だい‐じん【大尽/大臣】例文一覧 30件

  1. ・・・なぜ円いかと問いつめて見れば、上愚は総理大臣から下愚は腰弁に至る迄、説明の出来ないことは事実である。 次ぎにもう一つ例を挙げれば、今人は誰も古人のように幽霊の実在を信ずるものはない。しかし幽霊を見たと云う話は未に時々伝えられる。ではなぜ・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・東京から来て大尽のお邸に、褄を引摺っていたんだから駄目だ、意気地はねえや。」 女房は手拭を掻い取ったが、目ぶちのあたりほんのりと、逆上せた耳にもつれかかる、おくれ毛を撫でながら、「厭な児だよ、また裾を、裾をッて、お引摺りのようで人聞・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  3. ・・・その頃、銀座さんと称うる化粧問屋の大尽があって、新に、「仙牡丹」という白粉を製し、これが大当りに当った、祝と披露を、枕橋の八百松で催した事がある。 裾を曳いて帳場に起居の女房の、婀娜にたおやかなのがそっくりで、半四郎茶屋と呼ばれた引手茶・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  4. ・・・流行等極めて浅薄なる娯楽に目も又足らざるの観あるは、誠に嘆しき次第である、それに換うるにこれを以てせば、いかばかり家庭の品位を高め趣味的の娯楽が深からんに、躁狂卑俗蕩々として風を為せる、徒に華族と称し大臣と称す、彼等の趣味程度を見よ、焉ぞ華・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  5. ・・・大抵は悪紙に描きなぐった泥画であるゆえ、田舎のお大尽や成金やお大名の座敷の床の間を飾るには不向きであるが、悪紙悪墨の中に燦めく奔放無礙の稀有の健腕が金屏風や錦襴表装のピカピカ光った画を睥睨威圧するは、丁度墨染の麻の衣の禅匠が役者のような緋の・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6. ・・・が、世間から款待やされて非常な大文豪であるかのように持上げられて自分を高く買うようになってからの緑雨の皮肉は冴を失って、或時は田舎のお大尽のように横柄で鼻持がならなかったり、或時は女に振棄てられた色男のように愚痴ッぽく厭味であったりした。緑・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  7. ・・・そして、どうか、娘さんを、私どもの大尽の息子のお嫁にもらいたいといったのです。 両親は、けっして、相手を疑いませんでした。先方が、金持ちで、なに不自由なく、そして、娘をかわいがってさえくれればいいと思っていましたので、先方がそんなにいい・・・<小川未明「海ぼたる」青空文庫>
  8. ・・・「この町の大尽のお使いでまいったものです。ちょっと大尽がお目にかかってお話したいことがあるからいらっしてくださるように。」といいました。 姉は、これまでこんなことをいったものが、幾人もありましたから、またかと思いましたが、その大尽と・・・<小川未明「港に着いた黒んぼ」青空文庫>
  9. ・・・ 昔、政党がさかんだった頃、自身は閣僚になる意志はてんで無く、ただ、誰かこいつと見込んだ男を大臣にするために、しきりに権謀術策をもちい、暗中飛躍をした男がいたが、良い例ではないけれども、まず、おれの気持もそんなとこだったろうか。 も・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  10. ・・・そこで、あわてて文部大臣賞というものを特に作って、それを寿子に与えることにして、主催者側はやっと満足した。それほどの素晴しい出来栄えだったのである。 審査に立ち合ったクロイツァーは、「自分は十三歳のエルマンの演奏を聴いたことがあるが・・・<織田作之助「道なき道」青空文庫>
  11. ・・・増鏡巻五に、太政大臣藤原公相の頭が大きくて大でこで、げほう好みだったので、「げはふとかやまつるにかゝる生頭のいることにて、某のひじりとかや、東山のほとりなりける人取りてけるとて、後に沙汰がましく聞えき」という事があって、まだしゃれ頭にならな・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  12. ・・・の口から説き勧めた答案が後日の崇り今し方明いて参りましたと着更えのままなる華美姿名は実の賓のお夏が涼しい眼元に俊雄はちくと気を留めしも小春ある手前格別の意味もなかりしにふとその後俊雄の耳へ小春は野々宮大尽最愛の持物と聞えしよりさては小春も尾・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  13. ・・・おまえは、大臣の前にでも坐っているつもりなのか。」と言って、機嫌が悪い。 あまり卑下していても、いけないのである。それでは、と膝を崩して、やや顔を上げ、少し笑って見せると、こんどは、横着な奴だと言って叱られる。これはならぬと、あわてて膝・・・<太宰治「一燈」青空文庫>
