だい‐たん【大胆】例文一覧 30件

  1. ・・・――宗賀は大胆な男で、これより先、一同のさがさないような場所場所を、独りでしらべて歩いていた。それがふと焚火の間の近くの厠の中を見ると、鬢の毛をかき乱した男が一人、影のように蹲っている。うす暗いので、はっきりわからないが、どうやら鼻紙嚢から・・・<芥川竜之介「忠義」青空文庫>
  2. ・・・クララの父親は期待をもった微笑を頬に浮べて、品よくひかえ目にしているこの青年を、もっと大胆に振舞えと、励ますように見えた。パオロは思い入ったようにクララに近づいて来た。そして仏蘭西から輸入されたと思われる精巧な頸飾りを、美しい金象眼のしてあ・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  3. ・・・我々は今最も厳密に、大胆に、自由に「今日」を研究して、そこに我々自身にとっての「明日」の必要を発見しなければならぬ。必要は最も確実なる理想である。 さらに、すでに我々が我々の理想を発見した時において、それをいかにしていかなるところに求む・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  4. ・・・わざと安心して大胆な不埒を働く。うむ、耳を蔽うて鐸を盗むというのじゃ。いずれ音の立ち、声の響くのは覚悟じゃろう。何もかも隠さずに言ってしまえ。いつの事か。一体、いつ頃の事か。これ。侍女 いつ頃とおっしゃって、あの、影法師の事でございまし・・・<泉鏡花「紅玉」青空文庫>
  5. ・・・と僕が受けて、「大胆に出て行くものにゃア却って弾が当らないものだそうだ。」「うちの人の様にくよくよしとると、ほんまにあきまへん。」「そやかさいおれは不大胆の厭世家やて云うとる。弾丸が当ってくれたのはわしとして名誉でもあったろが、くた・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  6. ・・・道を混さず真理を顕わし明かに聖書の示す所を説かんことを、即ち余の説く所の明に来世的ならんことを、主の懼るべきを知り、活ける神の手に陥るの懼るべきを知り、迷信を以て嘲けらるるに拘わらず、今日と云う今日、大胆に、明白に、主の和らぎの福音を説かん・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  7. ・・・あたたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さいまし。わたくしは自分の致した事を、一人で神様の前へ持って参ろうと存じます。名誉ある人妻として持って参ろうと存じます。わたくしは十字架に釘付けにせられたように、自分の・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  8. ・・・ひとつ都にいって、大胆にそうなさってはいかがですか。」と、かもめはいいました。「そうですか、ひとつ考えてみましょう。」と、からすは答えました。 やがて、かもめとからすとは、別れてしまいました。かもめは海の方にゆき、からすは里の方にゆ・・・<小川未明「馬を殺したからす」青空文庫>
  9. ・・・ 無論、新聞に広告を出すほどのことを、なにもおれの案だなどと断るまでもないことだし、また、べつだんおれの智慧を借りなくても誰にも思いつけることだが、しかし、あんなに大胆に、殆んど向う見ずかと思えるくらいには、やはりおれでなくてはやれなか・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  10. ・・・すると猫は大胆にも枕の上へあがって来てまた別の隙間へ遮二無二首を突っ込もうとした。吉田はそろそろあげて来てあった片手でその鼻先を押しかえした。このようにして懲罰ということ以外に何もしらない動物を、極度に感情を押し殺したわずかの身体の運動で立・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  11. ・・・又たお源は磯さんはイザとなれば随分人の出来ない思きった大胆なことをする男だと頼もしがっている。けれどそうばかし思えんこともある。その実案外意久地のない男かしらと思う場合もあるが、それは一文なしになって困り抜た時などで、そう思うと情なくなるか・・・<国木田独歩「竹の木戸」青空文庫>
  12. ・・・とを警告した。左衛門尉は「何の頃か大蒙古は寄せ候ふべき」と問うた。日蓮は「天の御気色を拝見し奉るに、以ての外に此の国を睨みさせ給ふか。今年は一定寄せぬと覚ふ」と大胆にいいきった。平ノ左衛門尉はさすがに一言も発せず、不興の面持であった。 ・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  13. ・・・革命運動などのような、もっとも熱烈な信念と意気と大胆と精力とを要するの事業は、ことに少壮の士に待たねばならぬ。古来の革命は、つねに青年の手によってなされたのである。維新の革命に参加してもっとも力のあった人びとは、当時みな二十代から三十代であ・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  14. ・・・別な方からは、大胆な歌声が起る。 俺は起き抜けに足踏みをし、壁をたゝいた。顔はホテり、眼には涙が浮かんできた。そして知らないうちに肩を振り、眉をあげていた。「ごはんの用――意ッ!」 俺はそれを待っていた。丁度その時は看守も雑役も・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  15. ・・・実に、華麗な、大胆な風俗だ。見給え、通る人は各自に思い思いの風をしている」「とにかく、進んで来たんだね。着物の色からして、昔は割合に単純なもので満足した。今は子供の着るものですら、黄とか紅とか言わないで、多く間色を用いるように成った。そ・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  16. ・・・アンティフォンは大胆にもそれを引き合いに出して、ディオニシアスにあてつけを言ったのでした。 また或とき、ディオニシアスは、友人のドモクレスという人が、たった一日でもいいから、ディオニシアスのような身分になって見たいと言って羨んだというこ・・・<鈴木三重吉「デイモンとピシアス」青空文庫>
