だい‐り【代理】例文一覧 19件

  1. ・・・味噌漉の代理が勤まるというなんとか笊もある。羊羹のミイラのような洗たくせっけんもある。草ぼうきもあれば杓子もある。下駄もあれば庖刀もある。赤いべべを着たお人形さんや、ロッペン島のあざらしのような顔をした土細工の犬やいろんなおもちゃもあったが・・・<芥川竜之介「水の三日」青空文庫>
  2. ・・・浅草市羽子板ねだらせたを胸三寸の道具に数え、戻り路は角の歌川へ軾を着けさせ俊雄が受けたる酒盃を小春に注がせてお睦まじいとおくびより易い世辞この手とこの手とこう合わせて相生の松ソレと突きやったる出雲殿の代理心得、間、髪を容れざる働きに俊雄君閣・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  3. ・・・ 次郎はもはや父の代理もできるという改まった顔つきで出かけて行った。日ごろ人なつこく物に感じやすい次郎がその告別式から引き返して来た時は、本郷の親戚の家のほうに集まっていた知る知らぬ人々、青山からだれとだれ、新宿からだれというふうに、旧・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  4. ・・・私の恋の相手というのは逢うのに少しばかり金のかかるたちの女であったから、私は金のないときには、その甘酒屋の縁台に腰をおろし、一杯の甘酒をゆるゆると啜り乍らその菊という女の子を私の恋の相手の代理として眺めて我慢していたものであった。ことしの早・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  5. ・・・そうしてカメラの対物鏡は観客の目の代理者となって自由自在に空間中を移動し、任意な距離から任意な視角で、なおその上に任意な視野の広さの制限を加えて対象を観察しこれを再現する。従って観客はもはや傍観者ではなくてみずからその場面の中に侵入し没入し・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  6. ・・・一と口に云えば映画は観客の眼の代理者でありまたその案内者なのである。観客が到底行かれぬ場所へ観客の眼を連れて行って見せたいものを見せるのである。過去のある瞬間に世界のうちのある場所で起った出来事を映写器械のレンズで見た、その影像の写しをその・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  7. ・・・それからまた黒板に文字や絵をかいたりして説明する必要のある講義でも、もし蓄音機と活動写真との連結が早晩もう少し完成すれば、それで代理をさせれば教師は宅で寝ているかあるいは研究室で勉強していてもいい事になりはしまいか、それでも結構なようでもあ・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  8. ・・・と御母さんは露子に代理の返事をする。「そう、何の御用なの」と露子は無邪気に聞く。「ええ、少しその、用があって近所まで来たのですから」とようやく一方に活路を開く。随分苦しい開き方だと一人で肚の中で考える。「それでは、私に御用じゃな・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  9. ・・・僕の病気の責任を持ったって、しようがないじゃないか。僕の代理に病気になれもしまい」「まあ、いいさ。僕が看病をして、僕が伝染して、本人の君は助けるようにしてやるよ」「そうか、それじゃ安心だ。まあ、少々あるくかな」「そら、天気もだい・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  10. ・・・親が死んだからその代理に生きているともとれるし、そうでなくて己は自分が生きているんで、親はこの己を生むための方便だ、自分が消えると気の毒だから、子に伝えてやる、という事に考えても差支ない。この論法からいうと、芸術家が昔の芸術を後世に伝えるた・・・<夏目漱石「無題」青空文庫>
  11. ・・・今度の看守長は、いつも典獄代理をする男だ。 ――波田君、どうだね君、困るじゃないか。 ――困るかい。君の方じゃ僕を殺してしまったって、何のこともないじゃないか。面倒くさかったらやっちまうんだね。 ――そんなに君興奮しちゃ困るよ。・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  12. ・・・「ナニ犬の代理だよ」。「オヤ犬の代理だと、いよいよおかしいネ、誰だよ、犬の代理なんかして居るのは」。「権助でがすヨ」。「権助かい、権助なら権助と早くいえば善いじゃないか、犬だ犬だなんて」。「だって間がわるいでがすヨ」。「間がわるい、なぜ間が・・・<正岡子規「権助の恋」青空文庫>
  13. ・・・ 工場管理者代理、労働者、党員ルイジョフ、及び婦人服部職長で五十歳のソフォン・ボルティーコフなどはその代表である。 ボルティーコフは、古風な毛むくじゃらな髯とともに、あらゆる古風な労働者の考えかたや習癖を今日まで引っぱって生きている・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  14. ・・・ごたついているところに目をつけて、例の満州へよく行く人物を、技術家の代理と称さして、先代と口約を交してあった後継息子のところへ株を貰いにやった。頼まれた人物は創立当時の価格でそれをうまく受けとって、現価で依頼人に売った。そのことは、半ヵ月も・・・<宮本百合子「くちなし」青空文庫>
  15. ・・・       長崎まで行く       たたき殺しちまうと代理店のゴロにおどかされる。 其から又遊ぶ半年 今度の箇人のケイエイの金原デンキに入る 資本五十万円、箇人が大阪の××工業に売り 元のオヤジは専務、 専務が細・・・<宮本百合子「SISIDO」青空文庫>
  16. ・・・保険事業のこと、代理店としての仕事の性質が手に入ると、ロザリーは、持って生れた実業家の手腕をメキメキとあらわし、逆に、ミスタ・シムコックスに頼られる程の事務家となりました。 仕事に成功した彼女は、結婚にも目覚しい成功をしました。ロザリー・・・<宮本百合子「「母の膝の上に」(紹介並短評)」青空文庫>
  17. ・・・で坊主の代理をも勤め、屑屋をしながら夜はギリシャ哲学の本を読んでいるという山村という男である。山村は仙三が江沼を打殺して人に引かれていく姿を見ながら「馬鹿な奴だ。だからそんな良心なんか捨てちまえと言ったのに……」と泣けて泣けて仕様がなかった・・・<宮本百合子「ヒューマニズムへの道」青空文庫>
  18. ・・・油井のところからみのえだけ母親の代理に一人浜町へやられた。叔母と向い合っている間じゅう、叔母の眼鼻だちのすき間に油井の二階に坐ってこっち向いている母親の姿がちらちらして、みのえは自分で何を喋っているのか分らなかった。その気持が母親の話でみの・・・<宮本百合子「未開な風景」青空文庫>
  19. ・・・従って他の人のなすべきことを代理する場合には、他の人のペルソナをつとめるということになる。そうなるとペルソナは行為の主体、権利の主体として、「人格」の意味にならざるを得ない。かくして「面」が「人格」となったのである。 ところでこのような・・・<和辻哲郎「面とペルソナ」青空文庫>