だ・す【出す】例文一覧 51件

  1. ・・・ その内に筑波颪しがだんだん寒さを加え出すと、求馬は風邪が元になって、時々熱が昂ぶるようになった。が、彼は悪感を冒しても、やはり日毎に荷を負うて、商に出る事を止めなかった。甚太夫は喜三郎の顔を見ると、必ず求馬のけなげさを語って、この主思・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・そして一生懸命にめんかきをして、ようやく水の上に顔だけ出すことが出来ました。その時私たち三人が互に見合せた眼といったら、顔といったらありません。顔は真青でした。眼は飛び出しそうに見開いていました。今の波一つでどこか深い所に流されたのだという・・・<有島武郎「溺れかけた兄妹」青空文庫>
  3. ・・・ クサカの芸当は精々ごろりと寝て背中を下にして、目を瞑って声を出すより外はない。しかしそれだけでは自分の喜びと、自分の恩に感ずる心とを表わすことが出来ぬと思った。それでふいと思い出したことがある。それは昔余所の犬のするのを見て、今までは・・・<著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外「犬」青空文庫>
  4. ・・・ さては、暗の中に暗をかさねて目を塞いだため、脳に方角を失ったのであろうと、まず慰めながら、居直って、今まで前にしたと反対の側を、衝と今度は腕を差出すようにしたが、それも手ばかり。 はッと俯向き、両方へ、前後に肩を分けたけれども、ざ・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  5. ・・・かねてここと見定めて置いた高架鉄道の線路に添うた高地に向って牛を引き出す手筈である。水深はなお腰に達しないくらいであるから、あえて困難というほどではない。 自分はまず黒白斑の牛と赤牛との二頭を牽出す。彼ら無心の毛族も何らか感ずるところあ・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・それにしても、思い出す度にぞッとするのは、敵の砲弾でもない、光弾の光でもない、速射砲の音でもない、実に、僕の隊附きの軍曹大石という人が、戦線の間を平気で往来した姿や。これが、今でも、幽霊の様に、また神さまの様に、僕の心に見えとるんや。」・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・ とは思うものの、二葉亭は舞台の役を振られて果して躍り出すだろう乎。空想はかなり大きく、談論は極めて鋭どかったが、率ざ問題にブツかろうとするとカラキシ舞台度胸がなくて、存外※咀思想がイツマデも抜け切らないで、二葉亭の行くべき新らしい世界・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  8. ・・・青年が学者の真似をして、つまらない議論をアッチからも引き抜き、コッチからも引き抜いて、それを鋏刀と糊とでくッつけたような論文を出すから読まないのです。もし青年が青年の心のままを書いてくれたならば、私はこれを大切にして年の終りになったら立派に・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  9. ・・・――王さまは、ここにはじめて、自らの力をたよることのいちばん安心なのを悟られ、あくる年から、赤い船を出すことを見合わせられたのであります。――一九二六・九――<小川未明「赤い船とつばめ」青空文庫>
  10. ・・・ね、酔ってるものだからヒョロヒョロして、あの大きな体を三味線の上へ尻餅突いて、三味線の棹は折れる、清元の師匠はいい年して泣き出す、あの時の様子ったらなかったぜ、俺は今だに目に残ってる……だが、あんな元気のよかった父が死んだとは、何だか夢のよ・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  11. ・・・「自分を見出す」などという言い方は、たぶん講義録で少しは横文字をかじった影響でしょうが、その講義録にしたところで、最初の三月分だけ無我夢中で読んだだけ、あとはもう金も払いこまず、したがって送ってもこなかった。が、私はえらくなろうという野心―・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  12. ・・・匝れば匝られるものを、恐しさに度を失って、刺々の枝の中へ片足踏込で躁って藻掻いているところを、ヤッと一撃に銃を叩落して、やたら突に銃劔をグサと突刺すと、獣の吼るでもない唸るでもない変な声を出すのを聞捨にして駈出す。味方はワッワッと鬨を作って・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  13. ・・・彼もこれ以上Kに追求されては、ほんとうは泣き出すほかないと云ったような顔附になる。彼にはまだ本当に、Kのいうその恐ろしいものの本体というものが解らないのだ。がその本体の前にじり/\引摺り込まれて行く、泥沼に脚を取られたように刻々と陥没しつゝ・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  14. ・・・彼はビールを一と飲みするとまた言葉をついで、「その崖の上へ一人で立って、開いている窓を一つ一つ見ていると、僕はいつでもそのことを憶い出すんです。僕一人が世間に住みつく根を失って浮草のように流れている。そしていつもそんな崖の上に立って人の・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  15. ・・・ 糸につれて唄い出す声は、岩間に咽ぶ水を抑えて、巧みに流す生田の一節、客はまたさらに心を動かしてか、煙草をよそに思わずそなたを見上げぬ。障子は隔ての関を据えて、松は心なく光琳風の影を宿せり。客はそのまま目を転じて、下の谷間を打ち見やりし・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  16. ・・・です、それこそ今のおかたには想像にも及ばぬことで、じゃんと就業の鐘が鳴る、それが田や林や、畑を越えて響く、それ鐘がと素人下宿を上ぞうりのまま飛び出す、田んぼの小道で肥えをかついだ百姓に道を譲ってもらうなどいうありさまでした。 ある日樋口・・・<国木田独歩「あの時分」青空文庫>
