だい‐よう【代用】例文一覧 30件

  1. ・・・ 祖母が縫ってくれた鞄代用の更紗の袋を、斜っかいに掛けたばかり、身は軽いが、そのかわり洋傘の日影も持たぬ。 紅葉先生は、その洋傘が好きでなかった。遮らなければならない日射は、扇子を翳されたものである。従って、一門の誰かれが、大概洋傘・・・<泉鏡花「栃の実」青空文庫>
  2. ・・・箱は光だったが、中身は手製の代用煙草だった。それには驚かなかったが、バラックの中で白米のカレーライスを売っているのには驚いた。日本へ帰れば白米なぞ食べられぬと諦めていたし、日本人はみな藷ばかり食べていると聴いて帰ったのに、バラックで白米の飯・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  3. ・・・思ったよりか感心しなかったのサ、森とした林の上をパラパラと時雨て来る、日の光が何となく薄いような気持がする、話相手はなしサ食うものは一粒幾価と言いそうな米を少しばかりと例の馬の鈴、寝る処は木の皮を壁に代用した掘立小屋」「それは貴様覚悟の・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  4. ・・・もし真に古銅からの音転なら、少しは骨董という語を用いる時に古銅という字が用いられることがありそうなものだのに、汨董だの古董だのという字がわざわざ代用されることがあっても、古銅という字は用いられていない。てきせいこうは通雅を引いて、骨董は唐の・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  5. ・・・長女のマサ子も、長男の義太郎も、何か両親のそんな気持のこだわりを敏感に察するものらしく、ひどくおとなしく代用食の蒸パンをズルチンの紅茶にひたしてたべています。「昼の酒は、酔うねえ。」「あら、ほんとう、からだじゅう、まっかですわ。」・・・<太宰治「おさん」青空文庫>
  6. ・・・やはり一組の酔っぱらい客があり、どうせまた徹夜になるのでしょうから、いまのうちに私たちだけ大いそぎで、ちょっと腹ごしらえをして置きましょう、と私から奥さまにおすすめして、私たち二人台所で立ったまま、代用食の蒸しパンを食べていました。奥さまは・・・<太宰治「饗応夫人」青空文庫>
  7. ・・・のおそろしく高いカラスミを買わされ、しかも、キヌ子は惜しげも無くその一ハラのカラスミを全部、あっと思うまもなくざくざく切ってしまって汚いドンブリに山盛りにして、それに代用味の素をどっさり振りかけ、「召し上れ。味の素は、サーヴィスよ。気に・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  8. ・・・という言葉をもって代用してもたいしてさしつかえないという事はプドーフキンの著書の英訳にエディチングという英語を当ててあることからも想像されるであろう。またこの著者がそのモンタージュを論じた一章の表題に「素材の取り扱い方」という平凡な文字を使・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  9. ・・・の利用であって、人間の脳の記憶の代用に過ぎない。しかし真に不思議なのはフィルムの逆行による時の流れの逆流である。たとえば燃え尽くした残骸の白い灰から火が燃え出る、そうしてその火炎がだんだんに白紙や布切れに変わって行ったりする。あるいはまた、・・・<寺田寅彦「映画の世界像」青空文庫>
  10. ・・・例えば抽象的な論理学の書物に代用されるような映画フィルムを作ることは不可能でないまでも、現在のところでは甚だ困難な仕事である。しかしこの空想は未来における映画の応用の可能性の広大なことを暗示するものとしての価値は十分にあるであろう。 文・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  11. ・・・さて、人間がいろいろの器械を作って、それを身体の代用物とする傾向がだんだんに増して来る。そうしてそれらの器械のリズムがだんだん早くなって来ると、われわれの「秒」は次第に短くなって行くかもしれない。それで、もしも現在の秒で測った人間の寿命が不・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  12. ・・・ ヴェランダの上にのせた花瓶代用の小甕に「ぎぼし」の花を生けておいた。そのそばで新聞を読んでいると大きな虻が一匹飛んで来てこの花の中へもぐり込む。そのときに始めて気のついたことは、この花のおしべが釣り針のように彎曲してその葯を花の奥のほ・・・<寺田寅彦「沓掛より」青空文庫>
  13. ・・・そうして牛乳に入れるための砂糖の壺から随時に歯みがきブラシの柄などでしゃくい出しては生の砂糖をなめて菓子の代用にしたものである。試験前などには別して砂糖の消費が多かったようである。月日がめぐって三十二歳の春ドイツに留学するまでの間におけるコ・・・<寺田寅彦「コーヒー哲学序説」青空文庫>
  14. ・・・しあわせな事には世の中では論理的の証明はわりに要求されないで、オーソリティの証言が代用されそのおかげで物事が渋滞なく進捗するのであろう。 自画像をかきながら思うようにかけない苦しまぎれに、ずいぶんいろんな事を考えたものである。それを・・・<寺田寅彦「自画像」青空文庫>
