ただち‐に【直ちに】例文一覧 30件

  1. ・・・そこへ警戒中の巡査も駈けつけ、直ちに狼を銃殺した。この狼はルプス・ジガンティクスと称し、最も兇猛な種属であると云う。なお宮城動物園主は狼の銃殺を不当とし、小田原署長を相手どった告訴を起すといきまいている。等、等、等。五 ある・・・<芥川竜之介「白」青空文庫>
  2. ・・・という貼紙をしたので、直ちに多くの人々がこの窓の外に群がった。いよいよはがきに鉛筆を走らせるまでには、どうにか文句ができるだろうくらいな、おうちゃくな根性ですましていたが、こうなってみると、いくら「候間」や「候段」や「乍憚御休神下され度」で・・・<芥川竜之介「水の三日」青空文庫>
  3. ・・・われ等がこの里の名を聞くや、直ちに耳の底に響き来るは、松風玉を渡るがごとき清水の声なり。夏の水とて、北国によく聞ゆ。 春と冬は水湧かず、椿の花の燃ゆるにも紅を解くばかりの雫もなし。ただ夏至のはじめの第一日、村の人の寝心にも、疑いなく、時・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  4. ・・・もしか原稿はポストの周囲にでも落ちていないだろうかという危惧は、直ちに次いで我を襲うのである。そうしてどうしても三回、必ずポストを周って見る。それが夜ででもあればだが、真昼中狂気染みた真似をするのであるから、さすがに世間が憚られる、人の見ぬ・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  5. ・・・九十九里付近一帯の村落に生い立ったものは、この波の音を直ちに春の音と感じている。秋の声ということばがあるが、九十九里一帯の地には秋の声はなくてただ春の音がある。 人の心を穏やかに穏やかにと間断なく打ちなだめているかと思われるは、この九十・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  6. ・・・が、師伝よりは覚猷、蕪村、大雅、巣兆等の豪放洒落な画風を学んで得る処が多かったのは一見直ちに認められる。 かつ何でも新らしもの好きで、維新後には洋画を学んで水彩は本より油画までも描いた。明治の初年に渡来した英国人の画家ワグマンとも深く交・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・が、人生の説明者たり群集の木鐸たる文人はヨリ以上冷静なる態度を持してヨリ以上深酷に直ちに人間の肺腑に蝕い入って、其のドン底に潜むの悲痛を描いて以て教えなければならぬ。今日以後の文人は山林に隠棲して風月に吟誦するような超世間的態度で芝居やカフ・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・私は其の時からこの家にはどういう人々が住んでいるだろうかと思った。私は直ちに生活に奮闘している人々だと考えた。何となればこんなに朝早くから起きているのを見ると、多くの人々がまだ安眠している時分にも、生活の為に働いているのであろうと感じたから・・・<小川未明「ある日の午後」青空文庫>
  9. ・・・負傷者は直ちに北区大同病院にかつぎ込み加療中。――この乱闘現場の情景を目撃してゐた一人、大和農産工業津田氏は重傷に屈せず検挙に挺身した同署員の奮闘ぶりを次のやうに語つた。――場所は梅田新道の電車道から少し入つた裏通りでした。一人の私・・・<織田作之助「大阪の憂鬱」青空文庫>
  10. ・・・噛まれるや否や、その下らない奴は、直ちに悲鳴をあげた。私の古い空想はその場で壊れてしまった。猫は耳を噛まれるのが一番痛いのである。悲鳴は最も微かなところからはじまる。だんだん強くするほど、だんだん強く鳴く。Crescendo のうまく出る―・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  11. ・・・かの唄の主なるべしと辰弥は直ちに思いぬ。 顔は隔たりてよくも見えねど、細面の色は優れて白く、すらりとしたる立姿はさらに見よげなり。心ともなくこなたを打ち仰ぎて、しきりにわれを見る人のあるにはッとしたるごとく、急がわしく室の中に姿を隠しぬ・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  12. ・・・ 文は短けれど読みおわりて繰り返す時わが手振るい涙たばしり落ちぬ、今貴嬢にこの文を写して送らん要あらず、ただ二郎は今朝夜明けぬ先に品川なる船に乗り込みて直ちに出帆せりといわば足りなん。この身にはもはや要なき品なれば君がもとに届けぬ、君い・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  13. ・・・この骨組みの鉄筋コンクリート構造に耐え得ずして、直ちに化粧煉瓦を求め、サロンのデコレーションを追うて、文芸の門はくぐるが、倫理学の門は素通りするという青年学生が如何に多いことであろう。しかしすぐれた文学者には倫理学的教養はあるものである。人・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  14. ・・・ 空腹のとき、肉や刺身を食うと、それが直ちに、自分の血となり肉となるような感じがする。読んでそういう感じを覚える作家や、本は滅多にないものだ。 僕にとって、トルストイが肥料だった。が、トルストイは、あまりに豊富すぎる肥料で、かえって・・・<黒島伝治「愛読した本と作家から」青空文庫>
