だい‐もく【題目】例文一覧 30件

  1. ・・・「すると卒業論文の題目も、やはりその範囲内にある訳ですね。」 本間さんは何だか、口頭試験でもうけているような心もちになった。この相手の口吻には、妙に人を追窮するような所があって、それが結局自分を飛んでもない所へ陥れそうな予感が、この・・・<芥川竜之介「西郷隆盛」青空文庫>
  2. ・・・「就いては演習の題目に佐佐木茂索氏の新著『春の外套』を出しますから、来週までに佐佐木氏の作品へ『半肯定論法』を加えて来て下さい。いや、『全否定論法』を加えることは少くとも当分の間は見合せなければなりません。佐佐木氏は兎に角声名のある新進・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・とか何とか、題目正名を唱う頃になると、屋台の前へ出してある盆の中に、いつの間にか、銅銭の山が出来る。……… が、こう云う商売をして、口を糊してゆくのは、決して容易なものではない。第一、十日と天気が悪いと口が干上ってしまう。夏は、麦が熟す・・・<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  4. 縁日  柳行李  橋ぞろえ  題目船  衣の雫  浅緑記念ながらと散って、川面で消えたのが二ツ三ツ、不意に南京花火を揚げたのは寝ていたかの男である。 斉しく左右へ退いて、呆気に取られた連の両人を顧みて・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  5.  色といえば、恋とか、色情とかいう方面に就いての題目ではあろうが、僕は大に埒外に走って一番これを色彩という側に取ろう、そのかわり、一寸仇ッぽい。 色は兎角白が土台になる。これに色々の色彩が施されるのだ。女の顔の色も白くな・・・<泉鏡花「白い下地」青空文庫>
  6. ・・・が、芸術となると二葉亭はこの国士的性格を離れ燕趙悲歌的傾向を忘れて、天下国家的構想には少しも興味を持たないでやはり市井情事のデリケートな心理の葛藤を題目としている。何十年来シベリヤの空を睨んで悶々鬱勃した磊塊を小説に托して洩らそうとはしない・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  7. ・・・試みに小学校の修身書を一瞥してもすぐ分ることであるが、その並べられた題目と、其れに関する概念的な口授式の教授ぶりとが、ほんとうの人間性の結晶と思っては大間違である。今日の習慣なり、風俗なり、礼儀なり、或は又道徳と云ったようなものは、今日の社・・・<小川未明「人間性の深奥に立って」青空文庫>
  8. ・・・一座は化石したようにしんとしてしまって、鼻を去む音と、雇い婆が忍びやかに題目を称える声ばかり。 やがてかすかに病人の唇が動いたと思うと、乾いた目を見開いて、何か求むるもののように瞳を動かすのであった。「水を上げましょうか?」とお光が・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  9. ・・・などとこれをちょっと変えれば、そのまま川那子メジシンに適用できるような題目の下に、冒頭からいきなり――現代の医者は鬼である。彼等は金儲けのためには義理人情もない云々と書き立て、――それに比べると川那子丹造鑑製の薬は……と、ごたくを並べ、甚し・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  10. ・・・のほうがよさそうに思われるけれども、あいにくと二人とも一度は洋行なるものをして、二人とも横文字が読めて、一方はボルテーヤとか、ルーソーとか、一方はラファエルとかなんとか、もし新聞記者ならマコーレーをお題目としたことのある連中であるから、無理・・・<国木田独歩「号外」青空文庫>
  11. ・・・僕が考えには武蔵野の詩趣を描くにはかならずこの町外れを一の題目とせねばならぬと思う。たとえば君が住まわれた渋谷の道玄坂の近傍、目黒の行人坂、また君と僕と散歩したことの多い早稲田の鬼子母神あたりの町、新宿、白金…… また武蔵野の味を知るに・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  12. ・・・にまでひろがるところの一般の倫理的なるものへの関心と心得とはカルチュアの中心題目といわねばならぬ。人生の事象をよろず善悪のひろがりから眺める態度、これこそ人格という語をかたちづくる中核的意味でなければならぬ。私はいかなる卓越した才能あり、功・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  13. ・・・宇宙と自己、社会共同体と自己、自己の使命的仕事、人類愛ならびに正義の問題等は恋愛よりもさらに重き、公なる題目として関心されていなければならない。恋愛よりもより強く、公なるイデーによって、衝き動かされないことは男子の不面目である。恋愛をもって・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  14. ・・・ 明治の諸作家が戦争を如何に描いたか、戦争に対してどんな態度を取ったかは、是非とも研究して置かなければならない重要な題目である。若し戦争について、それを真正面から書いていないにしても、戦争に対する作家の態度は、注意して見れば一句一節の中・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  15. ・・・ さてその智恵の無い談話の題目は「曲亭馬琴の小説とその当時の実社会」というのでございます。題の付けようが少し拙いか知れませんが、私の申し上げてみようというのは、その当時、即ち馬琴が生存して居た時代との関係が、どんな工合であろうかという点・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  16. ・・・その中には小説の書き掛けがあったり、種々な劇詩の計画を書いたものがあったり、その題目などは二度目に版にした透谷全集の端に序文の形で書きつけて置いたが、大部分はまあ、遺稿として発表する事を見合わした方が可いと思った位で、戯曲の断片位しか、残っ・・・<島崎藤村「北村透谷の短き一生」青空文庫>