  17. ・・・ 焔はちろちろ燃えて、少しずつ少しずつ短かくなって行くけれども、私はちっとも眠くならず、またコップ酒の酔いもさめるどころか、五体を熱くして、ずんずん私を大胆にするばかりなのである。 思わず、私は溜息をもらした。「足袋をおぬぎにな・・・<太宰治「朝」青空文庫>
  18. ・・・立居振舞は立派な上流の婦人であって、その底には人を馬鹿にした、大胆な行を隠している。ピアノを上手に弾いて、クプレエを歌う。その時は周囲が知らず識らずの間に浮かれ出してしまう。先ずこんなわけで、いつの間にかポルジイは真面目にドリスに結婚を申し・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  19. ・・・そうして所々に露出した山骨は青みがかった真珠のような明るい銀灰色の条痕を成して、それがこの山の立体的な輪郭を鋭く大胆なタッチで描出しているのである。今までにずいぶん色々な山も見て来たが、この日この時に見た焼岳のような美しく珍しい色彩をもった・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  20. ・・・のこの匂といい色といいまたその汚しい桶といい、凡て何らの修飾をも調理をも出来得るかぎりの人為的技巧を加味せざる天然野生の粗暴が陶器漆器などの食器に盛れている料理の真中に出しゃばって、茲に何ともいえない大胆な意外な不調和を見せている処に、いわ・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  21. ・・・と男はさすがに大胆である。 女は両手を延ばして、戴ける冠を左右より抑えて「この冠よ、この冠よ。わが額の焼ける事は」という。願う事の叶わばこの黄金、この珠玉の飾りを脱いで窓より下に投げ付けて見ばやといえる様である。白き腕のすらりと絹をすべ・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  22. ・・・彼は大胆不敵になり、無謀にもただ一人、門を乗り越えて敵の大軍中に跳び降りた。 丁度その時、辮髪の支那兵たちは、物悲しく憂鬱な姿をしながら、地面に趺坐して閑雅な支那の賭博をしていた。しがない日傭人の兵隊たちは、戦争よりも飢餓を恐れて、獣の・・・<萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」青空文庫>
  23. ・・・ だんだんは大きく、大胆になって行った。 汽車は滑かに、速に辷った。気持よく食堂車は揺れ、快く酔は廻った。 山があり、林があり、海は黄金色に波打っていた。到る処にがあった。どの生活も彼にとっては縁のないものであった。 彼の反・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  24. ・・・自分はさすがにそれほど大胆ではなかったので、どうも険呑に思われて断行し得なかった。で、依然旧翻訳法でやっていたが、…… 併しそれは以前自分が真面目な頭で、翻訳に従事した頃のことである、近頃のは、いやもうお話しにならない。・・・<二葉亭四迷「余が翻訳の標準」青空文庫>
  25. ・・・それでいて、いざとなると、いつも大胆に筆を取ることが出来なくなってしまいました。今日は余り大胆な事をいたすことになりましたので、わたくしは自分で自分に呆れています。さて、当り前なら手紙の初めには、相手の方を呼び掛けるのですが、わたくしにはあ・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  26. ・・・あの靄の輪廓に取り巻かれている辺には、大船に乗って風波を破って行く大胆な海国の民の住んでいる町々があるのだ。その船人はまだ船の櫓の掻き分けた事のない、沈黙の潮の上を船で渡るのだ。荒海の怒に逢うては、世の常の迷も苦も無くなってしまうであろう。・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  27. ・・・私が少し大胆になって悪口をしました。「馬鹿。」崖も悪口を返しました。「馬鹿野郎。」慶次郎が少し低く叫びました。 ところがその返事はただごそごそごそっとつぶやくように聞えました。どうも手がつけられないと云ったようにも又そんなやつら・・・<宮沢賢治「谷」青空文庫>
  28. ・・・ということは、こんにちの社会情勢について、国際情勢について、もっとも多くの知識をもち、歴史的見通しをもった、いわば前衛的な人々が、大胆に権力と対決してゆくというだけの単純なことではありません。「進歩」ということは、その時代の常識の最高の線に・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  29. ・・・きょうの百物語の催しなんぞでからが、いかにも思い切って奇抜な、時代の風尚にも、社会の状態にも頓着しない、大胆な所作だと云わなくてはなるまい。 原来百物語に人を呼んで、どんな事をするだろうかと云う、僕の好奇心には、そう云う事をする男は、ど・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  30. ・・・僕の受けた印象はただ絵の具を駆使し画面を塗り上げて行く大胆な力のみである。そこには技巧がある。看者を釣り込んで行こうとする戯曲家らしい狡計もある。しかし芸術家らしい直観も感情もほとんど認められない。画面全体の効果から言えば、氏の幼稚な趣味が・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>