  14. ・・・じっさい、あれほどの腕前を、他のまともな方面に用いたら、大臣にでも、博士にでも、なんにでもなれますよ。私ども夫婦ばかりでなく、あの人に見込まれて、すってんてんになってこの寒空に泣いている人間が他にもまだまだある様子だ。げんにあの秋ちゃんなど・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  15. ・・・「どうでも大臣か何かにおなりになるのではございますまいか。わたくしは議事堂に心安いものを持っています。食堂の給仕をいたしております。もしこれから何か御用がおありなさるなら、その男をお使い下さるようにお願い申します。確かな男でございます。」・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  16. ・・・現在の映画ファンの中の堅実な分子の中から総理大臣文部大臣以下各局長が輩出する時代が来て始めて私の夢は実現されるかもしれない。しかしそういう日の来ないうちに不良映画の不良教育を受けた本当の不良が天下を溺らすようにならないとは限らない。そうなら・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  17. ・・・ 政党大臣や大学教授や官展無審査員ならば、ところてんのようにお代わりはいつでもできる。しかしI氏くらいの一流の俳優はそう容易には補充できない。 そんな事を考えながら、自分もエスカレーターに乗ってM百貨店の出口に突き出されたのであった・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  18. ・・・ それほど無政府主義が恐いなら、事のいまだ大ならぬ内に、下僚ではいけぬ、総理大臣なり内務大臣なり自ら幸徳と会見して、膝詰の懇談すればいいではないか。しかし当局者はそのような不識庵流をやるにはあまりに武田式家康式で、かつあまりに高慢である。得・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  19. ・・・「ホホン――、それでわしらの労働者を踏み台にして、未来は代議士とか大臣とかに出世なさっとだろうたい、そりゃええ」 高坂でも、長野でも、この小男の「ホホン」には真ッ赤にさせられ、キリキリ舞いさせられた。いつも板裏草履をはいて、帯のはし・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  20. ・・・ 父は内閣を「太政官」大臣を「卿」と称した頃の官吏の一人であった。一時、頻と馬術に熱心して居られたが、それも何時しか中止になって、後四五年、ふと大弓を初められた。毎朝役所へ出勤する前、崖の中腹に的を置いて古井戸の柳を脊にして、凉しい夏の・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  21. ・・・傾城の誠が金で面を張る圧制な大尽に解釈されようはずはない。変る夜ごとの枕に泣く売春婦の誠の心の悲しみは、親の慈悲妻の情を仇にしたその罪の恐しさに泣く放蕩児の身の上になって、初めて知り得るのである。「傾城に誠あるほど買ひもせず」と川柳子も已に・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  22. ・・・「復啓二月二十一日付を以て学位授与の儀御辞退相成たき趣御申出相成候処已に発令済につき今更御辞退の途もこれなく候間御了知相成たく大臣の命により別紙学位記御返付かたがたこの段申進候敬具」 余もまた余の所見を公けにするため、翌十三日付を以・・・<夏目漱石「博士問題の成行」青空文庫>
  23. ・・・内務省の地方局長の方がなお遥にえらいと思っている。大臣や金持や華族様はなおなお遥にえらいと思っている。妙な事であります。もし我々が小説家から、人間と云うものは、こんなものであると云う新事実を教えられたならば、我々は我々の分化作用の径路におい・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  24. ・・・俺は、お前が菜っ葉を着て、ブル達の間を全で大臣のような顔をして、恥しがりもしないで歩いていたから、附けて行ったのさ、誰にでも打っつかったら、それこさ一度で取っ捕まっちまわあな」「お前はどう思う。俺たちが何故死んじまわないんだろうと不思議・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・之を政治上に喩えて言わんに、妻が内の家事を治むるは内務大臣の如く、夫が戸外の経営に当るは外務大臣の如し。両大臣は共に一国の国事経営を負担する者にして、其官名に内外の別こそあれ、身分には軽重を見ず。然らば則ち女大学の夫に仕え云々の文は、内務大・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  26. ・・・を挙ぐれば河童の恋する宿や夏の月湖へ富士を戻すや五月雨名月や兎のわたる諏訪の湖指南車を胡地に引き去る霞かな滝口に燈を呼ぶ声や春の雨白梅や墨芳ばしき鴻臚館宗鑑に葛水たまふ大臣かな実方の長櫃通る夏野かな朝・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  27. ・・・けれども、また亡くなった鷲の大臣が持っていた時は、大噴火があって大臣が鳥の避難のために、あちこちさしずをして歩いている間に、この玉が山ほどある石に打たれたり、まっかな熔岩に流されたりしても、いっこうきずも曇りもつかないでかえって前よりも美し・・・<宮沢賢治「貝の火」青空文庫>
  28. ・・・知事や大臣にはなれなくても、せめて軍人になれば出世は力次第だから。」という親心と息子の心を吸収して、百姓の息子でも、軍人ならば大将にだって成れる道として、軍国日本に軍人の道が開かれていたのである。日本の大学は、人類の理性と学問に関するアカデ・・・<宮本百合子「新しいアカデミアを」青空文庫>
  29. ・・・ 三間打ち抜いて、ぎっしり客を詰め込んだ宴会も、存外静かに済んで、農商務大臣、大学総長、理科大学長なんぞが席を起たれた跡は、方々に群をなして女中達とふざけていた人々も、一人帰り二人帰って、いつの間にか広間がひっそりして来た。 もう十・・・<森鴎外「里芋の芽と不動の目」青空文庫>
  30. ・・・ためにする気持ちが全然なければ、相手が金持ちであろうと貧乏人であろうと、大臣であろうと小使であろうと、少しも変わりはない。――ちょうどこの言葉に現わされているような態度を、私は実際に目の前に見るように感じた。 滝田樗陰のことで思い出・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>