た‐だい【多大】例文一覧 30件

  1. ・・・ 多大の満足と多少の疲労とを持って、僕たちが何日かを忙しい中に暮らした事務室を去った時、窓から首を出して見たら、泥まみれの砂利の上には、素枯れかかった檜や、たけの低い白楊が、あざやかな短い影を落して、真昼の日が赤々とした鼠色の校舎の羽目・・・<芥川竜之介「水の三日」青空文庫>
  2. ・・・    二欧洲人の風俗習慣に就て、段々話を聞いて見ると、必ずしも敬服に価すべき良風許りでもない様なるが、さすがに優等民族じゃと羨しく思わるる点も多い、中にも吾々の殊に感嘆に堪えないのは、彼等が多大の興味を以て日常の食事を楽む点である・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  3. ・・・椿岳の画は大抵一気呵成であるが、椿岳の一気呵成には人の知らない多大の準備があったのだ。 椿岳が第一回博覧会に出品した画は恐らく一生に一度の大作であろう。一体椿岳が博覧会に出品するというは奇妙に感ずるが、性来珍らし物好きであったから画名を・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  4. ・・・それでこの上に多大の苦心をしていわゆる立体映画がようやく成功したとしても、その効能はおそらくそう顕著なものではあるまいという気がする。 現在の発明家のねらっている立体映画はいずれもステレオスコピックな効果によるものであるが、誇張されたス・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  5. ・・・そういうわけで盲人や聾者の心理というものに多大な興味を感ずるようになった。 それでこの間この書物を某書店の棚に並んだ赤表紙の叢書の中に見附けた時は、大いに嬉しかった。早速読みかかってみるとなかなか面白い。丁度自分が知りたいと思っていたよ・・・<寺田寅彦「鸚鵡のイズム」青空文庫>
  6. ・・・五十人の研究の中でただの一つでも有利な結果が飛び出せば、それから得られる利益で、学者の五十人くらい一生飼い殺しにしても、なお多大の収益があるからとのことであった。戦後の世智辛さではどうなったかそれは知らない。とにかく日本などでは、まだなかな・・・<寺田寅彦「学問の自由」青空文庫>
  7.  教育資料としての映画の価値の多大なことは誰でも認めてはいるようであるが、しかしこの問題については、少なくも我邦では、まだあまり十分に研究されていないか、ともかくも一般的興味の対象とはなっていないようである。その証拠には、芸・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  8. ・・・ 実験室における割れ目の問題が地殻に適用されるとなると、そこには地質学や地震学の方面に多大な応用範囲が見いだされる。これに関してはかえって地質学者の多くが懐疑的であるように見えるが、物理学者の目から見れば、この適用は、もし適当な注意のも・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  9. ・・・仮りに科学的に信憑すべき根拠よりして、来る六十年ないし七十年間に某火山系に活動を予期し得るとせば、個人に対してはともかく、一県一道の為政者にとりては多大の参考となるべし。 予報者と被予報者との意志の疎通せざる手近き原因は、予報の指定する・・・<寺田寅彦「自然現象の予報」青空文庫>
  10. ・・・同じ筆法で行けば弘安四年六月三十日から七月一日へかけて玄界灘を通過した低気圧は我邦の存亡に多大の影響があったのである。もし当時元軍に現時の気象学の知識があったなら、あの攻撃はあるいはもう数ヶ月延期したかもしれない。 日露戦役の際でも我軍・・・<寺田寅彦「戦争と気象学」青空文庫>
  11. ・・・もっともこの測量には多大の費用がかかるのであるが、それは幸いに帝国学士院や、原田積善会、服部報公会等の財団または若干篤志家の有力な援助によって支弁され、そのおかげで次第に観測資料が蓄積され、その結果はわが国の有為な少壮学者らの手によって逐次・・・<寺田寅彦「地図をながめて」青空文庫>
  12. ・・・ある人は面目を一新したと云って多大の希望をかけたようであり、またある人は別段の変りもないと云って落着いていた。前者は相に注目したのであり、後者は本質の事を云ったのであろう。今年も多少の相の変化はあるに相違ない。ある意味では変化し過ぎて困るか・・・<寺田寅彦「帝展を見ざるの記」青空文庫>
  13. ・・・ このように時を空間化して取り扱ったために得られる便利は多大なものであるが、しかし人間の直感する「時」の全部はtの符号に含まれていない。 ニュートンの考えたような、現象に無関係な「絶対的の時」はマッハによって批評されたのみならず、輓・・・<寺田寅彦「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」青空文庫>
  14. ・・・いは少なかった時代の人間のほうがはるかに利口であったような気もするが、これは疑問として保留するとして、書物の珍しかった時代の人間が書物によって得られた幸福の分量なり強度なりが現代のわれわれのそれよりも多大であったことは確かであろう。蘭学の先・・・<寺田寅彦「読書の今昔」青空文庫>
  15. ・・・ ニュース映画はこの意味において人間の頭脳の啓発に多大な役目をつとめるものでなければならない。この点にニュース映画の重大な使命がかかっていると言わなければならない。 ずっと前に、週刊ロンドン・タイムスで、かの地の裁判所における刑事裁・・・<寺田寅彦「ニュース映画と新聞記事」青空文庫>
