た・つ【絶つ/断つ】例文一覧 23件

  1. ・・・翁はついに秋山図には意を絶つより外はなくなりました。      *     *     * 王石谷はちょいと口を噤んだ。「これまでは私が煙客先生から、聞かせられた話なのです」「では煙客先生だけは、たしかに秋山図を見ら・・・<芥川竜之介「秋山図」青空文庫>
  2. ・・・冬至の第一日に至りて、はたと止む、あたかも絃を断つごとし。 周囲に柵を結いたれどそれも低く、錠はあれど鎖さず。注連引結いたる。青く艶かなる円き石の大なる下より溢るるを樋の口に受けて木の柄杓を添えあり。神業と思うにや、六部順礼など遠く来り・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  3. ・・・一身係累を顧みるの念が少ないならば、早く禍の免れ難きを覚悟したとき、自ら振作するの勇気は、もって笑いつつ天災地変に臨むことができると思うものの、絶つに絶たれない係累が多くて見ると、どう考えても事に対する処決は単純を許さない。思慮分別の意識か・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  4. ・・・後について来ると思たものが足音を絶つ、並んどったものが見えん様になる、前に進むものが倒れてしまう。自分は自分で、楯とするものがない。」「そこになると、もう、僕等の到底想像出来ないことだ。」「実際、君、そうや。」「わたしは何度も聴・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  5. ・・・むしろ断然関係を断つ方が僕のためだという忠告だ。僕の心の奥が絶えず語っていたところと寸分も違わない。 しかし、僕も男だ、体面上、一度約束したことを破る気はない。もう、人を頼まず、自分が自分でその場に全責任をしょうよりほかはない。 こ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・ どうすれば、こういう側面からのサヴエート攻撃の根を断つことができるか! 呉清輝は、警戒兵も居眠りを始める夜明け前の一と時を見計って郭進才と橇を引きだした。橇は、踏みつけられた雪に滑桁を軋らして、出かけて行った。 風も眠っていた・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  7. ・・・ 討論の現場に居合せたもうひとりの下僚は、「いえ、いえ、どうして、かいとう乱麻を断つ、というところでしたよ」 とお世辞を言う。「かいとうとは、怪しい刀と書くんだろう?」 と彼はやはり苦笑しながら言って、でも内心は、まんざ・・・<太宰治「家庭の幸福」青空文庫>
  8. ・・・ こうは言うもののまたよくよく考えて見ていると災難の原因を徹底的に調べてその真相を明らかにして、それを一般に知らせさえすれば、それでその災難はこの世に跡を絶つというような考えは、ほんとうの世の中を知らない人間の机上の空想に過ぎないではな・・・<寺田寅彦「災難雑考」青空文庫>
  9. ・・・このような障害の根を絶つためには、一般の世間が平素から科学知識の水準をずっと高めてにせ物と本物とを鑑別する目を肥やしそして本物を尊重しにせ物を排斥するような風習を養うのがいちばん近道で有効ではないかと思ってみた。そういう事が不可能ではない事・・・<寺田寅彦「断水の日」青空文庫>
  10. ・・・近代では洋服が普及されたが、固有な和服が跡を絶つ日はちょっと考えられない。たとえば冬湿夏乾の西欧に発達した洋服が、反対に冬乾夏湿の日本の気候においても和服に比べて、その生理的効果がすぐれているかどうかは科学的研究を経た上でなければにわかに決・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  11. ・・・それはもとより子供の素質にもよるだろうし、前後の事情にもよるだろうと思うが、実用的にはやはり、動物の生命を絶つ行為はすべて残酷でいけない事であるという事に取りきめておくほうが簡単で安全だろうと思う。そうかと言ってこのような重大な現象を無感覚・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  12. ・・・世の文学雑誌を見るも遊里を描いた小説にして、当年の傑作に匹疇すべきものは全くその跡を断つに至った。 遊里の光景と風俗とは、明治四十二、三年以後にあっては最早やその時代の作家をして創作の感興を催さしむるには適しなくなったのである。何が故に・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  13. ・・・当時凌雲閣の近処には依然としてそういう小家がなお数知れず残っていたが、震災の火に焼かれてその跡を絶つに及び、ここに玉の井の名が俄に言囃されるようになった。 女車掌が突然、「次は局前、郵便局前。」というのに驚いて、あたりを見ると、右に灰色・・・<永井荷風「寺じまの記」青空文庫>
