して惜しいとも思わずに取外して来たので・・・<寺田寅彦「議会の印象」青空文庫>
  14. ・・・ 大して金儲けには関係はないが、『織留』の中にある猫の蚤取法や、咽喉にささった釣針を外ずす法なども独創的巧智の例として挙げたものと見られる。 それはとにかく西鶴のオリジナリティーの尊重の中にも、西鶴の中の科学的な要素の一つを認めるこ・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  15. ・・・ 私はこの男の癖をよく知っていて、かなり久しく馴らされているし、またそのような特殊な行為の動機も充分に諒解しているので、別に大して気にしないつもりではいるが、それでもこの男と話した後ではどこか平常とはちがった心持になっているものと思われ・・・<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  16. ・・・でも「日本現代の開化」でも大して私の方では構いません。「現代」と云う字があって「日本」と云う字があって「開化」と云う字があって、その間へ「の」の字が入っていると思えばそれだけの話です。何の雑作もなくただ現今の日本の開化と云う、こういう簡単な・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  17. ・・・けれどもその二十年後の今、自分の眼の前に現れた小作りな老師は、二十年前と大して変ってはいなかった。ただ心持色が白くなったのと、年のせいか顔にどこか愛嬌がついたのが自分の予期と少し異なるだけで、他は昔のままのS禅師であった。「私ももう直五・・・<夏目漱石「初秋の一日」青空文庫>
  18. ・・・そういう訳で今日は出ましたので、演説をする前に言訳がましい事をいうのは甚だ卑怯なようでありますけれども、大して面白い事も御話は出来ないと思いますし、また問題があっても、学校の講義見たように秩序の立った御話は出来兼ねるだろうと思います。安倍君・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  19. ・・・が、その痛みは大して彼に気を揉ませはしなかった。何故ならば、それはいつでもある事だったから。 ダイの仕度は出来た。 二十三本の発破が、岩盤の底に詰められて、蕨のように導火線が、雪の中から曲った肩を突き出していた。 五人の坑夫、―・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  20.  松戸与三はセメントあけをやっていた。外の部分は大して目立たなかったけれど、頭の毛と、鼻の下は、セメントで灰色に蔽われていた。彼は鼻の穴に指を突っ込んで、鉄筋コンクリートのように、鼻毛をしゃちこばらせている、コンクリートを除・・・<葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」青空文庫>
  21. ・・・マドレエヌ わたくしにお逢いになりましても、そう大して更けたようには御覧なさいませんでしょうと存じますの。年の割に顔も姿も変らないと、皆がそう申しますの。これで体は大切にいたして、更けない用心をいたしていますの。でも夫の心は繋ぎ留め・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  22. ・・・耕一が大して怒ったでもなしに斯う云いました。「ふん、そうかい、誰だって同じことだな。さあ僕は今日もいそがしい。もうさよなら。」 又三郎のかたちはもうみんなの前にありませんでした。みんなはばらばら丘をおりました。   九月十日・・・<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>
  23. ・・・第二のは、チーズやバターやミルク、それから卵などならば、まあものの命をとるというわけではないから、さし支えない、また大してからだに毒になるまいというので、割合穏健な考であります。第三は私たちもこの中でありますが、いくら物の命をとらない、自分・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  24. ・・・いい意味での女らしさとか、悪い意味での女らしさということが今日では大して怪しみもせずにいわれ、私たち自身やはりその言葉で自分を判断しようともしている。つまり、その観念の発生は女の内部にかかわりなく外から支配的な便宜に応じてこしらえられたもの・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  25. ・・・そして、忙しくて乏しい歳末の喧騒にまぎれて、この事件は忘れられ、今日、私たちは、その事件のおこった当日と大して変りない暴力的交通状態の下に暮しているのである。 新聞記事の出た前後、検事局の態度にあきたりない投書が、どっさりあった。この一・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  26. ・・・十一時四十分上野発仙台行の列車で大して混んでいず、もっと後ろに沢山ゆとりはあるのだ。婆さんの連れは然し、「戸に近い方がいいものね、ばあや、洋傘置いちゃうといいわ、いそいでお座りよ。上へのっかっちゃってさ」 窓から覗き込んで指図する。・・・<宮本百合子「一隅」青空文庫>
  27. ・・・――木浦なんぞは入口だから、大して内地とは違うまい」 一太はうっかりした風で窓から外を見ていたが珍しがって急に大声を出した。「ここんち竹藪があるんだねえ、おっかちゃん、御覧ほら、向うにもあるよ。この辺竹藪が多いんだね」「ああ」・・・<宮本百合子「一太と母」青空文庫>
  28. ・・・ 見ると、稍々灰色を帯びた二つの瞳は大して美麗ではないが、いかにもむくむくした体つきが何とも云えず愛らしい。頭、耳がやはり波を打ったチョコレート色の毛で被われ、鼻柱にかけて、白とぶちになって居る。今に大きくなり、性質も悠暢として居そ・・・<宮本百合子「犬のはじまり」青空文庫>
  29. ・・・肝心の漁師の宰領は、為事は当ったが、金は大して儲けなかったのに、内では酒なら幾らでも売れると云う所へ持ち込んだのだから、旨く行ったのだ。」こう云った一人の客は大ぶ酒が利いて、話の途中で、折々舌の運転が悪くなっている。渋紙のような顔に、胡麻塩・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>
  30. ・・・彼女の父アレサンドロは役者としては大して成功しなかったが、絵画に対しては猛烈な愛情を持っていた。 エレオノラの初舞台は一八六一二年、彼女が四歳の時であった。十四になった誕生日には初めてジュリアをつとめたが、そのころは見すぼらしい、弱々し・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>