だい‐しょう〔‐シヤウ〕【代償】例文一覧 6件

  1. ・・・ 字を書くことの上手な人はこういう機会に存分に筆を揮って、自分の筆端からほとばしり出る曲折自在な線の美に陶酔する事もあろうが、彼のごとき生来の悪筆ではそれだけの代償はないから、全然お勤めの機械的労働であると思われる上に、自分の悪筆に対す・・・<寺田寅彦「年賀状」青空文庫>
  2. ・・・「お前の肉の代償にか、馬鹿な!」「小僧さん。此人たちは私を汚しはしなかったよ。お前さんも、も少し年をとると分って来るんだよ」 私はヒーローから、一度に道化役者に落ちぶれてしまった。此哀れむべき婦人を最後の一滴まで搾取した、三人の・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  3. ・・・スーは、孤独の代償として自由を甘受して、その群像を完成させた。マークは生前、この群像の女が、手に子供を抱きながら、その目ではどこか遠くを見ている、それを指して、君そっくりじゃないか、と非難めいた苦しい顔をしたのであった。 群像を仕上げた・・・<宮本百合子「『この心の誇り』」青空文庫>
  4. ・・・四十円のためには大の男が一ヵ月間の勤労を代償とさせられるのが今日の現実ではなかろうか。 世界的な経済恐慌は、この地球の上六分の一を除いたあらゆる国々において、健康で真率な心を持った若い男女を、結婚の問題で苦しめている。結婚年齢のおくれる・・・<宮本百合子「昨今の話題を」青空文庫>
  5. ・・・ていたのであり、大衆がその土台を穴倉から覆すことがあれば、彼は自身が憎悪に燃えつつ膏汗を代償として奪い掴んだ一片のものさえ放棄しなければならなくなるであろうことをまがうかたなく知っていたからである。「革命の与える経済的擾乱ほど悲惨なもの・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  6. ・・・それは共犯者の愛着に過ぎなかったが、しかし私はそれを秘められた人間的な愛の代償として快く迎えた。その世界では彼らは皆私の先達であった。彼らは私の眼に、世界と人間とが尽くることなき享楽の対象であることの、具体的な証左であった。そのころの私には・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>