たい‐ぼく【大木】例文一覧 30件

  1. ・・・何でも淀屋辰五郎は、この松の雪景色を眺めるために、四抱えにも余る大木をわざわざ庭へ引かせたそうです。<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  2. ・・・例えば大木の根を一気に抜き取る蒸気抜根機が、その成効力の余りに偉大な為めに、使い処がなくて、さびたまゝ捨てゝあるのを旅行の途次に見たこともある。少女の何人かを逸早く米国に送ってそれを北海道の開拓者の内助者たらしめようとしたこともある。当時米・・・<有島武郎「北海道に就いての印象」青空文庫>
  3. ・・・たとえば、ちょっとした空地に高さ一丈ぐらいの木が立っていて、それに日があたっているのを見てある感じを得たとすれば、空地を広野にし、木を大木にし、日を朝日か夕日にし、のみならず、それを見た自分自身を、詩人にし、旅人にし、若き愁いある人にした上・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  4. ・・・ どッこいな、と腰を極めたが、ずッしりと手答えして、槻の大木根こそぎにしたほどな大い艪の奴、のッしりと掻いただがね。雨がしょぼしょぼと顱巻に染みるばかりで、空だか水だか分らねえ。はあ、昼間見る遠い処の山の上を、ふわふわと歩行くようで、底・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  5. ・・・「まだ足りないで、燈を――燈を、と細い声して言うと、土からも湧けば、大木の幹にも伝わる、土蜘蛛だ、朽木だ、山蛭だ、俺が実家は祭礼の蒼い万燈、紫色の揃いの提灯、さいかち茨の赤い山車だ。」 と言う……葉ながら散った、山葡萄と山茱萸の夜露・・・<泉鏡花「茸の舞姫」青空文庫>
  6. ・・・ 門の屋根を突貫いた榎の大木が、大層名高いのでございますが、お医者はどういたしてかちっとも流行らないのでございましたッて。」       四「流行りません癖に因果と貴方ね、」と口もやや馴々しゅう、「お米の容色がまた評・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  7. ・・・来て見れば予期以上にいよいよ幻滅を感じて、案外与しやすい独活の大木だとも思い、あるいは箍の弛んだ桶、穴の明いた風船玉のような民族だと愛想を尽かしてしまうかも解らない。当座の中こそ訪問や見物に忙がしく、夙昔の志望たる日露の問題に気焔を吐きもし・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  8. ・・・おまえは、末には大木となる芽ばえなんだ。おまえの枯れた年老った親は、よくこの野原の中で俺たちと相撲を取ったもんだ。なかなか勇敢に闘ったもんだ。この世界は広いけれど、ほんとうに俺たちの相手となるようなものは少ない。はじめから死んでいるも同然な・・・<小川未明「明るき世界へ」青空文庫>
  9. ・・・そこには幾百人の土方や工夫が入っていて、昔からの大木をきり倒し、みごとな石をダイナマイトで打ち砕いて、その後から鉄道を敷いておりました。そこで少年は、袋の中から砂を取り出して、せっかく敷いたレールの上に振りかけました。すると、見るまに白く光・・・<小川未明「眠い町」青空文庫>
  10. 一 秋の初の空は一片の雲もなく晴て、佳い景色である。青年二人は日光の直射を松の大木の蔭によけて、山芝の上に寝転んで、一人は遠く相模灘を眺め、一人は読書している。場所は伊豆と相模の国境にある某温泉である。 渓流の音が遠く聞ゆる・・・<国木田独歩「恋を恋する人」青空文庫>
  11.        一 今より六七年前、私はある地方に英語と数学の教師をしていたことがございます。その町に城山というのがあって、大木暗く茂った山で、あまり高くはないが、はなはだ風景に富んでいましたゆえ、私は散歩がてらいつも・・・<国木田独歩「春の鳥」青空文庫>
  12. ・・・古い大木となって、幹が朽ち苔が生えて枯れたように見えていても、春寒の時からまだまだ生きている姿を見せて花を咲かせる。 早生の節成胡瓜は、六七枚の葉が出る頃から結顆しはじめるが、ある程度実をならせると、まるでその使命をはたしてしまったかの・・・<黒島伝治「短命長命」青空文庫>
  13. ・・・墓の傍の栗の大木は、昔のままだった。 生家の玄関にはいる時には、私の胸は、さすがにわくわくした。中はひっそりしている。お寺の納所のような感じがした。部屋部屋が意外にも清潔に磨かれていた。もっと古ぼけていた筈なのに、小ぢんまりしている感じ・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  14. ・・・茶店の上には樫の大木がしげった枝をさしのべていていい雨よけになった。 つまりそれまでのスワは、どうどうと落ちる滝を眺めては、こんなに沢山水が落ちてはいつかきっとなくなって了うにちがいない、と期待したり、滝の形はどうしてこういつも同じなの・・・<太宰治「魚服記」青空文庫>
  15. ・・・ 私は丸山君を吉祥寺駅まで送って行って、帰途、公園の森の中に迷い込み、杉の大木に鼻を、イヤというほど強く衝突させてしまった。 翌朝、鏡を見ると、目をそむけたいくらいに鼻が赤く、大きくはれ上っていて、鬱々として楽しまず、朝の食卓につい・・・<太宰治「酒の追憶」青空文庫>