  15. ・・・そうして木立ちの代わりに安価な八つ手や丁子のようなものを垣根のすそに植え、それを遠い地平線を限る常緑樹林の代用として冬枯れの荒涼を緩和するほかはなかった。しあわせに近所じゅういったいに樹木が多いので、それが背景になって樹木の緑にはそれほど飢・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  16. ・・・そういうのは蓄音機でも代用されはしないかという問題が起こる。それからまた黒板に文字や絵をかいたりして説明する必要のある講義でも、もし蓄音機と活動写真との連結が早晩もう少し完成すれば、それで代理をさせれば教師は宅で寝ているかあるいは研究室で勉・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  17. ・・・しかし今に航空がもっともっと発達して、空中の各層に縦横の航空路が交錯するようになればもはや平面的な図では間に合わなくなって立体的なあるいは少なくも立体的に代用される特殊な地図が必要になるかもしれない。 空中ばかりでなく人間の交通範囲は地・・・<寺田寅彦「地図をながめて」青空文庫>
  18. ・・・この門番は旧来足軽の職分たりしを、要路の者の考に、足軽は煩務にして徒士は無事なるゆえ、これを代用すべしといい、この考と、また一方には上士と下士との分界をなお明にして下士の首を押えんとの考を交え、その実はこれがため費用を省くにもあらず、武備を・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  19. ・・・実にはっきり、燃料となり、代用食事の手間のかかる支度となって女性の二十四時間にくいこんで来ている。しかも、十年前にくらべると、一日のうちに自由時間を一時間半しかもてなくなって来ているこれらの主婦が目にふれ耳にきくのは、アメリカの電化された台・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  20. ・・・家庭の主婦の心労や骨折や或は無智が、職工さんのお弁当の量は多くて質の足りない組合わせを結果して来てもいるだろうし、代用食と云えばうどんで子供は食慾もなくしている始末にもなっていよう。何をたべたか、何がたべたいかという結果として出たところで調・・・<宮本百合子「「うどんくい」」青空文庫>
  21. ・・・だの美辞は横溢しているくせに、級の幹事が、ここで女教師代用で、髪形のことや何かこせこせした型をおしつけた。その頃の目白は、大学という名ばかりで、学生らしい健全な集団性もなく、さりとて大学らしい個性尊重もされていなかった。 学生というはっ・・・<宮本百合子「女の学校」青空文庫>
  22. ・・・ 毎朝日本の総ての婦人はどんな燃料で、どれだけの時間をかけて、どんな代用食を作っているでしょうか。私達の使っている燃料とその燃料が使えるようなかまど、いもや粉の代用食、これ等総ては近代的でしょうか。私達のおばあさん、ひいおばあさん達がま・・・<宮本百合子「今度の選挙と婦人」青空文庫>
  23. ・・・食糧も代用食に訓練しておけ。子供の弁当に大豆類を多くせよ、などの警報にひかれている。今日の日本の財政のまかない手である蔵相はラジオで放送して、銃後の民の心がけというものをとかれた。輸入品の節約をするように。国産品も節約をするように。だが酒、・・・<宮本百合子「祭日ならざる日々」青空文庫>
  24. ・・・ きょう新聞をみると、政府は主食代用を主な目的としてフィリッピンその他から砂糖を五十五万トン輸入することになったと出ている。 いまの東京の、疲労のはげしい毎日の生活で、疲れのやすまる甘いものがこうして段々ヤミでなくて一般の家庭にもゆ・・・<宮本百合子「砂糖・健忘症」青空文庫>
  25. ・・・ ○闇の力の、代用の場面のついて居るところは、矢張り、代りにとしてついて居る方が、舞台にかけたらよかろうと思う。ニキタが、赤子を押しころすところを、第一のようにされては、殆ど見て居るに堪えない。ニキタの苦しみ、どうにもならなかった彼の苦・・・<宮本百合子「「禰宜様宮田」創作メモ」青空文庫>
  26. ・・・ ひと月たたない或る朝、店の倉庫代用につかわれていた納屋から火が出た。そこには、石油、タール、バタ等の商品が入れてあった。ゴーリキイが、火をくぐって納屋へとび込みタールの樽をころがし出し、石油の桶へ手をかけたら――樽の栓はあいていた。そ・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  27. ・・・「お昼は栄養を考慮したお菜ですが近頃では国策に応じて代用食や節米料理が多いようです」とだけかかれている部分に、実際どんなものが食べられているかということが書かれたらよかったと思います。 生活に対するちゃんとした態度や女らしさというものの・・・<宮本百合子「ルポルタージュの読後感」青空文庫>
  28. ・・・        三 代用食 このあいだ都下のある新聞の投書欄で、代用食について一くみの応酬が行われた。 はじめ投書した某氏は男で某紙の家庭欄に紹介されている代用食の製法にしたがってためしてみたらたいへんどっさり砂糖がいっ・・・<宮本百合子「私の感想」青空文庫>
  29. ・・・ 朝日の吸殻を、灰皿に代用している石決明貝に棄てると同時に、木村は何やら思い附いたという風で、独笑をして、側の机に十冊ばかり積み上げてある manuscrits らしいものを一抱きに抱いて、それを用箪笥の上に運んだ。 それは日出新聞・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>
  30. ・・・その彼らはまた処女の神聖を神にささげると称して神殿を婚姻の床に代用する。性欲の神秘を神に帰するがゆえに、また神殿は娼婦の家ともなる。パウロはそれを自分の眼で見た。そうして「いたく心を痛め」た。桂の愛らしい緑や微風にそよぐプラタアネの若葉に取・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>