たしか【確か/×慥か】例文一覧 40件

  1. ・・・兵衛殿の臨終は、今朝寅の上刻に、愚老確かに見届け申した。」と云った。甚太夫の顔には微笑が浮んだ。それと同時に窶れた頬へ、冷たく涙の痕が見えた。「兵衛――兵衛は冥加な奴でござる。」――甚太夫は口惜しそうに呟いたまま、蘭袋に礼を云うつもりか、床・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・彼に見られる度に、私は反抗心が刺戟される様な、それで居て如何にも抵抗の出来ない様な、一種の圧迫を感じて、厭な気になるが、其の眼には確かに強く人を牽きつける力を籠めて居る。「豹の眼だ」と此の時も思ったのである。 私が向き直ると、ヤコフ・イ・・・<有島武郎「かんかん虫」青空文庫>
  3. ・・・ 虫ではない、確かに鳥らしく聞こえるが、やっぱり下の方で、どうやら橋杭にでもいるらしかった。「千鳥かしらん」 いや、磯でもなし、岩はなし、それの留まりそうな澪標もない。あったにしても、こう人近く、羽を驚かさぬ理由はない。 汀・・・<泉鏡花「海の使者」青空文庫>
  4. ・・・考えて見ると成程一昨年来た時も、其前に来た時も改まった挨拶などはしなかった様に覚えてるが、しかしながら今は岡村も慥か三十以上だ。予は四十に近い。然も互いに妻子を持てる一ぱしの人間であるのに、磊落と云えば磊落とも云えるが、岡村は決して磊落な質・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  5. ・・・吉弥の顔が見たいのと、例の決心を確かめたいのであったが、当人の決心がまず本統らしく見えると、すぐまた僕はその親の意見を聴きにやらせた。親からは近々当地へ来るから、その時よく相談するという返事が来たと、吉弥が話した。僕一個では、また、ある友人・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・後の『小説神髄』はこれを秩序的に纏めたものだが、この評論は確かに『書生気質』などよりは重かった。世間を敬服さした。これも私は丁度同時にバージーンの修辞学を或る外国人から授かって、始終講義を聞いていた故、確かにその一部をバージーンから得たらし・・・<内田魯庵「明治の文学の開拓者」青空文庫>
  7. ・・・ 今時の弊害は何であるかといいますれば、なるほど金がない、われわれの国に事業が少い、良い本がない、それは確かです。しかしながら日本人お互いに今要するものは何であるか。本が足りないのでしょうか、金がないのでしょうか、あるいは事業が不足なの・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  8. ・・・ 私がこの他アやんを見舞ったのは、確か「復活する文楽」という記事が新聞に出ていた日のことであった。文楽は小屋が焼け人形衣裳が焼け、松竹会長の白井さんの邸宅や紋下の古靱太夫の邸宅にあった文献一切も失われてしまったので、もう文楽は亡びてしま・・・<織田作之助「起ち上る大阪」青空文庫>
  9. ・・・俺も森を畑へ駈出して慥か二三発も撃たかと思う頃、忽ちワッという鬨の声が一段高く聞えて、皆一斉に走出す、皆走出す中で、俺はソノ……旧の処に居る。ハテなと思た。それよりも更と不思議なは、忽然として万籟死して鯨波もしなければ、銃声も聞えず、音とい・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  10. ・・・そりゃもう鉄の鎖で縛ったよりも確かなもんじゃ。……貴様は遁れることならんぞ! 貴様は俺について来るんだぞ! と云うことをちゃんと暗示して了うんだからね、つまり相手の精神に縄を打ってあるんだからな、これ程確かなことはない」「フム、そんなも・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  11. ・・・しかしその家は違っていた。確かに町はその町に違いなかった。幼な友達の家が一軒あった。代が変わって友達の名前になっていた。台所から首を出している母らしいひとの眼を彼は避けた。その家が見つかれば道は憶えていた。彼はその方へ歩き出した。 彼は・・・<梶井基次郎「過古」青空文庫>
  12. ・・・と調子に確かめて膝押し進む。ホイ、お前の前で言うのではなかった。と善平は笑い出せば、あら、そういうわけで言ったのではありませぬ。ただこうだと言って見たばかりですよ。と顔は早くも淡紅を散らして、いやな父様だよ。と帯締めの打紐を解きつ結びつ。・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  13. ・・・ 木村の教会は麹町区ですから、一里の道のりは確かにあります。二人は木村の、色のさめた赤毛布を頭からかぶって、肩と肩を寄り合って出かけました。おりおり立ち止まっては毛布から雪を払いながら歩みます、私はその以前にもキリスト教の会堂に入ったこ・・・<国木田独歩「あの時分」青空文庫>
  14. ・・・ 文芸を愛好する故に倫理学を軽視するという知識青年の風潮は確かに青年層の人格的衰弱の徴候といわねばならぬ。     四 社会運動と倫理学 青年層にはまた倫理学を迂遠でありとし、象牙の塔に閉じこもって、現実の世相を知らない・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  15. ・・・農家は米は持っているのだが、今年の稲が穂に出て確かにとれる見込みがつくまで手離さないという返事である。なにしろ田地持ちが外米を買って露命をつながなければならないようなことはまことに「はなし」ならぬ話である。 昨年、私たちの地方では、水な・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  16. ・・・併し何歳頃から草双紙を読み初めたかどうも確かにはおぼえません、十一位でしたろうか。