たち‐あが・る【立(ち)上がる】例文一覧 15件

  1. ・・・のみならずいきなり立ち上がると、べろりと舌を出したなり、ちょうど蛙の跳ねるように飛びかかる気色さえ示しました。僕はいよいよ無気味になり、そっと椅子から立ち上がると、一足飛びに戸口へ飛び出そうとしました。ちょうどそこへ顔を出したのは幸いにも医・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・そしてふいと立ち上がるとかまわずに事務所の方に行ってしまった。 座敷とは事かわって、すっかり暗くなった囲炉裡のまわりには、集まって来た小作人を相手に早田が小さな声で浮世話をしていた。内儀さんは座敷の方に運ぶ膳のものが冷えるのを気にして、・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・すべての疲れたる者はその人を見て再びその弱い足の上に立ち上がる。八 さりながらその人がちょっとでも他の道を顧みる時、その人はロトの妻のごとく塩の柱となってしまう。九 さりながらまたその人がどこまでも一つの道を・・・<有島武郎「二つの道」青空文庫>
  4. ・・・ 彼は、立ち上がると、「私のお母さんは、お金のないときは、自分のだいじなものも売って、僕のためにいろいろなものを買ってくださいます。そんなとき、私はじつにすまないと感じます。」といいました。すると、先生は、「いろいろなものとは、・・・<小川未明「笑わなかった少年」青空文庫>
  5. ・・・山崎は立ち上がると、しばらくモジ/\していたが、低い声で裁判長の方に向って何か云った。裁判長は白い髯を噛みながら、「本当にやめる心積りか?」と訊きかえした。「そうです、考えるところがあって……。」山崎は頭を伏せたまゝブツ/\と云った。今まで・・・<小林多喜二「母たち」青空文庫>
  6. ・・・ と叫んで立ち上がる。 以上は鴎外の文章の筆写であるが、これが喧嘩のはじまりで、いよいよ組んづほぐれつの、つかみ合いになって、 彼は僕を庭へ振り落そうとする。僕は彼の手を放すまいとする。手を引き合った儘、二人は縁から落ちた。・・・<太宰治「花吹雪」青空文庫>
  7. ・・・ 砂漠でらくだがうずくまっていると飛行機の音が響いて来る、するとらくだが驚いて一声高くいなないて立ち上がる。これだけで芝居のうそが生かされて熱砂の海が眼前に広げられる。ホテルの一室で人が対話していると、窓越しに見える遠見の屋上でアラビア・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  8. ・・・ケーベルさんが立ち上がるのも待たないで無遠慮に拍手を浴びせかけた。ケーベルさんは少しはにかんだような色を柔和な顔に浮かべて聴衆に挨拶した。 演奏していた時の様子も思い出す。少し背中を猫背に曲げて、時々仰向いたり、軽くからだを前後に動かし・・・<寺田寅彦「二十四年前」青空文庫>
  9. ・・・たとえば湯の温度によって湯げの立ち上がる様子がちがうので、その湯げの立ち方で温度のおおよその見当がつく。これには対流による渦動の問題がある。また半ば満たした金だらいの中央にコップの水を注入する時に水面に菊花状の隆起を生じる事がある。これもま・・・<寺田寅彦「日常身辺の物理的諸問題」青空文庫>
  10. ・・・前足でころがすのはなんでもないが棒の片端をひょいと両方の前足でかかえてあと足でみごとに立ち上がる。棒が倒れるとそれを飛び越えて見向きもしないで知らん顔をしてのそのそと三四尺も歩いて行ってちょこんとすわる。そういう事をなんべんとなく繰り返すの・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  11. ・・・暖かい湯気が立上がる。しおれた白百合やカーネーションが流しの隅に捨ててある。百合の匂。カーネーションの匂。洗濯する人。お化粧する人。 小使が流しの上へ上がって、長い棒を押し立てて、何かゴボゴボ音を立てている。棒の先にゴムの椀のようなもの・・・<寺田寅彦「病院風景」青空文庫>
  12. ・・・ 濛々と天地を鎖す秋雨を突き抜いて、百里の底から沸き騰る濃いものが渦を捲き、渦を捲いて、幾百噸の量とも知れず立ち上がる。その幾百噸の煙りの一分子がことごとく震動して爆発するかと思わるるほどの音が、遠い遠い奥の方から、濃いものと共に頭の上・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  13. ・・・ちょうどうまい折だから、椅子から立ち上がるや否や、帳場格子の方をふり返って見た。けれども格子のうちには女も札も何にも見えなかった。 代を払って表へ出ると、門口の左側に、小判なりの桶が五つばかり並べてあって、その中に赤い金魚や、斑入の金魚・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  14. ・・・彼はやはり静かに立ち上がると深谷の跡をつけた。 廊下に片っ方の眼だけ出すと、深谷が便所のほうへ足音もなく駆けてゆく後ろ姿が見えた。「ハテナ。やっぱり下痢かな」 と思ううちに、果たして深谷は便所に入った。が安岡は作りつけられたよう・・・<葉山嘉樹「死屍を食う男」青空文庫>
  15. ・・・ 一同が立ち上がる時、小川の足元は大ぶ怪しかった。 主人が小川に言った。「さっきの話は旧暦の除夜だったと君は云ったから、丁度今日が七回忌だ。」 小川は黙って主人の顔を見た。そして女中の跡に附いて、平山と並んで梯子を登った。 ・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>