  16. ・・・彼の歿後ほとんど十年になろうとする今日、彼のわざわざ余のために描いた一輪の東菊の中に、確にこの一拙字を認める事のできたのは、その結果が余をして失笑せしむると、感服せしむるとに論なく、余にとっては多大の興味がある。ただ画がいかにも淋しい。でき・・・<夏目漱石「子規の画」青空文庫>
  17. ・・・ そういう訳で、自分は多大の興味をもってこの長い手紙をくすくす笑いながら読んだ。そうして読みながら、こんなに女から思われている色男は、いったい何者だろうかとの好奇心を、最後の一行が尽きて、名あての名が自分の目の前に現われるまで引きずって・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  18. ・・・ら、その一方を代表なさる諸君が文学の方面にも一種の興味をもたれて、われわれのような不調法ものの講話を御参考に供して下さるのは、この両者の接触上から見て、諸君の前に卑見を開陳すべき第一の機会を捕えた私は多大の名誉と感ずる次第であります。できな・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  19. ・・・ とにかく余は今度我子の果敢なき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶間なき心の上に、一杓の冷水を浴びせかけられたような心持がして、一種の涼味を感ずると共に、心の奥より秋の日のような清く温き光が照して、凡ての人の上に・・・<西田幾多郎「我が子の死」青空文庫>
  20. ・・・ 魯迅は一九三五年ごろに、中国の新しい文化の発展のために多大の貢献をした一つの仕事として、ケーテ・コルヴィッツの作品集を刊行した。その中国版のケーテの作品集には、ケーテの国際的な女友達の一人であるアグネス・スメドレイの序文がつけられた。・・・<宮本百合子「ケーテ・コルヴィッツの画業」青空文庫>
  21. ・・・ 異性が異性を見る場合に、兎角起り勝ちな、又、殆ど総ての場合に附帯して来る、多大の寛容と、多大の苛酷さが、アメリカの婦人に対しても両方の解決を与えるのだと思います。 まして、現代の日本の男性に表われて居る二つの型――勿論其は至極粗雑・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  22. ・・・、どのようにして数名の検事たちから彼の親思いの気持と共産党員として党組織を信頼している感情を逆用されて、理性の混乱につきおとされたかということは、公判廷でとられた彼の陳述をふくむ録音が翌日放送されて、多大な感銘を与えたことによっても明瞭であ・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  23. ・・・昨今出版された大部な切支丹資料研究は、插画を見た丈でも益されることが多大だ。鹿児島出身。三時間に亙って懇切に私の質問に答えたり、書庫を見せられたりした。書庫には、出島和蘭屋敷の絵巻物、対支貿易に使用された信牌、航海図、きりしたんころびに関す・・・<宮本百合子「長崎の一瞥」青空文庫>
  24. ・・・ もう十六と十三になっている彼の娘達は、勧誘員が来ると一緒に、そのさもいいことずくめらしい言葉から多大の好奇心をそそられた。 何というあても決心もない。 ただその多勢でそろいの着物を着て、唄をうたいながら糸をとるということがして・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  25. ・・・ 私は、入沢達吉博士の随筆をまたないでも医学博士というものの実質に多大の疑問をもち、又愚劣さを感じた。 現在のような社会で、女が弁護士となり、又医師になるのはその専門技術をとおして婦人大衆の大小様々の荷に喘いでいる肉体と精神とを少し・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>
  26. ・・・若い同性の読者たちは、この本のなかに自分たちの気分や気持がそのまま語られていることに多大の共鳴を見出すだろうし、青年たちも公然とあるいはこっそりとこの本を読むだろう。 大迫さんの才気のある筆は、明快にときに皮肉に娘さん心理のいろいろな面・・・<宮本百合子「若い婦人の著書二つ」青空文庫>
  27. ・・・誰が考えても、戦争によって多大な犠牲を払い、生活を根本的に壊された人民大衆に対して、ほんの一部の軍需生産者ばかりが、巨万の富を積んで、謂わば彼を富ましたため社会事情によって惹き起された苦痛な食糧問題にも、住宅問題にも、インフレーションの不安・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  28. ・・・自然を征服し得たことは、人生に多大の霊光を与えた。四肢に集注されていた生活力は頭脳に分与されました。賢こくなった人間、豊富になった筈の人間精神の明確なるべき今日の人の多くがそれなら、果してひたすら発育して自己の肉体、精神の内感のみによって、・・・<宮本百合子「われを省みる」青空文庫>
  29. ・・・ 高田が帰ってからも、梶は、今まで事実無根のことを信じていたのは、高田を信用していた結果多大だと思ったが、それにしても、梶、高田、憲兵たち、それぞれ三様の姿態で栖方を見ているのは、三つの零の置きどころを違えている観察のようだった。 ・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  30. ・・・しかしそのなかに「とにかく余は今度我が子のあえなき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓の冷水を浴びせかけられたような心持ちがして、一種の涼味を感ずるとともに、心の奥より秋の日のような清く温かき光が・・・<和辻哲郎「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」青空文庫>