此頃のことでした、観行院様にお前は何を仕て居たいかと問われたとき、芋を喰って本を読んで居ればそれで沢山だと答えたそうですが、芋ぐらいが好物であったと見えます、・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  17. ・・・ という声が何処かの――確かに向う側の監房の開いた窓から、あがった。向うでも何かを云っている。俺の胸は早鐘を打った。 飯の車が俺の監房に廻わってきたとき、今度は向うの一番遠い監房――No. 1. あたりで「ロシア革命万歳」を叫んでいるの・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  18. ・・・あの人は、どんどん変わって行く――確かに、頭がいいんだろうね。」 この子の「頭がいいんだろうね」には私も吹き出してしまった。 私の話相手――三人の子供はそれぞれに動き変わりつつあった。三人の中でも兄さん顔の次郎なぞは、五分刈りであっ・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19. ・・・「この人なら慥かだ。己の今まで捜していたのはこういう人だ。この人はまだ自分の体のうちに幸福を持っているらしい。この人なら人を助けてくれるだろう。」 青年は一刹那の間、老人と顔を見合せた。そしてなぜ見せている笑顔か知れない笑顔を眺めた。青・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  20. ・・・ここまで来るともう気が確かになりました。なぜというと、向こうには赤い屋根と旗が見えますし、道の両側には白あじさいと野薔薇が恋でもしているように二つずつならんで植わっていましたから。 むすめもひとりで歩けました。しかして手かごいっぱいに花・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎「真夏の夢」青空文庫>
  21. ・・・貴女のお手で、私を確かり抱いて頂戴。斯うやって、私がすがり付いているように。そして、どうぞしっかり捕えていて下さい」と云いでもするように。 カルカッタの家に着いてからの或る日のことでした。スバーの母は、大変な心遣いで娘に身なりを飾ら・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  22. ・・・「数学の歴史も、振りかえって見れば、いろいろ時代と共に変遷して来たことは確かです。まず、最初の段階は、微積分学の発見時代に相当する。それからがギリシャ伝来の数学に対する広い意味の近代的数学であります。こうして新しい領分が開けたわけですから、・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  23. ・・・大石橋から十里、二日の路、夜露、悪寒、確かに持病の脚気が昂進したのだ。流行腸胃熱は治ったが、急性の脚気が襲ってきたのだ。脚気衝心の恐ろしいことを自覚してかれは戦慄した。どうしても免れることができぬのかと思った。と、いても立ってもいられなくな・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  24. ・・・オランダと云うだけは確かには分からないが、番頭は確かにそう云った。ベルリンへ来てからは、廉いので一度に二ダズン買った。あの日の事はまだよく覚えている。朝応用美術品陳列館へ行った。それから水族館へ行って両棲動物を見た。ラインゴルドで午食をして・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  25. ・・・このいずれも当面の問題に対しては実に貧弱なデータで、これだけからなんらの確からしい結論も導き出せないことは科学者を待たずとも明白なことである。しかし、われわれの「人情」と「いわゆる常識」はこのからを肯定しようとする強い誘惑を醸成する。 ・・・<寺田寅彦「ある探偵事件」青空文庫>
  26. ・・・ それから、確か二十三日の日でござえんしたろう、×××大将の若旦那、これはその時分の三本筋でしてね、つまり綾子さんの弟御に当るお方でさ。その方と秋山さんの親御が、区役所の兵事課へ突然車をおつけになって、小野某と云う者が、田舎の何番地にい・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  27. ・・・ そんな筈はない……確かに会社の中へ、トラックで送り込んだ筈の利助だったのが……しかし、まごうべくなく利助は、素ッ裸で革命歌を歌っているのだ。「皆さん、着物を着て下さい。御飯も出来ましたよ」 女工の一人が大声で云っている。女達が・・・<徳永直「眼」青空文庫>
  28. ・・・ 母上は其の夜の夜半、夢ではなく、確かにこんこんと云う啼き声を聞いたとの話。下女は日が暮れたと云ったら、どんな用事があっても、家の外へは一歩も踏出さなくなった。忠義一図の御飯焚お悦は、お家に不吉のある兆と信じて夜明に井戸の水を浴びて、不・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  29. ・・・ 再び障った音は、殆んど敲いたというべくも高い。慥かに人ありと思い極めたるランスロットは、やおら身を臥所に起して、「たぞ」といいつつ戸を半ば引く。差しつくる蝋燭の火のふき込められしが、取り直して今度は戸口に立てる乙女の方にまたたく。乙女・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  30. ・・・此所に現象しているものは、確かに何かの凶兆である。確かに今、何事かの非常が起る! 起きるにちがいない! 町には何の変化もなかった。往来は相変らず雑鬧して、静かに音もなく、典雅な人々が歩いていた。どこかで遠く、胡弓をこするような低い音が、・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>