  14. ・・・わたくしはこの湫路の傍に芭蕉庵の址は神社となって保存せられ、柾木稲荷の祠はその筋向いに新しい石の華表をそびやかしているのを見て、東京の生活はいかにいそがしくなっても、まだまだ伝統的な好事家の跡を絶つまでには至らないのかと、むしろ意外な思いを・・・<永井荷風「深川の散歩」青空文庫>
  15. ・・・波の如くに延びるよと見る間に、君とわれは腥さき縄にて、断つべくもあらぬまでに纏わるる。中四尺を隔てて近寄るに力なく、離るるに術なし。たとい忌わしき絆なりとも、この縄の切れて二人離れ離れにおらんよりはとは、その時苦しきわが胸の奥なる心遣りなり・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  16. ・・・の門閥を本位に定めて今日の同権を事変と視做し、自からまた下士に向て貸すところあるごとく思うものなれば、双方共に苟も封建の残夢を却掃して精神を高尚の地位に保つこと能わざる者より以下は、到底この貸借の念を絶つこと能わず。現に今日にても士族の仲間・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  17. ・・・余輩断じていわん、家に財あり、父母に才学あらば、十歳前後の子を今の学校に入るるべからず、またこれを他人に託すべからず、仮令いあるいは学校に入れ他人に託するも、全くこれを放ちて父母教育の関係を絶つべからずと。然りといえども実際において人の家に・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  18. この一編は、頃日、諭吉が綴るところの未定稿中より、教育の目的とも名づくべき一段を抜抄したるものなれば、前後の連絡を断つがために、意をつくすに足らず、よってこれを和解演述して、もって諸先生の高評を乞う。 教育の・・・<福沢諭吉「教育の目的」青空文庫>
  19. ・・・ この官員なり、また学者なり、永遠無窮、人民と交際を絶つの覚悟ならばすなわち可ならんといえども、いやしくも上流の知見を下流に及さんとするには、その入門の路をやすくして、帳合にも日本の縦の文字を用い、法を西洋にして体裁を日本にせんこと、一・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  20. ・・・即ちその身の弱点にして、小児の一言、寸鉄腸を断つものなり。既にこの弱点あれば常にこれを防禦するの工風なかるべからず。その策如何というに、朝夕主人の言行を厳重正格にして、家人を視ること他人の如くし、妻妾児孫をして己れに事うること奴隷の主君にお・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  21. ・・・昔、仏像の製作者が、先ず斎戒沐浴して鑿を執った、そのことの裡に潜む力は、水をかぶり、俗界と絶つ緊張の中に存するのではなく、左様にして後、心を満たし輝かす限りないポイズの裡にあるのではないだろうか。〔一九二一年十二月〕・・・<宮本百合子「透き徹る秋」青空文庫>
  22. ・・・この小説が当時の知識人に与えた衝撃は深刻且つ人生的なもので、己を知るに賢明であった逍遙が人及び芸術家としての自分を省み、遂に生涯小説の筆を絶つ決心をかためるに到ったのも、逍遙自ら率直に語っている通り「浮雲」における作者の人間探究の態度の真実・・・<宮本百合子「文学における今日の日本的なるもの」青空文庫>
  23. ・・・ 果して安国寺さんは私との交際を絶つに忍びないので、自分の住職をしていた寺を人に譲って、飄然と小倉を去った。そして東京で私の住まう団子坂上の家の向いに来て下宿した。素と私の家の向いは崖で、根津へ続く低地に接しているので、その崖の上には世・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>