  17. ・・・ 私はこの玩具という題目の小説に於いて、姿勢の完璧を示そうか、情念の模範を示そうか。けれども私は抽象的なものの言いかたを能う限り、ぎりぎりにつつしまなければいけない。なんとも、果しがつかないからである。一こと理窟を言いだしたら最後、あと・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  18. ・・・そのような恥かしくも甘い甘い小市民の生活が、何をかくそう、私にもむりなくできそうな気がして来て、俗的なるものの純粋度、という緑青畑の妖雲論者にとっては頗るふさわしからぬ題目について思いめぐらし、眼は深田久弥のお宅の灯を、あれか、これか、との・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  19. ・・・ 時々アインシュタインに会って雑談をする機会があるので、その時々の談片を題目とし、それの注釈や祖述、あるいはそれに関する評論を書いたものが纏まった書物になったという体裁である。無論記事の全責任は記者すなわち著者にあることが特に断ってある・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  20. ・・・何かある題目に関して広く文献を調べようという場合にはいろいろなエンチクロペディやハンドブーフという種類のものはなくてならない重宝なものであるが、少し立ち入ってほんとうの事が知りたくなればもうそんなものは役に立たない。つまりは個々のオリジナル・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  21. ・・・御話をする題目はちゃんと東京表できめて参りました。 その題目は「現代日本の開化」と云うので、現代と云う字は下へ持って来ても上へ持って来ても同じ事で、「現代日本の開化」でも「日本現代の開化」でも大して私の方では構いません。「現代」と云う字・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  22. ・・・ しかるに各課担任の教師はその学問の専門家であるがため、専門以外の部門に無識にして無頓着なるがため、自己研究の題目と他人教授の課業との権衡を見るの明なきがため、往々わが範囲以外に飛び超えて、わが学問の有効を、他の領域内に侵入してまでも主・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  23. ・・・日常的題目を日常的に論じた彼の『エッセー』の中には、時に大げさな体系的哲学以上の真理を含んでいる。歴史的実在の世界は日常的世界である。彼の描いた自己は日常的世界において生きぬいた自己である。しかしそこからはすぐパスカルの『パンセー』の世界に・・・<西田幾多郎「フランス哲学についての感想」青空文庫>
  24. ・・・考えてはいたらしいが、その考の題目となっていたものは、よし、その時私がハッと気がついて「俺はたった今まで、一体何を考えていたんだ」と考えて見ても、もう思い出せなかった程の、つまりは飛行中のプロペラのような「速い思い」だったのだろう。だが、私・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・ことにその題目が風月の虚飾を貴ばずして、ただちに自己の胸臆をしくもの、もって識見高邁、凡俗に超越するところあるを見るに足る。しこうして世人は俊頼と文雄を知りて、曙覧の名だにこれを知らざるなり。 曙覧の事蹟及び性行に関しては未だこれを聞く・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  26. ・・・ゆえに夏季の題目には積極的なるもの多し。牡丹は花の最も艶麗なるものなり。芭蕉集中牡丹を詠ずるもの一、二句に過ぎず。その句また  尾張より東武に下る時牡丹蘂深くわけ出る蜂の名残かな  芭蕉  桃隣新宅自画自讃寒からぬ露や牡・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  27. ・・・ これらの題目のうちで、過去二十年間、日本の婦人雑誌が扱ったことのないというトピックが、只の一つでもあるだろうか。大衆的な某誌は、その反動保守的な編輯方針の中で、色刷り插絵入りで、食い物のこと、悲歎に沈む人妻の涙話、お国のために疲れを忘・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  28. ・・・私の用事は、前に中野さんと某氏を訪ねたとおなじ題目であった。文芸家協会は、大正年代に組織され、古い歴史をもつ日本で唯一の文学者の集団である。理事というところには、日本の代表的著述家・作家が顔をならべている。これらの人々の顔ぶれの世俗的に賑や・・・<宮本百合子「ある回想から」青空文庫>
  29. ・・・しかし驚くべき事は三十歳の青年が自然主義の初期にすでにゾラを追い越しモウパッサンの先を歩いていたことである。題目とねらい所は両者ほとんど同じで、構図さえも似かよっているが、ゾラの百ページを費やす所は彼の筆によればわずかに二三十ページで済む。・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  30. ・・・『三四郎』『それから』『門』『彼岸過迄』『行人』などが右の題目の開展であることは明らかである。『三四郎』に芽ざして『それから』に極度まで高まった恋愛の不可抗の力は、ついに正義を押し倒した。作者はこの事を可能ならしめるために享楽主義者を主・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>