たけ‐お〔‐を〕【男/夫/丈夫】例文一覧 30件

  1. ・・・「それだけわかっていれば大丈夫だ。目がまわったも怪しいもんだぜ。」 飯沼はもう一度口を挟んだ。「だからその中でもといっているじゃないか? 髪は勿論銀杏返し、なりは薄青い縞のセルに、何か更紗の帯だったかと思う、とにかく花柳小説の挿・・・<芥川竜之介「一夕話」青空文庫>
  2. ・・・しかし馬の脚は丈夫ですよ。時々蹄鉄を打ちかえれば、どんな山道でも平気ですよ。……」 するともう若い下役は馬の脚を二本ぶら下げたなり、すうっとまたどこかからはいって来た。ちょうどホテルの給仕などの長靴を持って来るのと同じことである。半三郎・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  3. ・・・……柱も天井も丈夫造りで、床の間の誂えにもいささかの厭味がない、玄関つきとは似もつかない、しっかりした屋台である。 敷蒲団の綿も暖かに、熊の皮の見事なのが敷いてあるは。ははあ、膝栗毛時代に、峠路で売っていた、猿の腹ごもり、大蛇の肝、獣の・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  4. ・・・とお光は美しい眉根を寄せてしみじみ言ったが、「もっともね、あの病気は命にどうこうという心配がないそうだから、遅かれ早かれ、いずれ直るには違いないから気丈夫じゃあるけど、何しろ今日の苦しみが激しいからね、あれじゃそりゃ体も痩せるわ」「まあ・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  5. ・・・……僕もあまり身体が丈夫でありませんからね。今でも例の肋膜が、冬になると少しその気が出るんですよ」 惣治も酔でも廻ってくると、額に被ぶさる長い髪を掌で撫で上げては、無口な平常に似合わず老人じみた調子でこんなようなことを言った。「そう・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  6. ・・・豊吉は少し笑いを含んで、『貫一さんは丈夫かね。』『達者だ。』『それで安心しました、ああそれで安心しました。お前は豊吉という叔父さんのことをおとっさんから聞いたことがあろう。』 少年はびっくりして立ちあがった。『お前の名は・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  7. ・・・各粗末なしかも丈夫そうな洋服を着て、草鞋脚絆で、鉄砲を各手に持って、いろんな帽子をかぶって――どうしても山賊か一揆の夜討ちぐらいにしか見えなかった。 しかし一通りの山賊でない、図太い山賊で、かの字港まで十人が勝手次第にしゃべって、随分や・・・<国木田独歩「鹿狩り」青空文庫>
  8. ・・・身体が丈夫ならば丈夫なだけいい。芸術上の仕事には種々な経験が豊かなほどいいのだが、身体が弱ければ生活が狭くなる。少なくともかなりな程度の健康を保つことを常に心掛けなくてはならない。それには、一、十一時以後は必ず夜更かしせぬこと。二、寝床のな・・・<倉田百三「芸術上の心得」青空文庫>
  9. ・・・「俺もひとつ、負傷してやるかな。」彼は心に呟いた。「丈夫でいるのこそ、クソ馬鹿らしい!」 負傷者の傷には、各々、戦闘の片影が残されていた。森をくゞりぬけて奥へパルチザンを追っかけたことがある。列車を顛覆され、おまけに、パルチザンの襲撃を・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  10. ・・・たと見えて、野州上州の山地や温泉地に一日二日あるいは三日五日と、それこそ白雲の風に漂い、秋葉の空に飄るが如くに、ぶらりぶらりとした身の中に、もだもだする心を抱きながら、毛繻子の大洋傘に色の褪せた制服、丈夫一点張りのボックスの靴という扮装で、・・・<幸田露伴「観画談」青空文庫>
  11. ・・・ 弱い体は其頃でも丈夫にならなかったものと見えて、丁度「いろは」を卒える頃からででもあったろうか、何でも大層眼を患って、光を見るとまぶしくてならぬため毎日々々戸棚の中へ入って突伏して泣いて居たことを覚えて居る。いろいろ療治をした後、根岸・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  12. ・・・「うまい乳を一杯のませて、ウンと丈夫に育てゝくれ!……はゝゝゝゝ、首を切られたんじゃうまい乳も出ないか。」 お君は刑務所からの帰りに、何度も何度も考えた――うまい乳が出なかったら、よろしい! 彼奴等に対する「憎悪」でこの赤ん坊を育て・・・<小林多喜二「父帰る」青空文庫>
  13. ・・・僕から云うのも変だが、何よりまア身体を丈夫にしてい給え。」 ずんぐりした方が一寸テレて、帽子の縁に手をやった。 ごじゃ/\と書類の積まさった沢山の机を越して、窓際近くで、顎のしゃくれた眼のひッこんだ美しい女の事務員が、タイプライター・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  14. ・・・ と、私に言ってみせるのは、肥って丈夫そうなお霜婆さんだ。私の郷里では、このお霜婆さんの話すように、女でも「おら」だ。「どうだなし、こんないい家ができたら、お前さまもうれしからず。」 と、今度はお菊婆さんが言い出した。無口なお霜・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  15. ・・・もうもう大丈夫だ。ゆうべは俺もよく寝られたし、御霊さまは皆を守っていて下さるし、今朝は近頃にない気分が清々とした」 おげんは自分を笑うようにして、両手を膝の上に置きながらホッと一つ息を吐いた。おげんの話にはよく「御霊さま」が出た。