たえ‐ま【絶え間】例文一覧 30件

  1. ・・・けれども生憎その声も絶え間のない浪の音のためにはっきり僕の耳へはいらなかった。「どうしたんだ?」 僕のこう尋ねた時にはMはもう湯帷子を引っかけ、僕の隣に腰を下ろしていた。「何、水母にやられたんだ。」 海にはこの数日来、俄に水・・・<芥川竜之介「海のほとり」青空文庫>
  2. ・・・玩具屋の外の硝子戸は一ぱいに当った日の光りの中に絶え間のない人通りを映している。が、玩具屋の店の中は――殊にこの玩具の空箱などを無造作に積み上げた店の隅は日の暮の薄暗さと変りはない。保吉はここへ来た時に何か気味悪さに近いものを感じた。しかし・・・<芥川竜之介「少年」青空文庫>
  3. ・・・ 僕等は絶え間ない浪の音を後に広い砂浜を引き返すことにした。僕等の足は砂の外にも時々海艸を踏んだりした。「ここいらにもいろんなものがあるんだろうなあ。」「もう一度マッチをつけて見ようか?」「好いよ。………おや、鈴の音がするね・・・<芥川竜之介「蜃気楼」青空文庫>
  4. ・・・風の音、雨のしぶき、それから絶え間ない稲妻の光、――暫くはさすがの峨眉山も、覆るかと思う位でしたが、その内に耳をもつんざく程、大きな雷鳴が轟いたと思うと、空に渦巻いた黒雲の中から、まっ赤な一本の火柱が、杜子春の頭へ落ちかかりました。 杜・・・<芥川竜之介「杜子春」青空文庫>
  5. ・・・は、ちょうど美しい蛾の飛び交うように、この繁華な東京の町々にも、絶え間なく姿を現しているのです。従ってこれから私が申上げようと思う話も、実はあなたが御想像になるほど、現実の世界と懸け離れた、徹頭徹尾あり得べからざる事件と云う次第ではありませ・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  6. ・・・また、あるときは、風の絶え間にどこからか聞こえてくるバイオリンの音色に耳を傾けて、もしや、だれか自分の持っていたバイオリンを弾いているのではないかと思ったりしました。 そのバイオリンの音は、じつにいい音色でした。そして、それを弾いている・・・<小川未明「海のかなた」青空文庫>
  7. ・・・ろに言い返して勝てば、一年中の福があるのだとばかり、智慧を絞り、泡を飛ばし、声を涸らし合うこの怪しげな行事は、名づけて新手村の悪口祭りといい、宵の頃よりはじめて、除夜の鐘の鳴りそめる時まで、奇声悪声の絶え間がない。 ある年の晦日には、千・・・<織田作之助「猿飛佐助」青空文庫>
  8. ・・・ そして絶え間のない恐怖の夢を見ながら、物を食べる元気さえ失せて、遂には――死んでしまう。 爪のない猫! こんな、便りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失ってしまった詩人、早発性痴呆に陥った天才にも似ている! この空想はいつ・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  9. ・・・雲の絶え間には遠き星一つ微かにもれたり。受付の十蔵、卓に臂を置き煙草吹かしつつ外面をながめてありしがわが姿を見るやその片目をみはりて立ちぬ、その鼻よりは煙ゆるやかに出でたり。軽く礼して、わが渡す外套を受け取り、太くしわがれし声にて、今宮本ぬ・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  10. ・・・萱原の一端がしだいに高まって、そのはてが天ぎわをかぎっていて、そこへ爪先あがりに登ってみると、林の絶え間を国境に連なる秩父の諸嶺が黒く横たわッていて、あたかも地平線上を走ってはまた地平線下に没しているようにもみえる。さてこれよりまた畑のほう・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  11. ・・・空は雲の脚はやく、絶え間絶え間には蒼空の高く澄めるが見ゆ。 青年は絶えずポケットの内なる物を握りしめて、四辺の光景には目もくれず、野を横ぎり家路へと急ぎぬ。ポケットの内なるは治子よりの昨夜の書状なり。短き坂道に来たりし時、下より騎兵二騎・・・<国木田独歩「わかれ」青空文庫>
  12. ・・・素質のいい才はじけぬ人が絶え間なく刻苦するのが一番いいらしい。アララギ派の元素伊藤左千夫氏は正岡子規の弟子のうち一番鈍才であったが、刻苦のために一番偉くなった。一、よく考えて生きること。良い芸術は良い生活からしか生まれな・・・<倉田百三「芸術上の心得」青空文庫>
  13. ・・・どおん、どおん、と春の土の底の底から、まるで十万億土から響いて来るように、幽かな、けれども、おそろしく幅のひろい、まるで地獄の底で大きな大きな太鼓でも打ち鳴らしているような、おどろおどろした物音が、絶え間なく響いて来て、私には、その恐しい物・・・<太宰治「葉桜と魔笛」青空文庫>
  14. ・・・最後の車輛に翻った国旗が高粱畑の絶え間絶え間に見えたり隠れたりして、ついにそれが見えなくなっても、その車輛のとどろきは聞こえる。そのとどろきと交じって、砲声が間断なしに響く。 街道には久しく村落がないが、西方には楊樹のやや暗い繁茂がいた・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  15. ・・・ 田畝を越すと、二間幅の石ころ道、柴垣、樫垣、要垣、その絶え間絶え間にガラス障子、冠木門、ガス燈と順序よく並んでいて、庭の松に霜よけの繩のまだ取られずについているのも見える。一、二丁行くと千駄谷通りで、毎朝、演習の兵隊が駆け足で通ってい・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  16. ・・・その困難を切り抜けるためには何かしら絶え間なく新しい可能性を捜し出してはそれをスクリーンの上に生かすくふうをしなければならない。幸いなことには、映画という新しいメジウムの世界には前人未到の領域がまだいくらでも取り残されている見込みがある。そ・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  17. ・・・ワイナハトの起原などから話しましたが、子供の咳は絶え間なしで騒々しく、咳の出ない子はだいぶ退屈しているようでした。きょう子供の贈物にする人形の着物をほとんど一手で縫うたシュエスター何某が、病気で欠席されたのは遺憾でありますというような挨拶も・・・<寺田寅彦「先生への通信」青空文庫>