  15. ・・・紹介者に連れて行って貰って、些少の束修――金員でも品物でもを献納して、そして叩頭して御願い申せば、直ちに其の日から生徒になれた訳で、例の世話焼をして呉れる先輩が宿所姓名を登門簿へ記入する、それで入学は済んだ訳なのです。銘々勝手な事を読んで行・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  16. ・・・ 死は古えから悼ましき者、悲しき者とせられて居る、左れど是は唯だ其親愛し、尊敬し、若くは信頼したる人を失える生存者に取って、悼ましく悲しきのみである、三魂、六魂一空に帰し、感覚も記憶も直ちに消滅し去るべき死者其人に取っては、何の悼みも悲・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  17. ・・・大なる石は虚空より唸りの風音をたて隕石のごとく速かに落下し来り直ちに男女を打ちひしぎ候。小なるものは天空たかく舞いあがり、大虚を二三日とびさまよひ候。」 私はそれを一字一字清書しながら、天才を実感して戦慄した。私のこれまでの生涯に於・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  18. ・・・という声が直ちにこの人の目をおおい隠して、眼前の絵の代わりに自分の頭の中に沈着して黴のはえた自分の寺の絵の像のみが照らし出される。たとえその頭の中の絵がいかに立派でもこれでは困る。手を触れるものがみんな黄金になるのでは飢え死にするほかはない・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  19. ・・・ われわれの生活は遠からず西洋のように、殊に亜米利加の都会のように変化するものたる事は誰が眼にも直ちに想像される事である。然らばこの問題を逆にして試に東京の外観が遠からずして全く改革された暁には、如何なる方面、如何なる隠れた処に、旧日本・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  20. ・・・彼は家に帰れば直ちにそれを発見したのである。彼は忘れて出たのである。其夜彼等が会合したのは全く悪戯のためであった。悪戯は更に彼等の仲間にも行われざるを得なかった。「そりゃ畑へ落して来たぞ」 他の一人がいった。「どこらだんべ」・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  21. ・・・往来から直ちに戸が敲けるほどの道傍に建てられた四階造の真四角な家である。 出張った所も引き込んだ所もないのべつに真直に立っている。まるで大製造場の煙突の根本を切ってきてこれに天井を張って窓をつけたように見える。 これが彼が北の田舎か・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  22. ・・・寺の僧侶が毎朝早起、経を誦し粗衣粗食して寒暑の苦しみをも憚らざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は、ただその艱苦に当たるのみを以て凡俗を目下に見下すの気位を生ずべし。天下の人皆財を貪るその中に居て独り寡慾なるが如き、詐偽・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  23. ・・・併しそれが直ちに人生に触れる触れぬの標準となるんなら、大変軽卒のわけじゃないか。引緊った感を起させる、起させぬの別と、人生に触れる、触れぬとの間にゃ大なるギャップが有りゃせんか。私はどうも那様気がするね。触れる云々は形容詞に過ぎんように思う・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  24. ・・・今人を呼び起したのも勿論それだけの用はあったので、直ちにうちの者に不浄物を取除けさした。余は四、五日前より容態が急に変って、今までも殆ど動かす事の出来なかった両脚が俄に水を持ったように膨れ上って一分も五厘も動かす事が出来なくなったのである。・・・<正岡子規「九月十四日の朝」青空文庫>
  25. ・・・「報告、きょうあけがた、セピラの峠の上に敵艦の碇泊を認めましたので、本艦隊は直ちに出動、撃沈いたしました。わが軍死者なし。報告終りっ。」 駆逐艦隊はもうあんまりうれしくて、熱い涙をぼろぼろ雪の上にこぼしました。 烏の大監督も、灰・・・<宮沢賢治「烏の北斗七星」青空文庫>
  26. ・・・ 私は直ちに「自己の完成」と答えるのである。 堪え得ぬ魅力をもって此の言葉は私の心を動かす。 己を私するに、自己完成ほど力強いものが有ろうか。 私の云う自己完成と云うのは、或は今まで多くの人々の云ったのとは少し異うかもしれな・・・<宮本百合子「大いなるもの」青空文庫>
  27. ・・・拾いし者は速やかに返すべし――町役場に持参するとも、直ちにイモーヴィルのフォルチュネ、ウールフレークに渡すとも勝手なり。ご褒美として二十フランの事。』 人々は卓にかえった。太鼓の鈍い響きと令丁のかすかな声とが遠くでするのを人々は今一度聞・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  28. ・・・かくて直ちに清兵衛が嫡子を召され、御前において盃を申付けられ、某は彼者と互に意趣を存ずまじき旨誓言いたし候。しかるに横田家の者どもとかく異志を存する由相聞え、ついに筑前国へ罷越し候。某へは三斎公御名忠興の興の字を賜わり、沖津を興津と相改め候・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書」青空文庫>
  29. ・・・他の文句など全く不必要なこんなときでも、まだ何とかかとか人は云い出す運動体だということ、停ったかと思うと直ちに動き出すこのルーレットが、どの人間の中にも一つずつあるという鵜飼い――およそ誰でも、自分が鵜であるか、鵜の首を握っている漁夫である・・・<横光利一「鵜飼」青空文庫>
  30. ・・・いかに苦しんでも苦しみ足りるという事のないこの人生を、私はともすれば調子づいて軽々しく通って行く、そしてその凝視の不足は直ちに表現の力弱さとして私に報いて来るのである。私はもっとしっかりと大地を踏みしめて、あくまで浮かされることを恐れなくて・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>