  17. ・・・倫理学はこの道徳盲を克服して、あらゆる人と時と処とにおいて不易なる道徳的真理そのもの、ジットリヒカイトを見出すことを任務とする。 かかる普遍的に妥当なる道徳的真理が存在するか否かがすでに根本的な問題である。たとえば唯物史観的な倫理学は一・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  18. ・・・吐き出す呼気が凍って、防寒帽の房々した毛に、それが霜のようにかたまりついた。 彼等は、家庭の温かさと、情味とに飢え渇していた。西伯利亜へ来てから何年になるだろう。まだ二年ばかりだ。しかし、もう十年も家を離れ、内地を離れているような気がし・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  19. ・・・のを感じたが、貧乏神に執念く取憑かれたあげくが死神にまで憑かれたと自ら思ったほどに浮世の苦酸を嘗めた男であったから、そういう感じが起ると同時にドッコイと踏止まることを知っているので、反撃的の言葉などを出すに至るべき無益と愚との一歩手前で自ら・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  20. ・・・そのうち、あるいは死よりも劣った不幸の人、もしくは醜辱の人を出すことがなかったであろうか。生死いずれが彼らのために幸福であったか。これは問題である。とにかく、彼らは、一死を分として満足・幸福に感じて屠腹した。その満足・幸福の点においては、七・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  21.  先生。 私は今日から休ませてもらいます。みんながイジめるし、馬鹿にするし、じゅ業料もおさめられないし、それに前から出すことにしてあった戦争のお金も出せないからです。先生も知っているように、私は誰よりもウンと勉強して偉く・・・<小林多喜二「級長の願い」青空文庫>
  22. ・・・其日々々の勤務――気圧を調べるとか、風力を計るとか、雲形を観察するとか、または東京の気象台へ宛てて報告を作るとか、そんな仕事に追われて、月日を送るという境涯でも、あの蛙が旅情をそそるように鳴出す頃になると、妙に寂しい思想を起す。旅だ――五月・・・<島崎藤村「朝飯」青空文庫>
  23. ・・・老人は隠しの中の貨幣を勘定しながら、絶えず唇を動かして独言を言って、青い目であちこちを見て、折々手を隠しから出さずに肘を前の方へ突き出すのである。その様子が自分の前を歩いているものを跡からこづいて、立ち留らせて、振返えらせようとするようであ・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  24. ・・・あっと言って立ち上ると、ぐらぐらゆれる窓をとおして、目のまえの鉄筋コンクリートだての大工場の屋根瓦がうねうねと大蛇が歩くように波をうつと見るまに、その瓦の大部分が、どしんとずりおちる、あわてて外へとび出すはずみに、今の大工場がどどんとすさま・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  25. ・・・そんなにして坐っていて、わたしの顔を見ているその目付で、わたしの考えの糸を、丁度繭から絹糸を引き出すように手繰出すのだわ。その手繰出されたわたしの考えは疑い深い考えかも知れない。わたしにもよく思って見なくちゃあ分からないわ。一体お前さんはな・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:森鴎外「一人舞台」青空文庫>
  26. ・・・眼の裡に、思いは開き閉じ、耀き出すかと思えば、闇の中に消え去ります。沈んでゆく月のように凝っと一つところにかかったり、又は、迅い閃く稲妻のように、空――眼全体を照したり。生れ落るとから、唇の戦きほか言葉を持たずに来たものは、表し方に限りがな・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  27. ・・・という長編戯曲に就いては私は、いまでも、その中の人物の表情までも、はっきり思い出すことができるのであります。 長兄が三十歳のとき、私たち一家で、「青んぼ」という可笑しな名前の同人雑誌を発行したことがあります。そのころ美術学校の塑像科に在・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  28. ・・・ さて到る処で紹介状を出すと、どこでも非常に厚く待遇する。いかに自分の勤めている銀行が大銀行だとしても、その中のいてもいなくても好い役人の受くべき待遇ではない。そこでチルナウエルは次第に小さい銀行員たることを忘れて、次第に昔話の魔法で化・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  29.  樹々の若葉の美しいのが殊に嬉しい。一番早く芽を出し始めるのは梅、桜、杏などであるが、常磐木が芽を出すさまも何となく心を惹く。 古葉が凋落して、新しい葉がすぐ其後から出るということは何となく侘しいような気がするものである。椿、珊・・・<田山花袋「新茶のかおり」青空文庫>
  30. ・・・するとドイツ語の分らない人でも皆釣り込まれて笑い出す。」「不思議な、人を牽き付ける人柄である。干からびたいわゆるプロフェッサーとはだいぶ種類がちがっている。音楽家とでもいうような様子があるが、彼は実際にそうである。数学が出来ると同じ程度・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>