  18. ・・・たとえば山里の夜明けに聞こえるような鶏犬の声に和する谷川の音、あるいは浜べの夕やみに響く波の音の絶え間をつなぐ船歌の声、そういう種類のものの忠実なるレコードができたとすれば、塵の都に住んで雑事に忙殺されているような人が僅少な時間をさいて心を・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  19. ・・・空間的にきわめて多様多彩な分化のあらゆる段階を具備し、そうした多彩の要素のスペクトラが、およそ考え得らるべき多種多様な結合をなしてわが邦土を色どっており、しかもその色彩は時々刻々に変化して自然の舞台を絶え間なく活動させているのである。 ・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  20. ・・・ この美しい音楽の波は、私が読んでいる千年前の船戦の幻像の背景のようになって絶え間なくつづいて行った。音が上がって行く時に私の感情は緊張して戦の波も高まって行った。音楽の波が下がって行く時に戦もゆるむように思われた。投げ槍や斧をふるう勇・・・<寺田寅彦「春寒」青空文庫>
  21. ・・・ 口に云えない程の柔かさと弱い輝を持った気味悪い程丸味のある一体の輪廓は、煙った様に、雨空と、周囲の黒ずんだ線から区切られて居る。 私はじいっと見て居る。 絶え間なくスルスル……スルスル……と落ちて来る雨は此の木の上にも他のどれ・・・<宮本百合子「雨が降って居る」青空文庫>
  22. ・・・ 野蛮な権力は、文学面で狙いをつけた一定の目標にむかって、ほとんど絶え間のない暴威をふるった。一人の人間の髪の毛をつかんで、ずっぷり水へ漬け、息絶えなんとすると、外気へ引きずり出して空気を吸わせ、いくらか生気をとりもどして動きだすと見る・・・<宮本百合子「ある回想から」青空文庫>
  23. ・・・こういう問題も、わたしたちは、人民の基本的人権の擁護とブルジョア的な法律適用による裁判が果して公正なものであるかどうかについての絶え間ない注目とを基礎にして、判断してゆく必要がある。参議院の引揚援護委員会も吉村隊事件ではいかがわしい委員会の・・・<宮本百合子「「委員会」のうつりかわり」青空文庫>
  24. ・・・何千という錘が絶え間なく廻っている。そこに十四五から、七八くらいの娘さんが一人か二人で働いている。平均一日五里以上を歩く。そこに働いている若い少女労働者は、殆んどみんな国民学校を出ただけの娘さんである。紡績業は明治の初め日本の資本主義発展の・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  25. ・・・ 広場に向って開いているラジオ拡声機からは、絶え間なく、活溌な合唱、又は交響楽がはじきだされる。 すばらしいメーデーの飾をみようとして、広場に集まる群衆は一時過ぎてもたえなかった。 ソヴェト同盟で、社会主義的社会建設のために全プ・・・<宮本百合子「インターナショナルとともに」青空文庫>
  26. ・・・ 一月○日 今、夜の七時すぎ。絶え間なくギーとあいてバタンと閉る戸のあおり。盛に出している水の音。パタパタ忙しい草履の跫音。言葉はわからないが無遠慮な笑い声だけが廊下じゅうに高く反響して聞えている三四人の女たちの喋り声。例によっ・・・<宮本百合子「寒の梅」青空文庫>
  27. ・・・鉄工場に働いたり、あるいは酸素打鋲器をあつかっている労働者、製菓会社のチョコレート乾燥場などの絶え間ない鼓膜が痛むような騒音と闘って働いている男女、独特な聴神経疲労を感じている電話交換手などにとって、ある音楽音はどういう反応をひき起すか、ど・・・<宮本百合子「芸術が必要とする科学」青空文庫>
  28. ・・・人が絶え間なくその前にたかり、或る者は手帳を出して書名をひかえている。或る者は直ぐ黒い上被りを着た店員に別の棚からその本を出して貰い、金を払っている。 成程これは、ソヴェト同盟らしい親切なやりかただ。ただ新刊書を一まとめにして、丸善の棚・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」青空文庫>
  29. ・・・ 実際、所謂女仲間に入って見ますと、私などは、かなり出しゃ張りの方でも、その絶え間ない早口と、戯談と寸刻もじっとして居ない態度とは、神経を気の毒なほど疲らせてくれます。 女の人の寄宿舎などは、まるで、今海から上げた大漁の網そのままの・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  30. ・・・名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓の冷水を浴びせかけられたような心持ちがして、一種の涼味を感ずるとともに、心の奥より秋の日のような清く温かき光が照らして、すべての人の上に純潔なる愛を感ずることができた」という個所のあるのに対して、特別・・・<和辻哲郎「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」青空文庫>