たい‐はい【退廃/×頽廃】例文一覧 30件

  1. ・・・ もしも又、私が此処に指摘したような性急な結論乃至告白を口にし、筆にしながら、一方に於て自分の生活を改善するところの何等かの努力を営み――仮令ば、頽廃的という事を口に讃美しながら、自分の脳神経の不健康を患うて鼻の療治をし、夫婦関係が無意・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  2. ・・・またこの社会を矛盾と醜悪の現実の彼岸に幻に描くことによって、私達の生活は頽廃と絶望から救われ、意義あるものとされているのであります。 何を措いても児童たちに、理想社会の全貌を彷彿させることが肝要であり、また芸術や、教育の任務でなければな・・・<小川未明「童話を書く時の心」青空文庫>
  3. ・・・道学者的偏見を有力な味方として人間にかぶせていた偽善のヴェールをひきさく反抗のメスの文学であろうか、それとも、与謝野晶子、斎藤茂吉の初期の短歌の如く新感覚派にも似た新しい官能の文学であろうか、あるいは頽廃派の自虐と自嘲を含んだ肉体悲哀の文学・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  4. ・・・敗戦、戦災、失業、道義心の頽廃、軍閥の横暴、政治の無能。すべて当然のことであり、誰が考えても食糧の三合配給が先決問題であるという結論に達する。三歳の童子もよくこれを知っているといいたいところである。円い玉子はこのように切るべきだと、地球が円・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  5. ・・・の文士らしく若気の至りの放蕩無頼を気取って、再びデンと腰を下し、頬杖ついて聴けば、十銭芸者の話はいかにも夏の夜更けの酒場で頽廃の唇から聴く話であった。 もう十年にもなるだろうか、チェリーという煙草が十銭で買えた頃、テンセンという言葉が流・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  6.  僕は終戦後間もなくケストネルの「ファビアン」という小説を読んだ。「ファビアン」は第一次大戦後の混乱と頽廃と無気力と不安の中に蠢いている独逸の一青年を横紙破りの新しいスタイルで描いたもので、戦後の日本の文学の一つの行き方を、・・・<織田作之助「土足のままの文学」青空文庫>
  7. ・・・それは佐伯自身の病欝陰惨の凸凹の表情を呈して、頽廃へ自暴自棄へ恐怖へ死へと通じているのだと、もうその頃は佐伯はその気もなく諦めていたらしい。つまりはその道だったんだ、しかも暗闇だけがその道をいやなものにしていたのではないと佐伯はつけ加えた。・・・<織田作之助「道」青空文庫>
  8. ・・・人間の教養として文学の趣味はあっても倫理学の素養のないということは不具であって、それはその人の美の感覚に比し、善の感覚が鈍いことの証左となり、その人の人間としての素質のある低さと、頽廃への傾向を示すものである。美の感覚強くして善の関心鈍きと・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  9. ・・・ 肉色に透き通るような柔らかい絹の靴下やエナメルを塗った高い女の靴の踵は、ブルジョア時代の客間と、頽廃的なダンスと、寝醒めの悪い悪夢を呼び戻す。花から取った香水や、肌色のスメツ白粉や、小指のさきほどの大きさが六ルーブルに価する紅は、集団・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  10. ・・・殆んど破れかぶれに其の布を、拡げて、さあ、なんぼだ、なんぼだと自嘲の笑を浮べながら値を張らせて居ました。頽廃の町なのであります。町へ出て飲み屋へ行っても、昔の、宿場のときのままに、軒の低い、油障子を張った汚い家でお酒を頼むと、必ずそこの老主・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  11. ・・・衰亡のクラスにふさわしき破廉恥、頽廃の法をえらんだ。ひとりでも多くのものに審判させ嘲笑させ悪罵させたい心からであった。有夫の婦人と情死を図ったのである。私、二十二歳。女、十九歳。師走、酷寒の夜半、女はコオトを着たまま、私もマントを脱がずに、・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  12. ・・・そのとき諸君は夕焼を、不健康、頽廃、などの暴言で罵り嘲うことが、できるであろうか。できるとも、と言下に答えて腕まくり、一歩まえに進み出た壮士ふうの男は、この世の大馬鹿野郎である。君みたいな馬鹿がいるから、いよいよ世の中が住みにくくなるのだ。・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  13. ・・・     頽廃の児、自然の児 太宰治は簡単である。ほめればいい。「太宰治は、そのまま『自然。』だ。」とほめてやれ。以上三項目、入院の前夜したためた。このたびの入院は私の生涯を決定した。・・・<太宰治「碧眼托鉢」青空文庫>
  14. ・・・経済的には膨脹していても、真の生活意識はここでは、京都の固定的なそれとはまた異った意味で、頽廃しつつあるのではないかとさえ疑われた。何事もすべて小器用にやすやすとし遂げられているこの商工業の都会では、精神的には衰退しつつあるのでなければ幸い・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  15. ・・・ わたくしの頽廃した健康と、日々の雑務とは、その後十余年、重ねてこの水郷に遊ぶことを妨げていたが、昭和改元の後、五年の冬さえまた早く尽きようとするころであった。或日、深川の町はずれを処定めず、やがて扇橋のあたりから釜屋堀の岸づたいに歩み・・・<永井荷風「放水路」青空文庫>