  16. ・・・樽の中から富士を見せたり、大木の向こうに小さな富士を見せたりするシリーズは言わば富士をライトモチーヴとしたモンタージュの系列である。 こういう意味において映画というものの一つのプロトタイプとでも言わるべきものは絵巻物の類である。これは空・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  17. ・・・天性の猟師が獲物をねらっている瞬間に経験する機微な享楽も、樵夫が大木を倒す時に味わう一種の本能満足も、これと類似の点がないとはいわれない。 しかし科学者と芸術家の生命とするところは創作である。他人の芸術の模倣は自分の芸術でないと同様に、・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  18. ・・・樺や栃や厚朴や板谷などの健やかな大木のこんもり茂った下道を、歩いている人影も自動車の往来もまれである。自転車に乗った御用聞きが西洋婦人をよけようとしてぬかるみにすべってころんだ。 至るところでうぐいすが鳴く。もしか、うぐいすの鳴き声のき・・・<寺田寅彦「軽井沢」青空文庫>
  19. ・・・ この道の分れぎわに榎の大木が立っていて、その下に一片の石碑と、周囲に石を畳んだ一坪ほどの池がある。 今年の春、田家にさく梅花を探りに歩いていた時である。わたくしは古木と古碑との様子の何やらいわれがあるらしく、尋常の一里塚ではないよ・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  20. ・・・堤の上は大門近くとはちがって、小屋掛けの飲食店もなく、車夫もいず、人通りもなく、榎か何かの大木が立っていて、その幹の間から、堤の下に竹垣を囲し池を穿った閑雅な住宅の庭が見下された。左右ともに水田のつづいた彼方には鉄道線路の高い土手が眼界を遮・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  21. ・・・林とは云え、枝を交えて高き日を遮ぎる一抱え二抱えの大木はない。木は一坪に一本位の割でその大さも径六七寸位のもののみであろう。不思議にもそれが皆同じ樹である。枝が幹の根を去る六尺位の所から上を向いて、しなやかな線を描いて生えている。その枝が聚・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  22. ・・・かえってそのほとりの大木に栗の花のような花の咲いて居たのがはや夏めいて居た。車屋に沿うて曲って、美術床屋に沿うて曲ると、菓子屋、おもちゃ屋、八百屋、鰻屋、古道具屋、皆変りはない。去年穴のあいた机をこしらえさせた下手な指物師の店もある。例の爺・・・<正岡子規「車上の春光」青空文庫>
  23. ・・・   山姥の力餅売る薄かななど戯れつつ力餅の力を仮りて上ること一里余杉樅の大木道を夾み元箱根の一村目の下に見えて秋さびたるけしき仙源に入りたるが如し。   紅葉する木立もなしに山深し 千里の山嶺を攀じ幾片の白雲を踏み砕きて上・・・<正岡子規「旅の旅の旅」青空文庫>
  24.  このかいわいは昼も夜もわりあいに静かなところである。北窓から眺めると欅の大木が一群れ秋空に色づきかかっていて、おりおり郊外電車の音がそっちの方から聞えてくる。鉄道線路も近いので、ボッボッボッボと次第に速く遠く消え去って行く・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  25. ・・・世界ファシズムがふたたび擡頭していること、日本の屈従的な政府は、自身の反歴史的な権力維持のためには、人民生活を犠牲にして大木のかげに依存していることなどについて明瞭に理解してきた。一九四八年のなか頃から、国内にたかまってきている民族自立と世・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」青空文庫>
  26. ・・・弟どもも一人一人の知行は殖えながら、これまで千石以上の本家によって、大木の陰に立っているように思っていたのが、今は橡栗の背競べになって、ありがたいようで迷惑な思いをした。 政道は地道である限りは、咎めの帰するところを問うものはない。一旦・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  27. ・・・幸なる事には異なる伽羅の大木渡来いたしおり候。然るところその伽羅に本木と末木との二つありて、はるばる仙台より差下され候伊達権中納言殿の役人ぜひとも本木の方を取らんとし、某も同じ本木に望を掛け互にせり合い、次第に値段をつけ上げ候。 その時・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書」青空文庫>
  28. ・・・勿論何のことか判然聞取なかったんですが、ある時茜さす夕日の光線が樅の木を大きな篝火にして、それから枝を通して薄暗い松の大木にもたれていらっしゃる奥さまのまわりを眩く輝かさせた残りで、お着衣の辺を、狂い廻り、ついでに落葉を一と燃させて行頃何か・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>
  29. ・・・少しく立派な街ならば街路樹は風土相応の大木となっている。また大木とならなければ美しい街になることはできぬのである。街路から電線を取り除くことが不可能であるならば、電線は街路樹の枝の下に来べきものであって、梢を抑えるべきものではない。従って街・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>
  30. ・・・それに比べると、欅の葉は、欅が大木であるに似合わず小さい優しい形で、春芽をふくにも他の落葉樹よりあとから烟るような緑の色で現われて来、秋は他の落葉樹よりも先にあっさりと黄ばんだ葉を落としてしまう。この対照は、常緑樹と落葉樹というにとどまらず・・・<和辻哲郎「松風の音」青空文庫>