た‐き【多岐】例文一覧 30件

  1. ・・・若し、多岐多端の現代に純一に近い生活を楽しんでいる作家があるとしたら、それは詠嘆的に自然や人生を眺めている一部の詩人的作家よりも、寧ろ、菊池なぞではないかと思う。<芥川竜之介「合理的、同時に多量の人間味」青空文庫>
  2. ・・・複雑多岐でその生活を見ているだけでもなか/\面白い。このなかに身をひそめているのはひそめかたがあると思われるのである。 二年、三年、田舎の生活に年期を入れてくるに従って、東京から送られる郵便物や、雑誌の数がすくなくなって、その郵便物の減・・・<黒島伝治「田舎から東京を見る」青空文庫>
  3. ・・・膠質化学の方面からの理論的興味は別としても実用方面からの研究もかなり多岐にわたって進んではいるがまだ分らないことだらけである。国家の非常時に対する方面だけでも、煙幕の使用、空中写真、赤外線通信など、みんな煙の根本的研究に拠らなければならない・・・<寺田寅彦「喫煙四十年」青空文庫>
  4. ・・・ 分類は精細にすればするほど多岐になって、結局分類しないと同様になるべきはずのものである。しかしこの迷理を救うものは「方則」である。皮相的には全く無関係な知識の間の隔壁が破れて二つのものが一つに包括される。かようにしてすべての戸棚や引出・・・<寺田寅彦「言語と道具」青空文庫>
  5. ・・・その深遠な理由は、思想が人間性の苦悩の底へ、無限に深くもぐりこんで抜けないほどに根を持つて居るのと、多岐多様の複雑した命題が、至るところで相互に矛盾し、争闘し、容易に統一への理解を把握することができないこと等に関聯して居る。ニイチェほどに、・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  6. ・・・そして一層地理を失い、多岐に別れた迷路の中へ、ぬきさしならず入ってしまった。山は次第に深くなり、小径は荊棘の中に消えてしまった。空しい時間が経過して行き、一人の樵夫にも逢わなかった。私はだんだん不安になり、犬のように焦燥しながら、道を嗅ぎ出・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  7. ・・・ エプロン姿は幾旬日かの間に、良人にかわって一家の経営をひきついで行かなければならなくなった主婦たちの感情を反映するようになり、この多岐な一年の終りの近づいた今日では、女に要求されている銃後の力の内容は、明瞭に一家の経営の範囲を超えた。・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  8. ・・・だが残念なことに、経済的な理由、肉体的な理由をひっくるめての複雑多岐な男との交渉をもその一部としてもちながら、女の全生活は立体的に成り立つものであるという理解を、作者は葉子の生き方とその悲劇を語る広い背景として頭に置いていないように見える。・・・<宮本百合子「「或る女」についてのノート」青空文庫>
  9.  明治、大正年代にも、日本の文学は様々な意味で複雑、多岐な発展をとげて来たのであるが、この三四年間における日本文学が物語る歴史性、社会性の錯綜の姿は、或る意味で実に日本文学未曾有の有様ではないかと思われる。 明治、大正と・・・<宮本百合子「意味深き今日の日本文学の相貌を」青空文庫>
  10. ・・・では、そのようなロマンティックな要素も作品の一つの色彩とはしつつ、作者はぐっとリアリスティックに心理と経済の事情にまで広く多岐に踏みこんで、一人の君主の死が、武家社会に波及させた悲劇と生死の幾とおりもの姿を描き出している。作者はこの事件をめ・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  11. ・・・この複雑多岐で社会の事情万端数ヵ月のうちに大きく推移してゆくような時代に生き合わせて、受け身に只管失敗のないよう、間違いないようとねがいつつ女の新しい一歩を歩み出そうとしたって、自身の未熟さを思えばそれは手も足もどこに向って伸してよいか分ら・・・<宮本百合子「女の歴史」青空文庫>
  12. ・・・ 窪川稲子の業績や将来の発展というものは、それ故すべての積極的な、忍耐づよい、天分あるプロレタリア作家の生涯に対して云い得るように、全く階級の力の多岐多難な発展の過程とともに語られて初めて本質に迫り得るものであると思う。歴史の新たな担い・・・<宮本百合子「窪川稲子のこと」青空文庫>
  13. ・・・ 人類の発展の足どりは、実に多岐多難である。名状し難い献身、堅忍、労作、巨大な客観的な見とおしとそれを支えるに足る人間情熱の総量の上に、徐々に推しすすめられて来ている。決して反復されることない個人の全生涯の運命と歴史の運命とは、ここに於・・・<宮本百合子「こわれた鏡」青空文庫>
  14. ・・・らさせ、真面目な再吟味の根気を失わせられたことは、それらの作家たちが過去において率直に傾け示した自身の努力、人間的善意の価値に自信を失わせる結果となり、従って、プロレタリア文学運動の高揚と退潮とに至る多岐な数年間の経験から、将来の作家的成長・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  15. ・・・ 日本が世界歴史のこの多岐な頁をしのいでゆく永年に亙っての実力のために、日本人はこれまでの誇りとして自認している勇気を更に多様な沈着な粘りつよく周密なものとしての面に発揮してゆかなければならないでしょうし、社会事情の複雑さについて却って・・・<宮本百合子「歳々是好年」青空文庫>