  16. ・・・そんな所へ人の出入りがあろうなどと云うことは考えられない程、寂れ果て、頽廃し切って、見ただけで、人は黴の臭を感じさせられる位だつた。 私は通りへ出ると、口笛を吹きながら、傍目も振らずに歩き出した。 私はボーレンへ向いて歩きながら、一・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  17. ・・・ 婦人の道徳の頽廃が歎かれている。しかし、これとても、一方では、食物につながった社会問題なのである。婦人の労働問題の合理的な解決が必要である一方に、食糧事情の民主的解決が緊急事となって来ている。 そのために、各種の現存の機構、組合に・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  18. ・・・        四 頽廃への抵抗 学生運動の分野で女子学生の活動はどんなものでしょうかときいたらば、編集部は次のように答えられました。「男の学生に比較すれば量において少いし、人間的生長といった面でも遅れているように見受けられ・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  19. ・・・未開なバリ島の性の祭典には、けがされない性の陶酔があり、主人公のところに東京のひきさかれた生存の頽廃があるというコントラストだけがとらえられても、従属させられている男女の社会生活におけるヒューマニティーの課題はこたえられきれない。 ・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  20. ・・・そういう道徳的頽廃を起すから女の失業者の問題を解決しなければならないけれども、社会的解決は資本主義的民主主義ではできません。だからある点ではこれらの民主主義社会は、すべてのものの幸福のためにつくられた社会であるといわれているけれども、その内・・・<宮本百合子「幸福の建設」青空文庫>
  21. ・・・形式にしばられれば、徳育も一つの頽廃であることは明らかだと思う。 小学校の先生の不足はこの二三年来到るところで云われている。八年制になると、先生の補給は、どうなるだろう。小学校の先生の過労も注目されて来ている。音楽の先生などは、これまで・・・<宮本百合子「国民学校への過程」青空文庫>
  22. ・・・いち早く、フランスは頽廃した文化主義で敗れたというような解説者に対して、常識はそれが全部の答えでないことを直感していた。 モーロアの『フランス敗れたり』はこの心持に迎えられて出たのだから、読まれたのは当然だと思う。おそらくあらゆる職業と・・・<宮本百合子「今日の作家と読者」青空文庫>
  23. ・・・忽ち新聞に、フランスは文化の爛熟と頽廃とが原因で敗れた、と説明する文章があらわれた。ローマが崩壊したのは有名な「何処へ行く」で私たちにも馴染なネロのような王が現れるほど暴虐と頽廃が支配したからだと西洋歴史で習ったから、今フランスは文化の頽廃・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  24. ・・・ 百円札を出して、これだけ本を下さいと云ったという若い職工さんの俤も、人生的な又文化の情景として見れば、そこに何といたましい若き可能性の浪費と頽廃が閃めいていることだろう。作家が現実に居直ることと常識に居坐ることとの差は必ず読者の在りよ・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  25. ・・・私もまた彼の頽廃について責めを負うべき位置にあるのです。ことに私は彼のためにどれだけ物的の犠牲を払ってやりましたか。物的価値に執する彼の態度への悪感から私はむしろそういう尽力を避けていました。そうしてこの私の冷淡は彼の態度をますます浅ましく・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>
  26. ・・・そうして、ほんとうの生の頽廃まで行かないにしても、とにかく道義的脊骨を欠いた、生に対して不誠実な、なまこのような人間になってしまいます。これは確かに大きい危険です。 それでは青春を厳格に束縛し鍛錬して行くのがいいか。――もちろんそれはい・・・<和辻哲郎「すべての芽を培え」青空文庫>
  27. ・・・戦争のもたらした残酷な不具癈疾、神経及び精神の錯乱、女子及び青年の道徳的頽廃、――これらの恐ろしかるべき現象も、ただ空間の距たりのゆえに我々にはほとんど響いて来ない。 しかしこの直接印象の希薄は、想像力の集中と、省察の緊張とによって、あ・・・<和辻哲郎「世界の変革と芸術」青空文庫>
  28. ・・・になるはずの頽廃者に過ぎなかった。潰滅よりもさらに烈しい苦痛を忍び、忘却が到底企て及ばざる突破の歓喜を追い求むる者こそ、真に生き真に成長する者と呼ばるべきであった。心が永遠の現在であり、意識の流れに永遠が刻みつけられていることを、ただこの種・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>
  29. ・・・という言葉で言い現わしたのは、病的、変態的、頽廃的な印象である。伎楽面的な美を標準にして見れば、能面はまさにこのような印象を与えるのである。この点については自分は今でも異存がない。 しかし能面は伎楽面と様式を異にする。能面の美を明白に見・・・<和辻哲郎「能面の様式」青空文庫>
  30. ・・・そのような苦患と歓喜とは、息をしている死人や腐った頽廃者などの特権だ。 苦患は戦いの徴候である。歓喜は勝利の凱歌である。生は不断の戦いであるゆえに苦患と離れることができない。勝利は戦って獲られるべき貴い瞬間であるゆえに必ず苦患を予想する・・・<和辻哲郎「ベエトォフェンの面」青空文庫>