これは・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  16. ・・・ ウイリイは丈夫に大きくなりました。それに大へんすなおな子で、ちっとも手がかかりませんでした。 ふた親は乞食のじいさんがおいていった鍵を、一こう大事にしないで、そこいらへ、ほうり出しておきました。それをウイリイが玩具にして、しまいに・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  17. ・・・嘉七は、それを聞いていながら、恥ずかしいほどであった。丈夫なやつだ。「おい、かず枝。しっかりしろ。生きちゃった。ふたりとも、生きちゃった。」苦笑しながら、かず枝の肩をゆすぶった。 かず枝は、安楽そうに眠りこけていた。深夜の山の杉の木・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  18. ・・・とにかくその一と夏の湯治で目立って身体が丈夫になったので両親はひどく喜んだそうである。 自分にはそんなに海を怖がったというような記憶は少しも残っていない。しかし実際非常に怖い思いをしたので、そのときに眼底に宿った海岸と海水浴場の光景がそ・・・<寺田寅彦「海水浴」青空文庫>
  19. ・・・せんで竹の皮をむき、ふしの外のでっぱりをけずり、内側のかたい厚みをけずり、それから穴をあけて、柄をつけると、ぶかっこうながら丈夫な、南九州の農家などでよくつかっている竹びしゃくが出来あがる。朝めし前からかかって、日に四十本をつくるのだが、こ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  20. ・・・眼の細い、身丈の低くからぬ、丈夫そうな爺さんであった。浅草という土地がら、大道具という職業がらには似もつかず、物事が手荒でなく、口のききようも至極穏かであったので、舞台の仕事がすんで、黒い仕事着を渋い好みの着物に着かえ、夏は鼠色の半コート、・・・<永井荷風「草紅葉」青空文庫>
  21. ・・・死ぬ迄も依然として身体は丈夫であったけれど何処となく悄れ切って見えた。それは瞽女のお石がふっつりと村へ姿を見せなくなったからであった。彼がお石と馴染んだのは足かけもう二十年にもなる。秋のマチというと一度必ず隊伍を組んだ瞽女の群が村へ来る。其・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  22. ・・・ていやに軽蔑した文句を並べる、不肖なりといえども軽少ながら鼻下に髯を蓄えたる男子に女の自転車で稽古をしろとは情ない、まあ落ちても善いから当り前の奴でやってみようと抗議を申し込む、もし採用されなかったら丈夫玉砕瓦全を恥ずとか何とか珍汾漢の気き・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  23. ・・・第一に身体が昔より丈夫になり、神経が少し図太く鈍って来た。青年時代に、僕をひどく苦しめた病的感覚や強迫観念が、年と共に次第に程度を弱めて来た。今では多人数の会へ出ても、不意に人の頭をなぐったり、毒づいたりしようとするところの、衝動的な強迫観・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  24. ・・・ ――手だけは、未だ俺は丈夫なんだからな。ポカッ! と、俺は、奴の鼻に行かなくちゃいけない。口ではいけない。眼ならいくらかいい。だが鼻が一等きき目があるからな。ざまあ見やがれ、鼻血なんぞだらしなく垂らしやがって―― 私は、本船から、・・・<葉山嘉樹「浚渫船」青空文庫>
  25. ・・・ 然れども難きを見てなさざるは丈夫の志にあらず、益あるを知りて興さざるは報国の義なきに似たり。けだしこの学を世におしひろめんには、学校の規律を彼に取り、生徒を教道するを先務とす。よって吾が党の士、相ともに謀りて、私にかの共立学校の制にな・・・<福沢諭吉「慶応義塾の記」青空文庫>
  26. ・・・ちょうどもうあなたの丈夫な、白いお手に握られてしまったようでございました。あの時の苦しさを思えば、今の夫に不実をせられたと思った時の苦しさはなんでもございません。わたくしの美しい夢はこのとき消えてしまいました。 わたくしはどうしてもあな・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  27. ・・・ 暗い丈夫そうな門に「質屋」と書いてある。これは昔からいやな感じがする処だ。 竹垣の内に若木の梅があってそれに豆のような実が沢山なって居るのが車の上から見える。それが嬉しくてたまらぬ。 狸横町の海棠は最う大抵散って居た。色の褪せ・・・<正岡子規「車上の春光」青空文庫>
  28. ・・・皮も全体、立派で丈夫な象皮なのだ。そしてずいぶんはたらくもんだ。けれどもそんなに稼ぐのも、やっぱり主人が偉いのだ。「おい、お前は時計は要らないか。」丸太で建てたその象小屋の前に来て、オツベルは琥珀のパイプをくわえ、顔をしかめて斯う訊いた・・・<宮沢賢治「オツベルと象」青空文庫>
  29. ・・・きょう、またおどろくような迅さで、日本の人民生活と文化とが高波にさらされようとしているとき、文学を文学として守るためにも、この著者の諸評論は丈夫な足がかりを与えるものである。〔一九四八年六月〕・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  30. ・・・秀麿が目の前にいない時は、青山博士の言った事を、一句一句繰り返して味ってみて、「なる程そうだ、なんの秀麿に病気があるものか、大丈夫だ、今に直る」と思ってみる。そこへ秀麿が蒼い顔をして出て来て、何か上の空で言って、跡は黙り込んでしまう。こっち・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>