  16. ・・・もし、現実の多岐な発現が、過去の文学的教養の枠を溢れているので、そんなものは今日の作家にとって無意味であるというならば、では、それに代る他の教養、真に現実を把握し、現実の変転の真の歴史的契機にふれ得るだけの科学的な教養、政治的な教養を身につ・・・<宮本百合子「作家と教養の諸相」青空文庫>
  17. ・・・新しい社会の建設過程は多岐、困難であるから、ジイドの観察が嘘ばかりだとは思えない。特に、民衆の個性、自発性の涵養の問題は常にソヴェトにおける文化問題の究明に際して最前面に出されているのであるから。彼は、それらの現象の本質の把握において誤った・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  18. ・・・千葉先生の歴史は、歴史というものが複雑多岐なる人間交渉をめぐって展開されることを私たちに教え、一つの事件の結果は、結果そのものがもう次の出来ごとの原因となってゆくような、物事のいきさつを描き出して示した。そのことは、私に、いろいろな身のまわ・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  19. ・・・ ところで、これらのプロレタリア新進作家や旧インテリゲンチア作家たちは、それぞれ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致・・・<宮本百合子「社会主義リアリズムの問題について」青空文庫>
  20. ・・・続いてその三年目は、逝けるレフ・トルストイが目醒めないながらも熾烈に働く人間精神の欲求によってさぐり求めていた万民の幸福への、至難多岐な第一歩がロシア全土に於て踏み出された年である。 父を理解しない当時の国家の権力までをつかって、財産を・・・<宮本百合子「ジャンの物語」青空文庫>
  21. ・・・そこには、先ず勤労人として生活しながら、文学を愛好する面では消費的で、従来の文学青年的であるというような撞著が克服されねばならず、その過程は歴史的にいかに多岐、多難で忍耐を要することであろうか。ゴーリキイの生涯を通観してもそのことは分明なの・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  22. ・・・ 多岐多難な現代の日本文学が、今日と明日とに向って自身の最大の課題としなければならないのは何であろうか。ひとくちに要約すれば、それは文学に於ける人間の再生の課題であろうと思う。人間は文学の世界において、物に従属させられる人間から、物の主・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  23. ・・・ 総体がリアリズムによって書かれているのではないことを一応認容した上で、これはいえることなのであるが、久内が自由の精神によってもって立つ人間と自覚し得るに到るために、作者は久内に多岐多様な内的苦悩を経験させているとは決していえないのであ・・・<宮本百合子「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」青空文庫>
  24.  昨今の複雑で又変動の激しい世相は、一方に真面目な歴史研究への関心を刺戟しているが、若い婦人たちの間にも、益々多岐多難な女性の日常生活についての自省とともに、人類の長い歴史の消長のなかで女はどのような社会的歩きかたをして来た・・・<宮本百合子「先駆的な古典として」青空文庫>
  25. ・・・ 発展する階級の複雑多岐な歴史とのつながりにおいて、自分をふくむこれら一団の作家群のなまなましい行状記を眺め直すと、私はある創作的衝動を心に感じるほどである。さまざまの困難な時期を経て何年か後に、私はもちろんのこと当時の人々はいかなる角・・・<宮本百合子「近頃の感想」青空文庫>
  26. ・・・人生の幾波瀾を経て、困難多岐な社会生活を観察して今日に至った老芸術家が、自然に向かってもその青春時代のようにその花の色、濃い緑、枝もたわわな実の美しさだけに目をうばわれず、寧ろ、日夜を貫いて営まれている生命の流れ、その多様な変貌、永遠性など・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  27.  私たち一般人の日常生活の内外に相関連する社会的現実は、この二三年益々複雑多岐、錯綜、紛乱を極めて来ている。こういう社会の激しい矛盾の有様は、将来どうなってゆくのであろうか。今日このように巨大決裂の予感を感じさせている社会は・・・<宮本百合子「新島繁著『社会運動思想史』書評」青空文庫>
  28. ・・・バルザックが、複雑多岐な形態で各人に作用を及ぼしている社会的モメントをつきつめれば、それは二つのもの、色と慾とであることを観察し、更にこの二つのものにあって窮極の社会諸現象のネジは、外ならぬ金銭であることを結論したのは、疑いもなく他の追随を・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  29. ・・・ヨーロッパにくらべると二十年余もおくれてイデオロギー的に大衆化するや直に複雑多岐な暴力にさらされなければならなくなった日本の若いマルクス主義の活動家たちと、転向の問題とは骨肉的な関係で結ばれていると思う。運動が合法的擡頭をした時代に階級的移・・・<宮本百合子「冬を越す蕾」青空文庫>
  30. ・・・ 現在北支で経過している事件の性質は、全く素人の一市民として見ても、世界歴史の上に豊富、多岐な内容をもっていることがわかる。歴史小説の題材としての蒋介石の生涯は東洋史の新たな本質を語るものであり、彼の波瀾重畳に作用を及ぼす力は尾崎秀実氏・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>