たい‐りょく【体力】例文一覧 25件

  1. ・・・負けじ魂の老人だけに、自分の体力の衰えに神経をいら立たせていた瞬間だったのに相違ない。しかも自分とはあまりにかけ離れたことばかり考えているらしい息子の、軽率な不作法が癪にさわったのだ。「おい早田」 老人は今は眼の下に見わたされる自分・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  2. ・・・それに戦争は、体力と精神力とを急行列車のように消耗させる。 胸が悪い木村は、咳をし、息を切らしながら、銃を引きずってあとからついて来た。 表面だけ固っている雪が、人の重みでくずれ、靴がずしずしめりこんだ。足をかわすたびに、雪に靴を取・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  3. ・・・つまりそれだけの体力の余裕を見せたかったのではないかと思われる。それで自分にはどうもロスの勝利というのが呑込めなかったが、テクニックを知らないからだろうと思っていた。後で物言いがあったということをプログラムで読んでやっぱりそうかと思った。・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  4. ・・・ とにかく体力と知力との戦いとして見るときに、自分のような素人にもこの勝負の特別な興味が感ぜられるのであった。 カルネラは体重一一九キロ身長二・〇五メートル、ベーアは九五キロと一・八八メートルだそうで、からだでは到底相手になれないの・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  5. ・・・云わば実戦に堪える体力を養ってくれた教練のようなものであったのである。平凡な結論ではあるが、学生のときには講義も演習もやはり一生懸命勉強するに限るのであろう。 しかし、米の飯だけでは生きては行かれぬように、学校の正課を正直に勉強するだけ・・・<寺田寅彦「科学に志す人へ」青空文庫>
  6. ・・・考えようによってはランニングや砲丸投げなどのレコードよりもより多く文化的の意義があるかもしれない。体力だけを練るのは未開時代への逆行である。 タイピストの一九二九年のレコードは一分に九十六語でこれはフランスの某タイプ嬢の所有となっている・・・<寺田寅彦「記録狂時代」青空文庫>
  7. ・・・そして彼自身の学問の研究にこれだけの犠牲を払う勇気と体力を失った自分を残念に思わせた。 慶応が勝つと銀座が荒らされ、早稲田が勝つと新宿が脅かされるという話も彼を考え込ませた。当時彼の読みかけていたウェルズのモダンユートピアに出てくるいわ・・・<寺田寅彦「野球時代」青空文庫>
  8. ・・・ただもう少し健康で、もう少し体力が盛んであったら、こういう方面がもう少し平生にも現われたかもそれはわからない。 弱いからだにとうとう不治の肺患が食い込んでしまった。東京の医師に診てもらうために出て来て私のうちで数日滞在してから、任地近く・・・<寺田寅彦「亮の追憶」青空文庫>
  9. ・・・文士は芸術家の中に加えられるものであるが、然し僕はもう老込んでいるから、金持の後家をだます体力に乏しく、また工面のよい女優のツバメとやらになる情慾もない。金を獲るには蟻が物を運ぶが如く、又点滴の雫が甃石に穴を穿つが如く根気よく細字を書くより・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  10. ・・・うの陋態なく、またことさらに新奇を衒うの虚栄心なく、全く自然の順序階級を内発的に経て、しかも彼ら西洋人が百年もかかってようやく到着し得た分化の極端に、我々が維新後四五十年の教育の力で達したと仮定する。体力脳力共に吾らよりも旺盛な西洋人が百年・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  11. ・・・財力、脳力、体力、道徳力、の非常に懸け隔たった国民が、鼻と鼻とを突き合せた時、低い方は急に自己の過去を失ってしまう。過去などはどうでもよい、ただこの高いものと同程度にならなければ、わが現在の存在をも失うに至るべしとの恐ろしさが彼らを真向に圧・・・<夏目漱石「マードック先生の『日本歴史』」青空文庫>
  12. ・・・そのために、どういう方法にしろ金のありあまっている人々は、健康に害があるほど馬鹿馬鹿しい贅沢な食事をし、金のない者は、人間として生きて働いてゆくだけの体力も保てないほど貧しい食物で、しのいでゆかなければなりませんでした。そして、この、どちら・・・<宮本百合子「公のことと私のこと」青空文庫>
  13. ・・・自分の体力、智力、自分とひととの経験の総和についての知識とその実力とが、むき出しな自然の動きと直面し対決してゆく、その味わいでの山恋いではないだろうか。槇有恒氏の山についての本はどんなその間の機微を語っているか知らないけれど、岩波文庫のウィ・・・<宮本百合子「科学の常識のため」青空文庫>
  14. ・・・ 海へ女がのり出して働かないという昔からの習慣は、その活動が女の体力にとって全然無理だからなのだろうか。それとも穢れをきらうというようなことに関してのしきたりで、女は海上に働かないことになっているのだろうか。男と女とがうちまじって一つ船・・・<宮本百合子「漁村の婦人の生活」青空文庫>
  15. ・・・ここに痛切な疑問があると思います。体力的に見て、二種類の活動に精力を分けられる程度の疲労だけですむ職業は、少くとも今日職業と名のつく職業にはないと思う。職業をもつ女は、いわばもっと腹をすえなければならないのではないでしょうか。昔の立身出世の・・・<宮本百合子「現実の道」青空文庫>
  16. ・・・全体として体力を蓄積なさることが大切ですから、読書なども平常よりは用心してなさいますように。 皆からよろしく。きょうの太郎は眠くって失礼。でも思いがけなかったでしょう。[自注1]中條咲枝より――発信人は咲枝となっているが、百・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  17. ・・・目安がないから積極性が方向かまわず積極積極と出て、案外なことにもなるし、そういう人の中には大抵の人に劣らない体力も意地もあるから、又利巧さもあるから、それらが皆固って妙なことになります。十分そのことについて、自省もあり、時に自嘲的にさえなっ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  18. ・・・          ――○―― こちらの婦人の体力の豊かである事は、一言の駁論も許されません。 彼女等は、思いのままに延びた美くしい四肢の所有者であり、朗らかな六月の微風に麗わしい髪を吹きなびかせながら哄笑する心の所有者でござい・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  19. ・・・最後の一点は体力で、と一粒ハリバの広告がこの頃電車に貼られているのを見て、それを新しい日本のほこりと思う人があるだろうか。商売のぬけめなさより、それに捕えられる親心の機微のありようが悲しく思われるのであった。〔一九四〇年四月〕・・・<宮本百合子「新入生」青空文庫>
  20. ・・・ やがて自動車での陸地の跋渉がはじまって、初めて女性は自分の体力と智力とによって地球を平面的にわがものとするに到った。 女性が飛行機を操縦する時代になっていることは今世紀の人類的な飛躍の姿であると思う。より一層の体力とより一層の科学・・・<宮本百合子「空に咲く花」青空文庫>
  21. ・・・一九二九年の一家総出のヨーロッパ旅行は、父の経済力にとって、又母の体力にとって、超常識な決断であった。父は、母を海外へつれてゆくについて、万一の場合、子供らから離れていては母がさぞ悲しいであろうと、長男夫婦、末娘までを一行に加えた。・・・<宮本百合子「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」青空文庫>
  22. ・・・例えば、余り体力の強壮でない中学の中級生たちが、急に広場に出されて、一定の高さにあげられた民主主義という鉄棒に向って、出来るだけ早くとびついて置かないとまずい、という工合になって、盛にピョンピョンやりはじめたような感じがなくはない。 ジ・・・<宮本百合子「「どう考えるか」に就て」青空文庫>
  23. ・・・問題として婦人の解放は憲法と民法の改正だけでは達成しない、彼女たちの一日の時間のどっさりを、とりもなおさず生涯の大部分を費させる台所と育児の仕事がもっと別なやり方でやられなければ、何より基本的な時間と体力で婦人は百年前と同じ一生の使い方をし・・・<宮本百合子「人間の結婚」青空文庫>
  24. ・・・もう糖尿病になっていたので、下を向いていることは歯齦を充血させて体力が持たなかった。そのほか、後できくと、その絵の師匠は、絵筆をとっている合間に、家をたててくれなどと云い出したので、母は警戒して絵の稽古もやめてしまったのであった。 その・・・<宮本百合子「母」青空文庫>
  25. ・・・ 五、六時間の席に堪えない習慣で暮している日本の婦人たちの体力や着物の条件についても女として考えさせられるし、議会傍聴というようなことが、女の日常にとって何か特別なことと思われていて、来ている婦人が皆それぞれのつてや背景を脊負っていて、・・・<宮本百合子「待呆け議会風景」青空文庫>